)” の例文
いつまで行っても松ばかりえていていっこう要領を得ない。こっちがいくら歩行あるいたって松の方で発展してくれなければ駄目な事だ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのそばにえている青木あおきくろずんで、やはり霜柱しもばしらのためにいたんではだらりとれて、ちからなくしたいているのでありました。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの故郷の、沼地ぬまちのそばにえている、ヤナギの木のあいだから、わたしを見おろしたときと、すこしもかわらない月だったのです。
いったい蓮華は清浄しょうじょうな高原の陸地にはえないで、かえってどろどろした、きたな泥田どろたのうちから、あの綺麗きれいな美しい花を開くのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こう言って、三人を或谷間たにまへつれていき、そこにえている、薬になる草や木を一々おしえておいて、ふたたび湖水へかえりました。
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
釣瓶つるべは外してありますが、覗くと山の手の高台の井戸らしく、石を畳み上げて水肌から五六間、こけと虎耳草が一パイえております。
何でも森をはすに取って西北の地平線から西へかけて低いところにもしゃもしゃとえてる楢林ならばやしあたりまでを写して見ることに決めた。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
川口かはぐちの、あしのたくさんえてゐる、そのあしさきが、みんなとれてゐる。これは、たれつたのかとまをしますと、それは、わたしです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
親方の禿頭の中央まんなかえている事実を知っていたものは、事によると吾輩一人かも知れないのだから、トテモ証拠になりそうにない。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたるばかりでみぎわにいちめんにえていたあしも見えずそのおとこの影もいつのまにか月のひかりに溶け入るようにきえてしまった。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「火星には、植物はえているが、動物はいないという学者もあるが、君たちは、火星に動物のいることを発見したんだ。お手柄だ」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おもしろいことには東京地方へ旅行すると、農家の大きな藁葺わらぶき屋根の高いむねにオニユリが幾株いくかぶえて花を咲かせている風情ふぜいである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
彼は総体に毛深いほうであったが、顎などは、幾日おいても、ひげが伸びなかった。——というよりは、まだえ揃わない感じである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくせこの連中の蟇口の中のお金にはみんなそれぞれ脚がえて我先にとびだしけ去るシクミだから、まことに天下はままならぬ。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかしながら実際これを試験ためしてみますると、思うとおりには行きません。樅はえはえまするが数年ならずして枯れてしまいます。
ると石のまわりには、二三ちょうあいだろくろくくさえてはいませんでした。そして小鳥ことりむしなん千となくかさなりってんでいました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
沢山たくさんえる、何処どこにもあるからということが価値の標準となるとすれば、きっぽくてあさはかなのは人間それ自身なのではあるまいか。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
どこを見ても猫ばかりだ。そして家々の窓口からは、ひげえた猫の顔が、額縁の中の絵のようにして、大きく浮き出して現れていた。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
むかしはそんなに樹木じゆもくえてゐたわけでなく、たいていそれらのつかうへには、まる磧石かはらいしせて、全體ぜんたいおほうてをつたものでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「さやうでございますよ、年紀としごろ四十ばかりの蒙茸むしやくしや髭髯ひげえた、身材せいの高い、こはい顔の、まるで壮士みたやうな風体ふうていをしておいででした」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
〔この山は流紋凝灰岩りゅうもんぎょうかいがんでできています。石英粗面岩せきえいそめんがんの凝灰岩、大へん地味ちみわるいのです。赤松あかまつとちいさな雑木ぞうきしかえていないでしょう。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ほりという堀には水がいっぱいで、堀ばたにはフキの花がひらき、石壁いしかべの上にえている草のしげみは、つやつやとして褐色かっしょくになっています。
それがたまたま角捨て場の荒土よりゆるを捨てた角が根生えしたと誤認したのであろう。また似た事が梁の任昉の『述異記』下にづ。
はねへたうつくしいねえさんはないの)ツていたとき莞爾につこりわらつて両方りやうはうから左右さいうでおうやうにわたし天窓あたまでゝつた
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼が大きな、毛のもじゃもじゃえている手を机の真ん中でひろげ、末席のほうを向くと、もうみなが聞き耳をたてるのだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
