極楽ごくらく)” の例文
旧字:極樂
極楽ごくらくです、ほんとうですよ、おじさん。うみのあなたに、極楽ごくらくがあって、いつもあちらはお天気てんきなんです。」と、子供こどもはいいました。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いけどしぢゞいが、女色いろまよふとおもはつしやるな。たぬまご可愛かあいさも、極楽ごくらくこひしいも、これ、おなことかんがえたゞね。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我々が天竺てんじくへ行くのはなんのためだ? 善業をして来世に極楽に生まれんがためだろうか? ところで、その極楽ごくらくとはどんなところだろう。
それは、この一族ばかりでなかったとみえて、戦国時代のよわい民のあいだには「おおかみ野武士のぶしがいなけりゃ山家やまが極楽ごくらく」と、いうことわざさえあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死んで地獄にちるほどの悪いことをした覚えもなく、さりとて極楽ごくらくへすぐに迎え取られるという自信もない者が、実際には多数だったためもあろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かゝるあらしあひて人に難義なんぎをかくるほどなればとても極楽ごくらくへはゆかるまじ、などつぶやきつゝ立いづるを見て、吾が国の雪吹ふゞきくらぶればいと安しとおもへり。
こう云う書斎に這入はいって、好きな書物を、好きな時に読んで、きた時分に、好きな人と好きな話をしたら極楽ごくらくだろうと思う。博士論文はすぐ書いて見せる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我が抜苦ばつく与楽よらく説法せつぱううたがふ事なく一図いちづありがたがツて盲信まうしんすれば此世このよからの極楽ごくらく往生おうじやうけつしてかたきにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
あさましい「この世」に、いかに侵略や搾取さくしゅ残虐ざんぎゃくや不正が行われても、天国と極楽ごくらくが「あの世」にあると信ずるのである。しかし政治はそういうものではない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
本日は、地下千メートルを征服し、現在われわれのんでいるこの極楽ごくらく地下街建設の満三ヶ年の記念日であるので、ラジオは朝から、じゃんじゃんと楽しい音楽を送ってくる。
加奈子が私に瓦斯ガスストーヴをいて呉れたの。紫のような火がぼやぼや一日燃えてるの。私、一日だまって火を見てたら、火の舌に地獄だの極楽ごくらくだの代り代りに出ちゃ消えるの。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今夜ふと菊池寛きくちくわん著す所の「極楽ごくらく」を出して見たが、菊池の小説の如きは粗とは云へても、終始雑俗の気にはけがれてゐない。その証拠には作中の言葉が、かれしかれ満ちてゐる。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それはみな何で作って居るかといえばバタでもって造ってある。その人形は極楽ごくらく世界の天、天女もあり、また極楽世界に居るという迦陵頻迦かりょうびんが共命鳥ぐみょうちょうというような鳥の類もある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
極楽ごくらく写真しやしんを見た事もないから、これるかいかとんわからん事で、人が死んでく時はんなものか、肉体にくたい霊魂たましひはなれる時は霊魂たましひ何処どこきますか、どうもこれわからん。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「内地は段々住みづらくなつてるさうですが、こゝにゐれば極楽ごくらくみたいでせう?」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
それともまた、この男の罪が非常に大きなもので、もしもそれを口にでもしようものなら、極楽ごくらくが死のけいをもってこの男をばっしなければならないといったようなものだったのでしょうか。
したがって不信心家がこの世を去れば、元々善人というところで、極楽ごくらくへ行くことが出来ますなあ。これには疑いございませんよ。……それはそうとお嬢様、何かご用でもございますかな?
