此事このこと)” の例文
こと浮沈室ふちんしつ機關室きくわんしつとはこのていもつと主要しゆえうなる部分ぶゞんではあるが、此事このこといては殘念ざんねんながらわたくしちかひたいして一言いちごん明言めいげんすること出來できぬ。
きに病氣びやうきとばかりおもひぬれば、よしらうかぎりもなくいたましくて、醫者いしやにかゝれの、くすりめのと悋氣りんきわすれて此事このことこゝろつくしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
りたる事なれば其入用いりようにとかねてより貯へ置たり金子ありて貧苦ひんくの中にも失はざれば今度の支度に事かゝ此事このことはしもお光はまだ知ねば共に是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
期を知るという事は、早き期を知り、遅き期を知り、のがるる期を知り、のがれざる期を知る、一流直通という極意あり、此事このこと品々しなじな口伝くでんなり。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
此事このことをつぎのようにもいふ。すなはきゆう振動しんどうは、其勢力そのせいりよく中間ちゆうかん媒介物ばいかいぶつ吸收きゆうしゆうされやすく、ゆるやかなものはそれが吸收きゆうしゆうされにくい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
左様さうだ。だから、此事このことに対して、君の僕等に与へやうとする制裁は潔よく受ける覚悟だ。今のはたゞ事実を其儘に話した丈で、君の処分の材料にする考だ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは本当に飛立とびたほどうれしく、自分のつぶれた事も思はないでサ、早くおまへつて此事このことを聞かしたいと思つたから、おまへ空杖あきづゑいて方々はう/″\さがして歩くと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
カピ長 それ、パリスどのをびにやって、はや此事このことらせい。明日あすあさこの縁結えんむすびをすまさうわい。
コロボツクルは如何にして火をはつしたるか。余は此事このことを述べて後に煮燒の事に説き及ぼすべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
又蔵は嬉しさの余りに之に謝せんとて竹筒ささえに酒を入れてかの谷に至るに、山男二人まで出でて其酒を飲み、大いに悦びて去りしとぞ。此事このこと古老の言ひ伝へて、今に彼地にては知る人多し
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれどもうちかへつてべつ此事このことちゝにもはず、學校朋輩がくかうほうばいにもきませんでした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
都人士とじんしもし此事このことうたがはば、たゞちにきたれ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかるも我國わがくに財源ざいげんにはかぎりあり、兵船へいせん増加ぞうかにも限度げんどあり、くにおもふの日夜にちや此事このこと憂慮ゆうりよし、えず此點このてんむかつてさくこうじてる。
ぞ頼みけるこれ陰徳いんとくあれば陽報やうはうありとのたとへの如く此事このこと後年こうねんに至つて大岡殿の見出しにあづかる一たんとはなりぬされば新藤夫婦は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みね此出來事このできごとなんとしてみゝるべき、おかしたるつみおそろしさに、れか、ひとか、先刻さつき仕業しわざはと今更いまさら夢路ゆめぢ辿たどりて、おもへば此事このことあらはれずしてむべきや
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これ皆様みなさま御案内ごあんないのことでござりますが、其時そのとき豊公ほうこう御寵愛ごちようあいかうむりました、鞘師さやし曾呂利新左衛門そろりしんざゑもんといふ人が、此事このこといて、わたくしも一つやつて見たうござる、とふので
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此事このこと教師きようし父兄ふけい注意ちゆういうながすとともにわが小國民しようこくみんに、むかつても直接ちよくせついましめてきたいことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
是非共二三十羽の孔雀を捕獲致さざるべからずと存候ぞんじそろ。然る所孔雀は動物園、浅草花屋敷等には、ちらほら見受け候えども、普通の鳥屋などには一向いっこう見当り不申もうさず苦心くしん此事このことに御座そろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四五日しごにちつと此事このことたちま親父おやぢみゝはひつた。親父おやぢ眞赤まつかになつておこつた、店にあるだけのさくらの木の皮をむかせ(な脱カ)ければ承知しようちしないと力味りきんたが、さて一向いつかう效果きゝめがない。少年こどもは平氣で
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたし此後このゝちあるひ光子みつこ離縁りえんするかもはかられぬ。次第しだいつては、光子みつこ父母ちゝはゝに、此事このこと告白こくはくせぬともかぎらぬ。が、告白こくはくしたところで、離縁りえんをしたところで、光子みつこたいする嫉妬しつとほのほは、つひすことが出来できぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『え、え、え。』と、はじめて此事このこと氣付きづいた吾等われらどうは、ほとん卒倒そつたうするばかりにおどろいた。大佐たいさふか嘆息ためいきもらして
へえ誠に有難ありがたぞんじます……へえゝうも日本晴につぽんばれがしたやうだてえのは、旦那だんなさま此事このことでございませう、本当に有難ありがたいことで。近「まア芽出度めでたかつた。梅「旦那だんな々々/\これはなんでげす。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
萬一もしにそぐなはぬことならばとあんじられまして、此事このことをおもふに今宵こよひさびしきことてもちてもあられぬほどのなさけなさより、ふてはならぬとぞんじましたれど、此樣このやう申上まうしあげ仕舞しまひました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此事このこと該地震がいぢしん經驗けいけんした地方ちほうにより、多少たしよう相違そういがあるべきであるが、比較的ひかくてきながつゞいたとおもはれる東京とうきようにての觀測かんそく結果けつかげるならば、震動しんどうもつとつよかつたのは最初さいしよから十六七秒目じゆうろくしちびようめであつて
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
討取は公儀の方がすむまじと云へば平左衞門呵々から/\と打笑ひ扨々さて/\夫では何の謀計はかりごとも行ひ難しよく思召おぼしめしても御覽あるべし先渠等かれら盜賊たうぞくの事故召捕めしとらんと致せし所手向てむかひ仕つり候故よんどころなく討取候と申に何のわけの候べき萬一此事このこと手違てちがひに成し處が半知はんち思召おぼしめさば公事は勝なりと言を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ヘエ……そんなにめておんなさるな、畜生ちくしやううへくらゐなどもらひましたから、果報焼くわはうやけで、此様こん塩梅あんばい身体からだが悪くなつて、牛のくらゐだふれとは此事このことで、毎日々々黒胡麻くろごまばかりはせられて
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)