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袖
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そで
ふりがな文庫
“
袖
(
そで
)” の例文
歌が終わって
袖
(
そで
)
が下へおろされると、待ち受けたようににぎわしく起こる楽音に舞い手の
頬
(
ほお
)
が染まって常よりもまた光る君と見えた。
源氏物語:07 紅葉賀
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
車夫のかく答へし後は
語
(
ことば
)
絶えて、車は
驀直
(
ましぐら
)
に走れり、紳士は
二重外套
(
にじゆうがいとう
)
の
袖
(
そで
)
を
犇
(
ひし
)
と
掻合
(
かきあは
)
せて、
獺
(
かはうそ
)
の
衿皮
(
えりかは
)
の内に耳より深く
面
(
おもて
)
を
埋
(
うづ
)
めたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「無くなったな。」赤シャツの農夫はつぶやいて、も一度シャツの
袖
(
そで
)
でひたひをぬぐひ、胸をはだけて脱穀小屋の戸口に立ちました。
耕耘部の時計
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
が、
紅
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
で、
色白
(
いろじろ
)
な娘が運んだ、
煎茶
(
せんちゃ
)
と
煙草盆
(
たばこぼん
)
を
袖
(
そで
)
に控へて、
然
(
さ
)
まで
嗜
(
たしな
)
むともない、其の、
伊達
(
だて
)
に持つた
煙草入
(
たばこいれ
)
を手にした時、——
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
生残た妻子の愁傷は実に
比喩
(
たとえ
)
を取るに言葉もなくばかり、「
嗟矣
(
ああ
)
幾程
(
いくら
)
歎いても仕方がない」トいう口の下からツイ
袖
(
そで
)
に置くは
泪
(
なみだ
)
の露
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
「ぢやア
僕
(
ぼく
)
は帰るよ。もう………。」と
云
(
い
)
ふばかりで
長吉
(
ちやうきち
)
は
矢張
(
やは
)
り
立止
(
たちどま
)
つてゐる。その
袖
(
そで
)
をお
糸
(
いと
)
は軽く
捕
(
つかま
)
へて
忽
(
たちま
)
ち
媚
(
こび
)
るやうに
寄添
(
よりそ
)
ひ
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
若さと若さとが互いにきびしく求め合って、葉子などをやすやすと
袖
(
そで
)
にするまでにその情炎は
嵩
(
こう
)
じていると思うと耐えられなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
中格子
(
なかごうし
)
の後ろに、ストーブに身を寄せ、三重まわしの大きなマントの
袖
(
そで
)
を両手で上げている、背の高い男がひとりそこに立っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
と、その拍子に女はコートの右の
袖
(
そで
)
に男の手が
触
(
さわ
)
ったように思った。で、
鬼魅
(
きみ
)
悪そうに体を左に
反
(
そ
)
らしながら足早に歩いて往った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
今度は糊のごわ/\したる
白胸
(
しろむね
)
シヤツを頭からすつぽりかぶされて、ぐわさぐわさと袖を通せば是はしたり
袖
(
そで
)
、
拳
(
こぶし
)
を没すること三四寸。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
わが
袖
(
そで
)
、炎々の焔あげつつあるも、われは嵐にさからって、王者、肩そびやかしてすすまなければならぬ、さだめを負うて生れた。
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると真奈ちやんが、すぐお君のそばへとんで行つて、お君の
袖
(
そで
)
をひいて、指環のブラ下つてゐる真下へつれて行つていひました。
かぶと虫
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
鷹揚
(
おうよう
)
に腰を下した、出札の河合は上衣の
袖
(
そで
)
を通しながら入って来たが、横眼で
悪々
(
にくにく
)
しそうに大槻を
睨
(
にら
)
まえながら、奥へ行ってしまった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
入
(
い
)
れ
替
(
かは
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのは
熊
(
くま
)
の
膏薬
(
かうやく
)
の
伝次郎
(
でんじらう
)
、やち
草
(
ぐさ
)
で
編
(
あ
)
んだ
笠
(
かさ
)
を
冠
(
かむ
)
り
狸
(
たぬき
)
の
毛皮
(
けがは
)
の
袖
(
そで
)
なしを
被
(
き
)
て、
糧切
(
まぎり
)
は
藤
(
ふぢ
)
づるで
鞘
(
さや
)
が
出来
(
でき
)
てゐる。
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と
快川
(
かいせん
)
は、
伊那丸
(
いなまる
)
の落ちたのを見とどけてから、やおら、
払子
(
ほっす
)
を
衣
(
ころも
)
の
袖
(
そで
)
にいだきながら、
恵林寺
(
えりんじ
)
の
楼門
(
ろうもん
)
へしずかにのぼっていった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なるほど殿下ならば、王権の
袖
(
そで
)
に隠れて、一切高見の御見物であろうから、ほんの数時間気付かれぬ程度の模造品でよかったであろう。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
折返して「そういうことなら
敢
(
あえ
)
て反対もできまい。無い
袖
