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纒
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まと
ふりがな文庫
“
纒
(
まと
)” の例文
「僕もこれは読んでいないが、いったい、あアいう連中の書いてる物はいずれも小器用には
纒
(
まと
)
まってるが、少しも
背景
(
バック
)
や深みがない」
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「このまえの約束した物ですよ」と得石はじれったそうにもつれた紐を解こうとした、「——貸金の証文を
纒
(
まと
)
めて持って来たんです」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
初めは
私
(
わたくし
)
が勝ちましたが、段々仕舞に負けまして、大伴蟠龍軒から金を借りましたので、すると百両と
纒
(
まと
)
まった金だから証文にしろ
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それを一と
纒
(
まと
)
めにして、當寺の
檀家
(
だんか
)
で、黒門町の兩替屋樽屋金兵衞に引渡し、小判に替へて本堂再建の入費に當てることになりました。
銭形平次捕物控:274 贋金
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「別に心当りと云う程でもありませんけれど、最近社長の所へは、
沢山
(
たくさん
)
脅迫状が来ているのです。
御入用
(
ごにゅうよう
)
でしたら
纒
(
まと
)
めて差出しますが」
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
何事をするにも何事を考えるにも、自分が人から
厭
(
いと
)
われる不具の身であるという観念は、常に息苦しいまでに私の心に付き
纒
(
まと
)
うた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『御内方には、頼母子講のようなものに入っておいでないのか。月々、
懸金
(
かけきん
)
をして、何ぞの場合に
纒
(
まと
)
めて取る
無尽
(
むじん
)
と申すあれなどには』
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身に
纒
(
まと
)
ひ
何樣
(
どのやう
)
なる出世もなる
筈
(
はず
)
を娘に別れ孫を失ひ
寄邊
(
よるべ
)
渚
(
なぎさ
)
の
捨小舟
(
すてこぶね
)
のかゝる島さへ
無
(
なき
)
身
(
み
)
ぞと
叫
(
わつ
)
と
計
(
ばか
)
りに
泣沈
(
なきしづ
)
めり寶澤は
默然
(
もくねん
)
と此長物語を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「三つ
子
(
ご
)
の心は百までも」「老馬
路
(
みち
)
を忘れず」という。青年時代に植えた
種子
(
たね
)
は、よかれ、
悪
(
あ
)
しかれ、いつまでも身辺に
纒
(
まと
)
いつく。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
けば/\しい馬鹿げた
衣
(
ころも
)
を身に
纒
(
まと
)
ひ、鈴附きの
角
(
つの
)
形帽子を戴いて、台石のもとにうづくまり、涙に満ちた
眼
(
まなこ
)
で永遠の女神を見上げてゐる。
道化とヸナス
(新字旧仮名)
/
シャルル・ピエール・ボードレール
(著)
寝間着の上に大島の羽織を
纒
(
まと
)
って、メリヤスのパッチの端を
無恰好
(
ぶかっこう
)
に素足の
踵
(
かかと
)
まで引っ張っている高夏は、庭先へ椅子を持ち出していた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
途中において沢山の悪魔や
疫癘
(
えきれい
)
が付き
纒
(
まと
)
うて花嫁に従い、そうして花聟の家に入って来て嫁と聟とに害を加えるようになるから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
だが暗い夜の肌衣を
纒
(
まと
)
っている柔らかい肉体が、宙を舞うというばかりで好きなのではない。ただ何となく好ましいのである。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
眼
(
まなこ
)
の光
濁
(
にご
)
り
瞳
(
ひとみ
)
動くこと遅くいずこともなくみつむるまなざし鈍し。
纒
(
まと
)
いしは
袷
(
あわせ
)
一枚、裾は短かく
襤褸
(
ぼろ
)
下がり濡れしままわずかに
脛
(
すね
)
を隠せり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
自分の胸のあたりへ蛇のように
纒
(
まと
)
いかかっている女の長い黒髪を
無雑作
(
むぞうさ
)
に押しのけて、頼長は
沓
(
くつ
)
を早めてあなたの
亭
(
ちん
)
の方へ行ってしまった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
金はあっても売り
者
(
て
)
がないので、みすみす食物を摂ることが出来ず、錦の衣裳を
纒
(
まと
)
ったまま飢え死にをした能役者もあった。
開運の鼓
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「然う御相談が
纒
(
まと
)
まっていますのなら御勝手ですわ。盗み泥棒をなさるのとは違いますから、私も強いて反対は致しません」
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
踵
(
きびす
)
を
囘
(
かへ
)
してツト
馳出
(
はせい
)
づればお
高
(
たか
)
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つて
無言
(
むごん
)
に
引止
(
ひきと
)
むる
帶
(
おび
)
の
端
(
はし
)
振拂
(
ふりはら
)
へば
取
(
とり
