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春雨
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はるさめ
ふりがな文庫
“
春雨
(
はるさめ
)” の例文
二部興行で、昼の部は
忠信
(
ただのぶ
)
の
道行
(
みちゆき
)
、
躄
(
いざり
)
の仇討、
鳥辺山
(
とりべやま
)
心中、夜の部は
信長記
(
しんちょうき
)
、
浪華
(
なにわ
)
の
春雨
(
はるさめ
)
、
双面
(
ふたおもて
)
という番組も大きく貼り出してある。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其の晩源次郎がまいり
酒宴
(
さかもり
)
が始まり、お國が長唄の
地
(
じ
)
で
春雨
(
はるさめ
)
かなにか
三味線
(
さみせん
)
を掻きならし、当時の九時過まで興を添えて居りましたが
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、風をともなわぬ、
春雨
(
はるさめ
)
のような、しっとりした降りかたで、かえって、旅情を添えるものといえなくもなかった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
其晩
(
そのばん
)
は
湿
(
しめ
)
やかな
春雨
(
はるさめ
)
が
降
(
ふ
)
つてゐた。
近所隣
(
きんじよとなり
)
は
闃
(
ひつそ
)
として、
樋
(
ひ
)
を
洩
(
も
)
れる
細
(
ほそ
)
い
雨滴
(
あまだれ
)
の
音
(
おと
)
ばかりがメロヂカルに
聞
(
きこ
)
える。が、
部屋
(
へや
)
には
可恐
(
おそろ
)
しい
影
(
かげ
)
が
潜
(
ひそ
)
んでゐた。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
鬼の出る
羅生門
(
らしょうもん
)
に、鬼が来ずなってから、門もいつの代にか取り
毀
(
こぼ
)
たれた。
綱
(
つな
)
が
捥
(
も
)
ぎとった腕の
行末
(
ゆくえ
)
は誰にも分からぬ。ただ昔しながらの
春雨
(
はるさめ
)
が降る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
葉子は他の乗客と同じように
手欄
(
てすり
)
によりかかって、静かな
春雨
(
はるさめ
)
のように降っている雨のしずくに顔をなぶらせながら、
波止場
(
はとば
)
のほうをながめていたが
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
が、
取立
(
とりた
)
てて
春雨
(
はるさめ
)
のこの
夕景色
(
ゆふげしき
)
を
話
(
はな
)
さうとするのが
趣意
(
しゆい
)
ではない。
今度
(
こんど
)
の
修善寺
(
しゆぜんじ
)
ゆきには、お
土産話
(
みやげばなし
)
が
一
(
ひと
)
つある。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
春雨
(
はるさめ
)
、
御所車
(
ごしょぐるま
)
、さては、かっぽれ、と申しますような唄や、そうしたものの踊りの師匠だったのでございます。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
慚愧
(
ざんき
)
不安の
境涯
(
きょうがい
)
にあってもなお
悠々
(
ゆうゆう
)
迫らぬ趣がある。省作は泣いても
春雨
(
はるさめ
)
の曇りであって
雪気
(
ゆきげ
)
の
時雨
(
しぐれ
)
ではない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
白粉の凄まじい大崩落、
春雨
(
はるさめ
)
に逢った大雪崩のようなのを、平次は世にも真顔で
凝
(
じ
)
っと見詰めております。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
其
(
その
)
晩は葡萄酒に酔つて船へ帰つて寝た。翌
朝
(
てう
)
は
春雨
(
はるさめ
)
の様な
小雨
(
こさめ
)
が降つて居る。
此様
(
こんな
)
に温かいのは異例だと
此
(
この
)
地に七八年
案内者
(
ガイド
)
をして居る杉山と云ふ日本人が話して居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「あたしね、「
黒髪
(
くろかみ
)
」をあげたらこんどは「
春雨
(
はるさめ
)
」だわ。いヽわね。は る さ め…………」
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
「
春雨
(
はるさめ
)
にィ……」と小声で歌うて来ることもある。ある時来たのを
捉
(
つらま
)
えて、
笊
(
ざる
)
で砂利を運ぶ手伝をさせ、五銭やったら、其れから来る毎に「仕事はありませんか」と云う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
しかれども
春雨
(
はるさめ
)
に
傘
(
かさ
)
、暮春に女、
卯花
(
うのはな
)
に尼、
五月雨
(
さみだれ
)
に馬、
紅葉
(
もみじ
)
に滝、暮秋に牛、雪に
燈火
(
ともしび
)
、
凩
(
こがらし
)
に
