たく)” の例文
蕎麦をぶってがんすから喰いに来ておくんなんしよ、めでたくかしく……フヽヽヽ妙な所へ目出度かしくと書いたもんだなア、これは妙だ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
泣き声も次第に細るばかり、その夜の十一時五分ほど前には、ついに息を引き取り候。その時の私の悲しさ、重々じゅうじゅう御察し下されたく、……
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右御許し下されたくしこの一事を御承引下され候わずば、妾は永遠に君を見ることかなわず、これに過ぎたる悲しみは無之これなく候。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「大滝にて発見された婦人片腕事件につき是非是非御話し申上げたく。フン、例の片腕事件だ。何かあるかも知れんね。明智さん」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
以て右の金子道具共殘らず相渡しくれ候樣の御沙汰成下なしくだされたく此段偏に願ひ奉つると申ければ大岡殿點頭うなづかれて直樣すぐさま八五郎を呼出よびいだされ其方娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おりから下坐敷したざしきより杯盤はいばんはこびきしおんななにやらおりき耳打みゝうちしてかくしたまでおいでよといふ、いやたくないからよしてお
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月々つき/″\にいさんや御父おとうさんの厄介になつたうへに、ひとぶん迄自分に引受けて、貸してやらうつて云ふんだから。だれたくはないぢやありませんか
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
飄然ひょうぜんです。まったく飄然ひょうぜんです、彼は釘勘と共に、奉行所の前の石豆腐いしどうふ差入さしいれ茶屋)で軽い旅支たくをすると共に、遠く江戸を離れたのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、私も何だか観せてやりたくなって、芝居だって観ように由っては幾何いくら掛るもんかと、不覚つい口を滑らせると、お糸さんがいつになく大層喜んだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
尚過日は沢山の御手当を頂戴仕り万々難有御礼申上候、来年は御健やかなる体を拝したく、是非御入湯被下くだされ候様御願申上候
仙人掌の花 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
道とは儒教でも仏教でも西洋の哲学でもけれど、西洋の哲学などは宜しき師なき故、儒でも仏でもちと深きところを心得たる人をたづねて聴かれたく候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
たれでも善事よいことをしたくないとおもふ人はないが、本気になつて、一心にそれをしようと思ふ人と好加減よいかげんに上つらでしたいと思ふ人とで大変な違ひになるんですよ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
いつも谷に入る毎に「吸い込まれる」という気持で一杯であるのに、この谷では吐き出されたくさえ思った。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
行蔵こうぞうは我に存す、毀誉きよは他人の主張、我にあずからず我に関せずとぞんじそうろう各人かくじん御示おしめし御座ござそうろうとも毛頭もうとう異存いぞん無之これなくそうろうおん差越之さしこしの御草稿ごそうこう拝受はいじゅいたしたく御許容ごきょよう可被下くださるべく候也そうろう
明後日は猶重くも相成可申あひなりまをすべく、さやうには候へども、筆取る事相叶あひかなひ候間は、臨終までの胸の内御許に通じまゐらせたく存候ぞんじさふらへば、覚束無おぼつかなくも何なりとも相認あひしたた可申候まをすべくさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
身分の相違はいちじるしいが、しかし左内の情熱と、すがすがしい心境からそんたくすれば。……
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それをささえるたくが正しいと云って、小太郎をわざわざ私の処へ訂正によこさなくってもいいじゃありませんか。それじゃ、私だっていい加減不愉快になるじゃありませんか。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いまは大方に快癒かいゆ鬱散うっさんのそとあるきも出来候との事、御安心下されたく候趣、さて、ここに一昨夕、大夕立これあり、孫八老、みぎり某所墓地近くを通りかかり候折から、天地晦冥かいめい
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春雪霏々ひひ、このゆうべに一会なかるべけんやと存じ候。万障を排して、本日午後五時頃より御参会くだされたく、ほかにも五、六名の同席者あるべくと存じ候。但し例の俳句会には無之これなく候。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御介抱もうしたる甲斐かいありて今日の御床上とこあげ芽出度めでたい芽出度めでたけれど又もや此儘このまま御立おたちかと先刻さっきも台所で思い屈して居たるに、吉兵衛様御内儀が、珠運様との縁たくば其人様の髪一筋知れぬようにぬい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何卒なにとぞ々々お出で下されたく、太陽と月を同時に仰ぎつつ待ち居ります。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私儀、病気につき、今日欠勤つかまつたくこの段御届に及びそうろう也。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
是非々々御出京下されたく、幾重にも希望つかまつり候。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
老生此度このたび郊外にささやかなる別荘を買求めそうろうについては来る十五日別荘開きの小宴を催したく当日午後一時Sホテルまで御光来を
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
富「手前は隣村りんそんる山倉富五郎と申す浪人で、先生御在宅なれば面会致したく態々わざ/\参りました、是は此方様こなたさまへほんのお土産で」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なおまた故人の所持したる書籍は遺骸と共に焼き棄て候えども、万一貴下より御貸与ごたいよの書籍もそのうちにまじり居り候せつ不悪あしからず御赦おゆるし下されたくそうろう。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
