とも)” の例文
数多たくさん抱えているじょちゅう達は、それぞれ旦那衆だんなしゅうのおともをして屋根船に乗り込んで、隅田すみだの花見に往っているので家の中はひっそりしていた。
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ところで、どういふわけで、そんな子ともの私が寫眞しやしんなどはじめるやうになつたかといへば、そのころわたしは、三宅克巳氏ちよの「せう寫眞術しやしんじゆつ
「まあ、ご苦労くろうな、ただバケツをっておともをするだけなの。」と、おねえさんは、ほんとうに、りょうちゃんがかわいそうになりました。
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
林助りんすけの一番上の娘の子、八歳になる光子みつこの手を引き、すこし大きな荷物になりそうだったので、「中学生」の俊次を、ともにつれた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「おともしましょう」清子の返事を聴いた下女は、立ち際に津田の方を見ながら「旦那様だんなさまもいっしょにいらっしゃいまし」と云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うかゞひ友次郎殿事お花樣の御部屋おへやへ忍び來られたり此事たしかに見屆け候故御注進ちうしん申上候と云ければ喜内はさわぎたるていもなく吾助其方とも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこでどこまでもおひめさまのおともをして行くつもりで、まず難波なにわのおとうさんのうちへおれしようとおもって、鳥羽とばからふねりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
だれにいうともない独言ひとりごとながら、吉原よしわらへのともまで見事みごとにはねられた、版下彫はんしたぼりまつろうは、止度とめどなくはらそこえくりかえっているのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
みんなは、大国主神が、おとなしいかたなのをよいことにして、このかたをおともの代わりに使って、ふくろを背おわせてついて来させました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
法被はつぴてらとも棺桶くわんをけいた半反はんだん白木綿しろもめんをとつて挾箱はさんばこいれた。やが棺桶くわんをけ荒繩あらなはでさげてあかつちそこみつけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくしももう店をしまつて戻るのでござります。御差支おさしつかへなければ途中までおともいたしませう。お宿やどはどちらでござります。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
正久さんは盲目だが上品な老人で、ともがついて祖母のために療治に来てくれたが、なにしろ患者が多いので祖母の方から通う日も多かった。
故殿ことの(本多出雲守)のおともをして、大坂陣に加わった合戦の思い出話として、よく他書にもあるように書き伝えられたものらしいのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一體いつたい誰彼たれかれといふうちに、さしいそいだたびなれば、註文ちうもんあはず、ことわか婦人をんななり。うつかりしたものもれられねば、ともさしてられもせぬ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……そうして二、三度お逢いした後のある朝、いつもともに連れておいでになる腰元こしもとがまいりまして、何とも言わずに置いて行った螺鈿らでんの小箱。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まず男のほうには負うとかになうとか、ほかにいろいろの持ち方があり、すこし大きな物ならともの男をつれて、持たせて行くというみちがあった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれども遣らねばならぬ。遣るならば両親ふたおやが附き添うて、腰元にともさせて、華やかに喜び勇んで遣りたかった。けれどもそれも出来なかった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
私は昨日ゲィツヘッドを出て參りました。で、若し用意がお出來になりますなら、明朝早くおともして歸りたいと存じますが。
「見ていたのはあっしじゃありません、依右衛門のともをして行った、番頭の宇吉で、この男はまた大道辻講釈師ほど達者に話してくれましたよ」
あるひは美しき芸者のともするものに箱を持たせて雪もよひのいとど暗きを恐るるが如くに歩み行く姿のいかにえんなるや。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その頃、ともつれもない美貌の湯治客があらわれた。二十七八であらう。ちよつと都会風で、明るくかつ健康さうだつた。
山の貴婦人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
それは、彼が、下城げじょうをする際に、いつになく機嫌きげんのよさそうな顔をしているので、ともの侍たちが、不思議に思ったと云うのでも、知れるのである。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
正三君はお部屋へやまでおともした。照彦様は勉強机デスクに坐ったまましばらく考えていたが、頭をおさえてシクシク泣きだした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
餘り仰々ぎょう/\しくならないように、ともの人数なども目立たぬ程にして参る、と云うことであったけれども、右大将定国、式部大輔しきぶのたゆう菅根などゝ云った人々
