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翠
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みどり
ふりがな文庫
“
翠
(
みどり
)” の例文
ちょうどその時月に雲がかかったので、どんな者とも見わけることができなかった。ただ一方の
翠
(
みどり
)
の着物を着た女のいう声が聞えた。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
谷あいの草原を飾る落葉松や白樺の夢のように淡い
翠
(
みどり
)
、物寂びた
郭公
(
かっこう
)
の声、
咽
(
むせ
)
ぶような山鳩のなく音、谷の空を横さまに鳴く
杜鵑
(
ほととぎす
)
秩父の渓谷美
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
……包みもしないで——
翠
(
みどり
)
を透かして、松原の下り道は夕霧になお近いから——
懐紙
(
ふところがみ
)
に乗せたまま、
雛菓子
(
ひながし
)
のように片手に据えた。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風に揺ぐ玉樹の
翠
(
みどり
)
や、野に拡がる
琪草
(
きそう
)
の香や、姿を見ぬ
仙禽
(
せんきん
)
の声や、然様いう種々のものの中を、吾が身が経巡り、吾が魂が
滾転
(
こんてん
)
し行いて
穂高岳
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかもその突当りに
滴
(
したた
)
るほどの山が、自分の眼を
遮
(
さえぎ
)
りながらも、邪魔にならぬ距離を
有
(
たも
)
って、どろんとしたわが
眸
(
ひとみ
)
を
翠
(
みどり
)
の
裡
(
うち
)
に吸寄せている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
江戸時代の築城の規模がそのまま壮麗なビル街を前景の
裡
(
うち
)
に抱え込んでいる雄大な眺め、
見附
(
みつけ
)
やお濠端の
翠
(
みどり
)
色、等々に尽きる。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
風呂に
浸
(
つか
)
っていると、ちょうど窓から雨にぬれた山の
翠
(
みどり
)
が
眉
(
まゆ
)
に迫って来て、
父子
(
おやこ
)
の人情でちょっと
滅入
(
めい
)
り気味になっていた
頭脳
(
あたま
)
が軽くなった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
曹正は、ほかの百姓をつれて、あくる日、村へ帰っていき、二龍山一帯は、その
翠
(
みどり
)
の色も里景色も、なんとなく
革
(
あらた
)
まった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
湖面暗くして波浪上らず、
雨脚
(
うきゃく
)
矢のごとく湖上を打つ。
毛唐
(
けとう
)
の乗ったボートは橋に引掛かり、対山の
翠
(
みどり
)
は雨雲に包まれて、更に一鳥の飛ぶを見ず。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
翠
(
みどり
)
の髪を肩になびけ、
瑠璃
(
るり
)
の翼を背にたたみ、
泛子
(
うき
)
をみつめる瞳はつぶらかに玉のごとく、ゆさりと垂れた左右の脛は
珊瑚
(
さんご
)
を刻んだかとうたがう。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
打惑
(
うちまど
)
ひて
入
(
い
)
りかねたる彼の
目前
(
まのあたり
)
に、
可疑
(
うたがはし
)
き女客も
未
(
いま
)
だ
背
(
そむ
)
けたる
面
(
おもて
)
を
回
(
めぐら
)
さず、
細雨
(
さいう
)
静
(
しづか
)
に
庭樹
(
ていじゆ
)
を
撲
(
う
)
ちて
滴
(
したた
)
る
翠
(
みどり
)
は内を照せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
梅の花は天下の
尤物
(
ゆうぶつ
)
だといわれます。これを
単
(
た
)
だ
翠
(
みどり
)
の松、緑の竹に比べますと色があってこの二つに取り添うと何んとなく軟かい一脈の趣が生じます。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
その島々が
親山
(
おややま
)
たる
眉
(
まゆ
)
山の
翠
(
みどり
)
を背景として、静かな
不知火
(
しらぬい
)
