くま)” の例文
いながら、まさかりをほうりして、いきなりくまみつきました。そしてあしがらをかけて、どしんとびたにげつけました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「このふえは、極楽ごくらくまでこえるだろうか。くまさんは、どうしたろう……。」などといって、子供こどもたちは、ふえいたのでありました。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そも/\くま和獣わじうの王、たけくしてる。菓木このみ皮虫かはむしのるゐをしよくとして同類どうるゐけものくらはず、田圃たはたあらさず、まれあらすはしよくつきたる時也。
「まずこれで伊勢いせは片づけた、——つぎには柴田権六しばたごんろくか、きゃつも、ソロソロくまのように、雪国のあなから首をだしかけておろう……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「本当にネ、死んだ親ぢやと知らずに、その乳首に縋つてゐたのがイヂらしい……」とおくまといふ娘は、涙ぐみながら言ひました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
かはつてかへつてたのはくま膏薬かうやく伝次郎でんじらう、やちぐさんだかさかむたぬき毛皮けがはそでなしをて、糧切まぎりふぢづるでさや出来できてゐる。
「だからぼく、さういつたんだ、いゝえ、あの、先生せんせい、さうではないの。ひとも、ねこも、いぬも、それからくまみんなおんなじ動物けだものだつて。」
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くまさん、どうです、今日けふあたりは。ゆきうたでもうたつておくれ。わしあ、こほりかたまりにでもならなけりやいいがと心配しんぱいでなんねえだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
くまが出たんだよ。にれの木の上の林から放牧場のほうへ、のそのそと出てくるのがはっきりと見えたんだ。一緒に行ってくれないかね」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
いとはず出歩行であるくのみかむすめくまにも衣類いるゐの流行物櫛笄くしかうがひ贅澤ぜいたくづくめに着餝きかざらせ上野うへの淺草あさくさ隅田すみだはな兩國川りやうこくがは夕涼ゆふすゞみ或は芝居しばゐかはと上なきおごり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
A 仕樣しやうがないなア。ぢや説明せつめいしてやる。よく寄席よせ落語家らくごかがやるぢやないか。横丁よこちやう隱居いんきよくまさん八さんに發句ほつくをしへるはなしだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
部屋の中には人形やまりや汽車や、馬やさるくまなど、いろんなおもちゃがありました。彼はそれをとってきて、チロに見せました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
沈香じんこう麝香じゃこう人参にんじんくま金箔きんぱくなどの仕入、遠国から来る薬の注文、小包の発送、その他達雄が監督すべきことは数々あった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
寝台の足もとにべったりと降りたひょう。私たちを楽しませ、自分は一向楽しまないくま。自分でも欠伸あくびをし、人にも欠伸を催させるライオン。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
祖母の云うのはみんな北海道開拓当時かいたくとうじのことらしくてくまだのアイヌだの南瓜かぼちゃめし玉蜀黍とうもろこし団子だんごやいまとはよほどちがうだろうと思われた。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
事務長はあぶに当惑したくまのような顔つきで、がらにもない謹慎を装いながらこう受け答えた。それから突然本気な表情に返って
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
でもその日はキクッタのむりな言ひ分を通しましたが、それからは、また元のとほり、ひとりで狩に出て、せつせとくまを狩り集めてゐました。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
おぢさん「は〻あ、可憐かあいいものだなあ。動物園どうぶつゑんなかでもよるなんかくま一番いちばんよくねむるつてね、嚊声いびきごゑ不忍池しのばずのいけまできこへるつてさ」
「的矢丸には、いい薬がある。『くま』もあるよ。よろこべ、『鼻じろ』のきもはようなしだ。あいつも命びろいをしたよ」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
「おっ、くまの字きいたかよ、きいたかよ。あれがいま八丁堀で評判のむっつり右門だとよ。なんぞまたでかものらしいぜ」
一度などは死にかかっているくまを生捕りにしたとて毎度自慢が出たから、心も十分猛々たけだけしいかと言うに全くそうでもない。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
カラフトでは向こうの高みからくまに「どなられて」青くなって逃げだしたこともあるという。えらい大きな声をして二声「どなった」そうである。
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
パリーの音楽家らには、「ボンのくま」みたいに、霊感インスピレーションの騒々しさによって隣人らの邪魔となる恐れは、少しもなかった。
頭から毛皮をかぶったひげぼうぼうのくまのような山男の顔の中に、李陵がかつての移中厩監いちゅうきゅうかん蘇子卿そしけいおもかげを見出してからも
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その日の午後、二階の居間に閉じこもった父は、うしたのであろう。平素いつもに似ず、おりに入れられたくまのように、部屋中を絶間なしに歩き廻っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
次の月の午時頃ひるごろ、浅草警察署の手で、今戸の橋場寄りの或露地の中に、吉里が着て行ツたおくまの半天が脱捨ぬぎすててあり
