詩集ししゅう
彼の詩集の本屋に出たのは三年ばかり前のことだつた。彼はその仮綴ぢの処女詩集に『夢みつつ』と言ふ名前をつけた。それは巻頭の抒情詩の名前を詩集の名前に用ひたものだった。 夢みつつ、夢みつつ、 日もすがら、夢みつつ…… 彼はこの詩の一節ごとにかう …