父母ちゝはゝ)” の例文
彼答へて我にいふ、人にあらず、人なりしことあり、わが父母ちゝはゝはロムバルディアの者郷土ふるさとをいへば共にマントヴァびとなりき 六七—六九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わがはらからは皆かしこくおとなしかりしにわれ一人父母ちゝはゝの良き教にそむく事多かりしが、しかも我が父はわが罪を一度も責め給ひし事なし。
父母ちゝはゝのおん為に。経の偈文げもん謄写かきうつして。前なる山川におし流し。春は花を手折たをりて。仏に手向たむけ奉り。秋は入る月にうそぶきて。そゞろ西天にしのそらこふめり。
それからまたはこころがしたやうな、へだての障子しやうじさへちひさないへをんなをとこみちびくとて、如何どうしても父母ちゝはゝ枕元まくらもとぎねばらぬとき
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
めづらしく家内中うちゞうとのれになりけり、このともうれしがるは平常つねのこと、父母ちゝはゝなきのちたゞ一人の大切たいせつひとが、やまひのとこ見舞みまこともせで、物見遊山ものみゆさんあるくべきならず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つきみやこ父母ちゝはゝすこしのあひだといつて、わたしをこのくにによこされたのですが、もうなが年月としつきがたちました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
追放つゐはうくからは、父母ちゝはゝもチッバルトもロミオもヂュリエットも皆々みんな/\ころされてしまうたのぢゃ。「ロミオは追放つゐはう!」その一言ひとことひところちからにははてはかりきりさかひいわいの。
私は日本ひのもとの女で御座りまする。父母ちゝはゝそむかせ、天子様にそむかせる異人の教へは受けませぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
以て結納ゆひなふまで取交したるなかなれば假令癲癇てんかんの病ありとも吾儕わしよいというならばそれまでにして父母ちゝはゝあへかういふすぢ有るまじ夫をして病有るものはといふわけならば一おうは我に話して縁組を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日出雄少年ひでをせうねん海外かいぐわい萬里ばんりうまれて、父母ちゝはゝほかには本國人ほんこくじんことまれなることとて、いとけなこゝろにもなつかしとか、うれしとかおもつたのであらう、そのすゞしいで、しげ/\とわたくしかほ見上みあげてつたが
かゝる下郎のために父母ちゝはゝの遺体をけがされたは如何にも心外でございます
わたし此後このゝちあるひ光子みつこ離縁りえんするかもはかられぬ。次第しだいつては、光子みつこ父母ちゝはゝに、此事このこと告白こくはくせぬともかぎらぬ。が、告白こくはくしたところで、離縁りえんをしたところで、光子みつこたいする嫉妬しつとほのほは、つひすことが出来できぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
父母ちゝはゝと摘みてそろへし棕梠の葉に霰たまれり米の粒ほど
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
われを父母ちゝはゝありし故郷ふるさと幼心をさなごゝろに返し
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
父母ちゝはゝや妹をしのび
帰省 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
朧々おぼろ/\父母ちゝはゝ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
またこの願ひは恐らくは彼等自らの爲のみならず、父母ちゝはゝその他彼等が未だ不朽の焔とならざる先に愛しゝ者の爲なりしならむ 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わが父母ちゝはゝ人にすぐれて行ひ正しくおはせば、我が家は世に勝れて良き家なる事をわれ曾て些かも疑ひし事なし。
氣分きぶんすぐれてよきとき三歳兒みつごのやうに父母ちゝはゝひざねぶるか、白紙はくしつて姉樣あねさまのおつくり餘念よねんなく、ものへばにこ/\と打笑うちゑみてたゞはい/\と意味いみもなき返事へんじをする温順おとなしさも
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其處そこには假令たとへ重量ぢゆうりやうくはへられても、それはたくみつかれてねむ父母ちゝはゝみゝあざむくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
讀ため身にとくき戸外へ出ねば父母ちゝはゝも案じ給ふのうれひなし我は見ぬ世の人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たつとき事もあり、あはれなる事もあり、少しは空物語そらものがたりもあり、利口りこうなる事もありと前文ぜんぶんしるかれたり、竹取物語たけとりものがたり宇津保物語うつぼものがたりはなし父母ちゝはゝにして、それよりしもかたいたりては、ぢゞは山へ、ばゞは川へ洗濯せんたく
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
父母ちゝはゝと今朝もたばしる白玉の霰のさやぎ見るが幽けさ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さてまたこのことわりよりさらに推し及ぼして汝は汝等の更生よみがへりを知ることをえむ、もし第一の父母ちゝはゝともに造られし時 一四五—一四七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わが心、何を求め何に憧るるや、われみづからもわき難きを、われ自らにあらぬ人の父母ちゝはゝなりとていかで知り得ん。我が父母はただ只管に限り無くわれをでいつくしみ給ひき。
父母ちゝはゝそろひていゑうちこもにてもむべきむすめが、人目ひとめつほど才女さいじよなどばるゝは大方おほかたきやんびあがりの、あまやかされのわがまゝの、つゝしみなき高慢こうまんよりなるべく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひとりは目をさめしゐて搖籃ゆりかごを守り、またあやしつゝ、父母ちゝはゝの心をばまづ樂しますことばを用ゐ 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
父母ちゝはゝをもあにをも女子をなごどもをもせつけず、りませぬ、りませぬ、わたしなにりませぬとて打泣うちなくばかり、いへうちをばひろ野原のはらかたなきなげきにひとそでをもしぼらせぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
當主たうしゆ養子やうしにて此娘これこそはいへにつきての一粒ひとつぶものなれば父母ちゝはゝなげきおもひやるべし、やまひにふしたるはさくらさくはるころよりとくに、それより晝夜ちうやまぶたあはするもなき心配しんぱいつかれて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鐵拳かなこぶし撲倒はりたふ勇氣ゆうきはあれどまこと父母ちゝはゝいかなるせて何時いつ精進日しやうじんびとも心得こゝろえなきの、心細こゝろぼそことおもふては干場ほしばかさのかげにかくれて大地だいぢまくら仰向あふむしてはこぼるゝなみだ呑込のみこみぬるかなしさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其時そのときわたしは七つであつたれどうちうち樣子やうす父母ちゝはゝこゝろをもれてあるにおこめ途中とちうおとしましたとから味噌みそこしさげてうちにはかへられず、たつてしばらくいてたれどうしたとふてれるひともなく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)