わが)” の例文
右は大家の事をいふ、小家しょうかの貧しきは掘夫をやとふべきもついえあれば男女をいはず一家雪をほる。わが里にかぎらず雪ふかき処は皆しかなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
支那しな帝使を西班牙スペイン帝使のしもに座せしめ、わがたり友たる西帝せいていの使を、賊たり無頼の徒たる支那帝の使の下にせしむるなかれといしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あれに近寄り給ふなと二二三隠れまどふを、人々、そはいづくにと立ち騒ぐ。真女子入り来りて、人々あやしみ給ひそ。わがの君な恐れ給ひそ。
飄遊へういうわが性なり。飄遊せざれば吾性は完からざるが如き感あり。天地粋あり、山水美あり、造化之を包みて景勝の地に於て其一端を露はすなり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
あはれなるかな吾友わがともよ、我のラサ府にありし時、その身につみのおよばんを、知らぬこころゆわがために、つくせし君をわれいかに、てゝや安くすごすべき
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
僕不敏といえども貴兄の奮励に従いわが生のあらん限り事に従わんことを神かけて誓約可致いたすべく候、末文に今一語申添もうしそえたきは
師を失いたる吾々 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
存亡の領域がやや明かになった頃、まずわが存在を確めたいと云う願から、とりあえず鏡を取ってわが顔を照らして見た。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わが愛する頼山陽氏と世上の物識ものしりとに教へる。魚は右にあらうが、左にあらうが、早く箸をおろした方が一番いいのである。
この言大いにわが志を得たり。吾の祈念きねんこむる所は、同志の士甲斐甲斐かいがいしく吾志を継紹けいしょうして尊攘の大功を建てよかしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
小「わが身不肖にして本懐を遂げずとも、しん豫讓よじょうの故事になぞらえ、この頭巾を突き破るは実父のあだ大野の首を掻き取る心思い知れや、大野惣兵衞」
かかる大切たいせつの場合にのぞんでは兵禍へいかは恐るるにらず、天下後世国を立てて外に交わらんとする者は、努〻ゆめゆめわが維新いしん挙動きょどうを学んで権道けんどうくべからず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あゝわれ此宵こよい、わが肩によりかゝる、若き男の胸こそ欲しけれ。ロマンチツクなる事やなぎのかげにも優りたるわが心のものうき疲れを、かの人は吸ふべきに。
清仏しんふつ戦争の後、仏蘭西フランス兵の用いた軍馬はわが陸軍省の手で買取られて、海を越して渡って来ました。その中の十三頭が種馬として信州へ移されたのです。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……お粂を世話していた気持も、実は色恋ばかりでもなく、こいつを娘とも兄妹きょうだいとも、また女房とも思って、わがままをしたりされたりしたかったのに。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが民族の文化的実力を過早に自惚うぬぼれて大戦争を起こし、遂に滅亡に近い運命を招いた帝王の鼻がありました。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
崖は傾斜が急で下りられない。大迂回をして漸く拾い上げたが、一時はわがこと終れりと悲観したのであった。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
吾、醜しと見られし時、わがむねのいたみて、さびしく泣きたることいかばかりぞや。そのとききみひとり吾を憐みぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
せめての腹愈はらいやしには、わが鐵拳てつけんをもつてかれかしら引導いんどうわたしてれんと、驅出かけだたもと夫人ふじんしづかとゞめた。
わが興邦おきくにはなほ乳臭ちのか机心つくえごころ失せず。かつ武芸を好める本性なればかか幇助たすけになるべくもあらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
静かに立ちてあれば、わがそばなる桑の葉、玉蜀黍たうもろこしの葉は、月光げつくわうを浴びて青光あおびかりに光り、棕櫚しゆろはさや/\と月にさゝやく。虫のしげき草を踏めば、月影つきかげ爪先つまさきに散り行く。露のこぼるゝなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
やすみししわが大王おほきみの、あしたにはとりでたまひ、ゆふべにはいり立たしし、御執みとらしの梓弓あずさのゆみの、長弭ながはず中弭なかはず)の音すなり、朝猟あさかりに今立たすらし、暮猟ゆふかりに今立たすらし、御執みとらしの梓弓の
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
友人いうじん松井通昭まつゐつうせうわが七福しちふくえいずるのうたせらる。ろくするものこれなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
わが背子せこと二人見ませば幾許いくばくかこのる雪のうれしからまし
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
辰めが一生はあなたにと熱き涙わが衣物きものとおせしは、そもや、うそなるべきか、新聞こそあてにならぬ者なれ、それまことにしてまことある女房を疑いしは
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次ぎにわが同盟国英国皇帝の御誕生が一八六五年、即位が一九一〇年、治世が七年、おとしが五二歳。これを一緒にすると
