人形にんぎょう)” の例文
そのとき、のぶは、お人形にんぎょう着物きものをきかえさせて、あそんでいましたが、それを手放てばなして、すぐにおかあさまのそばへやってきました。
青い花の香り (新字新仮名) / 小川未明(著)
十四、五になる大概たいがいいえむすめがそうであるように、袖子そでこもその年頃としごろになってみたら、人形にんぎょうのことなぞは次第しだいわすれたようになった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
といいながら、はこをあけますと、中からかわいらしいお人形にんぎょうさんやおもちゃが、たんと出てきました。むすめはだいじそうにそれをかかえて
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
才蔵は御岳みたけにつくまで、じゅうぶんうでをきたえておこうというので宿やどへつくと稽古槍けいこやりりて、源次郎をワラ人形にんぎょうのようにきたおす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに小さな梯子はしごが掛かり、梯子の上で、人形にんぎょうの火消しが鳶口とびぐちなどを振り上げたり、火の見をしていたりしている形であります。
はじめのうち少年は、ほんとに生きているのだと思ったけれど、まもなく、なあんだ人形にんぎょうなんだ、と気がつくと、いきなり大声でわらいだした。
うそをつけ。つらあらったやつが、そんな粗相そそうをするはずァなかろう。ここへて、よく人形にんぎょうあしねえ。こうに、こんなにろうれているじゃねえか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
彼は一人の洋装の麗人が喫茶ギボンの飾窓ショウインドウの前で立ちどまったままスローモーションのあやつ人形にんぎょうのように上体をフラリフラリと動かしているのを認めた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
きわめて簡単なものだが、この鉤を一つの人形にんぎょうのように見ることが許されていたのではあるまいか。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もしも、それがしゃべったり、動いたりしなかったら、オーラはきっとお人形にんぎょうだと思ったでしょう。
これもおのずから透明とうめいになり、鉄格子てつごうしの中にむらがった何匹かの猿を現して見せる。それからまた塀全体はあやつ人形にんぎょうの舞台に変ってしまう。舞台はとにかく西洋じみた室内。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分は机の前にくくりつけられた人形にんぎょうのような姿勢で、それを読み始めた。自分の眼には、この小さな黒い字の一点一かくも読み落すまいという決心が、ほのおのごとく輝いた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東京には箪笥たんす町とか鍛冶かじ町とか白銀しろがね町とか人形にんぎょう町とか紺屋こんや町とかゆみ町とかにしき町とか、手仕事にちなんだ町が色々ありますが、もう仕事の面影おもかげを残している所はほとんどなくなりました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
糟谷かすやは机にむかったなり目をくうにしてぼうぜん考えている。細君はななめにおっとたいし、両手をそでに入れたままそれを胸にわせ、口をかたくとじて、ほとんど人形にんぎょうのようにすわっている。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
人形にんぎょう蒐集熱しゅうしゅうねつにかかっている若い夫人は、おもちゃ人形店をあさった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ちょっときれいな人形にんぎょうだな。どこのくに人形にんぎょうかしらん?」と、かれは、おもいました。そして、しばらく、ちゅうちょしていましたが
お父さんの見た人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そればかりでなく、袖子そでこ人形にんぎょうのことなぞを以前いぜんのように大騒おおさわぎしなくなったころには、光子みつこさんともそうあそばなくなった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まえさんが、どこまで出来できたかたいという。その心持こころもちァ、はらそこからさっしてるが、ならねえ、あっしゃァ、いま、人形にんぎょうってるんじゃァねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのクリスマス・ツリーには、あかりや、金紙きんがみや、りんごが、どっさりつるさがっていて、そのまわりは、人形にんぎょうやおもちゃの馬が、ぎっしりならべてある。
人形にんぎょうの紙をみ神光あかしで焼くこと七たび、かくして、十ぽう満天まんてんの星をいのりますれば、兇難きょうなんたちどころに吉兆きっちょうをあらわして、どんな大敵にいましょうとも
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目金めがね屋の店の飾り窓。近眼鏡きんがんきょう遠眼鏡えんがんきょう双眼鏡そうがんきょう廓大鏡かくだいきょう顕微鏡けんびきょう塵除ちりよ目金めがねなどの並んだ中に西洋人の人形にんぎょうの首が一つ、目金をかけて頬笑ほほえんでいる。その窓の前にたたずんだ少年の後姿うしろすがた
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一〇九 盆のころには雨風祭とてわらにて人よりも大なる人形にんぎょうを作り、道のちまたに送り行きて立つ。紙にて顔をえがうりにて陰陽の形を作り添えなどす。虫祭の藁人形にはかかることはなくその形も小さし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ダンス(木製もくせい人形にんぎょう
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これらの粘土細工ねんどざいくは、おどろいたかおつきをして、きゅうに、その仕事場しごとばへはいってきた派手はで着物きものたお人形にんぎょうつめているようすでした。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「とぼけちゃいけねえ。人間にんげん人形にんぎょう見違みちがえるほどおに七ァまだ耄碌もうろくしちゃァいねえよ。ありゃァ菊之丞きくのじょうちげえあるめえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
