だい)” の例文
旧字:
ゆうちゃんは、それから毎晩まいばんのように物干ものほだいがって、あおよるそらをながめながら、たかやまや、少年しょうねんのことをおもしていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
この日彼らは両国から汽車に乗ってこうだいの下まで行って降りた。それから美くしい広い河に沿って土堤どての上をのそのそ歩いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毎晩廊下へ出して置く、だいものの残りがなくなるんですよ。かはをそが引いてくんですつて。昨夜ゆうべも舟で帰る御客が、提灯ちやうちんの火を消されました。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
くびつりだいにのぼったどろぼうのようにな。おまえは指を長くして、ひとの布地ぬのじをはさみとったではないか。おまえは、天国てんごくにはいれはしない。
老杜ろうと登高とうこう七律しちりつにも万里悲秋常ナル百年多病独登万里ばんり悲秋ひしゅう 常に客とる、百年の多病 独りだいに登る〕の句あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ならんだ二だいに、あたまからざつとあびせて、のきあめしのつくのが、たてがみたゝいて、轡頭くつわづらたかげた、二とううま鼻柱はなばしらそゝ風情ふぜいだつたのも、たにふかい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どろどろして灰色に見える小さな縦縞たてじまのある白い単衣ひとえを着た老人は、障子しょうじを締めてよぼよぼと来てちゃだいの横に坐った。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨しゅううがあって、それが晴れると蒸し暑くなって、たけだいの二科会場で十一時五十八分の地震に出会ったのであった。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
みせにはいって海蔵かいぞうさんは、いつものように、駄菓子箱だがしばこのならんだだいのうしろに仰向あおむけにころがってうっかり油菓子あぶらがしをひとつつまんでしまいました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいどうはこったが、かれいまだめいせずして、死骸むくろだいうえ横臥よこたわっている。ってつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上に坂あり、登りて住職じゆうしよくの墓所あり。かのふちよりいだしたる円石まるいし人作じんさくの石のだいあしあるにのせてはかとす。中央まんなかなるを開山かいさんとし、左右に次第しだいして廿三あり。
亭主ていしゅはうしろをふりむいた。見ると、蛾次郎がじろうは、茶碗ちゃわんとしゃもじを持ったまま、だいの下へもぐりこんで、しきりにへんな目、しきりにかぶりをふっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おせんのはだかのぞこうッてえのは、まず立派りっぱ智恵ちえだがの。おのれをわすれて乗出のりだした挙句あげく垣根かきねくびんだんじゃ、折角せっかく趣向しゅこうだいなしだろうじゃねえか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
母は、ばんめしのときに使ったばかりのちゃぶだいをすえて、内職ないしょくのハンケチのへりかがりに余念よねんもなかった。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
「地の理には勝てねえ理窟で、お前さんにおちどはねえ、だから、言って聞かせて上げるが、このお湯はね、奥州花巻の奥のだい温泉という名の聞えたお湯なんだよ」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、金や銀のぬいはくのある、ぴかぴかの制服せいふくを着て、馬車のうしろのだいにのりました。そうして、そこに、ぺったりへばりついたなり、押しっくらしていました。
あなたのこそ美事みごとですよ わしが、ひつぱつてだいなしにしましたわい どれくしをもつてをりますよ
「なんだ。それじゃテイクロトロンの研究は完全にだいなしじゃないか。わが国の巨大なる損害!」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おまえはおかあさんから、牛乳ぎゅうにゅうのしぼりだいを、なんどもなんどもひったくったな。それから、おかあさんが牛乳桶ぎゅうにゅうおけはこんでいるときに、いろんないたずらをしたっけな。
はちかつぎはそのときたせてたお三方さんぼうを二だい、おとうさんとおかあさんのまえささげました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼女は喜んで日々弁当持参べんとうじさんで高樹町から有楽町ゆうらくちょうのミシン教場きょうじょうへ通ったが、教場があまり騒々そうぞうしくて頭がのぼせるし、加上そのうえミシンだいの数が少ないので、生徒間に競争がはげしく
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたしなどの知っているのは、藁を橢円形だえんけいにあんで、まわりをきれなどで飾ったものだが、ところによってはそでをつけ手を通すものもあり、または木でつくっただいのようなものもあるという。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此間こねえだこうだいを見たいという話だからお寺へ頼んだ処が、何んだか浪人者が山へかくねたとか云うんで、八州さまが調べに来てヶましいので、知んねえものはれねえだが、おらが納所なっしょへ頼んでネ
かの野辺のべよ、信号柱シグナル断頭くびきりだいとかがやき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
足のだいにして遣りたい。
