ぬひ)” の例文
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた官女くわんぢよよ、とちよ、三葉形みつばがたぬひを置いて、鳥の羽根はねの飾をした上衣うはぎひきずる官女くわんぢよよ、大柄おほがら權高けんだかで、無益むやく美形びけい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
地合ぢあひは永久、ぬひもまた永久だ。われらが死ねば宇宙も死ぬ。別の生物が別の情感をもつて世界に現はれる時、別の宇宙が生れる。
落葉 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
其傍そのそばぬひ子がそでの長い着物をて、例のかみを肩迄掛けてつてゐた。代助はぬひ子のかみを見るたんびに、ブランコにつた縫子の姿すがたを思ひす。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
桂次けいじいまをる此許こゝもと養家やうかゑんかれて伯父をぢ伯母をばといふあひだがらなり、はじめて此家このやたりしは十八のはる田舍縞いなかじま着物きものかたぬひあげをかしとわらはれ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
死人のくびに卷いたのは、皮肉なことに、同じ部屋に居眠して居たお村の赤い細紐ほそひもで、蒲團のすその方には、立派なぬひつぶしの紙入れが一つ落ちて居ります。
わすれもしねえだ、若奥様わかおくさまは、綺麗きれいぬひ肩掛かたかけつてよ。むらさきがゝつたくろところへ、一めんに、はい、さくらはなびらのちら/\かゝつた、コートをめしてな。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船に来る商人あきびとの荷をベツカの君と見歩きさふらひしが、鈴木に掛け合はさせ、ぬひ入れの壁掛二枚を買ひ申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
... 浄衣じやうえその外智月と(百樹云、大津の米屋の母、翁の門人)乙州が妻ぬひたてゝ着せまゐらす』又曰『二千人の門葉辺遠もんえふへんゑんひとつに合信かつしんするちなみえんとの不可思議ふかしぎいかにとも勘破かんはしがたし』
さぐるに女の身なれば多くの人に交際まじはるには遊女に如事しくことなし彼のせつ幸之進殿所持しよぢせられし大小印形に勿論もちろん衣類紙入胴卷どうまきは妾がぬひたれば覺えあり是を證據に神佛へちかひを掛け尋ね出し敵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうしてはをどり反覆はんぷくしつゝおもむろに太鼓たいこ周圍しうゐめぐる。をんなそでながせるため手拭てぬぐひつて兩方りやうはうたもとさきぬひつけて、それから扱帶しごきたすきにしてむすんだながはしうしろへだらりとれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
黒縮緬くろちりめんの羽織に夢想裏むそううら光琳風こうりんふうの春の野を色入いろいりに染めて、納戸縞なんどじまの御召の下に濃小豆こいあづき更紗縮緬さらさちりめん紫根七糸しこんしちん楽器尽がつきつくしの昼夜帯して、半襟はんえりは色糸のぬひある肉色なるが、えりの白きをにほはすやうにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
金絲きんしぬひさばくかな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ぬひあげするさ」
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ぬひといふむすめは、何か云ふと、くつてよ、知らないわと答へる。さうして日に何遍となくリボンを掛け易へる。近頃はヷイオリンの稽古に行く。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
流轉るてんうまはせては、ひめばれしこともけれど、面影おもかげみゆる長襦袢ながじゆばんぬひもよう、はゝ形見かたみ地赤ぢあかいろの、褪色あせのこるもあはれいたまし、ところ何方いづく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
表向は殺されたお町の代り、病人の世話をするといふ名儀ですが、實は、おぬひや世之次郎をはじめ、雇人やとひにん全部を見張る爲、お品の骨折も一通りではありません。
... 浄衣じやうえその外智月と(百樹云、大津の米屋の母、翁の門人)乙州が妻ぬひたてゝ着せまゐらす』又曰『二千人の門葉辺遠もんえふへんゑんひとつに合信かつしんするちなみえんとの不可思議ふかしぎいかにとも勘破かんはしがたし』
何方なりやとたづねるにほゝよりくちまで一ヶ所二のうで四寸ばかり突疵つききず之あり兩處りやうしよともにぬひ候と申ければ夫にて分明わかりたりとて其段そのだんたてしかば大岡殿どの暫時ざんじかんがへられ非人小屋ひにんごや又は大寺のえんの下其ほか常々つね/″\人のすま明堂あきだうなどに心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝろよわげなれどれもこんなものなるべし、いまからかへるといふ故郷ふるさとこと養家やうかのこと、我身わがみことさくことみなからわすれてはおぬひひとりのやうにおもはるゝもやみなり
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
足を洗つて奧へ通されると、内儀のおぬひが待ち構へて、お茶よ、お菓子よとあわたゞしいことです。
芝居のなかでは、あによめぬひ子も非常に熱心な観客けんぶつであつた。代助は二返所為せゐといひ、此三四日来さんよつからいの脳の状態からと云ひ、左様さう一図に舞台ばかりに気をられてゐるわけにもかなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御自分ごじぶんはかくしたまへども、他所行着よそゆきぎのおたもよりぬひとりべりの手巾はんけちつけしたるときくさ、散々さん/″\といぢめていぢめて、いぢいて、れからはけつしてかぬ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
銀町しろがねちやうの店には、やしなひ娘のおぬひといふ十九になる女と、手代ともなく引取られて居るをひの世之次郎とが、年寄の世話をやいて居りますが、何方も財産目當ての孝行らしくて
これにもはらわたはたゝるべきこゑあり、勝沼かつぬまよりの端書はがき一度とゞきて四日目にぞ七さと消印けしいんある封状ふうじやう二つ、一つはおぬひけてこれはながかりし、桂次けいじはかくて大藤村おほふじむらひとりぬ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「親分も御存じでせう、三國屋の二人娘といはれた、おぬひとお萬のことを」
なんとせんみち間違まちがへたり引返ひきかへしてとまた跡戻あともどり、大路おほぢいづれば小路こうぢらせ小路こうぢぬひては大路おほぢそう幾走いくそうてん幾轉いくてんたつゆきわだちのあとながひきてめぐりいづればまた以前いぜんみちなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五十前後の内儀おぬひは、主人彦太郎の後ろからつゝましく顏を出しました。
れしくるまたしかに香山家かやまけものなりとは、車夫しやふ被布はつぴぬひにもれたり、十七八とえしはうつくしさのゆゑならんが、年齡としごろむすめほかにりともかず、うはさの令孃ひめれならんれなるべし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いえ、違ひます。お綺麗なのは納さんで、私はぬひと申します」
學士がくし出立後しゆつたつごの一日二日より處業しよげうどことなく大人をとなびていままでのやうわがまヽもはず、ぬひはり仕事しごとよみかきほか以前いぜんしてをつヽしみさそひとありとも人寄ひとよ芝居しばいきしことあしけねば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)