つど)” の例文
いや、なにまをうちに、ハヤこれはさゝゆきいてさふらふが、三時さんじすぎにてみせはしまひ、交番かうばんかどについてまがる。このながれひとつどねぎあらへり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
分らぬ御方じゃな。特にこの方々呼び集めたのは、力も人の一倍、働らきも人一倍でおじゃるゆえ、わざわざえりすぐっておつどいを
汁講しるこう廻状かいじょうはまわった。期日の夜は来た。久しぶり西山荘の一席には、おととしの一夜と同じように、君臣水魚すいぎょつどいが見られた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女の家族のつどひの中に、永久に闖入ちんにふして來た氣心も知れぬ外來者の面倒を見なければならぬことは、最も煩はしいことに違ひなかつた。
つどいあつまった諸国の騎士、音楽家の人々や祝歌ほぎうたを歌おうと召し寄せられた小供等の視線は、まじろぎもせずに若様の一身に注がれました。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
をぢの部屋には久しく立ち働く音聞えしが、今は人あまたつどへりと覺しく、さま/″\の聲して、戸のひまよりは光もさしたり。
事件が落着した心祝いのつどいに招かれて、彼は事件の落着そのものを、頭から否定しているのだ。アア、これは一体どうしたことであろう。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
早く行て船室へ場を取りませねばと立上がれば婢僕ひぼく親戚あがかまちつどいて荷物を車夫に渡す。忘れ物はないか。御座りませぬ。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
父竜池はつねに狂歌をもてあそんだが、藤次郎はこれに反しておもに俳諧に遊んだ。その友をつどえた席は、長谷川町の梅の家、万町よろずちょう柏木亭かしわぎてい等であった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大青道心の坐禅三昧を可笑しがり、法話のつどいのある夕辺、庫裏へ忍び、和尚の食餌へやたらと砥粉をふりまいておいた。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
我れを訪ふ人十人に九人まではたゞ女子をなごなりといふを喜びてもの珍しさにつどふ成けり、さればこそことなる事なき反古紙作り出でても今清少よ
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
平次が指すあたり、二階の窓から首を出した宗之助は、もう悪びれた色もなく、夜の庭につどう人達の上に、よく響く娘の声を張り上げるのです。
これは家持作だが、天平勝宝七歳三月三日、防人さきもり撿校けんぎょうする勅使、ならびに兵部使人等、ともつどえる飲宴うたげで、兵部少輔大伴家持の作ったものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かくいさぎよきものの、いかなれば愚昧ぐまい六四貪酷どんこうの人にのみつどふべきやうなし。今夜こよひ此のいきどほりを吐きて年来としごろのこころやりをなし侍る事のうれしさよといふ。
家内いへの者つどへる茶話の折など玄齋居士が「小説家」の筆廼舍ふでのやなまりと蓮牡丹菊にたとへられし三美人が明日の心にかかれるまま人々の口にのぼりて
「親父が古い本を調べているんだ。荒神風呂にかめつどい、鶴も巣籠すごもる峯の松と書いてあるそうだ。それから荒神風呂って名前が不思議だと言っている」
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから、小半刻こはんときばかりたったのちに、一人の背の高い男が、浜辺につどった土民たちの中で、身を震わせていた。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
是においてかいとおろかなること地にはびこり、定かにすべきあかしなきに、人すべての約束のほとりつどひ 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
相場師の臨終の枕元につどうた甥や姪や縁者の人たちは、相場師が息を引き取つた後で貰つて行くべき、物品を
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「およそ朝廷みかどの人どもは、あしたには朝廷に參り、晝は志毘がかどつどふ。また今は志毘かならず寢ねたらむ。その門に人も無けむ。かれ今ならずは、謀り難けむ」
まだ彼らのつどいがひけていないこと——おそらくそれらの召使たちは、彼らの居どころがわからなくて、自分らの主人たちがすっかり当惑しているのをよそに
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
七月七日の夕べ、片岡中将の邸宅やしきには、人多くつどいて、皆低声こごえにもの言えり。令嬢浪子のやまいあらたまれるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
湖畔につどうた群集を離れ、十二使徒を召されるため山に登り給うたイエスは、町に帰って家に入られた。
紀州田辺の紀の世和志と戯号した人が天保五年に書いた『弥生やよいいそ』ちゅう写本に、厳島いつくしまの社内は更なり、町内に鹿夥しく人馴れて遊ぶ、猴も屋根に来りてつどう。
「まひるの草木と石土を 照らさんことをおこたりし 赤きひかりはつどい来てなすすべしらにただよえよ。」
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
他生の縁あってここにつどい、折も折、写真にうつされ、背負って生れた宿命にあやつられながら、しかも、おのれの運命開拓の手段を、あれこれと考えて歩いている。
聴水黒衣の二匹の獣は、彼の塩鮭しおざけ干鰯ほしかなんどを、すべて一包みにして、金眸が洞へ扛きもて往き。やがてこれを調理して、数多あまた獣類けものを呼びつどひ、酒宴を初めけるほどに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