よっちゃんは、なにをおもったか、おかあさんの針箱はりばこをふみだいにして、それへがって、時計とけいしろかお不思議ふしぎそうにながめていたのです。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
ナゾト肩をいからしながら、こつそりと遊びに行く山の手の小待合、賤妓を待つ間の退屈しのぎに筆をチャブだいの上に執る。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
上に坂あり、登りて住職じゆうしよくの墓所あり。かのふちよりいだしたる円石まるいし人作じんさくの石のだいあしあるにのせてはかとす。中央まんなかなるを開山かいさんとし、左右に次第しだいして廿三あり。
こうだいのは鐘懸かねかけの松で、土手三番町のは首懸くびかけの松さ。なぜこう云う名が付いたかと云うと、むかしからの言い伝えで誰でもこの松の下へ来ると首がくくりたくなる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その地平線の一方には上野たけだいのあの見窄みすぼらしい展覧会場もぼんやり浮き上がっているのに気が付く。
帝展を見ざるの記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三十歳だいに書いた親鸞は、めくら蛇にじずだったが、四十台になるとなまなか人生や人間をるにも、うす目のあいてきたせいか、深嶽しんがくに足をふみ入れたようなもので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあくる朝、忠義者ちゅうぎもののヨハネスはつみをいいわたされて、くびつりだいにひきだされました。そして、高いところにあがって、いよいよおしおきをうけることになりました。
と、金博士は事務長に挨拶すると、ふなべりをまたいで、傾斜した船側せんそくの上をすべだいのように滑って、どさりと百花咲き乱れる花壇の真中に、トランク諸共もろとも尻餅しりもちをついたのであった。
余等は市街を出ぬけ、石狩川を渡り、近文のアイヌ部落を遠目に見て、第七師団の練兵場れんぺいじょうを横ぎり、車を下りて春光台しゅんこうだいに上った。春光台は江戸川を除いた旭川のこうだいである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひとわけけてむため、自動車じどうしやをもう一だいたのむことにして、はゞけんとなふる、規模きぼおほきい、びたまちあたらしい旅館りよくわん玄関前げんくわんまへ広土間ひろどま卓子テーブルむかつて、一やすみして巻莨まきたばこかしながら
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れいによって全甲ぜんこう通信簿つうしんぼを見てもらおうと意気ごんで帰った家には、昼めしのしたくをしたちゃぶだいが、白いふきんをかぶって、さびしくかれを待っているばかりで、母のすがたは見えなかった。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
あなた このだいの上に立つてゐてください ころばないやうに
此器械このきかいだいにして其上そのうへまた一工夫ひとくふういたした人がある
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
だい」の空火事じや、野は火事じや。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
青服あおふくがなにかいいかけるのをかばこそ、だいじりをさかさにじゅうげて、ちからいっぱいれよとばかり地面じめんにたたきつけました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらくすると、胡摩竹ごまだけだいいた洋燈ランプを持つてた。ふすまめるとき、代助のかほぬすむ様に見て行つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お妃がたかいだいの上に立って、いよいよたきぎに火がつこうというとき、お妃は、そっと四方に目を注ぎました。とたんに、六羽の白鳥が、さあっと空からまいおりてきました。
私は毎年の秋たけだいに開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも市気しき満々まん/\たる出品の絵画よりも、むかうをか夕陽せきやう敗荷はいかの池に反映する天然の絵画に対して杖をとゞむるを常とした。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
用をすました帰りにぶらぶらたけだいを歩きながら全く予期しなかったお花見をした。
雑記帳より(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ホウ、あんなところのだいへ首をのせてどうするんだろう、龍太郎りゅうたろうの首も、忍剣にんけんの首も——アア、獄門ごくもんというのはあれかしら? 親方親方、あれですか、獄門にかけるッていうことは?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
萌黄の羅紗のだいおもほのに顫へる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自動車を三だい
「あの、りゅうがかいてある香炉こうろあたまは、ししのくびなんだね。」と、だいにのっている、そめつけの香炉こうろを、竹夫たけおはさしました。
ひすいの玉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「佐々木さんが、あなたのところらしつたでせう」と云つて例の白い歯をあらはした。女のうしろにはさきの蝋燭たて暖炉台マントルピースの左右に並んでゐる。きんで細工をした妙なかたちだいである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私は毎年の秋たけだいに開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも市気しき満々たる出品の絵画よりも、むこうおか夕陽せきよう敗荷はいかの池に反映する天然の絵画に対して杖をとどむるを常とした。