)
すがり
突
(
つ
)
き
放
(
はな
)
せば
纒
(
まと
)
ひつき
芳
(
よし
)
さまお
腹
(
はら
)
だちは
御尤
(
ごもつと
)
もなれども
暫時
(
しばし
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と
仔細
(
しさい
)
は
語
(
かた
)
らず
唯
(
たゞ
)
思入
(
おもひい
)
つて
然
(
さ
)
う
言
(
い
)
ふたが、
実
(
じつ
)
は
以前
(
いぜん
)
から
様子
(
やうす
)
でも
知
(
し
)
れる、
金釵玉簪
(
きんさぎよくさん
)
をかざし、
蝶衣
(
てふい
)
を
纒
(
まと
)
ふて、
珠履
(
しゆり
)
を
穿
(
うが
)
たば
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鳥
(
とり
)
は
赤
(
あか
)
と
緑
(
みどり
)
の
羽
(
はね
)
をして、
咽
(
のど
)
のまわりには、
黄金
(
きん
)
を
纒
(
まと
)
い、二つの
眼
(
め
)
を
星
(
ほし
)
のようにきらきら
光
(
ひか
)
らせておりました。それはほんとうに
美事
(
みごと
)
なものでした。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
藤さんはにわかに荷物を
纒
(
まと
)
めて帰って行ったというのである。その伯父さんというのはだいぶ年の
入
(
い
)
った、鼻の先に
痘痕
(
あばた
)
がちょぼちょぼある人だという。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
其處で
周章
(
うろた
)
へて歌を
纒
(
まと
)
めて東雲堂へ持ち込み、若干の旅費を作つて歸國したのであつた。で、この本の校正をば遠く日向の尾鈴山の麓でやつたのであつた。
樹木とその葉:07 野蒜の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
斗滿川
(
とまむがは
)
は
余
(
よ
)
が
家
(
いへ
)
を
去
(
さ
)
る
半町餘
(
はんちやうよ
)
の
處
(
ところ
)
に
在
(
あ
)
り。
朝夕
(
あさゆふ
)
灌水
(
くわんすゐ
)
に
赴
(
おもむ
)
くに、
如何
(
いか
)
なる
嚴寒
(
げんかん
)
大雪
(
おほゆき
)
の
候
(
こう
)
と
雖
(
いへど
)
も、
浴衣
(
ゆかた
)
を
纒
(
まと
)
ひ、
草履
(
ざうり
)
を
穿
(
うが
)
つのみにて、
他
(
た
)
に
何等
(
なんら
)
の
防寒具
(
ばうかんぐ
)
を
用
(
もち
)
ゐず。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
もし
真
(
まこと
)
の叔父が、大雪渓の下に眠っているのなら——あゝ、野村君、僕はあの呪われた速記を読んだ時以来、夜となく昼となく、この妄念につき
纒
(
まと
)
われたのだ。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
テラデルフユウゴの住民は寒地に在りても
裸体
(
らたい
)
にて生活す。彼のエスキモを見よ屋外に
出
(
い
)
づるには温き
衣服
(
いふく
)
を
纒
(
まと
)
へども屋内に入れば男女の
別
(
べつ
)
無く屡ば裸体となるに
非
(
あら
)
ずや。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
京橋の旅館に着いて、荷物を
纒
(
まと
)
め、会計を済ました。この家は三年前、芳子が始めて父に伴れられて出京した時泊った旅館で、時雄は此処に二人を訪問したことがあった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
さればと謂つて、
審判官
(
アンパイアー
)
となツて、一家の爲に何れとも話を
纒
(
まと
)
めるといふことも無く、のんきに
高處
(
たかみ
)
の見物と
出掛
(
でか
)
けた。
勿論
(
もちろん
)
母夫人は、華族でもなければ、藝術家でも無い。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
固
(
もと
)
より世に時めいているものでなく、貧しげな暮しをしておるか、自ら世を
韜晦
(
とうかい
)
しておるか、いずれかの人として淋しい心持がつき
纒
(
まと
)
う、其処に秋風らしい心持があるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
僕の友人は、労働歌を歌っていて、ただ、それだけで一年間尾行につき
纒
(
まと
)
われた。
鍬と鎌の五月
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
町の方へ嫁に行くことに話が
纒
(
まと
)
まりかけていたお美代を、無理矢理に新田へ、土地の
素封家
(
そほうか
)
だと言うことだけで、いろいろと口説き落とした自分であったことを、ぼんやり思い出した。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そしてその時の主な云い分は、両方の家族は一緒に
纒
(
まと
)
まって強くなり、そして両方の子供は、数が少ないので戦いの際に敵の餌食となるというようなことはなくなる、というのである2
人口論:01 第一篇 世界の未開国及び過去の時代における人口に対する妨げについて
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
たゞあきらめの分子が、他の情實に
纒
(
まと
)
はられた人よりも幾らか多かつたに過ぎないのであらう。私の鋏が切れ味よかつたわけではなく、私はたゞ切り易い布を持つてゐたに過ぎないのだ。
輝ける朝
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
西洋の浴槽だから、小判形に細長く、一人が寝てはいるようにできている。ブラドンは、看護婦あがりの若いアリスが一糸も
纒
(
まと
)
わない肉体をその湯槽に長々と
仰臥
(
ぎょうが
