身躰からだ)” の例文
痘痕あばたのある柔和にうわかほで、どくさうにわたした。がくちかないでフイとかどを、ひとからふりもぎる身躰からだのやうにづん/\出掛でかけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そればかりでも身躰からだ疲勞ひらうはなはだしからうとおもはれるので種々いろ/\異見いけんふが、うもやまひせゐであらうか兎角とかくれのこともちひぬにこまりはてる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして二三年前飄然と病み衰へた身躰からだ蹌踉よろぼはせてまた村に歸つて來て、そして臺灣で知合になつたとかいふ四國者の何とかいうつんぼの老爺を連れて來て
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
身躰からだではないが、君が此尫弱ひよわなりでどうしてあれだけの詩篇が出來、其詩篇が一々椋實珠むくろうじゆのやうに底光りのした鍛錬の痕を留めてをる、其精力の大さでした。
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
ところこまつたことにア身躰からだわるく、肺病はいびようてゐるからぼくほとんど當惑とうわくするぼくだつて心配しんぱいでならんからその心配しんぱいわすれやうとおもつて、ついむ、めばむほど心配しんぱいする。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
しやあはれな勞働者は其の唄のをはらぬうち惡魔あくまのやうな機械の運轉うんてん渦中くわちう身躰からだ卷込まきこまれて、唄の文句もんくの其のとほり、ながくもない生涯しようがいをはりげたのではあるまいか。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
銀価ぎんか下落げらく心配しんぱいする苦労性くらうしやう月給げつきふ減額げんがく神経しんけい先生せんせいもしくは身躰からだにもてあますしよくもたれのぶた無暗むやみくびりたがる張子はりことらきたつて此説法せつぱう聴聞ちやうもんし而してのち文学者ぶんがくしやとなれ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
反身そりみ手足てあしをだらりとげて、自分じぶん身躰からだ天井てんじやう附着くつつく、とおもふとはつとめる、……けないのです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貸金の取たて、店への見廻り、法用のあれこれ、月の幾日いくかは説教日の定めもあり帳面くるやら経よむやらかくては身躰からだのつづき難しと夕暮れの椽先ゑんさきに花むしろを敷かせ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし私の驚いたのは君の身躰からだではなかつた。
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
二月こそ可けれ、三月四月に及びては、精神瞢騰もうとうとして常によえるが如く、身躰からだいたく衰弱しつ、元気次第に消耗せり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あやしきふるへこゑ此頃このごろ此處こゝ流行はやりぶしをつて、いまではつとめがにしみてとくちうちにくりかへし、れい雪駄せつたおとたかくきたつひとなかまじりてちいさき身躰からだたちまちにかくれつ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぐにがうにして、いま、こんな家業かげふるやうにつたのも、小児こどもときから、ざうことが、にもこゝろにも身躰からだにもはなれなかつたせゐなんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
老夫婦ふたりは猶もおらん樣が詞の幾倍を加へて、今少し身躰からだのたしかに成るまでは我等が願ひても此處に止めたしと思ひしを、孃樣よりのお言葉なれば今は天下はれての御食客いそうらうぞや
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一人は必らず手伝はすると言ふて下され、さてさて御苦労と蝋燭代ろうそくだいなどをりて、やれ忙がしや誰れぞ暇な身躰からだを片身かりたき物、お峯小松菜はゆでて置いたか、数の子は洗つたか
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かはづこゑがます/\たかくなる、これはまた仰山ぎやうさんな、何百なんびやくうして幾千いくせんいてるので、幾千いくせんかはづひとひとがあつて、くちがあつて、あしがあつて、身躰からだがあつて、みづなか
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一人はかならず手傳てつだはするとふてくだされ、さてさて御苦勞ごくらう蝋燭代ろうそくだいなどをりて、やれいそがしやれぞひま身躰からだ片身かたみかりたきもの、おみね小松菜こまつなはゆでゝいたか、かずあらつたか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふるママながら、そつと、大事だいじに、内証ないしやうで、手首てくびをすくめて、自分じぶん身躰からだやうとおもつて、左右さいうそでをひらいたときもうおもはずキヤツとさけんだ。だつてわたしとりのやうにえたんですもの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたしおこしてくだされ、何故なぜ身躰からだいたくてとふ、それは何時いつつまゝに驅出かけいだしてだいをとことらへられるを、振放ふりはなすとておそろしきちからせばさだめていたからう生疵なまきず處々ところ/″\にあるを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頭巾ずきん黒く、外套がいとう黒く、おもておおひ、身躰からだを包みて、長靴を穿うがちたるが、わずかこうべを動かして、きっとその感謝状に眼を注ぎつ。こまやかなる一脈いちみゃくの煙はかれ唇辺くちびるめて渦巻うずまきつつ葉巻はまきかおり高かりけり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それでも身躰からだいたいがれるほどならばと果敢はかなきことをも兩親ふたおや頼母たのもしがりぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くるしいのでをもがいて身躰からだうごかすとたゞどぶん/\としづむでく、なさけないとおもつたら、うち母様おつかさんすはつてらつしやる姿すがたえたので、またいきおひついたけれど、やつぱりどぶむ/\としづむから
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さりとてるくぎてはこまれど過不及くわふきふとりかぢはこヽろ一つよくかんがへて應用おうようなされ、じつところ出立しゆつたつ明後日あさつて支度したく大方おうかた出來できたれば最早もはやにかヽるまじく隨分ずゐぶん身躰からだをいとひてわづらひ給ふな
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かかさんに無理をいふて困らせては成りませぬと教ゆれば、困らせる処か、お峯聞いてくれ、としは八つなれど身躰からだおほきし力もある、わしてからはかせなしの費用いりめは重なる、四苦八苦見かねたやら
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かゝさんに無理むりをいふてこまらせてはりませぬとをしゆれば、こまらせるどころか、おみねいてれ、としは八つなれど身躰からだおほきしちからもある、わしてからはかせなしの費用いりめかさなる、四かねたやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)