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かずにしたら何万本なんまんぼん。しかも一ぽんずつがみんなちがった、わかおんなかみだ。——そのなかだまってかおめてねえ。一人一人ひとりひとりちがったおんなこえが、かわがわりにきこえてる。このながらの極楽ごくらくだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
三宅島しまにいたころのことを思や、これでも極楽ごくらく、下らねえ欲をかいて、変なことから、身性みしょうれでもすると、とんだことだと思って、つつしんではいるものの、精進しょうじんぐらしも、これで三年
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
伯父をぢは母親のやうに正面からはげしく反対をとなへはしなかつたけれど、聞いて極楽ごくらく見て地獄ぢごくたとへを引き、劇道げきだうの成功の困難、舞台の生活の苦痛、芸人社会の交際の煩瑣はんさな事なぞを長々なが/\と語つたのち
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あの「地獄じごく極楽ごくらくのしるべ」か。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
むしろ極楽ごくらく穴である。
「このふえは、極楽ごくらくまでこえるだろうか。くまさんは、どうしたろう……。」などといって、子供こどもたちは、ふえいたのでありました。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かゝるあらしあひて人に難義なんぎをかくるほどなればとても極楽ごくらくへはゆかるまじ、などつぶやきつゝ立いづるを見て、吾が国の雪吹ふゞきくらぶればいと安しとおもへり。
かかるところへ、かすみのなかから、ポカリときだした一列の人かげがある。寂光浄土じゃっこうじょうど極楽ごくらくへ、地獄じごく獄卒ごくそつどもがってきたように、それは殺風景さっぷうけいなものであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとへばまぼろしをんな姿すがたあこがるゝのは、おひり、極楽ごくらくのぞむとおなじとる。けれども姿すがたやうには、……ぬま出掛でかけて、手場でばつくばつて、ある刻限こくげんまでたねばならぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの男は琵琶びわでもき鳴らしたり、桜の花でも眺めたり、上臈じょうろう恋歌れんかでもつけていれば、それが極楽ごくらくじゃと思うている。じゃからおれに会いさえすれば、謀叛人の父ばかり怨んでいた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど芸妓げいしやのおぢうさんだ、おめえ虎列剌これらで死んだのだ、これはどうも……此方こつちてから虎列剌これらはう薩張さつぱりよいかね、しかし並んで歩くのはいやだ、ぼく地獄ぢごくくのは困るね、極楽ごくらくきたいが
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いくら地獄だって極楽ごくらくだって、やっぱり飯は食うんだろう」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
極楽ごくらくに行く人送る花野はなのかな
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「まったく、あのやまを一つすと極楽ごくらくですよ。はなは、いているし、ゆきなどたくもない。らすなら、あんなところがいいですね。」
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
陣屋じんやの内外にあふれて、まことこれこそ極楽ごくらく景色けしきかと、見るからにただ涙ぐましい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、屋根やねからつきすやうなわけにはかない。其処そこで、かせぎも活計くらしてず、夜毎よごとぬまばん難行なんぎやうは、極楽ごくらくまゐりたさに、身投みなげをるもおなこと、と老爺ぢゞい苦笑にがわらひをしながらつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人間が死んで地獄ぢごくくとか、ぜんしたるもの極楽ごくらく昇天しようてんするとか、宗教しうけうはうでは天国てんごくく、悪国あくこくおちるとふ、何方どちらが本当だか円朝ゑんてうにはわかりませんが、地獄ぢごくからどうせ郵便のとゞいたためしもなし
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おじいさんは平常へいぜいいぬねことり大好だいすきであったから、きっとそのいぬをつれて、いまごろは、極楽ごくらくみちあるいていなさるのだ。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
有難なみだに曇っている痴呆たわけどもに、この板敷山の谷底で、鳥、狼のとなって食い荒らさるる親鸞の終りを見せてくれたなら、少しは、念仏の末路と、極楽ごくらく往生の夢がやぶれて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おんなは、やさしいほとけさまに道案内みちあんないをされて、ひろ野原のはらなかをたどり、いよいよ極楽ごくらく世界せかいが、やまを一つせばえるというところまでたっしました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きりむすぶ太刀の先こそ地獄なれ たんだふみこめ先は極楽ごくらく
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やはりゆめではなかった。またんでいってからの極楽ごくらくでもなかった。やはりこのなか景色けしきなんだ。」
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえもとしをとった。やがて極楽ごくらくへゆくであろうが、わたしはいつもほとけさまにかって、今度こんどには、おまえがとくのある人間にんげんわってくるようにとおねがもうしている。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、このにいるときに、わるいことをしなかったから極楽ごくらくへいきました。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おばあさんは、はなしいている極楽ごくらくとは、だいぶようすがわっているので、びっくりしました。べつにりっぱな御殿ごてんのようなものも、またにある天人てんにんのようなものもなかったからです。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、ここが極楽ごくらくというところです。」と、つるは、いいました。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)