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巧
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たくみ
ふりがな文庫
“
巧
(
たくみ
)” の例文
是等
(
これら
)
は
謂
(
い
)
わば従であり人が主であるから、必要に迫らるれば、随分無理をして、といっても、
巧
(
たくみ
)
に自然を利用することを忘れないで
峠
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
その他、鮨の材料を採ったあとの
鰹
(
かつお
)
の
中落
(
なかおち
)
だの、
鮑
(
あわび
)
の
腸
(
はらわた
)
だの、
鯛
(
たい
)
の白子だのを
巧
(
たくみ
)
に調理したものが、ときどき常連にだけ突出された。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は
確
(
たしか
)
に老人ではない、変装しているのだ。そう思って見ると、いかにも
巧
(
たくみ
)
に地の毛のように見せかけてはあるが、どうも
鬘
(
かつら
)
らしい。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
鮎子が右に左に通せんぼうをするのを、
巧
(
たくみ
)
にかい
潜
(
くぐ
)
って、
尻尾
(
しっぽ
)
の二郎美少年を
捕
(
つか
)
まえる遊戯だ。陸上の「子を取ろ、子取ろ」である。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この人は
齡
(
よはひ
)
略
(
ほ
)
ぼ我と同じくして、その家は貴族なり。心爽かにして頓智あり、會話も
甚
(
いと
)
巧
(
たくみ
)
なれば、人皆その言ふところを樂み聽けり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
竹田は詩書画三絶を称せられしも、和歌などは
巧
(
たくみ
)
ならず。画道にて
悟入
(
ごにふ
)
せし所も、
三十一文字
(
みそひともじ
)
の上には
一向
(
いつかう
)
利
(
き
)
き目がないやうなり。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
過去はぼんやりしたものです。そうして
何処
(
どこ
)
かに
懐
(
なつ
)
かしい匂いを持っています。あなたはそれを
巧
(
たくみ
)
に使いこなして居るのでしょう。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
句風以外の特色をいはんか、鳥取の俳人は皆
四方太
(
しほうだ
)
流の書体
巧
(
たくみ
)
なるに反して、
取手
(
とりで
)
(
下総
(
しもうさ
)
)辺の俳人はきたなき読みにくき字を書けり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
如何に相手に真剣の愛を注いでいる如く如何に
巧
(
たくみ
)
に装っているにしても、同時に一方に一件の事を思い出さぬわけには行きませぬ。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
勝
(
すぐ
)
れたところをあげれば、才もあり智もあり、物に
巧
(
たくみ
)
あり、悟道の
縁
(
えに
)
しもある。ただ惜むところは
望
(
のぞみ
)
が大きすぎて破れるかたちが見える。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
知識人は大宅壮一の
巧
(
たくみ
)
な表現によれば、急テンポに半インテリに化されつつある、それは本当です、作家が、そこにおらくについている。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
紙細工
(
かみざいく
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、この世にあるまじき美を
巧
(
たくみ
)
にも作り上げた
紙細工
(
かみざいく
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、もしや
本當
(
ほんたう
)
の花でないかえ、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
それも響、動をトヨムと訓むことにしての例である。そうして見れば、「入江響むなり」の用例は簡潔で
巧
(
たくみ
)
なものだと云わねばならない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
但
(
ただ
)
し市井の新聞記事から、
巧
(
たくみ
)
に材料を選び出して、作の基調にするという、そういう際物的やり方には評者は大いに賛成する。
日本探偵小説界寸評
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
巧
(
たくみ
)
を
極
(
きは
)
め、
喬木
(
けうぼく
)
高樓
(
かうろう
)
は
家々
(
かゝ
)
に
築
(
きづ
)
き、
花林曲池
(
くわりんきよくち
)
は
戸々
(
こゝ
)
に
穿
(
うが
)
つ。さるほどに
桃李
(
たうり
)
夏
(
なつ
)
緑
(
みどり
)
にして
竹柏
(
ちくはく
)
冬
(
ふゆ
)
青
(
あを
)
く、
霧
(
きり
)
芳
(
かんば
)
しく
風
(
かぜ
)
薫
(
かを
)
る。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鈴木春信は可憐なる年少の男女相思の図と合せて、また単に婦人が
坐臥
(
ざが
)
平常の姿態を描き
巧
(
たくみ
)
に室内の光景と
花卉
(
かき
)
とを配合せり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おれは辞退して
其
(
その
)
女と一緒に歩いたことは無かつたが、おれは
其
(
その
)
女の
巧
(
たくみ
)
