)” の例文
蹴爪けづめを高く上げて、あたかも生きているあいだは武侠ぶきょうの精神のおかげでえておうとしなかった助命を切望しているように見えた。
それから今一つ変に思はるるは母なる人の手を取ることの許可を母その人にはずしてかへつてその人の娘たる恋人に請ひし事なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
頼む人に一分の利益をも与える事ならば、自己の名聞を捨てて頼まれてやるがいい。仏菩薩は人にわれれば身肉手足さえもった。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
だから「梅松論」や古典「太平記」も、尊氏が院宣をうための、薬師丸の派遣を、すべて三草越え以後のこととしているのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふ告げよ、汝等こゝにてさいはひなる者よ、汝等はさらに高き處に到りてさらに多く見またはさらに多くの友を得るを望むや。 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
多少の英語と日本語とを解することを知り、それを奇とするの念から、大六にうて貰い受け、自分の助手として使っているわけです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、どうしたらよかろうかと問いますと、早速その書面をビールガンジの関所に送って何分の処置をうがよいという事であった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ソロモン王の言葉にも「ふ、なんぢら乾葡萄をもてわが力をおぎなへ、林檎をもてわれに力をつけよ、われは愛によりてみわづらふ」
乾あんず (新字旧仮名) / 片山広子(著)
左樣さやうわたくしきみ確信くわくしんします、きみ我等われら同志どうしとして、永久えいきゆう秘密ひみつまもこと約束やくそくたまはゞ、誠心せいしんより三度みたびてんちかはれよ。
ことに彼らの団長の小林少年が、篠崎君のいにおうじて、出動したことがわかっているものですから、一同、いよいよ勇みたったのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それからも一つひがまうとするかれこゝろさわやかにするのは與吉よきちであつた。とうからあまつて與吉よきち卯平うへい戸口とぐちふさがつてはぜにうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こう言って門番に取次をうと、すぐ大庁たいちょうへ通された。そして、ちょっと待っていると、ひげの白いせた老宰相が出て来た。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おもい見よ、誰か罪なくして亡びし者あらん、ただしき者の絶たれし事いずくにりや、我の観る所によれば不義をたがえし悪を
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
飛衞ひゑいいにしへるものなり。おなとき紀昌きしやうといふもの、飛衞ひゑいうてしやまなばんとす。をしへいはく、なんぢまづまたゝきせざることをまなんでしかのち可言射しやをいふべし
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くも書かれたり、ゆるゆる熟読じゅくどくしたきにつき暫時ざんじ拝借はいしゃくうとありければ、その稿本こうほんを翁のもととどめて帰られしという。
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
われは車に導かんことをひしに、猶太婦人は直ちに手を我肘に懸け、姫は我と並びて行けり。我は姫に我肘にらんことを勸むるたんなかりき。
而して彼れは冷眼に之を見たり。是れ彼れが一派の餓鬼大将(ふ語の不敬を許せ、猶君が所謂楠公権助のごときのみ、しき意味あるに非る也)
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
軍服ぬぎて盥卓たらいづくえの傍へらむとせしメエルハイムは、「かしこは若き婦人がたの居間なり、無礼なめなれどその窓の戸くさしてよ、」とわれにひぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と互の誓詞せいしいつはりはあらざりけるを、帰りて母君にふことありしに、いといたう驚かれて、こは由々ゆゆしき家の大事ぞや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しやうき、(八九)田文でんぶんしやうとせり。呉起ごきよろこばず。田文でんぶんつていは(九〇)こうろんぜん、ならんか』と。田文でんぶんいはく、『なり』と。
持ちたる易風社えきふうしゃの主人にはるるままその他の小篇と合せて一巻となし出版せしめたるに忽ち発売禁止となりぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
う。古の道をててゆうの意を行わん。可ならんか。」などと、叱られるに決っていることを聞いてみたり
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と、かれおもきたり、さらまたの六號室がうしつ鐵格子てつがうしなかで、ニキタが患者等くわんじやら打毆なぐつてゐること、モイセイカがまちつては、ほどこしふてゐる姿すがたなどをおもす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ごく懇意こんいでありまたごく近くである同じ谷中の夫の同僚どうりょうの中村の家をい、その細君に立話しをして、中村に吾家うちへ遊びに来てもらうことをうたのである。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼はわれるまま、すべての問題を信の一字に託して、その夜は絹夜具の中に平和な夢を結んだのだった。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
