ちか)” の例文
かれは、あのとき、こころうしちかったことも、わすれてしまいました。そして、どうかして、はや年若としわかうしれたいとおもっていました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そう思うと、ぼくは実際たまらなくなるのだ。ぼくはちかっていうが、あの当時、道江にとくべつな関心をもっていたわけではなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そのやうなことばかせてわしりさいなむとはむごいわい、つれないわい、それでも高僧かうそうか、司悔僧しくわいそうか、教導師けうどうしか、莫逆ばくぎゃくちかうた信友しんいうか?
梅雪入道は、家康にかたくちかって、そこそこにさかいへ立ちもどった。にわかに家来一同をまとめて、領土へ帰国のむね布令ふれだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左樣さやうわたくしきみ確信くわくしんします、きみ我等われら同志どうしとして、永久えいきゆう秘密ひみつまもこと約束やくそくたまはゞ、誠心せいしんより三度みたびてんちかはれよ。
『きっと返却かえします、きっと。』などとちかいながら、またぼうるなりった。が、大約おおよそ時間じかんってからかえってた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けっして二姿すがたせまいとこころちかっていたくずも、子供こどもごえにひかれて、もう一くさむらの中に姿すがたあらわしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この竜はあるとき、よいこころをおこして、これからはもうわるいことをしない、すべてのものをなやまさないとちかいました。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
俊寛 あなたは神々にたてたちかいを忘れはすまい。あれほど信心深いあなたが、天地の神々の名によってたてた誓いを破ろうとは信じられない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
いままでのところは、このかわったちかいをききますと、お姫さまに結婚けっこんをもうしこもうと思っていた人も、みんなおそれをなしてしまうのでした。
こらへよ、暫時しばし製作せいさくほねけづり、そゝいで、…苦痛くつうつくなはう、とじやうぬまたいして、瞑目めいもくし、振返ふりかへつて、天守てんしゆそらたか両手りやうてかざしてちかつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は、もう一度ロチスター氏に會つて、彼が愛とちかひの言葉を繰り返すまでは、それが本當か信じられないのであつた。
ぼくは、もう日本に帰るまで、あなたとは口をくまいと、かたく心にちかったのです。日本をはなれるにしたがって、日本が好きになるとは、誰しもが言うところです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「どうかこれまでのことは許しておくれ。私はこれからしょうがい、夜昼おまえのうちの番をして、おまえに奉公するから」と、かたくおちかいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「わたしは、ちかって言いますが、こんなこととは思いもかけなかったのです」と、マレーフスキイが続けた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
いずれ事成ったのちに相応の賞を与えようとちかったのであろうが、ふたりはなおも密談みつだん数刻ののち、とうとう議一つに決してただちに実行に着手したのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
倔強くっきょうなるもの僅かに二人のみ万艱ばんかんを排して始めてその目的を達して来訪せられしにいしかば、予はその当時の病状を決して他に告ぐるなからんことをちかいおきしに
「いや、ほんとうに、みなさんにご迷惑をかけてあいすまんことでした。これからの私の仕事は、みなさんたちを幸福にするような方向へ進めて行くことをちかいます」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう二度と浮気うわきはしないと柳吉はちかったが、蝶子の折檻は何の薬にもならなかった。しばらくすると、また放蕩ほうとうした。そして帰るときは、やはり折檻をおそれて蒼くなった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
どんなにったかれなかったが、心魂しんこんかたむけつくす仕事しごとだから、たとえなにがあっても、そのまではちゃァならねえ、きますまいとちかった言葉ことば手前てまえもあり
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
少年はさがしながらも、泣いたり、いのったり、思いつくはしからさまざまのことをちかったりしました。これからは、けっして約束をやぶったりしません。いじわるもしません。
受て攝州せつしう大坂にて御仕置に行はれしが此源内の娘にとよと云ふ大孝行の者が有てちゝ源内が入牢せし中讃州さんしう金毘羅權現こんぴらごんげんちかひをたて我が一命をかみさゝげて父の無實の罪にかはらんことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
佐太郎の乳母うばを勤めたことがあり、彌十郎も幾度か富崎左仲に助けられて、恩の上にも恩を重ね、富崎家萬一の場合には、命を投出しても——と彌十郎お幾父娘はちかつて居たのです。
三一八海にちかひ山にちかひし事をはやくわすれ給ふとも、三一九さるべきえにしのあれば又もあひ見奉るものを、三二〇あだし人のいふことをまことしくおぼして、あながちに遠ざけ給はんには、うらむくいなん。