私は彼等から仲間はずれにされないように、苦しげに煙草をふかし、まだひげえていないほおにこわごわ剃刀かみそりをあてたりした。
燃ゆる頬 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あづかつたおぼえはないとふのはひどやつだ、塩原しほばらいへへ草をやさずに置くべきか、とつて吾妻橋あづまばしからドンブリと身を投げた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
窓の前の庭はまだ掘りくり返したままで赤土の上に草もえていなかったけれども、広い廊下の冷ややかな空気は涼しく病室に通りぬけた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
薔薇ばらにも豌豆えんどうにも数限りもなく虫が涌く。地は限りなく草をやす。四囲あたりの自然に攻め立てられて、万物ばんぶつ霊殿れいどのも小さくなってしまいそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
戸を閉めて走り出す——手にも、足にも、羽根がえたように。やがて、暖かな、明るいところへ帰って来ると、息をはずませ、内心得意だ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
月のうす明るい夜で、丞相がしゃとばりのうちから透かしてみると、賊は身のたけ七尺余りの大男で、関羽かんうのような美しい長いひげやしていた。
え、人間というものかい? 人間というものはつのえない、生白なまじろい顔や手足をした、何ともいわれず気味の悪いものだよ。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
助役らしいひげえた中年者と土地の勢力家らしい肥った百姓とがしきりに何か笑いながら話していたが、おりおり煙管きせるをトントンとたたく。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この、おの/\の位置いちによつてえる樹木じゆもく種類しゆるい森林しんりんかたちとがことなつてゐるありさまづけて、『森林帶しんりんたい』または『森林植物帶しんりんしよくぶつたい』とひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「はい、海竜が出ました、つのを二本やした、こんな怖い顔をして、お杉のあまっこを追っかけて来たのを、命からがらで逃げて来やんした」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
建ってるんだそうでして……私はいって見たこたアございませんが、松の木が二、三本えてる根っ子で、えらく景色のいいところだとか……
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
さうしてとげえた野茨のばらさへしろころもかざつてこゝろよいひた/\とあふてはたがひ首肯うなづきながらきないおもひ私語さゝやいてるのに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ようや山林地帯さんりんちたい出抜でぬけると、そこはやま頂辺てっぺんで、芝草しばくさが一めんえてり、相当そうとう見晴みはらしのきくところでございました。
五十を越した篤学者で、強度の近眼鏡をかけた、せて半白のひげやした寮長は、懐中から厚ぼつたい銀側時計を出して時間を見計つてゐた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
その上、景岡秀三郎は、少年としては珍しく、毛深けぶかかったのです。腕や脚には、もうぎわの金色な毳毛うぶげが、霞のように、生えていたのです。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
枝も撓わわにりたる、糸瓜へちまの蔓の日も漏さぬまでに這い広がり、蔭涼しそうなるも有り、車行しゃこう早きだけ、送迎にいそがわし。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
その池の水際みずぎわには、あしやよしが沢山え茂っている上に、池のぐるりには大木がい茂って、大蛇だいじゃでも住みそうな気味の悪い大池でありました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自分も同じように振舞いたいと思って手の届くところにえている虎杖すかんぽを力充分いっぱいに抜いて、子供たちのするように青い柔かい茎をんでも見た。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
何とか兵(濠洲兵がうしうへいのことだつた)の通つた跡には草もえないが、米兵の通つた跡にはスミレが咲く、とは、彼等拾ひ屋のよくいふことだつた。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
あしらいには熊笹の小葉をかせてある。この熊笹は庭にいくらでもえている。それを見たてて取って来たものである。
汝等の名は草の色のあらはれてまたきゆるに似たり、しかして草をやはらかに地よりいでしむるものまたその色をうつろはす。 一一五—一一七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
大沼を眺めた時の句で、その沼の向うには雲の峰が立っておる、その雲へ乗るのには、その沼にえている萍の花から乗るがいいというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
どうしてあんな奴をこの辺にほうっておくんでしょう。あたしの前歯二本を抜けなんて、ほんとに恐ろしいわ。髪の毛ならまたえもしようが、歯はね。
妖怪変化の中、器物に手足がえ顔が生じたり、している奴があるが、これらはそういう実感を具象したものである。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)