思う人のくちびるに燃ゆる情けの息を吹く為には、わがひじをも折らねばならぬ、吾くびをもくじかねばならぬ、時としては吾血潮さえ容赦もなく流さねばならなかった。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俗にいう武士の風上かざかみにも置かれぬとはすなわちわが一身いっしんの事なり、後世子孫これを再演するなかれとの意を示して、断然だんぜん政府の寵遇ちょうぐうを辞し、官爵かんしゃく利禄りろくなげう
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
京師にて吉田の鈴鹿石州、同筑州別して知己の由、また山口三輶も小林のために大いに周旋しゅうせんしたれば、鈴鹿か山口かの手を以て海外までもわが同志の士通信をなすべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それでも樹木じゅもくを植え、吾が種をき、我が家を建て、吾が汗をらし、わが不浄ふじょうつちかい、而してたま/\んだ吾家の犬、猫、鶏、の幾頭いくとう幾羽いくわを葬った一町にも足らぬ土が
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此奴こいつらはわが身上みのうえを知って居る上からは助けて置いては二人の難儀と思い、永禪和尚と声を掛けられるや否や持って居た刀で庄吉の肩へ深く切付ける、庄吉はきゃアと云って倒れる。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なお平気でわがしたいことをなして生くるまで生きていることは、単に勇気ばかりでは出来ない、勇気以上の悟りがなければ出来ないのであろう、単に悟ったというばかりでもどうかしら
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わが見る所にては短歌会諸子は今に至りて一の工夫もなく変化もなくただ半年前に作りたる歌の言葉をあそこここ取り集めてわずかに新作としつつあるにはあらざるか。かくいふわれもその中の一人なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
つく/″\本尊の容態ようだいを仰ぎ見るに驚く可し。一見尋常一様の観世音菩薩の立像の如くなるも、長崎にて物慣れしわが眼にはまぎれもあらず。光背の紋様、絡頸らくけいの星章なんど正しく聖母マリアの像なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見おろしてわがる谿の石のべに没日いりひひかりさすところあり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
心付こゝろつくとわが端艇たんていにはもなく、かいい。
かくばかりなるわがこひに
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一旦いったん帰京かえって二度目にまた丁度ちょうど行きつきたる田原がきい狼狽ろうばいし、わが書捨かきすてて室香に紀念かたみのこせし歌、多分そなたがしって居るならんと手紙の末にかき頓智とんちいだ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やがて、ゆめからめた。此一刻いつこくブリスから生ずる永久の苦痛が其時卒然として、代助のあたまおかしてた。かれくちびるいろうしなつた。かれは黙然として、われわが手をながめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
余が苦心せし墨使ぼくし応接、航海雄略等の論、一も書載せず。ただ数箇所、開港の事をほどよく申べて、国力充実の後打攘しかるべしなど、わが心にも非ざる迂腐うふの論を書付けて口書とす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
きのふまでわが衣手ころもでにとりすがり父よ父よといひてしものを
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
くるしむなかれわがとも
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もちろんどこの国だって隣づき合がある以上はその影響を受けるのがもちろんの事だからわが日本といえども昔からそう超然としてただ自分だけの活力で発展した訳ではない。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
珠運しゅうん梅干渋茶に夢をぬぐい、朝はん平常ふだんよりうまく食いてどろを踏まぬ雪沓ゆきぐつかろく、飄々ひょうひょう立出たちいでしが、折角わがこころざしを彫りしくし与えざるも残念、家は宿のおやじききて街道のかたえわずか折り曲りたる所と知れば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
妹が家の板戸おしひらきわが入れば太刀の手上たがみに花散りかゝる
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
くるしむなかれわが友よ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
東京大阪を通じて計算すると、わが朝日新聞の購読者は実に何十万という多数に上っている。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
郡主は燕王の従姉じゅうしなり。燕王かずして曰く、皇考の分ちたまえるわがかつ保つあたわざらんとせり、何ぞ更に地をくを望まん、たゞ奸臣かんしんを得るの後、孝陵こうりょうえっせんと。六月、燕師浦子口ほしこうに至る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わが歌をよろこび涙こぼすらむ鬼のなく声する夜の窓
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
にごりて待てるわが恋は
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
実に今回のバッタ事件及び咄喊とっかん事件は吾々われわれ心ある職員をして、ひそかにわが校将来の前途ぜんと危惧きぐの念をいだかしむるに足る珍事ちんじでありまして、吾々職員たるものはこの際ふるって自ら省りみて
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)