さと)” の例文
新字:
孔子學に志してより七十に至るまで、十年毎に自ら其のすゝむ所有るをさとり、孜孜しゝとして自らつとめて、らうの將に至らんとするを知らず。
怜悧りこうな小犬は二人の出て行く物音に樣子をさとつて、逐ひ籠められないうちに自分から椽の下にもぐり込まふとしてゐるのであつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
なにかねがあるばかりぢやない。ひとつは子供こどもおほいからさ。子供こどもさへあれば、大抵たいてい貧乏びんばふうちでも陽氣やうきになるものだ」と御米およねさとした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
故に慾心と云ふもの仰山ぎようさん起り來て、天理と云ふことをさとることなし。天理と云ふことがたしかわかつたらば、壽殀何ぞねんとすることあらんや。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
「昨日とちがつて敵にさとられずに見事に後をつけましたぜ。相手が淺草から眞つ直ぐに巣へ行つたんだから間違ひは無いでせう」
この頃逍遙子が言を聞いて實を記することの功徳くどくを知り、また烏有先生が言を聞いて理を談ずることの利益をさとりぬ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「うむ」と勘次かんじはいひよどんだ。みなみ亭主ていしゆ理由わけさとることは出來できないのみでなく、のいひよどんだことを不審ふしんおもこゝろさへおこさぬほど放心うつかりいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかしをとこ咄嗟とつさに、わたしを其處そこ蹴倒けたふしました。丁度ちやうどその途端とたんです。わたしはをつとなかに、なんともひやうのないかがやきが、宿やどつてゐるのをさとりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
御寢みねませる時に、御夢にさとしてのりたまはく、「我が宮を、天皇おほきみ御舍みあらかのごと修理をさめたまはば、御子かならずまごととはむ」とかく覺したまふ時に、太卜ふとまにうらへて
廓の門を守れる兵士に敬禮せられて、我は始めてこゝは猶太街の入口ぞとさとりぬ。その時門の内を見入りたるに、黒目がちなる猶太の少女あまた群をなしてたゝずみたり。
示して十をさとるの敏才びんさいあれば師匠ししやうの感應院もすゑ頼母たのもしく思ひわけて大事に教へやしなひけるされば寶澤は十一歳の頃は他人の十六七歳程の智慧ちゑありて手習は勿論もちろん素讀そどくにも達し何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勿論もちろん吾等われら空中旅行くうちうりよかう目的もくてきと、櫻木大佐さくらぎたいさ海底戰鬪艇かいていせんとうてい秘密ひみつとは、輕々かろ/″\しく外國船ぐわいこくせんなどにさとられてはならぬが、それは臨機應變りんきおうへんなにとか言脱いひのがれの工夫くふういでもい。
二、 非常ひじよう地震ぢしんたるをさとるものはみづか屋外おくがい避難ひなんせんとつとめるであらう。數秒間すうびようかん廣場ひろばられる見込みこみがあらば機敏きびんすがよい。たゞもと用心ようじんわすれざること。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
初めてさとる我身の罪、あゝ我れなかりせば、御邊も可惜あたら武士を捨てじ、横笛も亦世を早うせじ、とても叶はぬ戀とは知らで、道ならぬ手段てだてを用ひても望みを貫かんと務めし愚さよ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あいちやんは、しや料理人クツクがそれをさとりはしないかと、稍々やゝ氣遣きづかはしげにそのはうながめました、が、料理人クツクいそがはしげに肉汁スープまはしてて、それをいてないやうにえたので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
何處どこからた』とまたふ。は、はア密行巡査みつかうじゆんさだなとさとつた。
かぜおと伏勢ふせぜいさと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
右肩先から斜大袈裟なゝめおほげさで、振り返り樣曲者が斬つたとすれば、刀は左に持つて居なければならぬ筈とさとつたためでした。
彼等かれらむちうたれつゝおもむくものであつた。たゞそのむちさきに、すべてをやすあまみついてゐることさとつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ここに太后、神せして、言教へさとし詔りたまひつらくは、「西の方に國あり。くがねしろがねをはじめて、目耀まかがや種種くさぐさ珍寶うづたからその國にさはなるを、あれ今その國をせたまはむ」
