さん)” の例文
そしてのこつた四分しぶんさんあめからえだえだからみきながれて、徐々じよ/\地面じめんち、そこにあるられるのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
例の太刀たちのごとくそっくりかえった「朝日」を厚いくちびるの間にくわえながら、あの角張かどばった顔をさんほど自分の方へ向けて
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それも、をんなのためにくるつたものだとく。……薔薇ばらは、百合ゆりは、ちら/\と、いちはしを——はしを——さんはしを。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よっぽど古いお話なんで御座ございますよ。私の祖父じじいの子供の時分に居りました、「さん」という猫なんで御座ございます。三毛みけだったんで御座ございますって。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
山根謙作やまねけんさくさんみやの停留場を出て海岸のほうへ歩いていた。謙作がこの土地へ足を入れたのは二度目であったが、すこしもかってが判らなかった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
近松ちかまつの書きました女性の中でおたねにおさい小春こはるとおさんなどは女が読んでもうなずかれますが、貞女とか忠義に凝った女などは人形のように思われます。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
祖父以来の駿すんえんさんの三ヵ国を他人に取られて、ただ一個の鞠をいだき、得意がっておるあの容子ようすは……さてさて、見るもなかなか不愍ふびんであった
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淡島氏の祖の服部喜兵衛は今の寒月から四代前で、とは上総かずさ長生ちょうせい郡のさん(今の鶴枝村)の農家の子であった。
私は、その頃、少しばかり買物がございましたので、さんみやの『でぱあと』まで出むいていたのでございます。
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
おいたはしきこととは太吉たきちひぬ、おくらへり、こゝろなきおさんどんのすゑまでぢやうさまにつみありとはいさゝかもはざりき、黄八丈きはちぢやうそでなが書生羽織しよせいばおりめして
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
第四日は五色温泉を経てさんの峡谷を探り、もし行けたらば八幡平はちまんだいらかくだいらまでも見届けて、木樵きこりの小屋にでもめてもらうか、しおまで出て来て泊まる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どんな無性ぶしょうなおさんどんでも決していきなり桶をネジの口へ当てて昨夜ゆうべの溜り水を使うような事はしない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
左に掲ぐる地名は以前鉦打かねうち部落の住んでいたためにできたものと思う。なかんずく下総しもうささんのことは前にも話が出ている(柳田、念仏団体の変遷、郷土研究二巻二号)。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこに、さんオクターヴほどの、ミシンのような恰好をしたオルガンがすえられてあって、りかえった鍵盤の上に、曇り日の朝日が、ぼんやりした薄い陽だまりをつくっている。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
馬籠まごめむらはづれには、すぎえたさはさかひにしまして、べつたうげといふ名前なまへちいさなむらがあります。このたうげに、馬籠まごめに、湯舟澤ゆぶねざはと、それだけのさんそん一緒いつしよにして神坂村みさかむらひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「ではそのおさんかたをお召し抱えなすったのはどういうわけでございますか?」
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
するとあがはなに腰を掛けて居たのは、吾妻郡あがつまごおり市城村いちしろむらと云う処の、これは筏乗いかだのり市四郎いちしろうと云う誠に田舎者で骨太な人でございますが、弱い者は何処までも助けようと云う天稟うまれつきの気象で、さんくらうまれ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乳のみ児の肌のさはりかさんいとなするひびきか春のくれゆく
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すっとんきょうな南京なんきんさんがおさんかたござった。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
おい、この間、さんとりへ行ったろう? ……
三の酉 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
さんは、瑞樹みづきのかくれ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
第五十二だいごじゆうにさん四圖しず
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
どういうことについて語っているのか、末の者にはよく分らないのであるが、頻りと、信長の哄笑するのが、さんまでも、時々聞えて来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真鍮のだいの燭台を組、ちういつ組、銅の燭台を組、大大だいだいのおらんだの皿をさん枚、錦手にしきでの皿を三十枚、ぎやまんの皿を百人前、青磁せいじの茶碗を百人前、煙草盆を十個とを
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さん公谷こだにと云う渓合たにあいに移り、そこに王の御殿ごてんを建て、神璽はとある岩窟がんくつの中にかくしていたと云う。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私のやった事はこの日課のさんいちにも足らなかった。私は今までもこういう不愉快を何度となく重ねて来た。しかしこの夏ほど思った通り仕事の運ばないためしも少なかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暮からさんにちへかけたほどの混雑はないが、それでも、この川奈かわなの国際観光ホテルには、ここを冬の社交場にする贅沢ぜいたくなひとたちが二十人ほど、ゴルフをしたり、ダンスをしたり
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ちひさきかみ川村太吉かはむらたきちかいりたるをよみみて此處こゝだ/\とくるまよりりける、姿すがたつけて、おゝ番町ばんちやう旦那樣だんなさまとおさんどんが眞先まつさきたすきをはづせば、そゝくさは飛出とびだしていやおはやいおいで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
俊徳丸しゅんとくまるの物語のつゞき、それから手拭てぬぐいやぶへ引いて行つた、おどりをするさんといふ猫の話、それもこれも寝てからといふのであつたに、つまらない、さびしい、心細い、私は帰らうと思つた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
中年ちゆうねんの心にはさんの糸げてくこそ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今日けふもこそて、さんはな
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
本牧ほんもくさんたにに、遠くからでも見える十九世紀型の西洋館と、破風はふづくりの、和洋折衷せっちゅうの、その頃ではめずらしい、また、豪奢ごうしゃなとも驚かれていた、別荘があった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちたにたにさんたにたにかけて、山々やま/\峰々みね/\縱横じうわうに、れにるゝがるやう、大波おほなみせてはかへすにひとしく、一夜いちや北國空ほくこくぞらにあらゆるゆきを、ふるおとすこと、すさまじい。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
植村うゑむらさまもいおかたであつたものをとおくらへば、なにがあのいろくろ無骨ぶこつらしきおかた學問がくもんはえらからうともうで此方うちのおぢやうさまがつゐにはならぬ、つからわたしめませぬとおさんりきめば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
甲野さんは寝ながら日記をけだした。横綴よことじの茶の表布クロースの少しは汗にごれたかどを、折るようにあけて、二三枚めくると、一ページさんいちほど白い所が出て来た。甲野さんはここから書き始める。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、幸い天候にも恵まれ、予想以上に材料も得られて、四日目までは道のけわしさも苦しさも「なあに」と云う気で押し通してしまったが、ほんとうに参ったのはあのさん公谷こだに這入はいった時であった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ヸオロンのさんいとなするこころか
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さん御手おんてのひらに。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
この大納言(藤原為世)のむすめ、為子の君とて、坊(東宮)のおん時、かぎりなくおぼされたりし御腹に、一ノ御子みこ尊良たかながにょさんノ御子(瓊子たまこ)、法親王(尊澄たかずみ)など、あまたものし給ふ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お沢 ああ、勿体もったいない。わたしはおさんどんだよ、箒を一つ貸して頂戴ちょうだい
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みんながびくびく、いちにいさん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
太閤が、兵をもって、家康をいるなら、家康も、さんえん駿すんしん四州の兵をもって、動くまい。再び、一戦とあれば、それもよし。家康の用意は、こぶしの鷹が一飛びの間ぞ。早々、帰れ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちき、ろくで、さんかはり、かへり、ならぶ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みんながぶるぶる、いちにいさん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みんなが後向あとむき、いちにいさん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)