鴉
(
からす
)
、名所には京、
嵯峨
(
さが
)
、
御室
(
おむろ
)
、大原、
比叡
(
ひえい
)
、
三井寺
(
みいでら
)
、瀬田、須磨、奈良、宇津
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
雨晴れて月
朦朧
(
おぼろ
)
の夜にちび筆の軸を伝つてのみ、そのじくじくした欲情のしたたりを紙にとどめ得た。『雨月』『
春雨
(
はるさめ
)
』の二草紙はいはばその欲情の
血膿
(
ちうみ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
つたあとの
故紙
(
こし
)
だ。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
春雨
(
はるさめ
)
にかすむとか、
朝霧
(
あさぎり
)
の中から舟が出てくるなどという風景は、この世界には見えない
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
先頃の
春雨
(
はるさめ
)
に、水量を増して山峽を下る小川は、澄明な水を漲らして、太陽の金の輝きと大空の
青緑
(
サフアイア
)
の色を
映
(
うつ
)
し乍ら流れてゐた。私達は小路から外れて柔かい芝生の上を踏んだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
若
(
わか
)
き
心
(
こゝろ
)
には
情
(
なさけ
)
なく
𫁹
(
たが
)
のゆるびし
岡持
(
をかもち
)
に
豆腐
(
おかべ
)
の
露
(
つゆ
)
のしたゝるよりも
不覺
(
そゞろ
)
に
袖
(
そで
)
をやしぼりけん、
兎角
(
とかく
)
に
心
(
こゝろ
)
のゆら/\と
襟
(
ゑり
)
袖口
(
そでぐち
)
のみ
見
(
み
)
らるゝをかてゝ
加
(
くわ
)
へて
此前
(
このまへ
)
の
年
(
とし
)
、
春雨
(
はるさめ
)
はれての
後
(
のち
)
一日
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
春雨
(
はるさめ
)
に
衣
(
ころも
)
は
甚
(
いた
)
く
通
(
とほ
)
らめや
七日
(
なぬか
)
し
零
(
ふ
)
らば
七夜
(
ななよ
)
来
(
こ
)
じとや 〔巻十・一九一七〕 作者不詳
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
長塚節
(
ながつかたかし
)
氏の歌に、「
春雨
(
はるさめ
)
になまめきわたる庭ぬちにおろかなりける
梧桐
(
あをぎり
)
の木か」
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
祖父
(
じじ
)
の
言葉
(
ことば
)
には
格別
(
かくべつ
)
これと
取
(
と
)
り
立
(
た
)
てていうほどのこともないのですが、
場合
(
ばあい
)
が
場合
(
ばあい
)
なので、それは
丁度
(
ちょうど
)
しとしとと
降
(
お
)
る
春雨
(
はるさめ
)
の
乾
(
かわ
)
いた
地面
(
じべた
)
に
浸
(
し
)
みるように、
私
(
わたくし
)
の
荒
(
すさ
)
んだ
胸
(
むね
)
に
融
(
と
)
け
込
(
こ
)
んで
行
(
ゆ
)
きました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
春雨
(
はるさめ
)
の
格子戸
(
こうしど
)
に
渋
(
しぶ
)
蛇
(
じゃ
)
の
目
(
め
)
開
(
ひら
)
きかける様子といい、長火鉢の向うに長煙管取り上げる手付きといい、物思う夕まぐれ
襟
(
えり
)
に
埋
(
うず
)
める
頤
(
おとがい
)
といい、さては
唯
(
ただ
)
風に吹かれる鬢の毛の一筋、そら
解
(
ど
)
けの帯の
端
(
はし
)
にさえ
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
朝起きると
春雨
(
はるさめ
)
がしとしとと降っていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
春雨
(
はるさめ
)
や食はれ残りの鴨が
啼
(
な
)
く 一茶
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
牧場の草に
春雨
(
はるさめ
)
のふる
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
急ぎ
降
(
くだ
)
れば
春雨
(
はるさめ
)
の
北村透谷詩集
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
その噂を聞き伝えて見物人が寄り集まって来る頃には、二つの死骸はすでに取り片付けられて、形見の船が
春雨
(
はるさめ
)
に濡れているばかりであった。
半七捕物帳:53 新カチカチ山
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
白粉の凄まじい
大崩落
(
だいほうらく
)
、
春雨
(
はるさめ
)
に逢つた大
雪崩
(
なだれ
)
のやうなのを、平次は世にも眞顏で
凝
(
ぢつ
)
と見詰めて居ります。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