忍びたる不忠ふちう不義ふぎ曲者くせものなり又汝等が兄喜内は善惡ぜんあく邪正じやしやうわかちなくしたしきを愛しうときをにくまことに國をみだすの奸臣かんしんなる故我うち取て立退たちのきしを汝等は愚昧ぐまいなれば是をさとらず我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ベルナルドオは痍のえし後、我身を愛する由聞え候ひしかど、私はその僞ならぬをさとりながら、君をおもふ心よりうべなひ候はざりき。ベルナルドオは羅馬を去り候ひぬ。
この經驗けいけんによつて、みづなしの消防法しようぼうほうをも心得こゝろえくべきものといふことをさとつたが、實際じつさいにはみづ使用しようしてはかへつてくない場合ばあひもあるので、著者ちよしや專門外せんもんがいではあるけれども
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
左樣さうさとられたからは百年目ひやくねんめこの一件いつけん他人たにんもらすものならば、乃公おれかさだいぶはれたこと左樣さうなればやぶれかぶれ、おまへ御主人ごしゆじんいへだつて用捨ようしやはない、でもかけて
をつとはこの言葉ことばいたとき、やつとくちびるうごかしました。勿論もちろんくちにはささ落葉おちばが、一ぱいにつまつてゐますから、こゑすこしもきこえません。が、わたしはそれをると、たちまちその言葉ことばさとりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、殿松は亡くなつた女房に聽いたらしく、自分の身性をさとつて、我儘が募るばかり。今では兜屋を切り廻して、私に口も出させない始末でございます
まひを列ねてあたはらひ、歌を聞きて仇を伏しき。すなはち夢にさとりて神祇をゐやまひたまひき、所以このゆゑに賢后とまを一〇。烟を望みて黎元を撫でたまひき、今に聖帝と傳ふ一一
山門さんもんはひると、左右さいうにはおほきなすぎがあつて、たかそらさへぎつてゐるために、みちきふくらくなつた。その陰氣いんき空氣くうきれたとき宗助そうすけなかてらなかとの區別くべつきふさとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
樣子やうすうかゞつてるとは氣付きづいたひとはありませんかつたが、いまげん海賊かいぞく仲間なかまその息子むすここのみなとことと、いまはなし樣子やうすで、おぼろながらもれとさとつた亞尼アンニー驚愕おどろきはまアどんなでしたらう。
お夢の怪我が大したことでないとわかると、振られた男の惡戯いたづらを、詮索立てする馬鹿/\しさをさとつたのでせう。
辰三がさとつたためで、大村喜十郎のこの樣子を覺つたのは、路地の中で待つて居た辰三の外にはありません。
「何をつまらない、——それ、あきらめて歸つて行くだらう。さとられちや打ちこはしだ、そつと跟けて行け」
「すると笛辰は夕方からブラリと出掛けたんです。餘つ程後をつけようと思ひましたが、萬一さとられると藪蛇だと思つて、取敢とりあへず駕籠で此處まで馳け着けました」
「あれは、父親が牢死した後で生れた私の弟、——本名は春吉、私が女で男に化けたやうに、男の子の春吉は女に化けて居ました。敵に素姓をさとらせないため——」
三輪の萬七におどかされた直助は、手元に證據の僞小判を置く危險をさとりましたが、その時はもう持出す機會を失してしまつたので、二階からの眺望の爲と言ひ觸して
相手にさとられずに跟ける氣になつたら、思ひの外早く曲者の身元が解つたかも知れないのです。
私は觀念して眼をつぶると、さとられたと思つたらしくて、曲者くせものはそのまゝ私の布團の上から下りてしまひましたが、いづれにしても、私は長いことはあるまいと思ひます。
專次がお今を殺したのをさとつて、手前てめえはお三輪殺しを思ひ付いたんだらう、——お三輪を殺すのには專次を助けて置いて、二つとも專次の仕業と思はせた方が都合がよい
妹のお組は、兄の仕業とさとつて、文箱の泥を丁寧に拭き取り、罪を自分一身に引受けて死んだのは見上げた心がけだ。氣が付けば殺すんぢやなかつたが、縛られたまゝ舌を
「手筐を預つて見ると、俺が飛出すわけにも行くまい。手前てめえ直ぐあの女の後を跟けて、御苦勞だが妻戀坂まで見屆けてくれ。途中でへマをして、曲者にさとられるやうなことをするな」
「待て/\、早まつちやならねえ、——仁助爺やはお内儀さんを殺した相手をさとつてその證據を見付けた。今晩俺のところへ言ひに來ると聞いて、下手人は此處に隱れて仁助を刺した」
昨夜二人が逃げ出すとさとつたお瀧は、湯へ行くと言ひ拵へて、秘藏の短刀まで持出し、清水屋の裏に忍んで、お君が着換へして飛び出したところを後ろから突き上げるやうに抉つたのだよ
利かせる氣ぢやブチこはしだ。町方の者とさとつたら最後、何んにも教へちやくれまい。それより評定所や下馬先や、大名方のお供の大勢集まるところへ首を突込んで、精一杯お前の耳を働かせるんだ
人間の心の恐ろしさを、此時ほど平次もさとらされたことはありません。
今夜のやうな、よく晴れて眞つ闇な晩に、しかも晦日みそかといふ日を休んでは、矢張り孫三郎が辻斬の本人に違ひないとさとられ、それでは孫三郎が可哀想と、若い娘の癖に、男姿になつて飛び出しました。
「判つたか、人にさとられちや、何にもならないよ」
拜借するのが本當だつた——とようやさとりました
八五郎は樣子をさとつて目配せしました。
又五郎はさとつたことを言ふのです。
「大層さとつたことを言やがる」