へば平常つねだてにるべきねがひとてうたがひもなく運平うんぺい點頭うなづきてらばきてくかへれ病人びやうにんところ長居ながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その用法はまた普通のうとも別であるが、是にはテコヒという名詞は有ったにしても、その念願の情を表する形容詞までは、相撲道には入用が無かった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼はその血だらけになってくだけ飛んだ人形の足を師匠にうて貰い受け真綿にくるみ白木の箱に収めて
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若し這般しやはんの和訳艶情小説を一読過せんと欲するものは、ふ、当代の照魔鏡せうまきやうたる検閲官諸氏の門を叩いてうやうやしくその蔵する所の発売禁止本を借用せよ。(二月十二日)
彼は必ず「う、ゆるせ、今まさに去らんとす。ただし、しばし、君ここを去れ」といわん。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかも経済的には全く力を失って居った君は、其後も屡々しばしば赤瀬氏の出資をい、ようやく今日までやって来た、市の指定となったことも赤瀬氏あったればこそである、その後
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
これこそ日頃尋ね求める、我らにとっては大事の加担者! これを手放してよいものかと、礼を厚うしてい求むれば、意外にもすぐうべないくれて、共に木曽路へ行こうと云う。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
近く閻魔王ゑんまわううて彼の身邊に現じ、生き乍ら焦熱地獄に投げ入れて、阿鼻の苦患くげんめさせるであらうぞ。其方も前非を改めて、矢並行方を追ひ退け、身を愼んで罪を待つがよからう。
彼の顔はキリストの前に立った罪人のように、百の憐愍れんびんうているのだった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おとうと三郎さぶろうは、あねがかわいそうになりましたので、ともに母親ははおやのたもとにすがってゆるしをいましたけれど、母親ははおやはついにゆるさなかったばかりでなく、むすめいえからそとしてしまいました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
数日の食糧をたづさへてるも中途に餓死がしせんのみ、ふ今夜此地に露宿ろしゆくし、明朝出立二日間位の食糧をたづさへて水源探究たんきうおもむき、而してふたたび当地に帰らんのみと、人夫等異口同音かたく此説を
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
欽明天皇の十三年、仏像を難波の堀江にてたことは書紀に明らかであるが、その後、推古天皇のみ代になって、巨勢大夫をしてその仏像をわしめ、善光寺に安置した様子がうかがわれる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
室ごとにわるるままに、金剛杖に焼印を押すが、不二の象形の下に、合目や岳の名を書いたり、不二形の左右に雲をあしらい、御来光と大書して、下に海抜三千二百何メートルと註してあったり
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
門に伺候して著書の序文をうものが引きも切らず、一々応接するいとまあらざる面倒臭さに、ワシが序文を書いたからッて君の作は光りゃアしない、君の作が傑作ならワシの序文なぞはなくとも光ると
露伴の出世咄 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
わが愛する者よう急ぎはしれ
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
まうはゞやとぞんさふらふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
北国から帰るとすぐ、また菊亭晴季はるすえはかって、豊臣とよとみという新姓氏しんせいしをたて、朝廷にうて、以後、豊臣秀吉と称することになった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さればわが愛する遠祖とほつおやよ、ふ我に告げよ、汝の先祖達は誰なりしや、汝わらべなりし時、年は幾何いくばくの數をか示せる 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かれはやし持主もちぬしうてつたのである。それでもあまりにひとくち八釜敷やかましいので主人しゆじんたゞ幾分いくぶんでも將來しやうらいいましめをしようとおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこにもまたお説教を聞きたいという者がありますから説教いたし、その翌朝出立しようとすると按手礼をいに来た者が二十名ばかりありました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いやしげなるびじクリイムの響のうちには嘲弄とうろうこころこもらむとてなり。なほ高諭こうゆふ(三〇・九・八附読売新聞より)
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
過去は即ち未来の運命を指定する者なり、未来は即ち過去の影なり。ふ吾人をして明治文学史を観察せしめよ。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
お立寄りをわれるたびに踊り子の連中には、相当の振舞があるにはあるが、いよいよ大迷惑なのは米友です。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
折々定連じょうれんの客に投票をひ新しき演題を定めあるひは作曲と演奏との批評を求むるなどこの小紅亭の高尚最新の音楽普及に力をつくす事一方ひとかたならぬを察すべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と、かれおもきたり、さらにまたの六号室ごうしつ鉄格子てつごうしなかで、ニキタが患者等かんじゃら打殴なぐっていること、モイセイカがまちっては、ほどこしうている姿すがたなどをおもす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)