(
そで
)
は振られぬというからね」と応じ、あっさり見放してしまったのである。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
界隈
(
かいわい
)
の子供と同じように弘もいくらか
袖
(
そで
)
の長い着物で写真に映っていたが、その都会の風俗がいかにもよく似合って可愛らしく見えた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何
(
なん
)
の
故
(
ゆゑ
)
とも
知
(
し
)
らねども
正太
(
しようた
)
は
呆
(
あき
)
れて
追
(
お
)
ひすがり
袖
(
そで
)
を
止
(
とゞ
)
めては
怪
(
あや
)
しがるに、
美登利
(
みどり
)
顏
(
かほ
)
のみ
打赤
(
うちあか
)
めて、
何
(
なん
)
でも
無
(
な
)
い、と
言
(
い
)
ふ
聲
(
こゑ
)
理由
(
わけ
)
あり。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
孫六はこれをはじめとし、差しつめ引きつめさんざんに射、鎧の
袖
(
そで
)
、草摺りの
間
(
すき
)
、
胄
(
かぶと
)
の鉢下、胸板、脇腹、相手かまわず敵を射た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ほんにあたしはもうこんなうれしい事はないよ。いよいよお前にも運が向いて来たのだね。」伯母は
袖
(
そで
)
で目をふきながらいった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
彼はすべてを混同し、人物を取り違え、祖父の
袖
(
そで
)
を引張っては、何も理解していないことがわかるような
馬鹿
(
ばか
)
げた質問をやたらにした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼
(
かれ
)
はどつかり
坐
(
すわ
)
つた、
横
(
よこ
)
になつたが
又
(
また
)
起直
(
おきなほ
)
る。
而
(
さう
)
して
袖
(
そで
)
で
額
(
ひたひ
)
に
流
(
なが
)
れる
冷汗
(
ひやあせ
)
を
拭
(
ふ
)
いたが
顏中
(
かほぢゆう
)
燒魚
(
やきざかな
)
の
腥膻
(
なまぐさ
)
い
臭
(
にほひ
)
がして
來
(
き
)
た。
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
す。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
重四郎は
是
(
これ
)
幸
(
さひは
)
ひと娘の
部屋
(
へや
)
を
覗
(
のぞ
)
き見れば
折節
(
をりふし
)
お浪は
只
(
たゞ
)
獨
(
ひと
)
り
裁縫
(
ぬひもの
)
をなし居たるにぞ
頓
(
やが
)
て
件
(
くだ
)
んの
文
(
ふみ
)
を取出しお浪の
袖
(
そで
)
へ
密
(
そつ
)
と
入
(
いれ
)
何喰
(
なにくは
)
ぬ
顏
(
かほ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一々は申上げられませんが、その一つ二つを拾つて申しますと、私の亡くなつた女房は、吉原の中所の店の新造で、
誰
(
た
)
が
袖
(
そで
)
と申しました。
銭形平次捕物控:253 猫の首環
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜の更けかゝつた風が、泣きたい思ひの私の
両脇
(
りやうわき
)
を吹いて通つた。私は外套の
袖
(
そで
)
を
掻
(
か
)
き合せ乍ら、これからどうしようかと思つて
佇
(
たゝず
)
んだ。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
運慶は頭に小さい
烏帽子
(
えぼし
)
のようなものを乗せて、
素袍
(
すおう
)
だか何だかわからない大きな
袖
(
そで
)
を
背中
(
せなか
)
で
括
(
くく
)
っている。その様子がいかにも古くさい。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
亭主がようやく起き出して、
袖
(
そで
)
や裾の
皺
(
しわ
)
くちゃになった
単衣
(
ひとえ
)
の
寝衣
(
ねまき
)
のまま、
欠
(
あくび
)
をしながら台所から外を見ながらしゃがんでいた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女は、そこまでいってくると自分の言葉で、激昂したと見え、着ていた
縮緬
(
ちりめん
)
の羽織の
袖
(
そで
)
を口にくわえてベリベリと引きさいた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
部屋へ
這入
(
はい
)
ると、美佐子はばたばたと
袂
(
たもと
)
でその辺の空気をハタいた。そしてその
袖
(
そで
)
で顔をおさえて急いであるだけの窓を開いた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
西洋人に日本の郷土色を知せるには便利だろうという実業家の心尽しだった。
稚子髷
(
ちごまげ
)
に振り
袖
(
そで
)
の少女の給仕が
配膳
(
はいぜん
)
を運んで来た。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
数千年前に
袖
(
そで
)
を分かった
従兄弟
(
いとこ
)
を
捜
(
さが
)
すのに、変ってまた変った現在の言葉を、
足場
(
あしば
)
手がかりにしようとするのはまちがいである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
が、いくら売立てが
流行
(
はや
)
るにしても、
正物
(
しやうぶつ
)
の寒山拾得が揃つて飯田橋を歩いてゐるのも不思議だから、隣の道具屋らしい男の
袖
(
そで
)
を引張つて
寒山拾得
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一般の西洋人は、茶の湯を見て、東洋の珍奇、稚気をなしている千百の奇癖のまたの例に過ぎないと思って、
袖
(
そで
)
