)” の例文
一とわたり祈祷がすむと、先達の女房でおまんという四十女が、黒ずくめの品の良い様子で、はかまの少女に案内させて出て来ました。
すると、突然、の緞帳の裾から、桃色のルイザが、吹きつけた花のように転がり出した。裳裾もすそが宙空で花開いた。緞帳は鎮まった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
やあ? きぬ扱帶しごきうへつて、するりとしろかほえりうまつた、むらさき萌黄もえぎの、ながるゝやうにちうけて、紳士しんし大跨おほまたにづかり/\。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼はのチョッキを着て、すべてを打ち砕くような言葉を発していた。そのチョッキにひとりの通行人は驚いて、我を忘れて叫んだ。
たび途中とちゅうで、煙草畑たばこばたけに葉をつんでいる少女にった。少女はついこのあいだ、おどしだにからさとへ帰ってきた胡蝶陣こちょうじんのなかのひとり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ころもを見たという者が出てきました。何か人間の形をした大きなものが暗い空をふわりふわり飛んでいた、という者が出てきました。
天狗の鼻 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
伝説によると、ときどき海上にはかまを着けた美人が現れて、漁船に妨害を加うるとのことである。漁夫は大いにこれをおそれている。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
真面目まじめな顔で小母さんは造花を咲かせ続けた。紫の花。褪紅色たいこうしょくの蕾。緑の葉。の花。——クレエム・ペエパァの安っぽい造花であった。
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
おもつたる大形おほがた裕衣ゆかたひつかけおび黒繻子くろじゆすなにやらのまがひものひらぐけがところえてはずとれしこのあたりのあねさまふうなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御車は無紋の黒塗、海老染えびぞめ模様の厚毛布あつげっとを掛けて、蹴込けこみにはの毛皮を敷き、五人の車夫は大縫紋の半被はっぴを着まして、前後にしたがいました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金之助は摺足すりあしではいった。毛氈もうせんを敷いて、酒肴しゅこうの膳を前に民部康継が坐っていた。金之助は思わずあっと云ってそこへ手をおろした。
落ち梅記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いかさま年は二十七、八、髪はおすべらかしに、のはかまをはいて、紫綸子りんずの斎服に行ないすました姿は、穏やかならぬ美人なのです。
いろ勝ちの臥床ふしどの上に、楚々そそと起き直っている彼女を一目見て、なるほど公方くぼうちょうをほしいままにするだけの、一代の美女だと思った。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いつか絵本で、日本の大将が、まえだてのついたかぶとおどしの鎧をきて、戦争に行く勇しい姿をみたことがあったからです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
これは信者の婦人が楽器なりものりで、白装束しろしょうぞくはかま、下げ髪で踊るのだった。なにしろ物見高い土地だから人だかりはすぐする。
思ひ切つたる大形の浴衣ゆかたに引かけ帯は黒繻子くろじゅすと何やらのまがひ物、ひらぐけが背の処に見えて言はずと知れしこのあたりの姉さま風なり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
女は年の頃十八、九であろうか、はかまを穿いていた。そうして上着は十二単衣ひとえであった。しかも胸には珠をかけ、手に檜扇ひおうぎを持っていた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
金比羅こんぴらさんの天狗てんぐさんの正念坊しょうねんぼうさんが雲の中で踊っとる。の衣を着て天人様と一緒に踊りよる。わしに来い来いいうんや。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
年をとった巫女が白い衣にはかまをはいて御簾みすの陰にさびしそうにひとりですわっているのを見た。そうして私もなんとなくさびしくなった。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
雨の夜に、日本近く、とぼけて流れ込む浦川へ、黒船に、乗りこむ八百人、大づつ小づつをうちならべ、羅紗らしゃしょうじょうのつっぽ襦袢じゅばん……
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と云いながら倉前へ来て見ますと、の縮緬のしごきが一本、そばに浴衣が有りまして、ポタリ/\と血が垂れて居ますを見て由兵衞は慄え上り
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
窓掛の間から野性の雛芥子ひなげしの燃える樣なの色が見える。四時と云ふのに一分の違ひも無しに巴里の北の停車場ギヤアルに着いた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
これとても狩野古方眼かのうこほうげんが始めて夢想したという説もあって、中古にはころも羽団扇はうちわなどを持った鼻高様はなたかさまは想像することができなかったのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夜は不用なパラソルを持っていることも、燃え立つようなの羽毛飾りをつけた滑稽な丸い麦わら帽子のことも、何もかも忘れ果てたようである。
お写真を見せていただきましたが、すらりとした立姿、おすべらかしにはかま、宮中へ参内の時のお姿でしょう、お品がよくて立派なものでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
