蒼空あをぞら)” の例文
たとへにも天生峠あまふたうげ蒼空あをぞらあめるといふひとはなしにも神代じんだいからそまれぬもりがあるといたのに、いままではあまがなさぎた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから一時間じかんすると、大地だいちめる太陽たいやうが、さへぎるものゝない蒼空あをぞらはゞかりなくのぼつた。御米およねはまだすや/\てゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勢のよい、しかも美しい鶉の声にとう/\疱瘡の神ははげしい風に吹きとばされる雲のやうに追ひのけられ、王様の御気色みけしきはうららかに晴れた蒼空あをぞらのやうに美しくなりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
くもりしらぬ蒼空あをぞらより來るものゝ外光なし、いな闇あり、即ち肉の陰またはその毒なり 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「今日は雨が降るぞ。」と、朝晴あさばれの蒼空あをぞらを見上げた。ほんたうに雨が降るのかと思つて、ほんの一瞬間だが、蒼空を仰いだのは、利巧な文吾にも似合はぬおぞましさであつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
琥珀の雲 溶けて蒼空あをぞらに流れ
無題 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
しき、蒼空あをぞらと共に高く
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
見よ、今日も、かの蒼空あをぞら
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
太綱ふとづな一端いつたん前齒まへばくはへてする/\と竿さをのぼりてたゞち龍頭りうづいたる。蒼空あをぞらひとてんあり、飄々へう/\としてかぜかる。これとするにらず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ小供こどもときから、この樟腦しやうなうたかかをりと、あせ土用どようと、砲烙灸はうろくぎうと、蒼空あをぞらゆるとびとを連想れんさうしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しき、蒼空あをぞらと共に高く
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
見よ、今日も、かの蒼空あをぞら
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
……次第しだいちか此処こゝせまやまやまみねみねとのなかつないで蒼空あをぞらしろいとの、とほきはくも、やがてかすみ目前まのあたりなるは陽炎かげらふである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒼空あをぞらの玻璃宮に祭る。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
えゝ、そんなおもひをして、くもあめも、みんな、したとほえます、蒼空あをぞらたかみねやかたなかに、ひるとぎをしてくらしました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
前面ぜんめん大手おほて彼方かなたに、城址しろあと天守てんしゆが、くもれた蒼空あをぞら群山ぐんざんいて、すつくとつ……飛騨山ひださんさやはらつたやりだけ絶頂ぜつちやうと、十里じふり遠近をちこち相対あひたいして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つるよ、いよ、とびたまへば、をりから天下太平てんかたいへいの、蒼空あをぞらたかしたりける、丹頂千歳たんちやうせんざいつる一羽いちは、ふは/\とりて、ゆき末黒すゑぐろ大紋だいもんそでしぼつてかしこまる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……東雲しのゝめくも野末のずゑはなれて、ほそながたて蒼空あをぞらいといて、のぼつてく、……ひとうまも、其処そことほつたら、ほつほつとゑがかれやう、とりばゞえやう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にしき面影おもかげめた風情ふぜいは、山嶽さんがく色香いろかおもひくだいて、こひ棧橋かけはしちた蒼空あをぞらくも餘波なごりのやうである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つきならぬ眞晝まひる緋葉もみぢくゞつて、あふげばおな姿すがたに、とほたかみね緋葉もみぢ蒼空あをぞらつてうみる……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白帆しらほあちこち、處々ところ/″\煙突えんとつけむりたなびけり、ふりさければくももなきに、かたはらには大樹たいじゆ蒼空あをぞらおほひてものぐらく、のろひくぎもあるべきみきなり。おなじだい向顱卷むかうはちまきしたる子守女こもりをんな三人さんにんあり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもひもかけず、屋根やねはしられるやうなしろかぜるやうにきつけますと、ひかかゞや蒼空あをぞらに、眞黒まつくろくも一掴ひとつかみわしおとしますやうな、峰一杯みねいつぱいつばさひらいて、やまつゝんで
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのときは、その下蔭したかげ矢張やつぱりこんなにくらかつたが、蒼空あをぞらときも、とおもつて、根際ねぎはくろ半被はつぴた、可愛かはいかほの、ちひさなありのやうなものが、偉大ゐだいなる材木ざいもくあふいだとき
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うしますとね、くるしいなかにも、むつてふんでせう……まど硝子がらす透通すきとほつて、晴切はれきつたあきの、たか蒼空あをぞらを、もひとした、それは貴方あなたうみそこつていかなんまをしていんでせう
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、とろ/\の目許めもとを、横合よこあひから萌黄もえぎいろが、蒼空あをぞらそれよりく、ちらりとさへぎつたのがある。けだ古樹ふるき額形がくがた看板かんばんきざんだ文字もじいろで、みせのぞくと煮山椒にざんせうる、これも土地とち名物めいぶつである。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒼空あをぞら遠方をちかた伽藍がらんはとんだ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)