なで)” の例文
なでて見るとおかしな手障てざわりだから財布の中へ手を入れて引出して見ると、封金ふうきんで百両有りましたからびっくりして橋のたもとまで追駆おっかけて参り
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
贅肉いぼあるもの此神をいのり、小石をもつていぼをなで、社のえんの下の𥴩子かうしの内へなげいれおくに、日あらずしていぼのおつる事奇妙なり。
ぽう、ぽっぽ——あれ、ね、娘は髪のもつれをなでつけております、えりの白うございますこと。次のの姿見へ、年増が代って坐りました。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いよい今夕こんせき、侯の御出立ごしゅったつまり、私共はその原書をなでくりまわし誠に親に暇乞いとまごいをするようにわかれおしんでかえしたことがございました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
而して、町端まちはずれの寺などに行って、落葉の降る墓場の中に立って、足下あしもとのその名も知らない冷たな墓石をなでて考え込む。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
わしかえ、私はの、年をツた人さ。」と、底意地の惡さうな返事をして、自分の頭をなでて呉れる。其の聲はたしか何處どこかで聞いたことのあるやうな聲だ。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そのうちのどれにしても帰りにくかった古里ふるさとへ、錦子は帰らなければならなかったのだが、故郷にも待っている冷たい眼は、傷心の人をなでてはくれない。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
月の光は夕日の反映が西の空から消え去らぬうち、早くも深夜に異らぬ光を放ち、どこからともなく漂ってくる木犀もくせいかおりが、柔かで冷い絹のように人の肌をなでる。
虫の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
六月の爽やかな暁風あさかぜが、私の微動もしない頬をなでた。私はサッキから眼を覚ましているのである。
なでいや然樣さやう云るゝと實に面目めんぼく次第もなし併し年中御世話にばかりなり其上節季せつき師走しはす押迫おしつめての金の才覺さいかくあまり心なしに御話おはなしも出來ぬゆゑよんどころなく淺草田町の利兵衞と云國者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はその本堂の隙間すきまからのぞいて暗い中から顔をなでる処の冷気を吸いながら、しばらくこの世を忘れる事が出来るのだが、その本尊の顔を見るとこの世が少々忘れ兼ねるのである。
暗くなった夜空を振り仰ぐと古帽子のつばを外ずれてまたこまかいものが冷たく顔をなでる。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おもむろに庭樹をながめて奇句を吐かんとするものは此家の老畸人、剣をなでし時事をうれふるものは蒼海、天を仰ぎ流星を数ふるものは我れ、この三箇みたり一室に同臥同起して、玉兎ぎよくと幾度いくたび
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「イヤお恥しいことだが僕は御存知の女気おんなけのない通り詩人気は全くなかった、『権利義務』で一貫して了った、どうだろう僕は余程俗骨が発達してるとみえる!」と綿貫は頭をなでてみた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
彼は卑弥呼の頭の傍へ近寄って片膝つくと、両手で彼女の蒼白あおじろほおなでてみた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、後宮こうきゆう香烟かうえんにつつまれてやす土耳古トルコの皇后、蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、絶間無たえまななでさすりのつかれ、おまへの心はしたたかに滿足した惡徳の深い安心を知つてゐる、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
八五郎は長んがいあごなでて感心して居りました。
手のしはをなで居る秋の日なたかな 萬子
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
僕のあたまをなでながら
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
贅肉いぼあるもの此神をいのり、小石をもつていぼをなで、社のえんの下の𥴩子かうしの内へなげいれおくに、日あらずしていぼのおつる事奇妙なり。
可愛かあいらしい手を出してひざしたなでつてる、あゝ/\可愛かあいだ、いまのうくすりるよ、……煙草たばこ粉末こなぢやアかへつてけない
手を替え、品を替え、なでつねりつして口説いてもうむと言わないが、東京へ行懸けに、うつばりに釣して死ぬ様な目に逢わせて置いたから、ちっとは応えたろう。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聴いていた壮士荻野六郎が、赤黒い、ズングリふとった腕をなで上げながらへえとにおちない声で返事をした。
だが、寺田は、その声を聞いても、まだ返事が出来ずに、それでも不甲斐なくガタガタ顫える手で、周章あわてて壁をなで廻すと、やっとスイッチを見つけて、力一杯にひねった。
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ものうい稽古唄や物売の声につれて、狭間ひあわいの風が窓から流れ入って畳の上に投げ落した横顔をなでる心地好さ。君江は今こういう時、矢田さんでも誰でもいいから来てくれればいい。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なでて見ると雪であった。あ、雪が降って来た! といって太吉はみちを急いだ。この辺には人家がなかった。全くの広い野原の中で、目を遮る大きな林もなかった。雪は次第に降って来た。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
