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勿体
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もつたい
ふりがな文庫
“
勿体
(
もつたい
)” の例文
旧字:
勿體
卑しい
傀儡
(
くぐつ
)
の顔を写しましたり、不動明王を描く時は、
無頼
(
ぶらい
)
の
放免
(
はうめん
)
の姿を
像
(
かたど
)
りましたり、いろ/\の
勿体
(
もつたい
)
ない真似を致しましたが
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや、良寛禅師の書を、あんな風におもていさらしておくのは、
勿体
(
もつたい
)
ないことです。あれは、おしまひになる方が、いいと思ひます。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
その石けんはラツクスといつて、人間でもめつたには使はない上等の石けんですから、お猫さんの
家
(
うち
)
なんかで使ふのは
勿体
(
もつたい
)
ないぐらゐです。
お猫さん
(新字旧仮名)
/
村山籌子
、
古川アヤ
(著)
私
風情
(
ふぜい
)
のなま/\に作り候物にまでお眼お通し下され候こと、
忝
(
かたじけな
)
きよりは先づ恥しさに顔
紅
(
あか
)
くなり候。
勿体
(
もつたい
)
なきことに存じ候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
今となつてみると、新雪の輝やく富士山がよく見えぬからと言つて、
出洒張
(
でしやば
)
つた杉木立の梢を
恨
(
うら
)
んだのは、
勿体
(
もつたい
)
ない気がする。
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
▼ もっと見る
目が
醒
(
さ
)
めてから考へれば、実に馬鹿馬鹿しくつまらぬことが、夢の中では
勿体
(
もつたい
)
らしく、さも重大の真理や発見のやうに思はれるのである。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
あたしだつて人間だもの、まさかお前の心の
悟
(
よ
)
めていないでもなかつたけれど、そこにア、それ……、かういつちや
勿体
(
もつたい
)
ないけどまつたくさ。
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
話の波が、また
中央
(
まんなか
)
へ
復
(
かへ
)
つて来た。が、頭を青々と
剃立
(
そりた
)
てた
生若
(
なまわか
)
い坊さんは、
勿体
(
もつたい
)
ぶつた顔にちよいと微笑を浮べただけで何とも答へなかつた。
野の哄笑
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
手
(
て
)
ならひが
能
(
よ
)
く
出來
(
でき
)
たれば
此次
(
このつぎ
)
には
文
(
ふみ
)
を
書
(
か
)
きて
見
(
み
)
せ給へと
勿体
(
もつたい
)
ない
奉書
(
ほうしよう
)
の
繪
(
ゑ
)
半切
(
はんき
)
れを
手遊
(
おもちや
)
に
下
(
くだ
)
された
事
(
こと
)
忘
(
わす
)
れはなさるまい
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
新画の高い今時、そんな
勿体
(
もつたい
)
ない事があるものかと、鉄斎が
外出
(
そとで
)
をする時には、途中が危いからと言つて、
屹度
(
きつと
)
附人
(
つきびと
)
を一人当てがふ事にしてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
何
(
なに
)
も、
家伝
(
かでん
)
の
秘法
(
ひはふ
)
の
言
(
い
)
ふて、
勿体
(
もつたい
)
を
附
(
つ
)
けるでねえがね……
祖父
(
おんぢい
)
の
代
(
だい
)
から
為
(
し
)
た
事
(
こと
)
を、
見
(
み
)
やう
見真似
(
みまね
)
に
遣
(
や
)
るでがすよ。」
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
勿体
(
もつたい
)
ないこつちや、勿体ないこつちや、これも将棋を指すおかげだす。」と言つたといふくらゐ、総
檜木
(
ひのき
)
作りの木の
香
(
か
)
も新しい立派な場所であつた。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
だつて
貴方
(
あなた
)
、
度々
(
たび/″\
)
の事ですから一
度
(
ど
)
往
(
い
)
らつしやいな、
余
(
あんま
)
り
勿体
(
もつたい
)
を
附
(
つ
)
けるやうに思はれるといけませんよ。
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「どうしたんでせうねえ。
勿体
(
もつたい
)
ないわ、貴方方に。」などとお糸さんは私に同情してくれる丈であつた。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
宿に帰つて、早速亭主を呼んで訊いて見ると、案の如く天理教はまだ入込んでゐないと言ふ。そこで松太郎は、出来るだけ
勿体
(
もつたい
)
を付けて自分の計画を打ち明けて見た。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お常婆は雨の降り
頻
(
しき
)
る或晩、
弓張提灯
(
ゆみはりぢやうちん
)
など
勿体
(
もつたい
)
らしくつけて、改まつて家へ来た。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
後家
(
ごけ
)
を立て通すが
女性
(
をんな
)
の
義務
(
つとめ
)
だと言はしやる、当分は其気で居たものの、まア、長二や、
勿体
(
もつたい
)
ないが、
父
(
おや
)
を
怨
(
うら
)
んで泣いたものよ——お前は今年
幾歳
(
いくつ
)
だ、三十を一つも出たばかりでないか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
さういふ時には
勿体
(
もつたい
)
ないと思つてそこだけ取はづすことなどもあつた。
日本媼
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「実は
薪
(
たきゞ
)
にしたいんでお願ひに来たんですが譲つておくんなさいな。あゝして打つちやらかして置いちや
