)” の例文
またうしてられる……じつ一刻いつこくはやく、娑婆しやば連出つれだすために、おまへかほたらばとき! だんりるなぞは間弛まだるツこい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうえ皆は私に「顔回がんかい」という綽名をつけた。書いたものからだろう。顔回は恐れ入るが肱枕ひじまくらでごろをするところだけは似ている。
結婚 (新字新仮名) / 中勘助(著)
しかし外の時、殊に夜になって若い女の美しい顔をして、目を堅くつぶって、ぐっすりているのを見ると、女が際限もなく可哀かわゆい。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
御米およね御前おまへ神經しんけい過敏くわびんになつて、近頃ちかごろうかしてゐるよ。もうすこあたまやすめて工夫くふうでもしなくつちや不可いけない」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お金はぼんやりして、広間の真中に吊るしてある電灯を見ていた。女中達は皆好くている様子で、所々で歯ぎしりの音がする。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いつでも勢力がみなぎッている天地だ。太陽がいびきをかいてたためしはない。月も星も山も川もなんでも動いていないものはない。
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ゆうべは少しられなかった。そうして寐られぬまま、仕事のことを考えているうちに、だんだんいくじがなくなってしまった。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
待給まちたま諸共もろともにのこヽろなりけん、しのたまはりしひめがしごきの緋縮緬ひぢりめんを、最期さいごむね幾重いくへまきて、大川おほかわなみかへらずぞりし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十二、三の小女こおんなが取次に出て、二階へ上って行きました。すると、母はていたものと見えて、浴衣ゆかた寝衣ねまきの前を合せながら降りて来て
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
吉田は何かきっとそれは自分のつく前に読んだ小説かなにかのなかにあったことにちがいないと思うのだったがそれが思い出せなかった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「本当だよ。った男が今晩ると、魔物も其処へ寐に行くんだよ。じきに其の男は病気になるだろうよ。豚を盗ったむくいさ。」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
真沙は夕餉ゆうげもとらずに待った。十二時に下女をかし、幾たびも迷ったのち、二時の鐘を聞いたので、常着のまま自分も夜具の中へはいった。
柘榴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこは家のものの居間にしてあるところで、ふすま一つ隔てて娘達のる部屋に続いている。「お仙や」とお種は茶戸棚の前に坐りながら呼んだ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「気の毒気の毒」と思いにうとうととして眼を覚まして見れば、からす啼声なきごえ、雨戸を繰る音、裏の井戸で釣瓶つるべきしらせるひびき
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
始終子供にばかかかっていれば生活が出来ないから、拠無よんどころなくこのかしつけ、ないたらこれを与えてくれと、おもゆをこしらえて隣家の女房に頼み
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
此家にはて居れぬ(妾)何故ですえ(金)先程から目を醒して居るのに賊でも這入て居るのか押入の中で変な音がする
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
梅喜ばいきさん/\、こんなところちやアいけないよ、かぜえ引くよ……。梅「はい/\……(こす此方こつちを見る)×「おや……おまいいたぜ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
花影(高山植物の)を印する万古の雪も、幾回か人の影が落ちたかは、疑問である、げに不断の冬は、山の一角に結象して、寂寥の姿をここにかしている。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
室内しつないには螺旋ねぢゆかめられた寐臺ねだい數脚すうきやく其上そのうへにはあを病院服びやうゐんふくて、昔風むかしふう頭巾づきんかぶつてゐる患者等くわんじやらすわつたり、たりして、これみんな瘋癲患者ふうてんくわんじやなのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
不意のことだし、不愉快になりかけてゐた矢先のことだしするので、そのぎよつとした感じが、しこりのやうに残つて変に腹だたしく、しばらくはつけなかつた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
それを読んで行くうちに、ぼけていた頭が、一度にハッキリして、私は何もかも悟ることができました。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしいずれも身体は綿のように疲れているので、シートの上にるや否やぐっすりと寐込んで了った。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ひと味宿うまいずてしきやしきみすらをりてなげくも 〔巻十一・二三六九〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
中にはていながら多分の利欲をむさぼる事を相考え候者もこれ有るよう相聞え、もっての外の事なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
(初めて気の付きたる如く顔を見る。)今日は大変に血色けっしょくが悪いよ。ゆうべなかったのかい。
