くらい)” の例文
これで勝負しょうぶはつきました。芦屋あしや道満どうまんくらいげられて、御殿ごてんからされました。そして阿倍あべ晴明せいめいのお弟子でしになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ミハイル、アウエリヤヌイチは一人ひとりして元気げんきよく、あさからばんまでまちあそあるき、旧友きゅうゆうたずまわり、宿やどには数度すうどかえらぬがあったくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
月々の雑誌を二三冊とって、始めから終まで丹念に読むのがたのしみのひとつで、日曜祭日にも郊外を散歩するくらいがせきのやまだった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
我々の神とは天地これに由りてくらいし万物これに由りて育する宇宙の内面的統一力でなければならぬ、この外に神というべきものはない。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
しかるに前述せし通りヨブは信仰において知識において遥かに三友を凌駕りょうがせる故、ゾパルの振廻ふりまわす天然知識くらいにてひるむべきはずがない。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
これをおきになると、女皇じょおうはだれのこころおなじものだとおもわれて、いまはなんの躊躇ちゅうちょもなく、くらいいもうとゆずることになさいました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分で己れの身をつねってこのくらい力を入れればなるほどこの位痛いものだと独りでいじめて独りで涙ぐんでいるようなものである。
木漏日ももらさぬ薄くらがりに、大きな葉をひろげた広葉天南星ひろばてんなんせいや、まむしそうなどが思うさまにその成長をつづけ、むしろ薄気味悪いくらい
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
わたくし岩屋いわや修行しゅぎょうというのは、つまりうした失敗しっぱいとお叱言こごとりかえしで、自分じぶんながらほとほと愛想あいそきるくらいでございました。
貴様は福澤の主人になったと知らせてれるくらいの事だ。てその跡をついだ以上は、実は兄でも親だから、五十日の忌服きふくを勤めねばならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼の出できたる、継嗣論その楔子せっしたる疑うまでもなし。当時くらいきわめ、おごりを極め、徳川の隆運を極めたる家斉いえなりの孫家定、将軍の位にり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
家事に口を出し過ぎる夫に困ったら、一週間くらいそら病気をして、夫に家事万端ばんたんの世話をやかせ、負担にえない経験をさせたらどうですか。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
の恐しい顔、実に先夜の顔と寸分たがわず、の幽霊が再びここへ迷い出たかと思われるくらい、私は我にもあらで身をふるわせた。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
帖木児チモルが意を四方に用いたる知る可し。しからばすなわち燕王の兵を起ししよりついくらいくに至るの事、タメルランこれを知る久し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まずそれくらい前にロシアの皇帝からチベットの法王に対し、そのツァンニー・ケンボの手によってビショップの法衣ほうえを贈られた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それから竜ヶ鼻の十一面観世音その他の仏が沢山たくさんに彫ってある磨崖仏まがいぶつを見た。これはほとんどこわれてしまってわずかにそれと認めるくらいのものである。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「槍には三位のくらいがある。いわば武器の王様だ。どいつだ、王様を馬鹿にするのは!」わめいているのは丸橋忠弥、朱塗りのさかずきが膝の前にある。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俳人として第一流にくらいする蕪村の事業も、これを広く文学界の産物として見れば誠に規模の小なるに驚かずんばあらず。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
赤外線はスペクトルの赤色の外部にくらいするという意味であり、紫外線とは紫色の外部に位するという意味であります。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
東京の高輪の方にくらいしたその屋敷町の往還は常から人通りが少なかったが、風がだんだん吹き募りながら夜に入ってからは人っ子一人通らなかった。
不幸 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
でげすから、あっしは浅草おくやまときに、そうもうしたじゃござんせんか。まつくらい太夫たゆうでも、花魁おいらんならばものもの
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いずれも子供衆のお相手くらいのもので、真面目腐って研究するのは馬鹿馬鹿しいようでありますが、お伽噺とぎばなしの中に人生の大問題が含まれているように
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うんとほめたてて、あたしとおまえが夫婦ふうふになって、やがては、おまえが王さまのくらいにつけるようにしてあげるよ。
勝負の要は間也かんなりわれ利せんと欲せば彼又利せんと欲す。我往かば彼また来る。勝負の肝要この間にあり。ゆえに吾伝の間積りと云うはくらい拍子に乗ずるを云う也。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