春雨
(
はるさめ
)
のしめやかに、
謎
(
なぞ
)
を
一
(
ひと
)
つ。……
何枚
(
なんまい
)
衣
(
き
)
ものを
重
(
かさ
)
ねても、お
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
つは
膚
(
はだ
)
ばかり、
何
(
なに
)
?……
筍
(
たけのこ
)
。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのお婆さんは、自分で手拍子を取りながら、
唄
(
うた
)
を
謳
(
うた
)
って、四つの孫に「
春雨
(
はるさめ
)
」を踊らせていた。子供は扇子を持って、くるくる踊っていたが、角々がきちんと極まっていた。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
春雨
(
はるさめ
)
の明けの朝、
秋霧
(
あきぎり
)
の夕、此杉の森の
梢
(
こずえ
)
がミレージの様に
靄
(
もや
)
から浮いて出たり、棚引く煙を
紗
(
しゃ
)
の帯の如く
纏
(
まと
)
うて見たり、しぶく小雨に見る/\
淡墨
(
うすずみ
)
の画になったり、梅雨には
梟
(
ふくろう
)
の宿
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
宜
(
よ
)
く
御存
(
ごぞん
)
じ
私
(
わた
)
しが
歸鴈
(
きがん
)
を
好
(
す
)
きと
云
(
い
)
ふは
我身
(
わがみ
)
ながら
何故
(
なぜ
)
か
知
(
し
)
らねど
花
(
はな
)
の
山
(
やま
)
の
曉月夜
(
あかつきづきよ
)
さては
春雨
(
はるさめ
)
の
夜半
(
よは
)
の
床
(
とこ
)
に
鳴
(
なき
)
て
過
(
す
)
ぎる
聲
(
こゑ
)
の
別
(
わか
)
れがしみ/″\と
身
(
み
)
にしみて
悲
(
かな
)
しい
樣
(
やう
)
な
淋
(
さび
)
しいやうな
又
(
また
)
來
(
く
)
る
秋
(
あき
)
の
契
(
ちぎ
)
りを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
春雨
(
はるさめ
)
の
相合傘
(
あいあいがさ
)
の
柄漏
(
えも
)
りかな
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「
春雨
(
はるさめ
)
やか、——」
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
染太夫 山科の里で
春雨
(
はるさめ
)
を聽きながら、一夜を明かすのも好いかも知れませんな。まつたくこつちは閑靜だ。
近松半二の死
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
襲われるような不快な心持などは
微塵
(
みじん
)
もなく、
春雨
(
はるさめ
)
の降り
頻
(
しき
)
る朝、護持院の鐘の音に、淡い夢から揺り起される時のような、何んとも言えない甘美な心持で、薄眼を開いて
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
其
(
そ
)
の
実
(
じつ
)
、
矢叫
(
やさけび
)
の
如
(
ごと
)
き
流
(
ながれ
)
の
音
(
おと
)
も、
春雨
(
はるさめ
)
の
密語
(
さゝやき
)
ぞ、と
聞
(
き
)
く、
温泉
(
いでゆ
)
の
煙
(
けむ
)
りの
暖
(
あたゝか
)
い、
山国
(
やまぐに
)
ながら
紫
(
むらさき
)
の
霞
(
かすみ
)
の
立籠
(
たてこも
)
る
閨
(
ねや
)
を、
菫
(
すみれ
)
に
満
(
み
)
ちた
池
(
いけ
)
と見る、
鴛鴦
(
えんわう
)
の
衾
(
ふすま
)
の
寝物語
(
ねものがた
)
りに——
主従
(
しゆじう
)
は
三世
(
さんぜ
)
、
親子
(
おやこ
)
は
一世
(
いつせ
)
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
尽日
(
じんじつ
)
雨、
山陽
(
さんよう
)
の
所謂
(
いわゆる
)
「
春雨
(
はるさめ
)
さびしく候」と云う日。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
春雨
(
はるさめ
)
の
衣桁
(
いこう
)
に重し
恋衣
(
こいごろも
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
今
(
いま
)
までは、
春雨
(
はるさめ
)
に、
春雨
(
はるさめ
)
にしよぼと
濡
(
ぬ
)
れたもよいものを、
夏
(
なつ
)
はなほと、はら/\はらと
降
(
ふ
)
りかゝるを、
我
(
われ
)
ながらサテ
情知
(
なさけし
)
り
顏
(
がほ
)
の
袖
(
そで
)
にうけて、
綽々
(
しやく/\
)
として
餘裕
(
よゆう
)
ありし
傘
(
からかさ
)
とともに
肩
(
かた
)
をすぼめ
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
春
常用漢字
小2
部首:⽇
9画
雨
常用漢字
小1
部首:⾬
8画
“春雨”で始まる語句
春雨傘
春雨庵
春雨竹
春雨間
春雨雛