勿体
(
もつたい
)
なうござんす。今に木の子が立つちやあ薪にもつかへやしませんぜ。どうでせう……」
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
見ると山ねこは、もういつか、黒い長い
繻子
(
しゆす
)
の服を着て、
勿体
(
もつたい
)
らしく、どんぐりどもの前にすわつてゐました。まるで
奈良
(
なら
)
のだいぶつさまにさんけいするみんなの絵のやうだと一郎はおもひました。
どんぐりと山猫
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一ばん大きい
娘
(
こ
)
は、もう夕御飯のお米まで、ちやんと今朝といで学校に行つてくれたし、お菜もつくつてはいけないと云ふし、わたしは、なんにもすることがなくつて、あアあ、ほんとに
勿体
(
もつたい
)
なくて
母の日
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
さて残つたのを捨てる訳にもいかず、犬に呉れるは
勿体
(
もつたい
)
なし、元の竹の皮に包んで
外套
(
ぐわいたう
)
の
袖袋
(
かくし
)
へ突込んだ。斯うして腹をこしらへた上、川船の出るといふ蟹沢を指して、
草鞋
(
わらぢ
)
の
紐
(
ひも
)
を
〆直
(
しめなほ
)
して出掛けた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
実に
勿体
(
もつたい
)
なくも有がたき事ならずや……
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
やれ、
痛
(
いた
)
や、
勿体
(
もつたい
)
なや
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「第一、
勿体
(
もつたい
)
ないやね。こんな上等な土地を
玩具
(
おもちや
)
にするなんて、全くよくないこつた! それには
些
(
ち
)
つと広過ぎるよ。」
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
朝日
(
あさひ
)
かげ
玉
(
たま
)
だれの
小簾
(
をす
)
の
外
(
と
)
には
耻
(
はぢ
)
かヾやかしく、
娘
(
むすめ
)
とも
言
(
い
)
はれぬ
愚物
(
ばか
)
などにて、
慈悲
(
じひ
)
ぶかき
親
(
おや
)
の
勿体
(
もつたい
)
をつけたる
拵
(
こしら
)
へ
言
(
ごと
)
かも
知
(
し
)
れず、
夫
(
そ
)
れに
乘
(
の
)
りて
床
(
ゆか
)
しがるは
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし
私
(
わたし
)
にかういふいゝことを
教
(
をし
)
へて
下
(
くだ
)
すつた
母様
(
おつかさん
)
は、とさう
思
(
おも
)
ふ
時
(
とき
)
は
鬱
(
ふさ
)
ぎました。これはちつともおもしろくなくつて
悲
(
かな
)
しかつた、
勿体
(
もつたい
)
ないとさう
思
(
おも
)
つた。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
勿体
(
もつたい
)
なくも御水を頂かれた上からは、
向後
(
かうご
)
『れぷろぼす』を改めて、『きりしとほろ』と名のらせられい。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
春には花が咲き、秋には
紅葉
(
もみぢ
)
がわしの眼を、たのしませてくれる。何といふ有難いことだ。何一つ世の中のために出来なかつた、わしのやうなものには、ほんたうに
勿体
(
もつたい
)
ない位だ。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
私よくは存ぜぬことながら、私の好きな王朝の書きもの今に残りをり候なかには、かやうに人を死ねと申すことも、
畏
(
おそれ
)
おほく
勿体
(
もつたい
)
なきことかまはずに書きちらしたる文章も見あたらぬやう心得候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「ボタン遊びさ。」と、あひるさんが
勿体
(
もつたい
)
ぶつて答へました。
耳長さん と あひるさん
(新字旧仮名)
/
村山籌子
(著)
「
阿母
(
おつか
)
さん、
勿体
(
もつたい
)
ない、悪く取るなんてことあるものですか」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
勿体
(
もつたい
)
ない事であつたれど知らぬ事なればゆるして下され、まあ
何時
(
いつ
)
からこんな
業
(
こと
)
して、よくそのか弱い身に障りもしませぬか、伯母さんが田舎へ引取られてお
出
(
いで
)
なされて
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「さあ、正直に白状おし。お前は
勿体
(
もつたい
)
なくもアグニの神の、
声色
(
こわいろ
)
を使つてゐるのだらう。」
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ものもらひとは
勿体
(
もつたい
)
ない
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
母親
(
はヽおや
)
の
別
(
わか
)
れに
悲
(
かな
)
しき
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り
盡
(
つく
)
して
膓
(
はらわた
)
もみ
切
(
き
)
るほど
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
きしが
今日
(
けふ
)
の
思
(
おも
)
ひは
夫
(
そ
)
れとも
變
(
かは
)
りて、
親切
(
しんせつ
)
勿体
(
もつたい
)
なし、
殘念
(
ざんねん
)
などヽいふ
感念
(
かんねん
)
が
右往左往
(
うわうざわう
)
に
胸
(
むね
)
の
中
(
なか
)
を
掻
(
か
)
き
廻
(
まわ
)
して
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やら
夢
(
ゆめ
)
の
心地
(
こヽち
)
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
菜売の媼
勿体
(
もつたい
)
ない事を御云ひでない。
罰
(
ばち
)
でも当つたら、どうおしだえ?
