トップ
>
闇
>
やみ
ふりがな文庫
“
闇
(
やみ
)” の例文
この
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
に、ただ一つ
生
(
い
)
きているもののごとく
思
(
おも
)
われたものがあります。それは、
半丁
(
はんちょう
)
おきごとに
点
(
とも
)
されている
電燈
(
でんとう
)
でありました。
老工夫と電灯:――大人の童話――
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
とりあえず
闇
(
やみ
)
の中を駅前の交番まで
辿
(
たど
)
りついてきいてみたが「さあ、今頃になって宿は無理でしょうな」と巡査は極めて冷淡である。
I駅の一夜
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しるべの
燈火
(
ともしび
)
かげゆれて、
廊下
(
らうか
)
の
闇
(
やみ
)
に
恐
(
おそ
)
ろしきを
馴
(
な
)
れし
我家
(
わがや
)
の
何
(
なに
)
とも
思
(
おも
)
はず、
侍女
(
こしもと
)
下婢
(
はした
)
が
夢
(
ゆめ
)
の
最中
(
たゞなか
)
に
奧
(
おく
)
さま
書生
(
しよせい
)
の
部屋
(
へや
)
へとおはしぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
暗い
闇
(
やみ
)
の中に、白と赤との二つの火が、夜鳥の目のようにぎらりと光っている。赤と白との二つの球は、危険警戒を標示する信号だ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
時刻は夜に入り
闇
(
やみ
)
の深まりも増したかに感ぜられる。庭の構いの板塀は見えないで、無限に地平に抜けている目途の闇が感じられる。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
いさんでフランスへ出かけていったのに、呼び戻さなければなりますまい。あの子の将来も、まっくら
闇
(
やみ
)
です。それから、あの、——
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
離れ離れに
闇
(
やみ
)
の中にたたずみ、悲哀と神経衰弱とに悩み、人間をいとい人生に飽いて、もはやなんらの希望もいだいてはいなかった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
仮面をはずした目に見える悪魔どもであり、赤裸になった
獰猛
(
どうもう
)
な魂らであった。光に照らされながら、その一群はなお
闇
(
やみ
)
の中にいた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
霧の上に、夜の
闇
(
やみ
)
が、その墨をまき始めた。一切のものが今にも失明しようとする者の、最後の視力のようにボンヤリしてしまった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「さうだ、
全
(
まつた
)
く
蒸
(
む
)
すね。
惡
(
わる
)
くすると、
明日
(
あした
)
は
雨
(
あめ
)
だぜ‥‥」と、
私
(
わたし
)
は
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
き
樣
(
ざま
)
に
答
(
こた
)
へた。
河野
(
かうの
)
の
眠
(
ねむ
)
さうな
眼
(
め
)
が
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
にチラリと
光
(
ひか
)
つた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
エンジ色の毛糸のショールを頭からかぶって、茂緒は、
闇
(
やみ
)
の中に見えぬわが家のあたりをながめて、母との問答を思いだしていた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
「春の夜の
闇
(
やみ
)
はあやなし」というようなたよりなさではあったが、話す人、聞く人もそれを
障
(
さわ
)
りにしてそのままにやむ話ではなかった。
源氏物語:50 早蕨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
この怪談仕掛物の
劇
(
はげ
)
しいのになると真の
闇
(
やみ
)
の内からヌーと手が出て、見物の袖を
掴
(
つか
)
んだり、蛇が下りて来て首筋へ触ったりします。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
古ぼけた
葭戸
(
よしど
)
を立てた縁側の
外
(
そと
)
には
小庭
(
こにわ
)
があるのやらないのやら分らぬほどな
闇
(
やみ
)
の中に軒の
風鈴
(
ふうりん
)
が
淋
(
さび
)
しく鳴り虫が
静
(
しずか
)
に鳴いている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
街道の常夜燈を遠ざかるにつれて、雑木林の中は、だんだん
闇
(
やみ
)
が濃くなって、その闇の中に黒い影を尾行するのは非常に困難であった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
中流より石級の方を望めば理髪所の
燈火
(
あかり
)
赤く
四囲
(
あたり
)
の
闇
(
やみ
)
を
隈
(
くま
)
どり、そが前を
少女
(
おとめ
)
の群れゆきつ返りつして
守唄
(
もりうた
)
の
節
(
ふし
)
合わするが聞こゆ。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
やがて、とことはの
闇
(
やみ
)
となり、
雲
(
くも
)
は
墨
(
すみ
)
の
上
(
うへ
)
に
漆
(
うるし
)
を
重
(
かさ
)
ね、
月
(
つき
)
も
星
(
ほし
)
も
包
(
つゝ
)
み
果
(
は
)
てて、
時々
(
とき/″\
)
風
(
かぜ
)
が
荒
(
あ
)
れ
立
(
た
)
つても、
其
(
そ
)
の
一片
(
いつぺん
)
の
動
(
うご
)
くとも
見
(
み
)
えず。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……(花岡の声は、永い間、だまっている。
闇
(
やみ
)
の中から、村子の姿を見つめているらしい。しまいに、低く、へえへえ、ときこえる声を ...