)
させるのを眺めていた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
されば先生は常に
袴
(
はかま
)
をも着せず、
一書生
(
いちしょせい
)
の
風体
(
ふうたい
)
なるにかかわらず、予が家の
婢僕等
(
ひぼくら
)
皆
尊敬
(
そんけい
)
して、呼ぶに先生を以てし、
門番
(
もんばん
)
、先生を見れば
俄
(
にわ
)
かに衣を
纒
(
まと
)
いてその
裸体
(
らたい
)
を
蔽
(
おお
)
いて
礼
(
れい
)
を
為
(
な
)
せり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
私は毎夜、眠られなかった。安い酒を飲んだ。
痰
(
たん
)
が、やたらに出た。病気かも知れぬと思うのだが、私は、それどころでは無かった。早く、あの、紙袋の中の作品集を
纒
(
まと
)
めあげたかった。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
此
(
この
)
砂
(
すな
)
は
啻
(
たゞ
)
に
細微
(
さいび
)
なるばかりではなく、
一種
(
いつしゆ
)
不可思議
(
ふかしぎ
)
の
粘着力
(
ねんちやくりよく
)
を
有
(
いう
)
して
居
(
を
)
るので、
此處
(
こゝ
)
に
陷落
(
かんらく
)
した
者
(
もの
)
は
掻
(
か
)
き
上
(
あが
)
らうとしては
滑
(
すべ
)
り
落
(
お
)
ち、
滑
(
すべ
)
り
落
(
お
)
ちては
砂
(
すな
)
に
纒
(
まと
)
はれ、
其内
(
そのうち
)
に
手足
(
てあし
)
の
自由
(
じゆう
)
を
失
(
うしな
)
つて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
何を云ってやがるんだい! 籤引だって! 手前の様な青二才に籤が当ってみろ、
反
(
かえ
)
って、親分の足手
纒
(
まと
)
いじゃねえか。籤引なんか、俺あ真っ平だ。こんな時に一番物を云うのは、腕っ節だ。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
生温
(
なまぬる
)
い訓誡や、説法ではやむべくもあらざれば、すべからくこれに禁止税を掛くるべく、うるさく附け
纒
(
まと
)
われて程の知れぬ口留め料を警官や新聞に取らるるより、一と思いに取ってくださる
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
我事
(
わがこと
)
すでに
了
(
おわ
)
れりとし主家の結末と共に
進退
(
しんたい
)
を決し、たとい身に
墨染
(
すみぞめ
)
の
衣
(
ころも
)
を
纒
(
まと
)
わざるも心は全く
浮世
(
うきよ
)
の
栄辱
(
えいじょく
)
を
外
(
ほか
)
にして
片山里
(
かたやまざと
)
に
引籠
(
ひきこも
)
り静に
余生
(
よせい
)
を送るの
決断
(
けつだん
)
に出でたらば、世間においても真実
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
馬来
(
マレイ
)
人やヒンヅ人が
黒光
(
くろびかり
)
のする
体
(
からだ
)
に
黄巾赤帽
(
くわうきんせきばう
)
を
戴
(
いたゞ
)
き、赤味の勝つた
腰巻
(
サロン
)
を
纒
(
まと
)
つて居る
風采
(
ふうさい
)
は、
極𤍠
(
ごくねつ
)
の気候と、朱の色をした土と、常に新緑と
嫩紅
(
どんこう
)
とを絶たない𤍠帯植物とに調和して
中中
(
なかなか
)
悪くない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
軽部の死についてもついぞ一言も
纒
(
まと
)
まった慰めをしなかった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
チュウデーデースにアテーネー附き
纒
(
まと
)
へるを眺め見て
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
さうして其邊に取り散らかつた原稿を
纒
(
まと
)
めてゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
同じ
血脈
(
ちすぢ
)
のかなしみのつき
纒
(
まと
)
ふにか、呪ふにか
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そこには、一糸も
纒
(
まと
)
わぬ裸の世界があった。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
まよはし
纒
(
まと
)
ふ
眞白手
(
ましらて
)
に
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
胸
(
むね
)
を
纒
(
まと
)
へる
光輝
(
かゞやき
)
と
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
秀之進は自分で云うといったが、かれにはどうしても旨く
纒
(
まと
)
まるとは思えなかったから、……しかし案外にも藤尾は拒絶しなかった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いや、御苦勞、御苦勞。不精したやうで惡いが、俺は早く歸つて、今日一日の見聞したことを
纒
(
まと
)
めたかつたんだ。で、原庭はどうだ」
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
到頭そうした生活の数年後には、ビルバオ市へ赴いてその女の邸の付近をウロ付き廻ったり、何か執拗く付き
纒
(
まと
)
ったりしたのでしょう。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
纒
漢検準1級
部首:⽷
22画
“纒”を含む語句
纒頭
足手纒
半纒
袢纒
附纒
絆纒
印絆纒
長半纒
長袢纒
纒繞
印半纒
纒綿
一纒
取纒
半纒着
付纒
着纒
纒綴
纒衣
絆纒着
...