往生絵巻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
勿体
(
もつたい
)
なき
事
(
こと
)
とは
知
(
し
)
りながら
與
(
よ
)
四
郎
(
らう
)
への
待遇
(
もてなし
)
きのふには
似
(
に
)
ず、うるさき
時
(
とき
)
は
生返事
(
なまへんじ
)
して、
男
(
をとこ
)
の
怒
(
いか
)
れば
我
(
わ
)
れも
腹
(
はら
)
たゝしく、お
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
物
(
もの
)
なら
離縁
(
りゑん
)
して
下
(
くだ
)
され、
無理
(
むり
)
にも
置
(
お
)
いてはと
頼
(
たの
)
みませぬ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
勿体
(
もつたい
)
らしくしやがんでゐる。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
よし
人目
(
ひとめ
)
には
戀
(
こひ
)
とも
見
(
み
)
よ
我
(
わ
)
が
心
(
こヽろ
)
狂
(
くる
)
はねばと
燈下
(
とうか
)
に
對坐
(
むかひ
)
て、
成
(
な
)
るまじき
戀
(
こひ
)
に
思
(
おも
)
ひを
聞
(
き
)
く
苦
(
く
)
るしさ、
敏
(
さとし
)
はじめよりの一
念
(
ねん
)
を
語
(
かた
)
り、
切
(
せ
)
めてはあはれと
曰
(
のたま
)
へと
恨
(
うら
)
むに、
勿体
(
もつたい
)
なきことヽて
令孃
(
ひめ
)
も
泣
(
な
)
き
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
六三
(
ろくさ
)
暇
(
いとま
)
を
傳
(
つた
)
へ
聞
(
き
)
くより、
心
(
こヽろ
)
むすぼほれて
解
(
と
)
くること
無
(
な
)
く、
扨
(
さて
)
も
慈愛
(
じあい
)
ふかき
兄君
(
あにぎみ
)
が
罪
(
つみ
)
とも
言
(
い
)
はでさし
置給
(
おきたま
)
ふ
勿体
(
もつたい
)
なさ、
身
(
み
)
は
七万石
(
ひちまんごく
)
の
末
(
すゑ
)
に
生
(
うま
)
れて
親
(
おや
)
は
玉
(
たま
)
とも
愛給
(
めでたま
)
ひしに、
瓦
(
かはら
)
におとる
淫奔
(
いたづら
)
耻
(
はづ
)
かしく
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
取
(
と
)
りて
前
(
まへ
)
の
世
(
よ
)
では
何
(
なん
)
でありしやら
兄弟
(
きようだい
)
にもなき
親切
(
しんせつ
)
この
後
(
のち
)
とも
頼
(
たの
)
むぞや
是
(
これ
)
よりは
別
(
べつ
)
しての
事
(
こと
)
何
(
なに
)
ごとも
汝
(
そなた
)
の
異見
(
いけん
)
に
隨
(
した
)
がはん
最早
(
もう
)
今
(
いま
)
のやうな
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふまじければ
免
(
ゆる
)
してよと
詫
(
わび
)
らるゝも
勿体
(
もつたい
)
なく
待
(
ま
)
てば
甘露
(
かんろ
)
と申ますぞやと
輕
(
か
)
るげに
云
(
い
)
へど
義理
(
ぎり
)
は
重
(
おも
)
し
袖
(
そで
)
に
晴
(
は
)
れ
間
(
ま
)
は
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
もこがすなる
勿体
(
もつたい
)
なけれど
何事
(
なにごと
)
まれお
腹立
(
はらだ
)
ちて
足踏
(
あしぶみ
)
ふつになさらずは
我
(
わ
)
れも
更
(
さ
)
らに
参
(
まゐ
)
るまじ
願
(
ねが
)
ふもつらけれど
火水
(
ひみづ
)
ほど
中
(
なか
)
わろくならばなか/\に
心安
(
こゝろやす
)
かるべしよし
今日
(
けふ
)
よりはお
目
(
め
)
にもかゝらじものもいはじお
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
らばそれが
本望
(
ほんまう
)
ぞとて
膝
(
ひざ
)
につきつめし
曲尺
(
ものさし
)
ゆるめると
共
(
とも
)
に
隣
(
となり
)
の
声
(
こゑ
)
を
闇桜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
“勿体”の意味
《名詞》
重々しい様子。
尊大な様子。
(出典:Wiktionary)
勿
漢検準1級
部首:⼓
4画
体
常用漢字
小2
部首:⼈
7画
“勿体”で始まる語句
勿体振
勿体至極
勿体無
勿体顔