御座ござ)” の例文
しかし、「いき」のうちには「慮外りょがいながら揚巻あげまき御座ござんす」という、曲線では表わせない峻厳しゅんげんなところがある。冷たい無関心がある。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
私の父も見たともうしました。するとその母親が、息子が留守だと思って馬鹿にすると、大変うちのなかから怒ったそうで御座ございました。
人魂火 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ういふ樣子やうすのやうなことをいふてきましたかともひたけれど悋氣男りんきをとこ忖度つもらるゝも口惜くちをしく、れは種々いろ/\御厄介ごやつかい御座ござりました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下女げぢよは「左樣さやう御座ございましたか、どうも」と簡單かんたんれいべて、文庫ぶんこつたまゝいた仕切しきりまでつて、仲働なかばたらきらしいをんなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もう一人のお客さんは、入り口の方にりかかってこくりこくりやって御座ござったが、やがて、アヴァランシュのような大鼾おおいびきをかき初めた。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
「おなつかしゅう御座ござりました——だしぬけに、大坂島の内のお宅から、お姿が無くなって以来どのようにお探し申しましたことか——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
手品の種というのは、この二つの金メダルで御座ござる。この中には一体何物が入っていると御思召す。分りますまい? では申しますがね。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
で、祖父じじいは、猫をあんまり可愛かあいがっちゃ、けないけないって言っておりましたけれど、そのの猫は化けるまで居た事は御座ございません。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
吉野にばかりったのでなく、皇居はしばしば移っていること、また京方の諸院が、吉野朝の皇居に軒を並べて御座ござあったこともあるのは
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
連て訴へしが番頭は進み出私しは油町伊勢屋三郎兵衞名代喜兵衞と申もの御座ござ主人しゆじん店先みせさきへ一昨夜九ツどきすぎ此法師このほふし來り戸を叩きて一夜の宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうしてソンナお話の中に、この御寺の縁起の事を詳しく書いたものが残っているゲナ。和尚さんが大切にしまって御座ござるゲナ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「僕が貴様を責めたのは悪う御座ございました、けれども何乎どうか今御覧になったことを秘密にて下さいませんかお願いですが。」
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『まだ/\もつとおほくの證據しようこ御座ございます、陛下へいかよ』とつて白兎しろうさぎは、にはかあがり、『文書もんじよ只今たゞいまひろひましたのです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「一度相談して参りますから」と云うと、差配は、「さようで御座ございますか」と来た時と少しも変らない態度であっちこっち雨戸を閉め始めた。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
第一、自分の小説といふものを考へた時に、その沢山たくさんな小説の行列ぎやうれつの中から、特に、わたしが小説で御座ござると名乗つて飛び出して来るものも見当らない。
風変りな作品に就いて (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所が版本の原書なれば飜訳も出来るが、講義筆記であるからその講義を聴聞した本人でなければ何分にも分り兼ねる、誠に可惜おしい宝書で御座ござるといっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「旦那様、これは又大した古疵ふるきず御座ございますが、——さぞ、お若い時分の、勇ましい思い出でも御座いましょう」
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
元日ぐわんじつ神代かみよのことも思はるゝ」と守武もりたけ発句ほつくを見まして、演題えんだいを、七福神ふくじんまゐりとつけましたので御座ござります。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
八九人の中に怪しい紋附羽織もんつきばおりの人が皆黙って送って行く——むろん本尊の花嫁御寮はなよめごりょうはその真中まんなかにしかも人力車じんりきに乗って御座ござる——がちょうど自分の眼の前に来かかった。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
やり丹智タンチさんが女にしては、堂々たる声で、「槍の丹智で御座ございます」とお辞儀じぎをすると、TAをCHIとちがやすいものですから、男達は、どっと笑い出しました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
実は御願おんねがい只今ただいま上りましたので御座ございますと、涙片手の哀訴に、私はただちにって、剃刀かみそり持来もちきたって、立処たちどころに、その娘の水のるような緑の黒髪を、根元から、ブツリ切ると
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
其冷評そのれいひやうかぶせるなかもつと猛烈もうれつなのは杉村氏すぎむらしで、一ばんまたおほきくなつて焚火たきびあたつて御座ござる。
「いや勿論で御座ございますよ。どうもこの頃大学の先生も少し図に乗り過ぎましたからね」