に素早く化粧する所を
彼
(
か
)
れの部屋で見せて貰つたことなどもあつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
先ずお国柄だから、当局が
巧
(
たくみ
)
に
柁
(
かじ
)
を取って行けば、殖えずに済むだろう。しかし遣りようでは、激成するというような傾きを
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お糸の態度は明かに金次郎を
庇
(
かば
)
つてゐるに違ひありませんが、かう
巧
(
たくみ
)
にいひのがれられると、まさか若い娘を縛り上げるわけには行きません。
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
土手の甚藏がお賤の宅へ参りましたのは、七日も過ぎましてから、ほとぼりの冷めた時分
行
(
ゆ
)
くのは
巧
(
たくみ
)
の深い奴でございます。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
其の様を見るに三尺児と
雖
(
いへど
)
も
猶
(
なほ
)
弁ずべきを、頑然首を差伸べて来る。古狸
巧
(
たくみ
)
に人を
誑
(
たぶらか
)
し、其極終に昼出て児童の獲となること、古今の笑談なり。
大衆維新史読本:07 池田屋襲撃
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
むかし
二
延長
(
えんちやう
)
の頃、
三
三井寺に
四
興義
(
こうぎ
)
といふ僧ありけり。絵に
巧
(
たくみ
)
なるをもて
五
名を世にゆるされけり。
嘗
(
つね
)
に
画
(
ゑが
)
く所、
仏像
(
ぶつざう
)
山水
(
さんすゐ
)
花鳥
(
くわてう
)
を
六
事とせず。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
才分に富んだ女が真実に自己を発揮したならば、『源氏物語』のような
巧
(
たくみ
)
な作がこの後とても出来ないとは限りません。
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
他
(
か
)
れが悲みも
他
(
か
)
れが涙も
他
(
か
)
れが失望の絶叫も
総
(
すべ
)
て
最
(
いと
)
巧
(
たくみ
)
なる狂言には非ざるや、藻西太郎の異様なる振舞も
幾何
(
いくら
)
か倉子の為めに
由
(
よ
)
れるには非ざるや
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
是以
(
こゝをもつて
)
君を
廃
(
はい
)
して親王を立、
国柄
(
こくへい
)
を一人の手に
握
(
にぎら
)
んとの
密謀
(
みつぼう
)
あり
法皇
(
ほふわう
)
も是に
応
(
おう
)
じ玉ふの
風説
(
ふうせつ
)
ありと
言
(
ことば
)
を
巧
(
たくみ
)
に
讒
(
ざん
)
しけり。時に 延喜帝御年十七なり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
黒い蜂が蜘蛛をとりにきて
巧
(
たくみ
)
に巣からとってゆく日があった。また
蝙蝠
(
こうもり
)
の飛ぶ夕べがあった。雨の日も、雷の日も。
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
大原君、僕は日本人の肉食を
盛
(
さかん
)
にするため豚の利用法を天下に広めたいと思う。豚の肉は牛肉よりも
価
(
ね
)
が
廉
(
やす
)
くって
巧
(
たくみ
)
に調理すると牛肉より
美味
(
うま
)
くなる。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
締めるように、相手と同じレベルに下って、幼稚な感情や思索の動きに
巧
(
たくみ
)
にバツを合せて行かなければいけません
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「どうしても事務外の事務の
巧
(
たくみ
)
なものは違ッたものだネ、僕のような愚直なものにはとてもアノ真似は出来ない」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
爰
(
こゝ
)
に
於
(
お
)
いてか
滿座
(
まんざ
)
悉
(
こと/″\
)
く
拍手
(
はくしゆ
)
喝釆
(
かつさい
)
しました、それは
眞
(
しん
)
に
王樣
(
わうさま
)
が
其日
(
そのひ
)
に
仰
(
おほ
)
せられた
中
(
うち
)
の
最
(
もつと
)
も
巧
(
たくみ
)
みなるお
言葉
(
ことば
)
でした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
日本人の
眼
(
まなこ
)
を以て見れば王子も
亦
(
また
)
唯
(
ただ
)
不浄の畜生たるに過ぎず
云々
(
うんぬん
)
とて、筆を
巧
(
たくみ
)
に事細かに
書
(
かい
)
て
遣
(
やっ
)
たことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「
漆
(
うるし
)
の花だなも」で、
巧
(
たくみ
)
に
棹
(
さお
)
を操る
舳
(
とも
)
の船頭である。白のまんじゅう笠に黒色
鮮
(
あざや
)
かに秀山霊水と書いてある。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
巧
(
たくみ
)
すぎた落ちがある。完成され切ったいやらしさ。そう感ずるのも、これも、私の若さのせいであろうか。
富士に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
寛蓮
巧
(
たくみ
)
に帝の御いたづらの裏をかき、かねて別の枕を用意しておいて井戸へ投げこみ、自分はそつと引返してまんまと
真物
(
ほんもの
)
は我家へ持帰つてしまつたのである。
醍醐の里
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