してまたばくたるなでさすりで、わたしを存分ぞんぶんいておくれ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「男をなで斬りといふ洒落しやれぢやないのか」
お蘭もそんならこうと、下女へ話して急に着物を着替え小紋縮緬の変り裏に黒朱子くろじゅす繻珍しゅっちんの帯をしめて、丸髷のおくれ髪をなであげ、白金を出まして
晃 (納戸を振向く)衣服きものでも着換えるか、髪などなでつけているだろう。……ふすま一重だから、背戸へ出た。……
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おしょさんがたぼをかきつけているうまさ——合せ鏡で、毛筋棒けすじのさきで丸髷の根元をなでている時かつらのように格好のいい頭を、あんぽんたんはじっと見つめていた。
幸ひにきずもうけずあたまなでまはしこしをさする、こは福一なりとてみなわらへばおのれもわらふ。下部しもべらはおちたる雪をとりのけまどをもかりにつくろひなどす。
藤色の手柄てがらをかけた丸髷まるまげ綺麗きれいなで付けている様子。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あれは。近「絵草紙ゑざうしだよ。梅「へえゝ綺麗きれいなもんですな、なでて見ちやアわかりませんが、此間このあひだ池田いけださんのおぢやうさまが、これだとおつしやいましたがわかりませんでした。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
俯向うつむいた襟足が、すっきりと、髪の濃いのに、青貝摺あおがいずりの櫛がきらめく、びんなでつけたらしいが、まだ、はらはらする、帯はお太鼓にきちんとまった、小取廻こどりまわしの姿のさ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とてもしぬべき命也、ひきさきころさばころし給へ、もしなさけあらば助たまへと怖々こは/\熊をなでければ、熊はおきなほりたるやうにてありしが、しばしありてすゝみいでわししりにておしやるゆゑ
そののちも何かの会のおり、写真を写すおり、御一緒になって一言ひとこと二言ふたことおはなししたこともありましたが、私の思出は何時いつも一番お若いときの、袖をなでておはなしをなさっていた面影が先立ちます。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
母「あゝ痛い/\、そうなでても駄目だから拳骨で力一ぺえおっぺせよ、拳骨でよ、あゝ痛い/\」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
菜切庖丁なっきりぼうちょう刺身庖丁さしみぼうちょうウ、向ウへ向ウへとウ、十一二度、十二三度、裏を返しまして、黒い色のウ細い砥ウもちイましてエ、やわらこう、すいと一二度ウ、二三度ウ、なでるウ撫るウばかりイ
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父はその琴をなでていった。
名残が惜しいから暇乞いとまごいをしながら馬の前面まえづらなでて、おれえ江戸へき、奉公してけえって来るまで、達者で居て呉んろとわしい泣きやんして、其の馬を撫でたりさすったりしやすと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
黄昏たそがれに、御泊おとまりを待つ宿引女やどひきおんなの、ひさしはずれの床几しょうぎに掛けて、島田、円髷まるまげ銀杏返いちょうがえしなでつけ髪の夕化粧、姿をななめに腰を掛けて、浅葱あさぎに、白に、紅に、ちらちら手絡てがらの色に通う、団扇うちわの絵を動かすさま
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれよりわるうございますと、それは恐入おそれいりましたな、わたくしは美人だと思つてましたが、器量きりやう善悪よしあしなでたツてわかりません……あ……あぶねえなア、んですなア……これは……。近「人力車じんりきだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
うすかみむすがみに、きちんとなでつけて、衣紋えもんをすつとはせた……あの、えり薄黄色うすきいろで、してねずみあゐがかつた、艷々つや/\として底光そこびかりのする衣服きものに、なんにもない、しろい、丸拔まるぬきの紋着もんつき
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
便所へくにも手を引いて連れて行き、足や腰をなでてあげると云うのも、実は私が迷いを起したからじゃ、とても此の煩悩が起きては私は出家が遂げられん、真に私はお前に惚れた
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一つつまずきながら、かまちへ上って、奥に仏壇のある、ふすまを開けて、そこに行火あんかをして、もう、すやすやとた、なでつけの可愛らしい白髪しらがと、すそに解きもののある、女中の夜延よなべとを見て、そっとまた閉めて
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まア此寒このさむいのに可愛かあいい手で足をなでてゝるところはうだえ、……可愛想かあいさうだなー、……残余あまつた料理ものがあつたツけ……賓客きやくのこした料理ものさらなかに取つてあるだらう、……アーそれさ
暫く経ってわたくしが気が附きまして眼をひらいて見ますと、四辺あたりくろうございますから、出ようと存じても出る事も立つことも出来ませんで、わたくしは死んで埋められたのではないかと手をなでて見ると