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「四里じゃ、一呼吸だ、路はどうだね。」「やはり今降りて御座ござらっしたような……。」
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
『え、時には御座ございますがな。たんとはありません。みんな遠いで御座ございますから……。』
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
何代集のン代集のと申しても皆『古今』の糟粕の糟粕の糟粕の糟粕ばかりに御座ござ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「まああなたがこの子を助けて下さいましたんですね。お礼の申しようも御座ござんせん」
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「さうで御座ございませうかなあ。私が剛情者といふことは自分でもはつきり判ります。が、それでまたあの身代しんだいをこしらへましたので、剛情も別に悪いことゝは思ひませんでしたが」
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
少々せう/\のおまじないが御座ございましても、つてれば気のく事ではございませぬ。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
あたしの申上まをしあげること合点がてんなさりたくば、まづ、ひとつかういふこと御承知ごしようちねがひたい。しろ頭巾づきんあたまつゝんで、かた木札きふだをかた、かた、いはせるやつめで御座ござるぞ。かほいまどんなだからぬ。
または袋の中からいろいろな一文いちもん人形を出して並べ立てて、一々言い立てをして銭を貰うのは普通だったが、中には親孝行で御座ございといって、張子の人形を息子に見立てて、胸へしばり付け
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
川がありまして、土堤どてが二三ヶ所、処々ところどころ崩れているんだそうで御座ございます。
夜釣の怪 (新字新仮名) / 池田輝方(著)
「マア不思議じゃア御座ございませんか、萩原さま」と、云はれて新三郎も気が浮き、二人を上にあげて歓愛に耽る」と云うことになっているが、この物語では、萩原の裏店うらだなに住む伴蔵ともぞうと云う者がのぞいて
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ヘイ蓬莱屋ほうらいや御座ござい、ヘイ西村で御座い」と呼びつつ、手に手に屋号の提燈ちょうちんをひらめかし、われらに向かいてしきりに宿泊を勧めたるが、ふと巡査の護衛するを見、また腰縄のつけるに一驚いっきょうきっして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
旦那樣だんなさま、もうビールを召上めしあがります時分じぶんでは御座ござりませんか。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
所詮しょせん、おのおのの御座ござあるあかりの前には、もすわるまい
(かかる尊貴の御方が、このような所へ御座ござあるとは?)
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
んとおそろしいでは御座ございませんか、刻限こくげんですもの。
「残念ではあるが、そう覚悟して御座ござった。貴所きしょは?」
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「竹村さんに別条がなくておめでたう御座ございます。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
貴女あなた……わたしきにうまれてたやうなもので御います………それもわたし不運ぶうんと存じては居りますが………まだいつしよで居りました時に信太郎と云ふ男の子が一人御座いましたので……丁度今年で六つで御座ございます
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
「お父さん、今日はお芽出めでとう御座ございます」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
美酒うまきぞにほふ御座ござ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
いそいで御座ござれよにあはぬ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
 ゆふべ御座ござつた花嫁御はなよめご
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
御座ございりうみ西にしかた
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
なみだ各自てんでわけかうぞと因果いんぐわふくめてこれもぬぐふに、阿關おせきはわつといてれでは離縁りゑんをといふたもわがまゝで御座ござりました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
學校がくかうといふのは此大島小學校このおほしませうがくかうばかり、其以外そのいぐわいにはいろはのいのまな場所ばしよはなかつたので御座ございます。ぼくはじめ不精々々ふしやう/″\かよつてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「九十五ふん御座ございます」とひながら、それなり勝手口かつてぐちまはつて、ごそ/\下駄げたさがしてゐるところへ、うま具合ぐあひそとから小六ころくかへつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ねがはくは陛下へいかよ』とつて軍人ネーブは、『わたしいたのでは御座ございません、その證據しようこには、しまひになにいて御座ございません』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)