手を振り声を潜め眼を円くして、古城で変な足音の聴えた事や、深林に
怪火
(
あやしび
)
の現われた事など、それから
夫
(
そ
)
れへと
巧
(
たくみ
)
に語るので、娘達は
恐
(
こわ
)
ければ恐い程面白く
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
二六 柏崎の
田圃
(
たんぼ
)
のうちと称する阿倍氏はことに聞えたる旧家なり。この家の先代に彫刻に
巧
(
たくみ
)
なる人ありて、遠野一郷の神仏の像にはこの人の作りたる者多し。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この英・米の対立競争を
巧
(
たくみ
)
に利用したところに
陸奥宗光
(
むつむねみつ
)
外交が不平等条約の改正に成功した秘密がある。
黒船来航
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
なお進めば落葉の下を潜る露の雫をも
名
(
なづ
)
けて河といえるようなもので主義の本などいうことも、殆ど言葉の
巧
(
たくみ
)
なる用法によりて
如何
(
いか
)
ようにも説明されるけれども
デモクラシーの要素
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ことに背の低い
山県行三郎
(
やまがたかうざぶらう
)
といふのは、自分の漢詩に
巧
(
たくみ
)
であることを知つて、喜んでその自作の漢詩を示し、好くその
故郷
(
ふるさと
)
の雪の景色を説明して自分に聞かせた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
◯一節—十節のこの
呪詛
(
のろい
)
の語のいかに深刻痛烈なるよ。その中二、三の難解の語を解せんに、八節に「日を詛う者、レビヤタンを
激発
(
ふりおこ
)
すに
巧
(
たくみ
)
なる者、これを詛え」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
鋏がその巣を荒すと、蜘蛛は曲芸師の
巧
(
たくみ
)
さで糸を
手繰
(
たぐ
)
りながら逃げて行く。それを大きな鋏が追駆ける。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
進
(
すゝ
)
み其は旅籠屋の下女が
巧
(
たくみ
)
ならん貴樣の方に
櫛
(
くし
)
はなしと
計
(
はか
)
りたるに先には
鼈甲
(
べつかふ
)
の櫛の
幾個
(
いくら
)
もあらんにより
指替
(
さしかへ
)
の
似寄
(
により
)
の品を出して貴樣を
欺
(
あざむ
)
き歸せしなるべし其女を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかも放埒な性質のため、
巧
(
たくみ
)
な詐欺手段で有名なロンドンの商人から、莫大なお金を取ったのだった。
グロリア・スコット号
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
われ曹
疾
(
と
)
くより爾が罪を知れり。たとひ言葉を
巧
(
たくみ
)
にして、いひのがれんと計るとも、われ曹いかで欺かれんや。重ねて
虚誕
(
いつわり
)
いへぬやう、いでその息の根止めてくれん
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
また明治の初年には
龕燈提灯
(
がんどうちょうちん
)
という、如何に上下左右するも中の火は常に安定の状態にあるように、
巧
(
たくみ
)
に造られたものがあったが、現に熊本県下にはまだ残存している。
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
「それといはぬはあつちの
巧
(
たくみ
)
、維盛様御夫婦の路用にせんと盗んだ金、
重
(
おめ
)
えを証拠に取りちがへ」
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
おつぎは
十八
(
じふはち
)
というても
其
(
そ
)
の
年齡
(
とし
)
に
達
(
たつ
)
したといふばかりで、
恁
(
こ
)
んな
場合
(
ばあひ
)
を
巧
(
たくみ
)
に
繕
(
つく
)
らふといふ
料簡
(
れうけん
)
さへ
苟且
(
かりそめ
)
にも
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
程
(
ほど
)
一
面
(
めん
)
に
於
(
おい
)
ては
濁
(
にごり
)
のない
可憐
(
かれん
)
な
少女
(
せうぢよ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「文字ノ精ガ人間ノ眼ヲ
喰
(
く
)
イアラスコト、
猶
(
なお
)
、
蛆虫
(
うじむし
)
ガ
胡桃
(
くるみ
)
ノ固キ
殻
(
から
)
ヲ
穿
(
うが
)
チテ、中ノ実ヲ
巧
(
たくみ
)
ニ喰イツクスガ
如
(
ごと
)
シ」と、ナブ・アヘ・エリバは、新しい粘土の備忘録に
誌
(
しる
)
した。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
紀州に光明寺といふ
黄檗
(
わうばく
)
の寺がある。が、そこの
開山
(
かいさん
)
は円通といふ草書に
巧
(
たくみ
)
な坊さんだつた。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
既に解剖した屍體をすら平氣で而も
巧
(
たくみ
)
に縫合はせる位であるから、其が
假
(
よし
)
何樣
(
どん
)
な屍體であツても、屍體を取扱ふことなどはカラ
無造作
(
むざうさ
)
で、鳥屋が鳥を絞めるだけ苦にもしない。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
巧
常用漢字
中学
部首:⼯
5画
“巧”を含む語句
巧妙
技巧
巧者
精巧
巧言
巧手
巧緻
巧拙
見巧者
機巧
老巧
口巧者
巧計
惡巧
悧巧
利巧
繊巧
巧々
悧巧者
小悧巧
...