仕舞しま)” の例文
もつとも、負けてもじつはおごつていたゞく方がおほかつたがどういふのかこの師弟してい勝負せうふはとかくだれちで、仕舞しまひにはれうとも憂鬱ゆううつになつて
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「吸血鬼事件も、これでお仕舞しまいになるでしょうな。どうも訳が分らないうちにお仕舞いになって、すこし惜しい気もするけれど」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
細君は怒つて先に部屋へはひつて仕舞しまふ。隣の部屋からさきの夫人のマドレエヌが手燭てしよくを執つてあらはれ一人残つたモリエエルを慰める。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その帆前船にのって太平海を渡るのであるから、それは/\毎日の暴風で、艀船はしけぶね四艘しそうあったが激浪げきろうめに二艘取られて仕舞しまうた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おや、僕達が、あんなに愉快ゆかいにころげまわった草原も、こんなみじめに枯れて仕舞しまったか。なぜこんな赤ちゃけた色なんかに変ったんだ。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「此の式を略して仕舞しまうと折角の力学的研究が丸で駄目になるのですが……」「何、そんな遠慮はいらんから、ずんずん略すさ」
押入から鳶口とびぐちを持ち出しかけたが又仕舞しまい込んだ。腕を組んで考えたがポンと手を打ち合わせた。ソロリソロリと二階を降りた。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ちやんと勧善懲悪くわんぜんちようあく道理だうりがおわかりになるからかずに見てらつしやるのだ、其道理そのだうりわからなければ退屈たいくつして仕舞しまわけぢやアないか
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かつゆびさきへでも、ひらうへへでも自由じいうしりすわる。それがしりあな楊枝やうじやうほそいものをむとしゆうつと一度いちど收縮しうしゆくして仕舞しまふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
竿の弾力も、この為めに必要なのです。斯う懸けてさへ仕舞しまへば、後はあわてずに、いとを弛めぬ様に、引き寄せるだけで、間違ひ無いです。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
全く弱つて仕舞しまつた。しかしそこには僕のでないきたない下駄は一足あつたのである。それを欲しいと思つた。とりたいと思つた。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「オヽイ、馬丁さん、早くしてお呉れよ、からだがちぎれて飛んで仕舞しまひさうだ——戯譃じやうだんぢやねえよ」と、車のうちなる老爺おやぢ鼻汁はなすゝりつゝ呼ぶ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
(声がややあらくなる。)そんな弱虫で、おとっさんと一緒にここにいられるか。あしたはもううちへ追いかえして仕舞しまうから、そう思え。いいか。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その時分じぶん鎌倉かまくら武家ぶけ住居やしきならんだ、物静ものしずかな、そしてなにやら無骨ぶこつ市街まちで、商家しょうかっても、品物しなものみな奥深おくふか仕舞しまんでありました。
あらたむると此の通り百五十兩胴卷どうまきまゝ仕舞しまうて有り是にて候やと差出すに傳吉はとくと見て成程私しの胴卷どうまきなりと云ひつゝ中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
間違まちがつたことはしてないとめてりましたから、すべての衝突しようとつ旦那だんなさまのおこゝろひとつからおここととして仕舞しまつて、遮二無二しやにむに旦那だんなさまをうらみました
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土蔵へ仕舞しまってあった菅笠が二人の前へ置かれた。古びた、雨うたしになった、かすかに、宝沢同行二人ににんと読める、所々裂け目のついた菅笠であった。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
船腹についたカキは別府湾の潮に浸るとたちまち腐って落ちて仕舞しまうのである。水兵は嬉々ききとして町の中を歩いておった。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
すると大いに驚いた顔をして「何しろ内へお入り下さい」といい、もう日暮ひぐれでもございましたから店の小厮こものに店を仕舞しまうように吩付いいつけて家へ入った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一直線上で同量の二力が衝突する時はともに無となって仕舞しまうが、曲線上で衝突する時は中々無になる場合は少い
ねじくり博士 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……『こうなったからには、どっちみち同じじゃないか——どうせ二人の間は、きれいにお仕舞しまいなんだもの』
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ギクンと咽喉のどにつかえた心臓を、一生懸命に、肩をすぼめて押え乍ら、もう眼はなみだぐんで仕舞しまうのでした。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
兩國の凉みも花火も、この二十八日でお仕舞しまひ。洒落れた人は、人が出なくて今が丁度ちやうど宜いと言つて舟を
死ぬ/\と云って死ぬ者はないものだ、貯金なぞ精出して死ぬ者があるか、と他の店員が笑うと、死ぬ前には奇麗に使って仕舞しまうと角谷は戯談の様に云って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ああ、見るもんじゃねえ、見るもんじゃねえ! いくら別嬪べっぴんでも、こうなっちゃお仕舞しまいだな!」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