の下で笑っているであろう。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
その時気づいたことだが、彼は別にふところ手をしている風にもないのだが、左手の
袖
(
そで
)
がぶらぶらし、袖の中がうつろに見えるのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
「待って下さい」あやは良人の
袖
(
そで
)
にすがりついた、「いいえお止めは致しません、あなたが出ていらっしゃるのならわたくしもまいります」
十八条乙
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
カバード・コートを脱いで、
袖
(
そで
)
をまくりあげると、酢酸をたらし込んだ冷たい水で、せっせと黒江氏の
咽喉
(
のど
)
を
湿布
(
しっぷ
)
しはじめた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その法は、
袖
(
そで
)
の中へ
生薑
(
なましょうが
)
を入れて歩くべし。ただちに治すること妙なり。薑の
干
(
ひ
)
たるときは、また生なるに取り替えるべし。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
なかなか
隅
(
すみ
)
におけない、
白粉
(
おしろい
)
を
袖
(
そで
)
や胸にもつけてくる人だというし、またある人も、気さくなよいサラリーマンだといった。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
又は眼の前ではさり気なく男の言葉にうなずいていても、いつかどこかで人知れず
袖
(
そで
)
を噛みしめていることなぞがあります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
為基定基の弟に
成基
(
しげもと
)
、
尊基
(
たかもと
)
が無かった訳ではないが、頼もしくした二人に離れて、
袖
(
そで
)
にやどれる月を見るかな、とは何という悲しい歌だろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
とドノバンがシャツの
袖
(
そで
)
をちぎって、くるくるとゆわえた。見る見る
鮮血
(
せんけつ
)
は
仮
(
かり
)
ほうたいをまっかに染めた。ドノバンはじっとそれをみつめた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
おつぎが
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
ざら
)
しの
袷
(
あはせ
)
を
棄
(
す
)
てゝ
辨慶縞
(
べんけいじま
)
の
單衣
(
ひとへ
)
で
出
(
で
)
るやうに
成
(
な
)
つてからは
一際
(
ひときは
)
人
(
ひと
)
の
注目
(
ちうもく
)
を
惹
(
ひ
)
いた。
例
(
れい
)
の
赤
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
が
後
(
うしろ
)
で
交叉
(
かうさ
)
して
袖
(
そで
)
を
短
(
みじか
)
く
扱
(
こき
)
あげる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
長い土手を夕日を帯びてたどって行く自分の姿がまるでほかの人であるかのようにあざやかに見えた。涙が
寝衣
(
ねまき
)
の
袖
(
そで
)
で拭いても拭いても出た。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
腕時計の
硝子蓋
(
ガラスぶた
)
を、白い実験着の
袖
(
そで
)
で、ちょいと丸く
拭
(
ぬぐ
)
いをかけて、そう皮肉ったのは
白皙
(
はくせき
)
長身の理学士
星宮羊吾
(
ほしみやようご
)
だった。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分の歌にはろくな者無之「
駒
(
こま
)
とめて
袖
(
そで
)
うちはらふ」「見わたせば花も
紅葉
(
もみじ
)
も」
抔
(
など
)
が人にもてはやさるる位の者に有之候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
といって、岡倉氏は自分でその服をひろげ、強いて私を
起
(
た
)
たして
背後
(
うしろ
)
から着せてくれましたが、
袖
(
そで
)
を通すと、どうも妙なもので私は驚きました。
幕末維新懐古談:65 学校へ奉職した前後のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ワイシャツの
袖
(
そで
)
に火が移った。と見ると、神谷はいきなり地だんだを踏みはじめた。両の
拳
(
こぶし
)
を握って
烈
(
はげ
)
しく板壁を
叩
(
たた
)
いた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その時、私は和服を着ていたので、わたしは黙って蝙蝠のように両
袖
(
そで
)
をひろげて見せた。お玉さんはかの白い歯をむき出してにやにやと笑った。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それで今日もぼんやりしていたのですが、傍の孫が
袖
(
そで
)
を引くので、見返ると
岡田八千代
(
おかだやちよ
)
女史が笑顔で立っていられました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
“袖”の解説
袖(そで)は、衣服の部分名称であり、筒状になっていて腕を通す部分である。スリーヴ(en: sleeve)、マンシュ(fr: manche)。
ほとんどは身頃と別に裁断・縫製し、できた後で身頃の肩に袖付(そでつけ)される。ただし、ドルマン・スリーヴなど、身頃から布地が続いているものも希にある。
袖のない衣服は、腕が露出するノースリーブか、マントのように上半身全体を外側から覆う衣服である。
(出典:Wikipedia)
袖
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
“袖”を含む語句
筒袖
両袖
袖無
領袖
袖口
袖畳
袖摺
袖乞
袖裏
広袖
長袖
袖屏風
鎧袖
兩袖
袖褄
鰭袖
袖搦
振袖新造
廣袖
突袖
...