卯平うへいうして仕事しごとをしてたりたり、それから自分じぶん小鍋立こなべだてをするかとおもへば家族かぞくにんともぜんむかつたり、そばから勘次かんじにはれぬぢいさんであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
船に乗ッてしまえば艪も櫂もいらない、ただ片瀬の浪さえあれば流れて行くから、安心してて行くことが出来る。悟道の道に入れば、もう安心じゃというた尼の歌がある。
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そこにもここにも、寒そうにいじけた、の足りないらしい人が人道を馳せ違っている。高架鉄道を汽車がはためいて過ぎる。乗合馬車が通る。もう開けた店には客が這入る。
むる時人真に寤めず、る時往々にして至楽の境にあり、身躰四肢必らずしも人間の運作うんさくを示すにあらず、別に人間大に施為する所あり、ひそかに思ふ終に寤ざるもの真の寤か
下からスーと出たかと思うと、それが燈心とうしんあかりが薄赤く店の方の、つまり私のていた、蒲団のすその方へ、流れ込んで映っている、ここに三尺ばかりいてる障子のところを通って
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
もうるのだろうか、イヤそうではない、今ヤット九時をすこし過ぎたばかりである。それに試験中だから未だ寐ないのにはきまっている。多分淋しい処だから早くから戸締とじまりをしたのだろう。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
「ゆうべも九つ(午後十二時)を合図におせきの寝床へ忍んで行つて、ぼけてぼんやりしてゐるのを抱き起して、内の人が蝋燭をかざしてみると——壁には骸骨がいこつの影が映つて……。」
天王寺の西門に数知れざる病人がていたのを一人の聖が鉢にかゆを入れてさじを持って病人の口毎に粥を入れてやっているのを見て、あれは誰人かしらんと尋ねると傍にいる人が答えて
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三四年ののちのことであった、自分もその時分は三十前後のことだったが、冬のことで、ふとある晩、庫裏くり大戸おおとを叩いて訪れるものがある、寺男は最早もはやていたが、その音に眼を覚まして
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
その晩十時過ぎに、もう内中のものがてしまってから、己は物案じをしながら、薄暗い庭を歩いて、いだ海の鈍い波の音を、ぼんやりして聞いていた。その時己の目に明りが見えた。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
それは昼間であったか夜であったか忘れたが多分夜であったのであろう。一等客は漱石氏と私との二人きりであった。漱石氏は棚になっている上の寐台ねだいね、私は下の方の寐台にた。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「あら、貫一かんいつさん、こんな所にちや困るわ。さあ、早くお上りなさいよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
○かくてそのつまは母もし子どもゝかしたれば、この雪あれにをつとはさこそこゞえ玉ふらめ、ゆきむかへてつれかへらんと、みのにみの帽子ばうしをかふり、松明たいまつをてらし、ほかに二本を用意よういしてこしにさし
いねてもつかれずや、コホンコホンとしはぶく声の、骨身にこたへてセツナそうなるにぞ、そのつど少女は、慌てて父が枕もとなる洗ひ洒しの布片きれを取りて父に与へ、赤きものの交りたる啖を拭はせて
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
てもさめても余の思想はこの国土こくどより離れざりしなり、まことにや古昔こせきのギリシヤ人は現世を以て最上の楽園と信じ、彼らの思想は現世外にいでしこと実にれなりしとは、余も余の国を以て満足し
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そのおどろきに父さまの事は忘れたらしく候へば、箱根へかかり候まで泣きいぢれて、ようてをり候しげるを起しなど致し候へば、また去年の旅のやうに虫を出だし候てはと、まさぬはずの私の乳ふくませ
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
冬、炬燵こたつの上にまあるくなって、ていたんで御座ございますって。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
られぬ夜の窓にもたれて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これも何者かに命ぜられてかく入つて居るらしい、起してはならないやうに思はれ、アヽまた横になつて、足をかがめて、目をふさいだ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其時平岡は座敷の真中まんなか引繰ひつくかへつててゐた。昨夕ゆふべどこかのくわいて、飲みごした結果けつくわだと云つて、赤いをしきりにこすつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
夏の留守番のあいだ母の希望によって私どもは隣り合いの部屋にる習慣だったが、それでもまだ淋しがって母は境のふすまをあけて眠った。
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
そのあとがひどく疲れて一週間ばかりたり何かしているうちに、つい出そびれて、やっと十二月になってこちらに来たような始末です。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
純一は何事をも忘れてようと思ったが、とても寐附かれそうにはない。過度に緊張した神経が、どんな微細な刺戟にも異様に感応かんおうする。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
幼い頃からひどく気管の弱かった少年スティヴンスンは、冬の暁毎に何時も烈しい咳の発作に襲われて、ていられなかった。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
人びとは静まっている。——私の立っているのは、半ば朽ちかけた、家の物干し場だ。ここからは家の裏横手の露路を見通すことが出来る。
交尾 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)