茶色ちゃいろかみをかぶったようなおとこ人形にんぎょうで、それをかせばをつぶり、こせばぱっちりと可愛かわい見開みひらいた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まどガラスの中には、小さな人形にんぎょうが三つ、赤やみどりふくて、まるで、ほんとに生きているようだった。
ほんのちょっとのまでいいから、あのかわいい人形にんぎょうって、よくかおたいものだ、ただ一でいいからかおたいものだ。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「やはり、きているほうが、ていてもいがあっていいな。んでいる人形にんぎょうでは、つまらない。よく、かんがえついたものだな。」
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばんは、わか叔母おばさんも、あそびにきておられて、うちなかあかるくにぎやかでありました。むすめは、二つの人形にんぎょう叔母おばさんにせました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うつくしい、三つの人形にんぎょうが、はじめて、このにぎやかなまちみせさきにかざられたとき、とお人々ひとびとは、おとこも、おんなもみんないてゆきました。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なんだろうね、あの人形にんぎょうは? くちからていたよ。ぼくはあんなすごい人形にんぎょうたことがないよ。」と、三郎さぶろうがいいました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、二つの人形にんぎょうは、ついにわれていってしまいました。そして、あとには、おどっている人形にんぎょうがただ一つだけのこったのであります。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おばあさん、ありがとう。また、かんがえて、もらいにきますから……。」と、父親ちちおやは、人形にんぎょうをおばあさんにかえして、そのみせからました。
お父さんの見た人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
じょうさんは、人形にんぎょう行方ゆくえおもったのでした。しかし、それは、どこへ、どうなってしまったものか、ほとんど想像そうぞうのつかないことでした。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
磁石じしゃくうごかし具合ぐあいで、人形にんぎょうどうしは、たちまちチャンバラをはじめるのです。小山こやまは、先生せんせいのおはなしなど、みみれようともしないのです。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ははあ、きみではないんだね、いもうとさんにか……じゃ、どんな、人形にんぎょうがいいだろうかな。」と、博士はくしは、あたまをかしげてかんがえました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、途中とちゅうで、この子供こどもがお人形にんぎょうさんをとしたのですよ。いくらさがしても見当みあたらないので、ここまでもどってきました。」
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かあさんが、去年きょねんれに、まちからってきてくださったお人形にんぎょうは、さびしいふゆあいだ少女しょうじょといっしょに、なかよくあそびました。
春近き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんとおもったか、ひとりのは、いきなり両足りょうあしをひらいて、おおきなをいからし、キューピーのまねをして、人形にんぎょうとにらめっこをしました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちのしたしかったおともだちは、どうなったであろう……。」と、三つのお人形にんぎょうは、たがいに、むねのうちでおもうよりほかなかったのです。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんにいると、さもうれしそうに、それを丁寧ていねいはこなかおさめました。そして、つぎの人形にんぎょうかおきにかかったのです。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これをながら、お人形にんぎょうは、おじょうさんはいま時分じぶんきて、学校がっこうへゆく支度したくをなさっているだろう? などとおもっていました。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしが、もしあのお人形にんぎょうであったら、どんなにしあわせだろう……。なんの苦労くろうもなしに、ああして、平和へいわに、毎日まいにちらしていくことができる。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けんとははなれぬところへ、あかたまと、しろたまげるおもちゃの噴水ふんすいや、ばね仕掛じかけのお相撲すもう人形にんぎょうる、露店ろてんならんでいたのでした。
青い草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あの、サーカスに、きれいなおねえさんがいたでしょう。あたし、あんなきれいなお人形にんぎょうさんがきよ。」と、こたえました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
めると、おみよはその乞食こじきがかわいそうでなりませんでした。けれど、まだ彼女かのじょは、人形にんぎょうのことをおもいきることができませんでした。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
露店ろてんが、つらなっていました。その一つには、ヒョットコ、きつね、おかめ、などの人形にんぎょうがむしろのうえならべてありました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、こんどはなにをおまえにこしらえてあげようかね。」と、おみよは人形にんぎょうかって、ひとごとをもらしたのです。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人形にんぎょうは、その馬車ばしゃって、おじょうさまにおわかれをもうしました。やがて、くろうまは、うつくしい馬車ばしゃいて、あちらへけていってしまったのです。
春近き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)