いひへてると自分じぶんこゝろがわかつていたゞくように、説明せつめいをし、おねがひをし、おびをするもので、根本こんぽん精神せいしんにおいては、このとほり、わたしどもは服從ふくじゆうまをしてをります、といふちかひの意味いみになります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ちかったとは言え、今朝の約束までには、自分の心のどこかに、自分ながら、疑わしい分子が折々頭をもたげていた。併し今は、なんの疑いもない決意に満たされていた。彼女は心に一種の衝動を感じた。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
断じもはや再びこの人の姿を見まいとちかい両眼を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「はいちかって! ……それ以外には……」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は胸の底で、ちかうようにつぶやき続ける。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そしてちかっていった。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
悪魔あくまちか
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だが、徳蔵とくぞうさんの熱心ねっしんは、その一言ひとことひるがえされるものではありません。戦死せんししたともとのちかいをげたので、ついに部隊長ぶたいちょうゆるしたのでした。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
四日のあいだには、かならず兵三百をりあつめて、帰陣するとちかってでた木隠龍太郎。ああ、かれの影はまだどこからも見えてこない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俊寛 (不安にえざるごとく。成経に)成経殿、わしはあなたを信じている。あなたがちかいを守ってくださることを。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
屹度きつと返却かへします、屹度きつと。』などとちかひながら、またばうるなりつた。が、大約おほよそ時間じかんつてからかへつてた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これは、かれが助手として塾生活をはじめた当初からの、一つのちかいみたようになっていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼女あれこひはせぬとちかうたゝめ、わしうしてものうてゐるものゝ、きながらんでゐるのぢゃ。
けれども私はさっき、もうわるいことをしないとちかったしこの猟師をころしたところで本当にかあいそうだ。もはやこのからだはなげすてて、こらえてこらえてやろう。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
武士のことばだッ! 二言はないッ! ちかうぞ壁辰どの、どうだッ? 今日のところは眼をつぶって、この拙者に無用の血を見せずに、このまま戸外そとはなしてくれるかッ?
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わたくし神樣かみさまちかつてまうしますよ、貴方あなたはまだ御存ごぞんじはありますまいが、大變たいへんことがあります。
「さうです。そして若しあなたを滿足させるやうなちかひがるなら、私は誓ひます。」
わたしは、『ザセーキン家の庭』へは近寄るまいと心にちかったつもりだったが、うち勝ちがたい力に引かされて、ふらふらその方へ足が向いて——しかもそれが、無駄むだではなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
さぐるに女の身なれば多くの人に交際まじはるには遊女に如事しくことなし彼のせつ幸之進殿所持しよぢせられし大小印形に勿論もちろん衣類紙入胴卷どうまきは妾がぬひたれば覺えあり是を證據に神佛へちかひを掛け尋ね出し敵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これが、もつとおくめてつてあれば、絹一重きぬひとへうちは、すぐに、御廚子みづし神棚かみだなふのでせうから、ちかつて、わたしは、のぞくのではなかつたのです。が、だううちの、むし格子かうしつたはうかゝつてました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弟の神は、おお、よろしい、それではかけをしようとちかいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
かたいちかいをたてていたのですからね。
「それはそうじゃ。はなはだわしの方が損じゃ。帰ったら醤に、そういっていたと伝えてくれ。しかし神聖なるバーター・システムのちかいの手前、こっちでもぬかりなく按配あんばいしておいたと、あの醤めにいってくれ。さあ、引取るがよろしかろう」
きた故郷こきょうるときに、二小鳥ことりは、どこへいっても、けっして、ふたりは、はなればなれにならず、たがいにたすおうとちかいました。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかし、大講会三日のあいだは、を見ることをゆるさぬちかいがある。かまわぬから本名をしるしてやろうじゃないか。どうだろう、蔦之助つたのすけ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなその陰気なる洞窟どうくつをいでてわしのまわりにつどえ。わしはわしの霊を汝らの手に渡すぞ。わしはわしに生を与えたるものにそむき、永劫えいごうに汝らに属することをちかうぞ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)