トヨの手綱たづなは、源吉じいさんに握られているが、爺さんの姿は、トヨに劣らないくらい、十分にけだるそうである。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
「ジュリアには非常に調子のよい日というのがあるんだネ。今日なんか正にその日だ。見ているとこわくらいだ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大四明峰だいしめいのみねの南嶺に高くくらいしているので、東塔西塔はいうまでもなく、横川よかわ飯室いいむろの谷々もながらに見える。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そりや、本気で云ふたら此の手紙の十倍も二十倍もの長い手紙書いたかて足りないくらいに思ひますけど、今更いまさらそんなこと云ふても何にもなりわしませんものねえ。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
国中は貧乏になり、人々は陰気いんきになりました。それで王様も非常に困られて、くらいを王子にゆずられました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
五、六年前までは、遠い越後えちごの山の中から来るという、角兵衛獅子かくべえじしの姿も、麦の芽が一寸くらいになった頃、ちらほら見られたけれど、もうこの頃では一人も来ない。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
然し十四くらいから彼の父に送る手紙の中には、もう政治上の意見などがちらほら散見し始めたさうである。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
むしろ田浦の方にくらいしていると言った方がいいのかも知れぬが、東京からの避暑客などは道の遠いのとあまりにも物淋しいのとで、ほとんど顧みる人もいなかった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この世では貧しい職人たちも、美の国では高いくらいを得ている場合が、決してすくなくないでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
はたきの音が殊に劇しいので、木村は度々小言を言ったが、一日くらい直っても、また元の通りになる。はたきに附けてある紙ではたかずに、柄の先きではたくのである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
このお瀧という女が、先に申上げました阿部忠五郎という碁打の娘で、碁は初段のくらいでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにつけてもあんじられるは園樣そのさまのこと、なん余計よけい世話せわながら何故なぜ最初はじめから可愛かわゆくて眞實しんじつところ一日ぬもになるくらいなれど、さりとて何時いつてもよろこばれるでもなく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三人はそのおかげで、国じゅうで一ばんえらいお医者さまになり王さまからくらいと土地とをもらって、一生らくらくとくらしました。そしてたくさんの人の病気をなおしました。
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「大将閣下は弘化元年生れの八十二歳だったそうだから、お年に不足はない。くらい人臣じんしんを極めていられたし、子息も将官になっていられるし、思い残すことはなかったろう」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこはドーブレクのしつと玄関の中間にくらいするので、敵の退路はかくして完全にたたれた訳だ。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
人間に命をくれるのもくらいを授けるのも、ともにニラの神様だというようなことを述べている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
太夫とは、支那周代の朝廷及諸侯の、国の官吏の階級の一、けいの下、士の上にくらいすとある。
されど川島家に来たり嫁ぎて、万機一に摂政太后の手にありて、身はそのくらいありてその権なき太子妃の位置にあるを見るに及びて、しばしおのれを収めて姑の支配のもとに立ちつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あのおおきな身体からだひと非常ひじょうせてちいさくなってかおにかすかな赤味あかみがあるくらいでした。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
概してこれを論ずるに、聖賢くらいる間は、民選議院起らず。敵国・外患の迫らざる間は、民選議院起らず。外国人の金を貸す間は民選議院起らず。楮幣ちょへい通用する間は、民選議院起らず。
くらい人身じんしんを極める事を唯一の希望とも理想ともする人々や、天子様の御覚えの目出度い事を願っている人々は一日も早く古い都を捨て去って新しい都の福原へ移り住む事を一途に心がけた。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
で其の準備じゆんびからしてすこぶ大仰おほげうで、モデルの詮索せんさくにも何のくらい苦心くしんしたか知れぬ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
王さまも、とくべつにお取立てくださって、高いくらいにつけてくださいました。
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
そのくらい意気組いきぐみですから料理法に長じた女房を持ちたいと思っていました。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そうして「いき」は肯定より否定への進路の中間にくらいしている{1}。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)