これはあまり売れ口のよくない新聞なので、明るいうちに、夕刊としての効力のなくならないうちに早くばたばたと売ってしまわなければ、もうお仕舞しまいであったからだ。
民谷銀左衛門たみやぎんざえもんに新之助という浪人者の父子おやこの家である。その父子の住んでいる浪宅は、つい近所の蠣浜橋かきはまばしの向うなので、日済金ひなしあつめのいちばん仕舞しまいに寄る事が例だった。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今夜アおいらもそろそろ仕舞しまおうかと思っていたのよ。ハイお茶。ぬるいかも知れねえよ。
町の諸門をとじる合図の鐘は二時間も前に鳴ったので、コルソに集って売買に忙がしかった村の人々の声高こわだかな騒ぎも聞こえず、軒なみの店ももう仕舞しまって寝しずまったらしい。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なみ江丸えまるさへ無事ぶじであつたら、わたくしうまかぢをとつて、ぐに日本につぽんまでおくつてあげるのだが、此前このまへ大嵐おほあらしばんに、とうとういそ打上うちあげられて、めちや/\になつて仕舞しまつたから
君の半生の事業はあいつがみにじつて仕舞しまつた。此上君に惑乱と危険を与へるのもあの女だ。僕は君が此迷夢からさめない間は、之れまで以上の援助を与へることは出来ない。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
天変地異てんぺんちいわらつてますものは文学者ぶんがくしやなり。社会しやくわい人事じんじちやにして仕舞しまふ者は文学者ぶんがくしやなり。な、神の特別とくべつなる贔屓ひいきけて自然しぜんhypnotizeヒプノタイズ さる〻ものは文学者ぶんがくしやなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
天気のい日には甥は時とすると会社を二も休んで、連れ立つて遊びに出かけたが、不断は土井がそのの原稿を、ちやうど書きあげる二時か三時頃に、早く仕舞しまつて帰つて来た。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「そっと仕舞しまって置くことさな。だが全くあの時は、見ていた俺さえ冷汗ひやあせをかいた」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、もうお仕舞しまいですよ。僕はもう君とは指しませんからね。」
みんわたしてお仕舞しまひ』とドードてうひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
蘭堂は賊の手紙をポケットに仕舞しまいながら云った。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或時あるときぼく仕舞しまつてからカテリーナ
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
仕舞しまい湯のせいか女が多い。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
姫はほんとうに安心をして、そこに敷いてある白い砂の上に降りましたが、風船はそのまま小さく畳んでポケットに仕舞しまっておきました。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
宗助そうすけ小六ころくあひだには、まだ二人ふたりほどをとこはさまつてゐたが、いづれも早世さうせいして仕舞しまつたので、兄弟きやうだいとはひながら、としとをばかちがつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兄の鞆之助は反対に調法のほか、何から何まで、父の気に入らなかつた。父は兄息子の顔を見るとむつと黙つて仕舞しまふか、癇癪を浴せかけた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
えらいもんですね、おになんぞは矢張やつぱりつのりませう。婆「いゝえ、おにつのみん佐藤さとう老先生らうせんせいらしつて切つてお仕舞しまひなさいました。岩 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
諫早にて鉄屋と別るそれから奥平の伝言や何かをすっかり手紙にしたためて仕舞しまい、れは例の御隠居様にらなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
映画はいくら見ても直ぐにその筋を忘れて仕舞しまふ。おしまひには題も何もかも忘れる。見なかつた前と一寸ちよつとも変りがない。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何時いつにか細君さいくんの名をたがひに知つて仕舞しまつて居るので三浦工学士のペンを走らせて居るうしろから「たま子さんによろしく」などと声をかける者もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
僕は到頭腹を立てて仕舞しまって、こっちから憲兵隊へ押しかけました。ところが驚いたことには、何と言っても僕を例の将校達に会わせないのです。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
だまつてては際限さいげんもなくつのつてれはれはくせつて仕舞しまひます、だい一は婢女をんなどもの手前てまへ奧樣おくさま威光ゐくわうげて、すゑには御前おまへことものもなく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「何の、わしは寝たよりもめてる方がたのしみだ——此の綿をつむい仕舞しまはんぢや寝ないのが、私の規定きめだ、是れもお前のあはせを織るつもりなので——さア、早くおやすみ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
又此長庵に白状せよと言て仕舞しまへのとは何事ぞ某しに於ては何もいふことはない如何樣人間の命を取ほど有て不屆ふとゞきの奴なり此長庵は人をたすくる仁術じんじゆつに此世を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)