仙人掌の花しゃぼてんのはな
閑枝は、この小さな北国の温泉町へ来てからは、夕方に湖水のほとりを歩くことが一番好きであった。 丘一つ距てた日本海に陽が落ちると、見る見るうちに湖面は黒くなって、対岸の灯が光を増すのであった。 陽が、とっぷりと暮れる。芦の葉ずれ、にぶい櫓声、 …