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あれはがけのあつめとしるく土手どてかげそゞろさむげに、をりふしともする三五らうこゑのみ何時いつかはらず滑稽おどけてはきこえぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宋公の妻の父の家が城内の西門の内にあったが、ある日宋公が国王の乗るような輿こしに乗り、たくさんのともれて入って来ておじぎをしていってしまった。
考城隍 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
彼は今や、まさしくジナイーダの寵愛ちょうあいを失ったので、老夫人に取入ろうと格別の勉励べんれいぶりを示し、貸馬車で夫人のおともをして、総督そうとくの所へ出かけさえした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
あいつはいつかも話したとおり例の山田宗徧そうへんの弟子で、やはりぼく一(上野介の符牒ふちょう)の邸へ出入りをしている、茶会さかいでもある時は、師匠のおともをして行って
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
叔父が笑うのも道理で、鹿狩りどころかすずめ一ツ自分で打つことはできない、しかし鹿狩りのおもしろい事は幾度も聞いているから、僕はおともをすることにした。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おおせなかばながら、わたくしは信濃へおともをつかまつりまするぞ。留守番役はかたくお断わり申します」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「つづみの与吉——それは、三島の宿で雇って、眼はしのききますところから、おともに加えてここまでつれまいった人足ですが、さては、司馬のまわし者……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わたしたちはみんなで——リーズとマチアとわたしと三人に、人形とカピまでおともれて、長い散歩さんぽをした。わたしはこの五、六日ひじょうに幸福であった。
はしくと、外套がいとう引かけて出た。からだたましい倔強くっきょうな民が、私おとも致しましょう、と提灯ちょうちんともして先きに立つ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
警官の巡回を増してもらうやら、二人いる書生の上に更に屈強な青年を一人傭入やといいれるやら、珠子の通学のかえりには書生をともさせるやら、出来る丈けの用心をした。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひらけたツて、貴方あなた芝居しばゐらツしやいよ、一日おともいたしませう。岩「地獄ぢごく芝居しばゐありますか。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしもひと金米糖こんぺいたうでもいたゞいて、みなさんのおともをしたいものです。御覽ごらんとほり、わたしはこの棧橋かけはし番人ばんにんでして、みなさんのおともをしたいにも、こゝをいてはかれません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「北さんが、せっかく連れて来て下さるというのに、おことわりするのも悪いと思って、私や園子までおともして来て、それで北さんにご迷惑がかかったのでは、私だって困るわ。」
故郷 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すぐに、よろこんでおともするが、今ぼくは一つ大切な思索の結論にさしかかっているのだ。もう少しでけりがつくと思う。だから、ちょっとのあいだ、ほうっておいてくれたまえ。
われは姫のともしたる人の男ならざりし嬉しさに、幸あらん夜をこそ祈れと聲高く呼びて去らんとせしに、姫進み寄りて、惡しき人かな、早くフイレンチエにのがれ行かばやといひつゝも
とものけらいしゅうのうち、たれひとりあとにつづくことができないくらいでした。
一献酌もうとは有難ありがたい、是非ぜひともいたしたい、早速さっそくお供致したい。だが念のめに申して置くが、私には金はない、実は長崎から出て末たばかりで、塾で修業するその学費さえはなはだ怪しい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
曾良というのは芭蕉の弟子で、芭蕉奥羽行脚あんぎゃの時ともとなって、何かとその世話をして歩いた男であったのであるが、加賀に這入はいった時病気になって芭蕉に別れ、一人江戸に帰ったのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ともやつこさへこのやうに、あれわいさの、これわいさの、取りはづす
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おれは君に此場を立ち退いてもらひたい。挙兵の時期が最もい。しどうすると問ふものがあつたら、おともをすると云ひたまへ。さう云つて置いて逃げるのだ。おれはゆうべ寝られぬから墓誌銘ぼしめい自撰じせんした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お大名の道中のおともの侍にはかなりの道楽者がある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馬や車やともなんぞはどこにある。
「ええ、おともしませう。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
ともは あと
蛍の灯台 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
つれて參りますと主個あるじに言てにはかの支度辨當べんたうつゝ吹筒すゐづつげ和吉を呼で今日は吾儕わしが花見に行なれば辨當を脊負しよひともをしてと言ば和吉はかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとりは、さいぜん、村上賛之丞むらかみさんのじょう築城問答ちくじょうもんどうをやってしゅびよくそのはなをへこまされたはなかけ卜斎ぼくさいのおとも、すなわち泣き虫の蛾次郎がじろうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)