銀座ぎんざ)” の例文
そうして十年たった明治二十八年の夏に再び単身で上京して銀座ぎんざ尾張町おわりちょう竹葉ちくようの隣のI家の二階に一月ばかりやっかいになっていた。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三年まえの九月、兄が地方の高等学校へ、明日あす立とうと云う前日だった。洋一は兄と買物をしに、わざわざ銀座ぎんざまで出かけて行った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「オヤ、この封筒は銀座ぎんざのアトランチスの封筒じゃないか。すると、木島君はあのカフェで、用紙と封筒を借りて、これを書いたんだな」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
末男すゑを子供こどもきながら、まちと一しよ銀座ぎんざあかるい飾窓かざりまどまへつて、ほしえる蒼空あをそらに、すきとほるやうにえるやなぎつめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
銀座ぎんざ裏のレストランでウイスキーを一杯ひっかけると、それからタクシーを拾ってユニオン・ダンス・ホールへやって来た。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
加之しかのみならずさけ近所きんじよ灘屋なだやか、銀座ぎんざ顱卷はちまき取寄とりよせて、と會員一同くわいゐんいちどう強請きやうせいかんがへてごらんなさい、九九九でひますか。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀座ぎんざ駒形こまがた人形町通にんぎょうちょうどおりの柳のかげに夏のの露店にぎわう有様は、煽風器せんぷうきなくとも天然の凉風自在に吹通ふきかよう星のしたなる一大勧工場かんこうばにひとしいではないか。
十四あさぼく支度したく匆々そこ/\宿やどした。銀座ぎんざ半襟はんえりかんざし其他そのたむすめよろこびさうなしなとゝのへて汽車きしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それがくせのいつものふとした出來心できごころで、銀座ぎんざ散歩さんぽみちすがら、畫家ぐわかをつとはペルシア更紗さらさ壁掛かべかけつてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
少年時代を通り過ぎて、わたしは銀座ぎんざ辺の新聞社に勤めるようになっても、やはり此の堀端を毎日往復した。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小六ころくさいはひにしてもなくかへつた。日本橋にほんばしから銀座ぎんざそれから、水天宮すゐてんぐうはうまはつたところが、電車でんしやんで何臺なんだいはしたためにおそくなつたといふ言譯いひわけをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まぁあなたがたにわかりやすいためには、東京とうきよう銀座ぎんざそのほか街路樹がいろじゆうわつてゐる商店街しようてんがいの、ふけてさわいでゐたひとも、寢靜ねしづまつたのち月光げつこうおもうかべてればよからうとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
十番で用の足りないものは、銀座ぎんざまで買いにお徳を娘につけてやった。それほどにして造りあげた帽子も、服も、付属品いっさいも、わずか二月ふたつきほどの役にしか立たないとを知った時に私も驚いた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
横浜にも増して見るものにつけて連想の群がり起こる光景、それから来る強い刺激……葉子は宿から回された人力車じんりきしゃの上から銀座ぎんざ通りの夜のありさまを見やりながら、危うく幾度も泣き出そうとした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
われ銀座ぎんざをもとほり居りてブルドック連れしをんなにとほりすがへり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
よく露子つゆこは、おねえさまにつれられて、銀座ぎんざまちあるきました。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわりはてた銀座ぎんざ
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あたらしい銀座ぎんざなつ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
病気のために一年以上全くコーヒーを口にしないでいて、そうしてある秋の日の午後久しぶりで銀座ぎんざへ行ってそのただ一杯を味わった。
コーヒー哲学序説 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼は家人に云えば止められるにまっているので、それとなく家を出て、しばら銀座ぎんざで時間をつぶしてから、バスで上野公園へやって来たのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二人ふたりは、子供こどもいてあかるいとほりかられて、くらみちあるいた。くらいところても、銀座ぎんざあかるみをあるひと足音あしおときこえた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
田舍ゐなかづくりの籠花活かごはないけに、一寸いつすん(たつた)もえる。内々ない/\一聲ひとこゑほとゝぎすでもけようとおもふと、うして……いとがると立所たちどころ銀座ぎんざやなぎである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二三年まへの夏である。僕は銀座ぎんざを歩いてゐるうちに二人ふたりの女を発見した。それも唯の女ではない。はつと思ふほどうしろ姿のい二人の女を発見したのである。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ふまでもない、四馬路スマロ東京とうきやう銀座ぎんざだ。が、君子國くんしこく日本にほんのやうに四かくめん取締とりしまりなどもとよりあらうはずもなく、それは字義通じぎどほりの不夜城ふやじやうだ。人間にんげんうごく。燈灯ともしび映發えいはつする。自動車じどうしやく。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
与次郎はそのうち銀座ぎんざのどことかへ天麩羅てんぷらを食いに行こうと言いだした。金はあると言う。不思議な男である。言いなり次第になる三四郎もこれは断った。その代りいっしょに散歩に出た。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さくら音頭の銀座ぎんざから遠望した本職のジャーナリストの目にいかに映じるかは賢明なる読者の想像に任せるほかはないのである。
