)” の例文
旧字:
たして、真夜中まよなかのこと、ぶつかるかぜのために、いえがぐらぐらと地震じしんのようにれるのでした。かぜ東南とうなんから、きつけるのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もすそってねたように云いながら、ふと、床の間の桜を見た時、酔った肩はぐたりとしながら、キリリと腰帯が、端正しゃんしまる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ナポレオンは答の代りに、いきなりネーのバンドの留金がチョッキの下から、きらきらと夕映ゆうばえに輝く程強く彼の肩をすって笑い出した。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
更に岸をくだつて水上すゐじやううかかもめと共にゆるやかな波にられつゝむかうの岸に達する渡船わたしぶねの愉快を容易に了解する事が出来るであらう。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その時、春雷の鳴ったようなとどろきが、大地をりあげた。水の手の貯水池にはさざ波が立ち、空には黒煙がいちめんに濃くみなぎった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やはり、手探りしながら、歩く暗さで、しばらくゆくと、突然とつぜん、足下のゆかが左右にれだし、しっかりみしめて歩かぬと、転げそうでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
身体からだが身体だからむやみに汽車になんぞ乗ってれない方が好い。無理をして見舞に来られたりすると、かえってこっちが心配だから」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
らめていてる蝋燭ろうそくの火に輝らされたクリストフの痛ましい顔、壁の上に落ちてる影、街路に響くある足音、手に握ってる鉄の感触……。
夜に入ってはただ月白く風さわやかに、若葉青葉のかおりが夜気にらぐをおぼゆるのみである。会は実におもしろかりし楽しかりし。
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
狐光きつねびかりのその月に、さながら生きて踊るかに、近明ちかあかりしてきほひ舞ふ、かと見れば、また、何か暗く薄かげりして、らぎ止み、らぎ騒立さやだつ。
あたりは青々と、光に満ちていた。風は木々の葉なみをそよがせ、時おり木苺きいちごの長いえだを、ジナイーダの頭上ですっていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
乗合自動車は停留所ごとに人溜まりを呑んで、身じろぎも出来ないほど詰め込んだ胃袋をりながら、ごとごと走った。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
どうでは父親が一枚の蒲団ふとんにくるまってともの方をまくらにして眠っていた。忰はいきなり父親の肩に手をかけてり動かした。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
僕は渡し舟に乗る度に「一銭蒸汽」の浪の来ることを、——このうねうねした浪の為に舟のれることを恐れたものである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが風にらぐと、反射でなめらかながけの赤土の表面が金屏風きんびょうぶのようにひらめく。五六じょうも高い崖の傾斜けいしゃのところどころに霧島きりしまつつじがいている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その高い窓へ、地上に積んだ石炭をはこびこむらしいかごが、適当の間隔を保ってイ……相当の数、ブラブラれながら動いてゆく。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雁は二、三べんらぎました。見る見るからだに火がえ出し、にもかなしくさけびながら、ちてまいったのでございます。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いとすったり、おさえて変わる音の繊細な味を研究おさせになるのに不便なために、夜になってから静かに教うべきであるとお言いになって
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
あたしや未来派さ。」と故意わざと取り澄まして答へながら、彼女は遠野の膝の上でその豊満な身体をゆるやかにすり初めた。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
三つの窓にかけた厚いカーテンが、ゆらゆらとれています。窓がしまっていれば、こんなに揺れるはずはないのです。
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一寝入したかと思うと、フト眼がめた、眼が覚めたのではなく可怕おそろしい力がやみの底から手を伸してり起したのである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
堀の水は鉛色に煙り、そとへ突き出した木々の枝葉で、土塀のあちこちには蔭影かげがつき、風が吹くたびにそれがれた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明和めいわ戌年いぬどしあきがつ、そよきわたるゆうべのかぜに、しずかにれる尾花おばな波路なみじむすめから、団扇うちわにわにひらりとちた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けれど、いかにもありありとした夢で、あしの葉が風にれていたのさえ覚えています——あら! どうなさいまして?
