魔物まもの)” の例文
それでは魔物まもの不承知ふしようちぢや。前方さきちつとも無理むりはねえ、るもらぬもの……出来でき不出来ふでき最初せえしよから、お前様めえさまたましひにあるでねえか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのなか一人ひとりが、ほんとうの人間にんげんで、一人ひとりが、魔物まものけたのだ。それはいくらおや兄弟きょうだいでも、見分みわけがつかないというはなしだ……。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と大きなこえのりました。するとそれなりすっと魔物まものえて、天子てんしさまの御病気ごびょうきはきれいになおってしまいました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ちっぽけな、みにくい魔物まものの姿になって、寝床ねどこのはしにすわり、熱い湯をおれたちにひっかけるんです。どうか、きて、そいつらを追っぱらってください。
どうもはや、たいへん、あの家には、すごい魔物まものがはいりこんでいて、いきなり、きみわるく、ふうう、と息をふっかけて、ながい指で顔をひっかきました。
けれども、べつにこわがる必要ひつようはないと思いました。たしかに、これは、危険きけん魔物まもの悪魔あくまのようなものではありません。かべも門も、じつに美しくできています。
世間せけんで一くち化物ばけものといふと、なに妖怪變化えうくわいへんげ魔物まものなどを意味いみするやうできはめて淺薄せんぱくらしくおもはれるが、わたしかんがへてるばけものは、餘程よほどふか意味いみるものである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
日吉ひよしの森へいってごらんなさい。今為朝が、五重塔ごじゅうのとうの上にでた老人の魔物まものにゆきましたぜ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、家の中ですか。いえいえそれはいけません。家の中には、まだ恐ろしい魔物まものが居るにきまっています。貴方がたもきっと喰われてしまいますよ。ああ、恐ろしい……」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御米およね言葉ことばには、魔物まものでもあるかのやうに、かぜおそれる調子てうしがあつた。宗助そうすけいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
戀女こひをんな輪近わぢかくへ奇異おつりき魔物まものいのして、彼女おてき調伏てうぶくしてしまふまで、それを突立つッたたせておいたならば、それこそ惡戲てんごうでもあらうけれど、いまのは正直正當しゃうぢきしゃうたう呪文じゅもんぢゃ、彼女おてきりて
兄上よ、そは小さき魔物まものならめ、かの赤き三角帽の
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ああ、それで、魔物まものころしてしまえば、本人ほんにん病気びょうきたすかるが、あやまって、本人ほんにんころしたら、とりかえしのつかぬことになってしまう。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きつかたき不足ふそくはせぬ。花片はなびらゆきにかへて、魔物まもの煩悩ぼんなうのほむらをひやす、価値ねうちのあるのを、わたくしつくらせませう、……おぢいさん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれどどろんとさお気味悪きみわるくよどんだみずそこには、どんな魔物まものんでいるかれないとおもうと、おじけがついて、度々たびたびみかけては躊躇ちゅうちょしました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まん中のくぐり戸のところだけが、魔物まものが口をあいているようにまっ黒だ。正太はあそこから中へ入らなければならないのだと思ったら、とたんにこわくなって引返そうかと思った。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なに、魔物まものだと? どけどけ、どいてみろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、その行列ぎょうれつは、だんだんおじいさんのほうちかづいてきました。それは、魔物まもの行列ぎょうれつでも、また、きつねの行列ぎょうれつでもなんでもありません。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
わすれもしない、温泉をんせんきがけには、夫婦ふうふ腕車くるまとほつた並木なみきを、魔物まものうです、……勝手次第かつてしだいていでせう。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
義家よしいえはまっくらなおにわの上につっって、魔物まものるとおもわれる方角ほうがくをきっとにらみつけながら、弓絃ゆみづるをぴん、ぴん、ぴんと三までらしました。そして
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「いよいよ魔物まものときまった」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このごろは、よるになるとしもがおります。そして、ほしかげは、魔物まもののようにすごくひかります。どんな人間にんげんでも、露宿ろしゅくすることはできますまい。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき天子てんしさまの御所ごしょ毎晩まいばん不思議ふしぎ魔物まものあらわれて、そのあらわれる時刻じこくになると、天子てんしさまはきゅうにおねつが出て、おこりというはげしいやまいをおみになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
六十余州よしう往来わうらいする魔物まもの風流ふうりうおもふべく、はたこれあるがために、闇川橋やみがはばしのあたり、やまそびえ、はなふかく、みちゆうに、みづはや風情ふぜいるがごとく、能楽のうがくける、まへシテと段取だんどりにもる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よくると、そのくもうえに、くろ着物きもの魔物まものっています。するどけんち、おそろしいかおをして、だんだん子供こどもからだちかづくのでした。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、氷山ひょうざんが、気味悪きみわるひかって、魔物まものきばのようにするどく、ところどころに、灰色はいいろそらをかもうとしていたからです。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ふえあなをのぞきながら、「このあななかに、なにかちいさな魔物まものでもすんでいるのではないか?」とおもいました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるよるのこと、すぐちかくにみずみずしいえた魔物まもののような燈火あかりがついたのです。これをた、一ぽん
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
魔物まもののすんでいるふかうみをもとおらなければならない。その用意よういが十ぶんできるなら、ゆけないこともないだろう。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
魔物まものだとおもって、人間にんげんころしてしまったら、たいへんだからね。」と、しょうちゃんは、感歎かんたんしていいました。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、このとしになるまで、まだこんなみごとな行列ぎょうれつたことがなかったのです。これはけっして人間にんげん行列ぎょうれつじゃない。魔物まものか、きつねの行列ぎょうれつであろう。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
明日あしたばんには、うんとゆきってきよう。」と、くろ魔物まものはいいました。次郎じろうは、かぜかみだとおもいました。そのうちに、くろ魔物まものは、かきのえだがりました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、これはなんだろうとおもいました。きっと魔物まものにちがいない。けれどもう自分じぶんいのちしいとおもいませんから、それをつかまえようといっしょうけんめいにあといました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いくらぼうきれでもってあなをつついても、そのなかからどんな魔物まものしませんでした。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さむかぜきゅうきたほうからこってきて、ゆきがちらちらとってきました。ると、さっきまで、つえをついて、くろ頭布ずきんをかぶっていたおばあさんは、じつは魔物まものであったのです。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そと昼間ひるまのようにつきひかりあかるかったのです。たかい、くろいやせたおとこが、ゆきだるまとはなしをしていました。そのおとこのようすは、どうしても魔物まものであって、人間にんげんとはえませんでした。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
石畳いしだたみになっていて、昼間ひるまは、建物たてものなかへはいったり、たりする人々ひとびと足音あしおとるのであったが、よるになると、おおきなとびらまって、しんとして、ちょうどねむった魔物まもののように、建物たてもの
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみあらいし、おそろしいかぜく、また、ふかうみなかには魔物まものがすんでいて、とおふねくつがえしてしまう。だれも、まだそのしまにいったものがないが、しまには、人間にんげんんでいるということだ。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
たちまち、魔物まものは、おおきなつばさばたいて、大空おおぞらがりました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
魔物まものか、人間にんげんか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)