ジャーナリズム雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから銀座ぎんざ通りを京橋きょうばしから新橋しんばしまで、三度ほど、行ったり来たりした。そこを通っている人たちも、まるで言葉の通じない異国人のように見えた。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしてかれ彼女かれとは、子供こどもいていへるのであつた。けれども、どことつてあてもないので、二人ふたりはやはり電車でんしやにのつて銀座ぎんざてしまつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
をどれ、をどれ、とをどまはつて、水戸みと大洗節おほあらひぶしれるのが、のこらず、銀座ぎんざのバーからた、大女おほをんな一人藝ひとりげいで。……つた、つた、うたつた、をどつた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一年ばかりたつたのち、彼の詩集は新らしいまま、銀座ぎんざ露店ろてんに並ぶやうになつた。今度は「引ナシ三十銭」だつた。行人かうじんは時々紙表紙かみべうしをあけ、巻頭の抒情詩に目を通した。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、自分の行くべきさき天下中てんかぢう何処どこにもい様な気がした。しかし、代助は無理にも何処どこかへかうとした。それには、支度を調とゝのへるにくはないと極めた。代助は電車に乗つて、銀座ぎんざた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みんな心の中に何かしらある名状し難い空虚を感じている。銀座ぎんざの舗道を歩いたらその空虚が満たされそうな気がして出かける。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
蘭堂は、いつも服をつくらせている銀座ぎんざの洋服屋に電話をかけた。そして、表の店に飾ってあるマネキン人形は、どこから仕入れているのかとたずねた。
悪霊物語 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
京師けいし張廣號ちやうくわうがうは、人參にんじん大問屋おほどんやで、きこえた老鋪しにせ銀座ぎんざ一番いちばん、とふづツしりしたものである。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その次の午後、夫はたね子の心配を見かね、わざわざ彼女を銀座ぎんざの裏のあるレストオランへつれて行った。たね子はテエブルに向かいながら、まずそこには彼等以外に誰もいないのに安心した。
たね子の憂鬱 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
銀座ぎんざから日本橋通にほんばしどほりのだつて」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ずっと前のことであるが、ある夏の日銀座ぎんざ某喫茶店ぼうきっさてんに行っていたら、隣席に貧しげな西洋人の老翁がいて、アイスクリームを食っていた。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自動車じどうしや相乘あひのりして、堂々だう/\と、淺草あさくさ上野うへの銀座ぎんざばす、當今たうこん貴婦人きふじん紳士しんしいへども、これをたら一驚いつきやうきつするであらう。たれ口癖くちぐせことだが、じつ時代じだい推移すゐいである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だが、三日目の四月十日の夜、銀座ぎんざ通りの有名な百貨店に、前代未聞の珍事が出来しゅったいした。そして、山野三千子失踪しっそう事件が、決してありふれた家出なんかでないことが判明した。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
水木京太みづききやうた氏などは銀座ぎんざを通ると、ぽろぽろ涙が出たさうであります。
自分もせいぜい長生きする覚悟で若い者に負けないように銀座ぎんざアルプスの渓谷けいこくをよじ上ることにしたほうがよいかもしれない。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
銀座ぎんざのバーからたばかりですからねえ。」——「ねえさん、むかうにえる、あのもりは。」「銀座ぎんざのバーからたばかりですからねえ。」うつかりして「うみへは何町なんちやうばかりだえ。」
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは後に分ったことであるが、私はその手袋を持って行って、市内でも一流の銀座ぎんざ泉屋いずみや洋物店で鑑定して貰った結果、それは内地では余り見かけない作り方で、恐らくは英国製であろう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ある冬のわたしは旧友の村上むらかみと一しょに、銀座ぎんざ通りを歩いていた。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こんなことを考えながら歩いているうちに、いつのまにか数寄屋橋すきやばしに出た。明るい銀座ぎんざが暗い空想を消散させた。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
淺草あさくさでも、銀座ぎんざでも、上野うへのでも——ひと往來ゆききみせかまへ、千状萬態せんじやうばんたい一卷ひとまき道中だうちう織込おりこんで——また内證ないしようだが——大福だいふくか、金鍔きんつばを、かねたもとしのばせたのを、ひよいとる、早業はやわざ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀座ぎんざ尾張町をはりちやうかどで、交番の前に人が山のやうにたかつてゐる。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
四五年会わなかった知人に偶然銀座ぎんざでめぐり会った。それからすぐ帰宅して見るとその同じ人からはがきが来ていた。
藤棚の陰から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
銀座ぎんざ日本橋にほんばしをはじめ、深川ふかがは本所ほんじよ淺草あさくさなどの、一時いちじはつしよきうしよ十幾じふいくしよからあがつたのにくらべれば、やまなんでもないもののやうである、が、それはのちこと
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀座ぎんざで草木染めが展観されデパートで手織り木綿が陳列されるという現象がその前兆であるかもわからないのである。
糸車 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)