支那しな)” の例文
何だ、きさまの眼玉は黄いろできょろきょろまるで支那しなの犬のやうだ。ははあおれはドイツできさまの悪口を云ってやる。わかるかい。
電車 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
日本にほん化物ばけもの貧弱ひんじやくなのにたいして、支那しなるとまつたことなる、支那しなはあのとほ尨大ぼうだいくにであつて、西にしには崑崙雪山こんろんせつざん諸峰しよぼう際涯はてしなくつらな
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
物識ものしり顔で言う男もあれば、いやいやそうではない、何事につけても敬神崇仏、これを忘れるなという深いお心、むかし支那しな
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
支那しな内地ないちからるものと非常ひじようによくてゐるので、どうしてもこれは支那人しなじん祖先そせん使用しようしたものらしくおもはれるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
支那しな帝使を西班牙スペイン帝使のしもに座せしめ、わがたり友たる西帝せいていの使を、賊たり無頼の徒たる支那帝の使の下にせしむるなかれといしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
むかし、台湾たいわんの南のはじの要害の地に、支那しなの海賊がやつてきて、住居すまひをかまへましたので、附近の住民はたいへん困りました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
ハワイのヒロはホノルルに次ぐ都会であるが、そのヒロに某と云う商店があって、賃銀ちんぎんの関係から支那しな人や日本人を事務員に使っていた。
机の抽斗 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いつも、印度インドを通って支那しなへやってくる爺さんの船は、上海シャンハイで用をすますと、そこから故郷のフランスの方へ帰っていってしまうのです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
落ちる場処ばしょはだんだん遠方になり、例えば日本から打ち出したものが支那しなまでとどき、もっと強ければ支那しなを超えてヨーロッパまでもゆき
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
支那しななどでも夢の告げを信じてそれで国難を救うことができたりした例もあるのですから、こちら様ではお信じにならなくても
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
画家さん、壺の右の端にね、孔子こうし様が立つてゐるんですよ。支那しな山東省さんとうしやう鄒邑すういふといふ所で産れた孔子様、この人は偉い人だよ。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
しかし、やがておくぬしかなしきかた見になつたその寫眞器しやしんきは、支那しなの旅からかへるともなく、或るぶん學青年の詐欺さぎにかゝつてうしなはれた。
信一郎は、女王の前に出た騎士のように慇懃いんぎんだった。が、夫人は卓上に置いてあった支那しな製の団扇うちわを取って、あおぐともなく動かしながら
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一方に西洋や、支那しなや、エジプトやでは、荘重典雅な皇居の中で、あらゆる形式主義の儀礼の上に、権力意識の神聖な偶像が坐っていた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
昭和二年(民国十六年)に、この作は北京ペキン大学の徐祖正氏の訳により支那しな語に移され、北新書局というところから出版せられた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
支那しな全國ぜんこくだうわかれ、だうしうまたぐんわかれ、それがけんわかれ、けんしたがうがありがうしたがある。しうには刺史ししひ、ぐんには太守たいしゆふ。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
むかし支那しなに、ある天子てんしさまがあって、すべてのくにをたいらげられて、りっぱな御殿ごてんてて、栄誉えいよ栄華えいがおくられました。
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが我が阿Qにおいてはこのような欠乏はなかった。ひょっとするとこれは支那しなの精神文明が全球第一である一つの証拠かもしれない。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「ウィーン狂想曲」「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきローズ・マリー」「支那しなの太鼓」などことごとく作曲者の自演がビクターにある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
それに二面の方では支那しな問題、バルカン問題、米国の排日問題やらで、電報、通信、電話などがしっきりなしにやって来てごたごたしていた。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
苦心の結果、誠にいかにも古代支那しな式な苦肉の策が採られた。すなわち、斉から魯へおくるに、歌舞かぶに長じた美女の一団をもってしたのである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そんなのをると、もうはるたのかとおもはれます。蝋梅ろうばいはもと支那しなさんですが、はや我國わがくに移植いしよくされおほくは庭木にはきとして灌木状かんぼくじようをしてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「ええ十銭です。この通り美しいさかなです。これは支那しなでは人魚ともいうそうです。ごらんなさい、この悧巧りこうそうな眼付を見てやって下さい。」
不思議な魚 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ライラック色の支那しな服をきたの高い女だつた。廊下のまん中で立ちどまると、いきなりこつちへ横を見せて、奥の食堂の方を透かすやうに見た。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
あるとき宮中きゆうちゆう女官じよかんたちがこの匡衡まさひら嘲弄ちようろうしようとたくんで、和琴わごん日本につぽんこと支那しなことたいしていふ)をして
面啖めんくらつて、へどもどしながら、そんななかでもそれでも、なん拍子ひやうしだか、かみなが工合ぐあひひ、またしまらないだらけたふうが、朝鮮てうせん支那しな留學生りうがくせいら。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