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
貴下はあの晩、一度工場の門を出て墓場へゆき、
闇
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れてこの
仏
(
ほとけ
)
を掘りだし、工場へ引返したのです。そして
人肉散華
(
じんにくさんげ
)
をやりました。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お浜の住み家であるトタンぶきのあばら屋から、辺りをうかがうようにして、一人の男が戸外の
薄
(
う
)
す
闇
(
やみ
)
のなかに出てきたのである。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
と思うと、抜打ちの太刀風に彼は早くも身をかわした。武芸の心得のある彼は路ばたの立ち木をうしろにして、
闇
(
やみ
)
を睨んで叫んだ。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
背伸
(
せの
)
びをして、三
尺
(
じゃく
)
の
戸棚
(
とだな
)
の
奥
(
おく
)
を
探
(
さぐ
)
っていた
春重
(
はるしげ
)
は、
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
から
重
(
おも
)
い
声
(
こえ
)
でこういいながら、もう一
度
(
ど
)
、ごとりと
鼠
(
ねずみ
)
のように
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
月は出でしかど、
三四
茂
(
しげ
)
きが
林
(
もと
)
は影をもらさねば、
三五
あやなき
闇
(
やみ
)
にうらぶれて、
眠
(
ねぶ
)
るともなきに、まさしく
三六
円位
(
ゑんゐ
)
々々とよぶ声す。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「まア、
貴嬢
(
あなた
)
、飛んでも無いこと
仰
(
おつ
)
しやいます、此上貴嬢が退会でもなさろものなら、教会は
全
(
まる
)
で
闇
(
やみ
)
ですよ、篠田さんの御退会で——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あのふさふさと巻いた
髪
(
かみ
)
が、あの
狭
(
せま
)
くるしい
箱
(
はこ
)
の中に納められて、じめじめした地下の
闇
(
やみ
)
のなかに
眠
(
ねむ
)
っているところを心に
描
(
えが
)
いた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
叫
(
さけ
)
ぶまもなく、ピュッ、ピュッと、風をきってくる
霰
(
あられ
)
のような
征矢
(
そや
)
。——早くも、四面の
闇
(
やみ
)
からワワーッという
喊声
(
かんせい
)
が聞えだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喜太郎は
狼狽
(
うろた
)
えながら、しわがれた声で
闇
(
やみ
)
の中の見知らぬ人間を
誰何
(
すいか
)
した。が、相手はまだ笑い声を収めたまゝ、じっとしている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その入口を通ったとき、わたしは、昔の人の住む国に逆もどりし、過ぎ去った時代の
闇
(
やみ
)
のなかに身を没してゆくような気がした。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
たとえばドイツの「ウェッターロイヒテン」は稲妻と物理的にはほとんど同じ現象であってもそれは決して稲田の
闇
(
やみ
)
を走らない。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大石橋
(
だいせっきょう
)
の戦争の前の晩、暗い
闇
(
やみ
)
の
泥濘
(
でいねい
)
を三里もこねまわした。背の上から頭の髪まではねが上がった。あの時は砲車の援護が任務だった。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その夜のうちにフィリピンのマルチン爆撃機は、
闇
(
やみ
)
のバシー海峡を飛びこえて、わが台湾
屏東
(
へいとう
)
飛行第八
聯隊
(
れんたい
)
の根拠地を夜襲したのである。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
香以は
闇
(
やみ
)
に紛れて茶屋へ引き取り、きわには
辞
(
ことば
)
を尽して謝し、「金は店からすぐ届ける」と云い
畢
(
おわ
)
って
四手
(
よつで
)
に乗り、山城河岸へ急がせた。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし
闇
(
やみ
)
の空を貫く光のように高くひらめいて、やがて消えて行ったこの出来事は、名状しがたい暗示を多くの人の心に残した。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その対立のために、この凶行も
闇
(
やみ
)
から闇へ葬り去られることと思ったのだろう。憲兵にとらえられたのはおそらく心外だったに相違ない。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
俄
(
にはか
)
に
眼
(
め
)
を
聳
(
そびや
)
かすやうにして
木陰
(
こかげ
)
の
闇
(
やみ
)
を
見
(
み
)
た。
彼
(
かれ
)
は
其處
(
そこ
)
におつぎの
浴衣姿
(
ゆかたすがた
)
が
凝然
(
じつ
)
として
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
て
筵
(
むしろ
)
から
離
(
はな
)
れることは
仕
(
し
)
なかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼らは申し合せたように、黙って
闇
(
やみ
)
の中を
辿
(
たど
)
って来ます。だから
忽然
(
こつぜん
)
私たちの前へ現われるまでは、まるで気がつかないのです。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
呼び出された
女童
(
めのわらわ
)
は、雨の降り込む
簀子
(
すのこ
)
の板敷にしょんぼり立っている男の姿を
闇
(
やみ
)
に
透
(
す
)
かしながら、さも驚いたらしく云った。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
外は鈍い青色を帯びた
闇
(
やみ
)
である。少し乗り出して仰いで見ると、庭の木立の真上の所に月が出ている。風はちっとも吹かない。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
すなわち三時間の間
闇
(
やみ
)
となったのです。暦で計算してみるとこれは
日蝕
(
にっしょく
)
のあった時ではないから、他の理由でかかる異変が起こったのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
もう
四辺
(
あたり
)
が真つ黒い
闇
(
やみ
)
になり、その都度毎に繃帯でしばつた腕に顔を突き伏せ
嗚咽
(
をえつ
)
して
霞
(
かす
)
んだ眼から滝のやうに涙を流した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
漆の如き
闇
(
やみ
)
の
中
(
うち
)
に貫一の書斎の枕時計は十時を打ちぬ。彼は午後四時より
向島
(
むこうじま
)
の
八百松
(
やおまつ
)
に新年会ありとて
未
(
いま
)
だ
還
(
かへ
)
らざるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
此よりサンタガタまでは、まだ若干の路程あるに、
闇
(
やみ
)
は漸く我等の車を
罩
(
つゝ
)
まんとす。馭者は
畜生
(
マレデツトオ
)
を連呼して、
鞭策
(
べんさく
)
亂下せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
城の山は全然見えず、霧と
闇
(
やみ
)
とが山を取り巻いていて、大きな城のありかを示すほんの微かな光さえも射していなかった。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
お互に手と手をとりあつて、
闇
(
やみ
)
の中を見すかしながら、どうしようかと途方にくれてをりました。川の音は、ます/\はげしくひゞいてゐます。
狐に化された話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
翌日
(
よくじつ
)
の
新聞
(
しんぶん
)
には、
此
(
こ
)
の
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
に
摸摸
(
すり
)
が
何人
(
なんにん
)
とやら
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
んで、
何々
(
なに/\
)
の
品
(
しな
)
が
盗
(
ぬす
)
まれたとのことを
挙
(
あ
)
げて、
盛
(
さかん
)
に
会社
(
くわいしや
)
の
不行届
(
ふゆきとどき
)
を
攻撃
(
こうげき
)
したのがあつた。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
奥深くはひこんで行くと、やがて、向ふの
闇
(
やみ
)
に、青く、きら/\と光るものがありました。いふまでもなく熊の目玉です。
熊捕り競争
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
ベンヺ こりゃ
何
(
なん
)
でも、
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
隱
(
かく
)
れて、
夜露
(
よつゆ
)
と
濡
(
ぬ
)
れの
幕
(
まく
)
という
洒落
(
しゃれ
)
であらう。
戀
(
こひ
)
は
盲
(
めくら
)
といふから、
闇
(
やみ
)
は
恰
(
ちょう
)
どお
誂
(
あつら
)
へぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
対馬守
(
つしまのかみ
)
は、
咄嗟
(
とっさ
)
にキッとなって居住いを直すと、書院のうちの
隅
(
すみ
)
から隅へ眼を放ち
乍
(
なが
)
ら、静かに
闇
(
やみ
)
の中の気配を
窺
(
うかが
)
った。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
半四郎君の出てゆく水の音が
闇
(
やみ
)
に響いてカパンカパンと妙に寂しい音がする。濁り水の動く
浪畔
(
なぐろ
)
にランプの影がキラキラする。全くの
夜
(
よる
)
となった。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
だんだん眼が
闇
(
やみ
)
になれて来た時一郎はその中のひろい野原にたくさんの黒いものがじっと座ってゐるのを見ました。
微
(
かす
)
かな青びかりもありました。
ひかりの素足
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
“闇”の解説
闇(やみ)とは、光の無い状態のこと日本国語大辞典/闇。暗闇(くらやみ)とも、暗黒とも。
(出典:Wikipedia)
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“闇”を含む語句
闇黒
暗闇
真闇
闇夜
薄闇
黒闇
闇中
闇々
宵闇
常闇
暁闇
諒闇
夜闇
真黒闇
夕闇
木下闇
真暗闇
闇路
眞闇
闇穴道
...