ぞく)” の例文
飯「そんな事をするには及ばない、内々の者に、百両の金を取る程の器量のある者は一人もいない、ほかから這入はいったぞくであろう」
此間このあひだうまれたすゑをとこが、ちゝ時刻じこくたものか、ましてしたため、ぞく書齋しよさいけてにはげたらしい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
という調子です。氏のこの言葉は氏のその時の心理の一部を語るものでしょうが、一体いったいは氏は怖くてぞくが追えなかったのです。
鞍馬くらまの夜叉王は、鞍馬山のおくにいるぞくのかしらでした。堅田かただ観音様かんのんさまの像のことをきいて、悪いことをたくらみました。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それは間違いありませんよ。ごらんなさい。これはその寝室の小さいテーブルの上に残してあったぞくの置き手紙です」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
みことはこんなにして、お道筋みちすじぞくどもをすっかりたいらげて、大和やまとへおかえりになり、天皇にすべてをご奏上そうじょうなさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「わたしにとれば父をころした悪人。伊那丸さまにはおいえぞく、八つざきにしてもあきたりない悪党あくとうでござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて立花左仲はあやふくも此所をのがれ漸々命は助りしと云ふものゝ盜み得し金はぞくの爲にうばはれ路用にせよとて投出せしわづか一分の金を拾ひ取心細くも夜の道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
王はおんみずか太刀たちふるって防がれたけれども、ついにぞくのためにたおれ給い、賊は王の御首みしるしと神璽とをうばってげる途中とちゅう、雪にはばまれて伯母おばみねとうげに行き暮れ
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
このうまりしが大將たいしやう説明はなせば、雀躍こをどりしてよろこび、ぼく成長おほきくならば素晴すばらしき大將たいしやうり、ぞくなどはなんでもなくち、そして此樣このやう書物ほんかれるひとりて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そうだねえ、大事件といえば、この頃銀座の××宝石商を襲ったぞくはいまだに逮捕されないじゃないか。どうだね、あの事件など、紫外線では解決できぬかね」
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「善く身をしょする者は、必らず世に処す。善く世に処せざるは、身をぞくする者なり。善く世に処する者は、必らずげんに身を修む。げんに身を修めざるは世にぶる者なり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
先生。牛丸君がかどわかされたことも、実はこの宝さがしに関係があると思うんです。そしてほんとうは、ぼくが連れていかれるはずのところ、ぞくはまちがって牛丸君を
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
としふゆ雪沓ゆきぐつ穿いて、吉備国きびのくにから出雲国いずものくにへの、国境くにざかい険路けんろえる。またとしなつにはくような日光びつつ阿蘇山あそざん奥深おくふかくくぐりりてぞく巣窟そうくつをさぐる。
これではその子を教育するのではなくてぞくするのですから、私はある時大臣に教育法というものはこういうものである、擲ぐるのはよくないということを充分説明しました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この大切なる鍵を泥棒に渡しその宝を奪われて、初めてその過ちをさとるとは何事ぞ。立憲的国民としてこれほど君主に対して不忠実なることは無いのである。君恩をぞくするというものだ。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
もとより女ながら一死をして、暴虐ぼうぎゃくなる政府に抗せんと志したるわらわ、勝てば官軍くればぞくと昔より相場のきまれるを、虐待の、無情のと、今更の如く愚痴ぐちをこぼせしことの恥かしさよと
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
禪師ぜんじられたるくび我手わがて張子はりこめんごとさゝげて、チヨンと、わけもなしにうなじのよきところせて、大手おほでひろげ、ぐる數十すうじふぞくうてすこやかなることわしごとし。ついきずえてせずとふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
機嫌きげんをとるために負けてさしあげるのは主君をあざむくへつらい武士です。風上かざかみにおけん。しかし、内藤君、君心あれば臣心あり。すべて君臣主従しゅじゅう貴賤きせん上下しょうかの別をわすれるものは乱臣らんしんぞく子ですぞ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此方こなたつよければそのぞくども鏖殺みなごろしにすること出來できるのである。
「なんのぞくなどでませうぞ」
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ぞくはエレベーターの計略が、てっきり成功するものと信じきっていたのですから。顔色をかえるほどおどろいたのも、けっしてむりではありません。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「なあ、龍巻。てめえとおれとは、その昔、天下を二分するような元気で別れたんだが、おたがいに、いつまでケチなぞく頭領かしらじゃしようがないなあ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時ぞく周章しゅうしょうの余り、有り合わせたる鉄瓶てつびんを春琴の頭上に投げ付けて去りしかば、雪をあざむ豊頬ほうきょうに熱湯の余沫よまつ飛び散りて口惜くちおしくも一点火傷やけどあととどめぬ。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
存て居るやと云へば私し事いまだ傳吉妻と相成あひならざる前野尻宿與惣次方に居し時傳吉こと江戸えどより國元へ歸り候とて與惣次方へとまりしに途中とちうよりぞくに付られ難儀の由私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうして今朝けさはや刑事けいじはなしをしはじめた。刑事けいじ判定はんていによると、ぞくよひから邸内ていないしのんで、なんでも物置ものおきかなぞにかくれてゐたにちがひない。這入口はいりくち矢張やは勝手かつてである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
燈火ともしびもと書物しよもつらき、ひざいだきてせ、これは何時何時いつ/\むか何處どこくにに、甚樣じんさまのやうなつよひとありて、其時代そのときみかどそむきしぞくち、大功たいこうをなして此畫このゑ引上ひきあげところ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなやとおももなく、猛火もうかぞくかくれた反対はんたい草叢くさむらうつってまいりました……。
「それはおそるべきぞくのしるしだ。烏啼天駆うていてんくという怪賊があるが知っているかね」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のち煬帝やうだい遼東れうとうむるとき梯子はしごつくりててき城中じやうちう瞰下みおろす。たかまさ十五丈じふごぢやう沈光ちんくわう尖端とつさきぢてぞくたゝかうて十數人じふすうにんる。城兵じやうへい這奴しやつにくきものの振舞ふるまひかなとて、競懸きそひかゝりてなかばより、梯子はしごくじく。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほかでもないが、これから富士ふじ人穴ひとあなへいって、そこに住みおる和田呂宋兵衛わだるそんべえというぞくのかしらに会うのじゃ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴫沢しぎさわてる女その他二三の人の話によるとぞくはあらかじめ台所にしのんで火を起し湯をかした後
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
所持しよぢし候を見付られかく仕合しあはせ全くぞくの爲に切害せつがいせられ候なるべしと申上ければ濱奉行はまぶぎやうも是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一体、身代金請求なんて一時代前の古くさい犯罪で、今時、こんな真似をする奴は、よっぽど間抜けなぞくですよ。それに、従来この手で成功した例は、ほとんどないといってもよい位です
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「よく知りませんが、今、我々のほうへ向かってくる宇宙のぞくのことですか」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
うろたえたぞくが所持の短刀で初代を刺し、そのまま手提袋を持って逃亡した。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
禁園きんえんぞく
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勿論もちろん運転手に化けたぞくの一味、その道の心得あるものに相違なかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)