膏薬をがして眼を洗はせたが、熱い煉薬ねりぐすりが眼にみたので、善吉はその後幾日も眼医者に通はねばならなかつた。前の支那しなの話に膏薬を口に貼つた。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
支那しなの曲芸師は五六歳の子供に、股の間から首を出す程もそり返る術を教え込むことが、出来るではありませんか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
士官学校を卒業する時には、恩賜おんしの軍刀を頂いた秀才で、殊に語学は天才的だった。支那しな語や、マレー語や、スペイン語なども自由に話すことが出来た。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
始めは支那しなに往きたいという考えでありまして、その望みをもって英国の伝道会社に訴えてみたところが、支那にる必要がないといって許されなかった。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
心は鏡 その昔、支那しな神秀じんしゅうという有名な坊さんがありました。彼は禅のさとりについて、こういっています。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
濠州ごうしゅう、あふりか、支那しな、日本への関門。そうです。十六世紀に、葡萄牙ポルトガル人がここの海岸へ城塁を築きました。それを、あとから和蘭オランダの征服者が改造しました。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
いくらだと聞くと、持主が支那しなから持って帰って来て是非売りたいと云いますから、お安くして三十円にしておきましょうと云う。この男は馬鹿ばか相違そういない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぬのを掲げた部屋の中には大きい黒檀こくたん円卓テエブルに、美しい支那しなの少女が一人ひとり白衣びやくえ両肘りやうひぢをもたせてゐた。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
昔、わが海軍に負けて、毒をのんで死んだ支那しな丁汝昌ていじょしょう提督のように、敵ながら気の毒な将軍ではないか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
十如是の文によって支那しなの天台智者大師が天台哲学を組織し、勧持品の文によって日蓮上人のあの超人的な行業が誘発された能力に就いてのおよその見当がつく。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
栄蔵は支那しなの聖人、賢人が書残した書物を読む。それは碁石ほどの大いさの漢字ばかりで書かれてある。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
海嘯かいしよう潮汐ちようせき干滿かんまん非常ひじようおほきなうみむかつて、河口かこう三角さんかくなりにおほきくひらいてゐるところおこ現象げんしようである。支那しな淅江省せつこうしよう錢塘江せんとうこう海嘯かいしようについてもつと有名ゆうめいである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一本々々毛の先を綺麗きれいそろえて、支那しなの少女がするように、額の方へ暖簾のれんごとく垂れ下げているのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
他人たにんがよいからよいとおもふのは、正直しようじきでよいことですが、さういふのを支那しなひとはうまくいひました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
むかし、支那しな莊周さうしうといふひとは、ゆめ胡蝶こてふつたとはなしがありますが、ゆめなればこそ、漫々まん/\たる大海原おほうなばら徒渉かちわたりすることも出來できます、空飛そらととり眞似まね出來できます。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
日本にほん英佛米伊えいふつべいいの四こくとも支那しな勸告くわんこくはつして、はや南北なんほくあらそひをめて『世界改造せかいかいざう偉業ゐげふ參加さんかせよ』とやつたね。支那しなはおかげ南北合同なんほくがふどう大共和國だいきようわこくになるだらう。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
三、支那しな青海省の“Puspamadaプシパマーダ”いわゆる金沙河ヒマラヤの巴顔喀喇パイアンカラ山脈中の理想郷。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
むかし、支那しな孫叔傲そんしゆくがうといふ名高い学者がありました。この人がまだ子供の時分に、ひとりで野原に遊んでゐますと、のろ/\と、頭の二つあるへびがはひ出して来ました。
原つぱの子供会 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
支那しながまだ清国しんこくといつたころ北京ペキンの宮城の万寿山まんじゆさんの御殿にかけてあつたもので、その頃、皇帝よりも勢ひをもつた西太后せいたいごう(皇太后)の御機嫌ごきげんとりに、外国から贈つたものを
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それから支那しな少年善金ゼンキン伊孫イーソン、イタリア少年ドールとコスターの十歳組、そのつぎにはフランス少年ガーネットとサービス、そのつぎにはドイツ少年ウエップとイルコック
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
支那しなにいわゆる仲春会男女ちゅうしゅんなんにょをかいすという工合もあろう。それでもマア淫風いんぷうならずとはいいにくい。野蛮風俗の居残りサネ。その上夫ある婦人は。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
船が平気だと、支那しなから亜米利加アメリカの方を見物がてら今度旅行を為て来るのも面白いけれど。日本の内ぢや遊山ゆさんあるいたところで知れたもの。どんなに贅沢ぜいたくを為たからと云つて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
支那しなとか朝鮮とかあるいは日本の内地だけでも端から端までゆっくり旅行してみたいよ。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
支那しなでは北京ペキン政府が二十万げんを支出して送金して来た外、これまで米殻輸出を禁じていたのを、とくに日本のために、その禁令をといたり、全国の海関税かいかんぜいを今後一か年間一割ひき上げて
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)