早くまぬかれたくいつ未來みらいへ參りなば此苦しみも有まじと存じ斷念あきらめて罪を身に引請ひきうけ白状はくじやう仕つり候なり其實は人を殺し金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
代表し以て一大凱旋祝賀会を開催し兼て軍人遺族を慰藉いしゃせんが為め熱誠これを迎えいささか感謝の微衷びちゅうを表したくついては各位の御協賛を仰ぎ此盛典を挙行するのさいわい
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おもこと反對うらはらにおきになつてもんでくださるかくださらぬか其處そこほどはらねど、よしわらものになつてもわたし貴君あなたわらふていたゞたく今夜こんやのこらずひまする
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そう思うと自分は鉄砲虫のように山に喰い入って、殆んど完膚無きまでに解剖し批評し叙述し描写しなければ満足することの出来ない人間の欲望を呪いたくなる。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
こんな人のこんな風袋ふうたいばかり大きくても、割れば中から鉛の天神様が出て来るガラガラのような、見掛倒しの、内容に乏しい、信切な忠告なんぞは、私はちッとも聞きたくない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかる上は拙老よりとくと本人へ申聴かせ何卒なにとぞして料簡を入替えさせたく、万一改俊かいしゅん不致候わば如何様いかようにも成敗可仕つかまつるべく、もし又本人に於て向後を屹度きっと相慎しみ候節は、幾重にも御勘弁願上候。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
アヽ何かおつかさんにらひにでも来て、留守といふのに気を落したのではないかと、フト私の心に浮んでは、巾着きんちやくの一銭銅貨が急にやりたくなり、考へ直すいとまもなくえんを下りて、一ト走り
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
当局の御本人におい云々しかじかの御説もあらば拝承はいしょういたたく何卒なにとぞ御漏おんもら奉願候ねがいたてまつりそうろう
何卒なにとぞ余所よそながらもうけたまはりたく存上候ぞんじあげさふらふは、長々御信おんたよりも無く居らせられ候御前様おんまへさま是迄これまで如何いか御過おんすご被遊候あそばされさふらふや、さぞかしあら憂世うきよの波に一方ひとかたならぬ御艱難ごかんなんあそばし候事と、思ふも可恐おそろしきやうに存上候ぞんじあげさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すかし申しこの婚姻相延あいのべ申候よう決行致し候なおまた近日参上つかまつり入りこみたる御話し委細申上もうしあぐべく心得に候えども差当り先日七蔵に渡され候金百円及び御礼の印までに金百円進上しおき候あいだ御受納下されたく不悉ふしつ 亀屋吉兵衛様へ岩沼子爵家従けらい田原栄作たはらえいさくとありて末書に珠運様とやらにも此旨このむね鶴声かくせい相伝あいつたえられたく候と筆を
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
作「おめえあの事を聞いたか、是ハア困ったなア、実は銭がねえで困るから這入へえる真似しただア、だが余り這入へえたくはねえんだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小説などにあるあまい言葉はつかいたくない。趣味のうへから云つても、社交上わかい男女の習慣としても、つかたくない。三四郎は事実上不可能の事を望んでゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
物語ものがたむかし其許そのもとに金子を用立し事も有により昔を忘れ給はずは斯の如く難儀せし間少しの合力がふりよくあづかたくことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(向うからとりに来てもらってもよろしく御座ござ候。)このけい約書とひきかえに二百円おもらい下されたく、その金で「あ」の字の旦那だんな〔これはわたしの宿の主人です。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
れてたく何處どこへでもれてけ、うち道具だうぐなにらぬ、うなりともしろとて寐轉ねころびしまゝ振向ふりむかんともせぬに、なんうち道具だうぐくせ勝手かつてにしろもないもの
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
已に当市社交界の立物T氏K氏その他十数名の賛成を得居りそうらえば、必ず御列席下されたく、御帰着の時間には小生停車場に出迎え、その場より宴会場へ御伴い申す手筈にそうろう
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
馬鹿骨を折って炊いた糠臭ぬかくさい飯などは、この大事な空き腹にあてがいたくはない。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
と、私の心も寂然しんとなる。その寂然しんとなった心の底から、ふと恋しいが勃々むらむらと湧いて出て、私は我知らず泪含なみだぐんだ。ああ、成ろう事なら、此儘此墓の下へ入って、もう浮世へは戻りたくないと思った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
男「わたくしだッて死にたくはございませんけれども、よんどころない訳でございますから、何うぞお構いなく往らしって、もう宜しゅうございます」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何か編輯上の手違ひとは存じ候へども、爾来じらいかかる作品は文芸欄へおをさめ下されたく、切望の至りにへず候。右差し出がましき次第ながら御注意までに申し上げ候。頓首。
伊東から (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「一寸参堂仕りたく候えども、大兄の消極主義に反して、出来得る限り積極的方針をもって、此千古未曾有みぞうの新年を迎うる計画故、毎日毎日目の廻る程の多忙、御推察願上そろ……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぢのなきわからずやをおほせいだされ、あしもとからとりつやうにおきたてなさるには大閉口おほへいこうに候、此中このぢうよりしきり貴君樣あなたさま御手おてもとへおせなさりたく、一日もはや家督相續かとくさうぞくあそばさせ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つい愚痴もこぼしたくなるのですが、若しも小さな好奇心や冒険心を満足させる手段として、登山が最も適していることを発見したものとすれば、偶然ながらこれは大手柄であったかも知れません。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
花「わし神明様しんめいさんや明神さんちかいを立てゝるから、私が殺されても構わねえが、坊様に怪我アさせたくねえ心持だから、お前度胸をえなければいかんぜ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)