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
たちは長い間、汽車にられて退屈たいくつしていた、母は、私がバナナをんでいる傍で経文をしながら、なみだしていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
露をハラハラとりこぼし、又うら枯れた枝を、おもむろに撓めたり、伸べたり、持ち前の芳香をふんだんに、いろいろ調子を変えてただよわせたり
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
そしてその自分でもはっきりとは分からないもののために自分の心が切ないほどらいでいるのを、私もまた切なくそれを揺らぐがままにさせていた。……
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それを見ると兵馬も、同じように駕籠を傭おうと思ったけれど生憎あいにくそれはなし、刀と脇差をり上げて、いずこまでもこの駕籠と競争する気になりました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二、三間先の庭の生籬いけがきが、だしぬけにざわざわと音を立ててれだした。誰か外の方から揺すぶったらしい。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
左側を見渡すと限りもなく広い田の稲は黄色に実りて月が明るく照して居るから、静かな中に稲穂が少しばかりれて居るのも見えるようだ。いい感じがした。
句合の月 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ゆらりとひとれ大きくざしが揺れたかと見るまに、突然パッとあかりが消えた。奇怪な消え方である。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そうして、ている主人をり起こして、これこれこうだと、今あったことを息もつかずに話しました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ぴかぴか光るしんちゅう板の振子ふりこがあっちこっちにれ動いて、コットン、コットンいっていました。
しかしユリの想像語原では、ユリのくきが高くびて重たげに花が咲き、それに風が当たるとその花がれるから、それでユリというのだ、といっていることがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
余震の絶間たえまなくる最中で、新宿から火事が出たとか、帝劇が今燃えてるとかいう警報が頻りであったので、近所隣りの人々がソワソワしてったり来たりしていた。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
老人と入代りに紀昌がその石をんだ時、石はかすかにグラリとらいだ。いて気をはげまして矢をつがえようとすると、ちょうどがけはしから小石が一つ転がり落ちた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
晩秋の日は甲州こうしゅうの山に傾き、膚寒い武蔵野むさしのの夕風がさ/\尾花をする野路を、夫婦は疲れ足曳きずって甲州街道を指して歩いた。何処どこやらで夕鴉ゆうがらすが唖々と鳴き出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかしさすがにその小さな眠りをりさます事はし得ないで、しきりと部屋へやの中を片づけ始めた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
とほくアムールのきしなみひゞきは、興安嶺こうあんれいえ、松花江しようくわかうわたり、哈爾賓はるびん寺院じゐんすり、間島かんたう村々むら/\つたはり、あまねく遼寧れいねい公司こんするがし、日本駐屯軍にほんちうとんぐん陣営ぢんえいせま
其れと交互に舞台では今夜の曲目の独唱や露西亜舞踊が展開されて拍手が場内をするのである。客は次第に加はるが、私達と一組の支那紳士とを除けば露西亜人のみである。
平八郎は夢をさまされたやうに床几しやうぎつて、「い、そんなら手配てくばりをせう」と云つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
二日そうしてち、午頃ひるごろ、ごおッーとみょうな音がして来た途端に、はげしくれ出した。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
花車はスッと羽織と単物ひとえものを脱ぎましたが、角力取の喧嘩は大抵裸体はだかのもので、花車は衣服を脱ぐと下には取り廻しをしめている、ウーンと腹をあげると腹の大きさは斯様こんなになります
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人の重みで吊り橋がかすかにれ、下駄げたの音がコーン、コーンと、谷に響いた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
風の音にも幾度いくたびかしらを挙げし貫一は、婆娑ばさとして障子にるる竹の影を疑へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
折から草木を烈しくッて野分の風が吹いて来た。野原の急な風……それはなかなか想像のほかで、見る間に草の茎や木の小枝が砂と一途いっしょにさながら鳥の飛ぶように幾万となく飛び立ッた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
れも動きもしない大地の上で五日ほど休養し、元気を恢復かいふくしたところで、うち連れてタム・キイという村へ行った。吉之丞とモニカはそこで一同と別れ、日本人町のあるフェイフォに向った。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すみのほうには、アメリカせいりいすがありますし、窓ぎわのテーブルには、美しくぬいとりをしたビロードのきれがかけてあります。それから、ベッドには美しいおおいがかけてあります。
大霧をるよと見る間に、急瀬きふらい上下に乱流する如くなりて、中霄ちゆうせうあふれ、片々団々だん/\さかれて飛んで細かく分裂するや、シヤボン球の如き小薄膜となり、球々相摩擦まさつして、争ひて下界に下る、三合四合
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)