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
土偶どぐうほかくまだとかさるだとかの獸類じゆうるいをつくつたものもまれにはることがありますが、これは玩具がんぐえて、よくそのかたちがそれらの動物どうぶつてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「そんなことを言ッてなさッちゃア困りますよ。ちょいとおいでなすッて下さい。花魁おいらん、困りますよ」と、吉里の後から追いすがッたのはおくまという新造しんぞう
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
そのうちにようやく笑いを停めると、こんどは笑いあきたか、急にくまきもめたようなむつかしい顔になって
其の時傍にいた母のおくまがきゃっと云ってのけぞった。お熊の咽喉ぶえにお岩が口をやっているところであった。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くまだいらで坂本見れば、女郎が化粧して客待ちる……というその坂本の宿よりはなお十町も東に当る横川に、いわゆる碓氷峠のお関所があるのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かつて一頭のくまロフォーデンよりモスケーに泳ぎわたらんとして潮流に巻きこまれて押し流され、そのもの凄く咆哮する声は遠く岸にも聞えたるほどなりき。
くまきじやまたは名人上手達の勝負事を大好きなイギリス人」はこの必死のゲームに好奇心の全部をけた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
友信は穗の長さ二尺六寸餘、青貝の柄の長さ七尺五寸二分ある大身のやりくまの皮の杉なりのさやめたのを持たせ、屈竟くつきやうの若黨十五人を具して舟を守護した。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
くま鹿しかむという、幽邃ゆうすいな金門公園をけて、乗っていたロオルスロオイスが、時速九十キロで一時間とばしても変化のないような、青草と、羊群のつづく
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
或は遠方より熊を銃殺じゆうさつする位なり、し命中あやまりてくまのがるれば之を追捕するのいうなきなり、而るに秋田若くは越後の猟人年々此山奥に入り来りてりやうするを見れば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「おや、みちをまちがつたやうだよ。困つたなあ。」とねずみさんは、こわごわなかを見ましたら、そこには、山のやうに大きなおもちやのくまさんがすわつてゐました。
ねずみさんの失敗 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
ある時は何だか変だと思って、後の戸を開いて見たら、くまばちが巣をくっていた。あぶなく刺される処だったという。私は構わずほったらかして置くに限ると思った。
その時分はまだ北海道には日本人が一人もいなくて、山にはくま、川にはさけ、そして人間といえばアイヌ人ばかりでした。だからコロボックンクルはアイヌ人の神様でした。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
すると、向うの方で、大ぜいのおおかみと大ぜいのくまとが食べものにかつえて大げんかをしていました。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
けものを見ても分かる、とら獅子ししくまなどのごとき猛獣は年々その数が減じつつある。もし統計を取ることが出来れば、彼らの減少率のはなはだ迅速じんそくなることを示すであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さてその後からは、てつのおりに入ったライオン、とらくまなどの猛獣もうじゅうが車に乗せられて来ます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
大江山おおえやまの鬼が食べたいとおっしゃる方があるなら、大江山の鬼を酢味噌すみそにして差し上げます。足柄山あしがらやまくまがお入用いりようだとあれば、ぐここで足柄山の熊をおわんにして差し上げます……
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
よしさあも、くまさあも、きんさあも、鹿しかあんも今年はもう行かねえそうだ。りきやんと加平かへいが、行こか行くまいかと大分迷っとったがとにかくも一ぺん行って見ようといっとったよ」
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
くま本州ほんしゆうやまさんするものは、アジア大陸たいりくさんする黒熊くろぐま變種へんしゆです。秩父ちゝぶやま駿河するが甲斐かひ信濃しなの相模さがみ越中えつちゆう越後等えちごなど山中さんちゆうにをり、ややまぶどうをこのんでべてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
彼の愛のたわむれは、どう見てもくまがやさしく愛撫あいぶするようなものだったが、ひそひそ声のうわさ話によれば、彼女はまんざら彼の望みをうちくだきもしなかったということだった。
洞穴ほらあなの中は広かった。壁にはいろいろな武器が懸けてあった。それが炉の火の光を浴びて、いずれも美々しく輝いていた。ゆかにはまた鹿しかくまの皮が、何枚もそこここに敷いてあった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼らはそこから出ることができず、穴の中のくまのように襲われ追窮されて、ハンノーヴルの二個中隊との対戦を甘受した。その二個中隊のうちの一個中隊はカラビーヌ銃を持っていた。
不器用なお慶は、朝から昼飯も食わず日暮頃までかかって、やっと三十人くらい、それも大将のひげを片方切り落したり、銃持つ兵隊の手を、くまの手みたいに恐ろしく大きく切り抜いたり
黄金風景 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ニルマーツキイはくまいぐるみを着せられて、塩の入った水を飲まされた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)