雨に悩める、露にうるほへる、いづれ艶なるおもむきならぬは無し。木瓜ぼけはこれの侍婢こしもとなりとかや。あら美しの姫君よ。人を迷ひに誘ふ無くば幸なり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何一つ家具らしいもののない八畳の部屋、水のような暮色がしずかに隅々からはいよるその中央にせたもうせんを敷いて一人の翁が端座している。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひとりの少女が、のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
走れメロス (新字新仮名) / 太宰治(著)
まっ黒な背景の中に、ころもの様な、真赤な道化服を着た一寸法師が、大の字に立ちはだかっていた。その足許あしもとには血糊のついたダンビラが転っていた。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
きれいな身なりをして化粧をした朝臣あそんたちをたくさん見たが、のお上着を召した端麗な鳳輦ほうれんの中の御姿みすがたになぞらえることのできるような人はだれもない。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いちばん上のおよめさんは二十三で、しろそでにのはかまをはいていました。二ばんめのおよめさんは二十はたちで、むらさきそでに桃色ももいろのはかまをはいていました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その横に敷いてあるオモヨさんの寝床は藻抜もぬけの殻で、夜具が裾の方に畳み寄せてありまして、ぐくしの高枕が床のまん中に置いてある切りで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
帯上げは上に、腰帯は下に、帯を中にして二つの併行線をかくしたと、折り返して据わった裾に、三角形をなしている襦袢の緋とが、ずひどく目を刺戟しげきする。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
聞て三五郎是は有難しと後について大方丈を通拔とほりぬけ鼓樓ころうの下をくゞりて和尚の座敷の縁側えんがはまかり出平伏なすに此時可睡齋かすゐさいは靜かにころもの袖をかき合せながら三五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丁度墨染すみぞめの麻の衣の禅匠が役者のようなの衣の坊さんを大喝だいかつして三十棒をくらわすようなものである。
天蓋てんがいの、華鬘けまんの、金襴きんらんの帯の、雲の幾流は、になびき、なびきて朱となり、褪紅たいこうとなり、灰銀かいぎんをさえまじえたやわらかな毛ばだちのかばとなり、また葡萄紫となった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
アーサーは我とわが胸をたたいて「黄金の冠はよこしまの頭にいただかず。天子の衣は悪を隠さず」と壇上に延び上る。肩にくくの衣の、裾は開けて、白き裏が雪の如く光る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
殊にこの僧都は天台てんだいとか真言しんごんとかの美くしいころもでもた坊さんであろうから、それが春の水の上に浮んでいるところに、美くしさの上の調和もあるのであろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
午後三越に行った、の裾を絹足袋のつま先にさばいて人群をすりぬける事は真に快い物であった。
ことごと窓帷カアテンを引きたる十畳の寸隙すんげきもあらずつつまれて、火気のやうやく春を蒸すところに、宮はたいゆたか友禅縮緬ゆうぜんちりめん長襦袢ながじゆばんつま蹈披ふみひらきて、紋緞子もんどんす張の楽椅子らくいすりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その計略成就して、数百里のあいだの老若男女ろうにゃくなんにょがみな集まった。そこで、紫やや黄の綾絹あやぎぬをもって幾重にも仏像をつつみ、拝む者があれば先ずその一重をいで見せる。
いつの間にか俺は友禅いうぜんの座蒲団の上に坐るやうになつた。軽井沢へ別荘も立てた。日本食と洋食と別別に料理番も置いた。置酒高会ちしゆかうくわいもする。俺の生活費は段段かさんでくる。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
けれども、ふと机の抽斗ひきだしを開けてみると、中から思わぬ物が出てきた。の紋羽二重に紅絹もみ裏のついた、一尺八寸の襦袢じゅばんの片袖が、八つに畳んで抽斗の奥に突っ込んであった。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
服装ふくそうわたくし時代じだいよりはややふるく、ふとひもでかがった、広袖ひろそで白衣びゃくいまとい、そしてしたはかま穿いてるところは、ても御所ごしよ宮仕みやづかえしてかたのようにうかがわれました。
まぶたをいたくするラシャの洋服を着て、雲つくような獣に似た姿をのっそりあらわして来る。そいつを視野のなかに押しこめ、見おろそうとする彼の呼吸いきづかいは荒くなった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
絨毯じゅうたんを敷き詰めた洋間でありながら、ブェランダまがいの広い縁側がついて、明け放した大きな硝子ガラス戸からは海や谷底を見下ろして、さっきよりもっと眺望のいい部屋でした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
その編笠の紐の鹿の、くっきりと映えるような美しいのも居たというが、着物はすべて木綿に限ったもので、あの人達ほど木綿の着物をしゃんと着こなして居た者はないと
寺町 (新字新仮名) / 岩本素白(著)
最後に特別になまめかしい鹿ぢりめんの長襦袢を上にのせ、それから鞄の蓋をしめたのであるが、ぎゅうぎゅうに詰まっているので蓋は外に向って太鼓腹たいこばらのようにふくらんだ。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは登別の温泉宿の一室で、燃えるような、布団ふとんのかかった炬燵こたつの中であった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
大きなスペインふう玳瑁たいまいの飾りぐし、くっきりと白く細いのどを攻めるようにきりっと重ね合わされた藤色ふじいろえり、胸のくぼみにちょっとのぞかせた、燃えるようなの帯上げのほかは
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)