山村水廓さんそんすいかくたみ、河より海より小舟かべて城下に用を便ずるが佐伯近在の習慣ならいなれば番匠川ばんじょうがわ河岸かしにはいつも渡船おろしつどいて乗るもの下りるもの、浦人は歌い山人はののしり
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
聞き巡査の剣幕は打って代り「いや貴方あなたでしたか、そうとは思いも寄りませず」とあわたゞしく言訳するを聞捨てしきいを一足館内に歩み入れば驚きてこゝつどえる此家の店子たなこの中に立ち
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
いま僧徒らのひとしく森の方を眺め入れるを見、にわかに恐怖を見出でたるがごとく歩みを止む。若僧の顧み知りて怪しく叫ぶや、僧徒らつかむがごとく相つどう。不安なる対立。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
かくて数日すじつの間は此処ここの宴会彼処かしこの招待に日も足らず、平生へいぜい疎遠なりし親族さえ、妾を見んとてわれがちにつどい寄るほどに、妾の評判は遠近に伝わりて、三歳の童子すらも
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
地方の紳士淑女しんししゅくじょはいうまでもなく、遠方からもわざわざつどい来たる数ははなはだ少なくない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かりにも女らしい女が二十人と寄りつどったところにかもし出されるきら/\しい色彩と、れないき物のにおいとが、生れて始めて彼の眼の前に一箇の花園をひろげたのである。
他人は絶えて何を侮辱する事能わず、何となれば汝は玉にして彼等は砂なれば、彼等五十万を十万倍する程つどいてそしるとも汝を亡ぼす事を得ざる故なり。(二五八九、一、三一)
ふもとにも、芝生の上にも、泉水のほとりにも、数奇すきを凝らした四阿あずまやの中にも、モーニングやフロックを着た紳士や、華美なすそ模様を着た夫人や令嬢が、三々伍々さんさんごご打ちつどうているのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
瓦斯ガスの火せはに燃ゆる下に寄りつどふたる配達夫の十四五名、若きあり、中年あり、稍々やゝ老境に近づきたるあり、はげたる飛白かすりに繩の様なる角帯せるもの何がし学校の記章打つたる帽子
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
広い空地につどうている子守の哀れな声でうたうたの節が、胸に染みるようであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
つどっているうちに一人、頭から黒いきれを被って、顔色がろうのように青白い、やつれた女がある。眼は泣き腫らして、唇の皮が厚くひからびて、堅く死骸に抱き付いたまま身動きすらしなかった。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、その友人の結婚前夜の別宴に文士や藝術家が相つどった席上であった。
がんこれを見ればまづ二三こゝにをりておのれまづ求食あさり、さてふんをのこしてしよくある処のしるしとす、俚言りげんにこれをがん代見立しろみたてといふ。雁のかくするは友鳥ともどりつどひきたりて、かれにも求食あさらせんとて也。
娘たちを呼びつどえて、舞を舞い、踊りを踊って、昼夜相楽しむとのうわさがある。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
最も悲しき睦言むつごとを語れり、一生の悲哀と快楽を短か夜の尽しもあえず鶏は鳴きぬ、佐太郎は二度の旅衣を着て未明より誘い来たれり、間もなく父老朋友ほうゆうを初め、老媼女房阿園が友皆訪いつど
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
あはれかかるよ、歌よむ友のたれかれつどひて、静かに浮世うきよほかの物がたりなど言ひ交はしつるはと、にはかにそのわたり恋しう涙ぐまるゝに、友に別れし雁唯一ただひとつ、空に声して何処いづこにかゆく。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかれども余も社交的の人間として時には人為の礼拝堂につどい衆とともに神をめともに祈るの快を欲せざるにあらず、教会の危険物たる余はたって余の感情を述べ他を勧むるの特権なければ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その様は男女十人ばかり(男三分女七分位なるが多く、下婢かひ下男抔もまじる事あり)ある家に打ちつどひ食物または金銭を賭け(善き家にては多く食物を賭け一般の家にては多く金銭を賭くとぞ)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ストレチーにしたがえば、一五九四年六月、三人の男はそりにつながれて、ホルボオンの博士邸の前を通ってチパーンの刑場にかれてゆく。この見世物を楽しもうとして、数万の群集がつどう。
せいばい (新字新仮名) / 服部之総(著)
いろいろのなまめかしい身の投げざまをした若い女たちの身体の線が如何にも柔く豊かに見えるのが、自分をして丁度、宮殿の敷瓦しきがわらの上につど土耳其トルコ美人のむれを描いたオリヤンタリストの油絵に対するような
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蔭でおかみも機嫌次第でさま/″\悪口を云うたが、顔を合わすと如才なく親切な口をきいた。彼女の家につど博徒ばくとの若者が、夏の夜帰よがえりによく新村入の畑にんで水瓜を打割って食ったりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
親族の者寄りつどい水など打ちそそぎてかしたるなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)