ひやゝ)” の例文
卯平うへい勘次かんじとのあひだ豫期よきしてごとひやゝがではあつたが、丁度ちやうど落付おちつかない藁屑わらくづあしいてはにはとり到頭たうとうつくるやうに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大佐はひやゝかに片頬かたほに笑みつ「はア、閣下、山木には無骨ぶこつな軍人などは駄目ださうです、既に三国一の恋婿こひむこ内定きまつて居るんださうですから」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いはけづつて點滴したゝみづは、階子ばしごに、垂々たら/\しづくして、ちながら氷柱つらゝらむ、とひやゝかさのむのみ。何處どこいへほのほがあらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思へば悟道ごだうの末も稍〻やゝ頼もしく、風白む窓に、傾く月をさしまねきてひやゝかに打笑うちゑめる顏は、天晴あつぱれ大道心者だいだうしんしやに成りすましたり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
御大家ごたいけのお孃樣……だか、奧樣だか、……阿母おつかさん……だか知らないが、お駕籠かごにでも召さないとお疲れになるんだね。』と、小池はひやゝかに笑つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「広田先生や野々宮さんはさぞあとで僕等をさがしたでせう」と始めて気が付いた様に云つた。美禰子はむしひやゝかである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これらの事につき熟思つら/\おもふに、きぬおるにはかひこいとゆゑ阳熱やうねつこのみぬのを織にはあさの糸ゆゑ阴冷いんれいこのむ。さてきぬは寒に用ひてあたゝかならしめ、布はしよに用てひやゝかならしむ。
「然し世間のラブと云ふものは、貴方の云ふやうな、そんな冷たいひやゝかなものばかりでも無いでせう。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
が、この親子の間柄あひだといふものは、祖父が余り過度に愛したせゐでもあらうが、それは驚くばかりひやゝかで、何かと言つては、き親子で衝突して、なぐり合ひを始める。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
外でひやゝかな空気に触れるとよひが足りない。もすこし飲んで出ればかつたと思つた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もう何事なにごとおもひますまいおもひますまいとて頭巾づきんうへからみゝおさへていそあし五六歩ごろつぽかけいだせば、むね動悸どうきのいつしかえて、心靜こゝろしづかにえていろなきくちびるにはひやゝかなるみさへうかかびぬ。
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まして侍従の君はます/\驕慢きょうまんに、残酷になり、彼が熱を上げれば上げるほどひやゝかな仕打をし、もう少しと云う所へ来ては突っ放すので、可哀そうな平中は、とう/\それが原因で病気になり
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
竹本たけもと」や「常磐津ときはづ」を初めすべての浄瑠璃じやうるりは立派に複雑な感激をあらはして居るけれど、「音楽」から見れば歌曲と云はうよりは楽器を用ゐる朗読詩とも云ふべく、咄嗟とつさの感情に訴へるにはひやゝか過ぎる。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
『いけません!』と船長せんちやうひやゝかにわらつた。
の森のかげ、くらひやゝなるつらねのもとを
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さて、その刹那せつなひやゝかに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
季節きせつあめしめつたつちまれにかつとあつひかりげられて、日歸ひがへりのそら強健きやうけん百姓ひやくしやう肌膚はだにさへぞく/\と空氣くうきひやゝかさをかんぜしめて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
雨戸あまどけて欄干らんかんからそとると、山気さんきひやゝかなやみつて、はしうへ提灯ちやうちんふたつ、どや/\と人影ひとかげが、みち右左みぎひだりわかれて吹立ふきたてるかぜんでく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひやゝかな小池の言葉には答へないで、お光は沈んだ調子ながらに、昔しの思ひ出をなつかしみつゝ語つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
村の人々、無情なる村の人々、死してもなほ和睦わぼくする事をあへてせぬ程のひやゝかなる村の人々の心! この冷かなる心に向つて、重右衛門の霊は何うして和睦せられよう。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
三四郎はう云ふ場合になると挨拶に困る男である。咄嗟の機が過ぎて、あたまひやゝかに働き出した時、過去を顧みて、あゝ云へばかつた、うすればかつたと後悔する。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地寒ちかんのよわきとつよきとによりてこほりあつきうすきとのごとし。天に温冷熱をんれいねつの三さいあるは、人のはだへあたゝかにくひやゝ臓腑ざうふねつするとおな道理だうり也。気中きちゆう万物ばんぶつ生育せいいくこと/″\く天地の気格きかくしたがふゆゑ也。
何事か暫しさゝやきしが、一言毎ひとことごと點頭うなづきてひやゝかに打笑める男の肩を輕く叩きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
と侯爵のひやゝかに笑ふを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今こそわれはひやゝかに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そらえたつき放棄はうきしてある手水盥てうづだらひのぞいてはひやゝかにわらうてる。彼等かれらあまりにひまどつてればつきはこつそりとくびかたむけてあひだからのぞいてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
……お二階にかい病床びやうしやうを、ひさしぶりで、下階した八疊はちでふえんさきで、かぜひやゝかな秋晴あきばれに、どうふをがりながら
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを梅子はひやゝかな挨拶と思つたにちがひない。其ひやゝかな言葉が、梅子の平生の思ひ切つた動作どうさうらに、何処どこにか引つかゝつてゐて、とう/\此手紙になつたのだらうと代助は判断した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
舌のただれるまで吸うた煙管にまた煙草を詰めながら、道臣はひやゝかに言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
山の清水のひやゝかなるが爲めなるべし。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
どの玉葱たまねぎひやゝかに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
社會しやくわいはう彼等かれら二人ふたりぎりめて、その二人ふたりひやゝかなそびらけた結果けつくわほかならなかつた。そとむかつて生長せいちやうする餘地よち見出みいだなかつた二人ふたりは、うちむかつてふかはじめたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「一時間や二時間早う着いても仕樣がない。先きい行く車追ひ拔いたかて、乘つてる客の手柄にならん。」と、千代松はひやゝかに言つて、めただけの賃錢をやると、竹丸を連れてずん/\歩き出した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
何故なぜです」と代助はひやゝかにいていた。梅子は眉をうごかした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きみ大分だいぶかはつたね」とひやゝかに云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)