の海に羅列する光景は、まさに西海の松島である。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
然しその風景の点に於ては砂丘の
翠
(
みどり
)
につつまれたこの病院ほど住みたい思ひをそそる場所も稀にしかない。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
翠
(
みどり
)
の
帳
(
とばり
)
、きらめく星
白妙
(
しらたへ
)
の
牀
(
ゆか
)
、かがやく雪
宏
(
おほい
)
なる
哉
(
かな
)
、美くしの自然
誰
(
た
)
が為め神は、備へましけむ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
首ばかり
極彩色
(
ごくざいしき
)
が出来上り、これから十二
一重
(
ひとえ
)
を着るばかりで、お月の顔を見てにこりと笑いながら、ジロリと見る
顔色
(
かおいろ
)
は
遠山
(
えんざん
)
の
眉
(
まゆ
)
翠
(
みどり
)
を増し、
桃李
(
とうり
)
の
唇
(
くちびる
)
匂
(
にお
)
やかなる
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
翠
(
みどり
)
も春の色添ひて、見渡す限り錦なる花の都の花の山、水にも花の影見えて、下す筏も花の名に、大堰の川の川水に、流れてつひに行く春を、いづ地へ送り運ぶらむ。
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
決し
在所
(
ざいしよ
)
の永正寺と云
尼寺
(
あまでら
)
へ入
翠
(
みどり
)
の
黒髮
(
くろかみ
)
を
剃
(
そり
)
て
念佛
(
ねんぶつ
)
三
昧
(
まい
)
に
生涯
(
しやうがい
)
を
送
(
おく
)
りし事こそ
殊勝
(
しゆしよう
)
なれ
然
(
され
)
ば長庵を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
抜け出るように色白な秀でた
額
(
ひたい
)
つきをした、おまけにもう一つ、漆黒の——いやそれこそ
翠
(
みどり
)
の黒髪とでも言いたいような髪の毛をした、——ざっとまあそうした女である。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
其方
(
そのかた
)
さして
歩
(
あゆ
)
む人は
皆
(
みな
)
大尉
(
たいゐ
)
の
行
(
かう
)
を送るの人なるべし、
両国橋
(
りやうごくばし
)
にさしかゝりしは午前七時三十分、
早
(
は
)
や橋の
北側
(
きたがは
)
は
人垣
(
ひとがき
)
と
立
(
たち
)
つどひ、
川上
(
かはかみ
)
はるかに見やりて、
翠
(
みどり
)
かすむ
筑波
(
つくば
)
の山も
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
は、一しきり
盛
(
さか
)
りになって山の
翠
(
みどり
)
も
揺
(
ゆ
)
るるかと思われる
喧
(
やか
)
ましさ、その上、あいにくと風がはたと途絶えてしまったので周囲を密閉した苫船の暑さは蒸されるようです。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
木が茂って
松蘿
(
さるのおがせ
)
が、どの枝からも腐った
錨綱
(
いかりづな
)
のようにぶら下っている、こればかりではない、葛、
山紫藤
(
やまふじ
)
、山葡萄などの蔓は、木々の裾から
纏繞
(
まといつ
)
いて
翠
(
みどり
)
の葉を母木の胸に
翳
(
かざ
)
し
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
風を
懐
(
ふところ
)
へ入れ足を
展
(
のば
)
して休む。青ぎった空に
翠
(
みどり
)
の松林、
百舌
(
もず
)
もどこかで鳴いている。声の響くほど山は静かなのだ。天と地との間で広い畑の真ン中に二人が話をしているのである。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
海ぞいに
生
(
は
)
えそろったアメリカ松の
翠
(
みどり
)
ばかりが毒々しいほど黒ずんで、目に立つばかりで、
濶葉樹
(
かつようじゅ
)
の類は、いつのまにか、葉を払い落とした枝先を針のように鋭く空に向けていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
馬の脊の樣な狹い山の上のやゝ
平凹
(
ひらくぼ
)
になつた
鞍部
(
あんぶ
)
、八幡太郎弓かけの松、鞍かけの松、など云ふ老大な赤松黒松が十四五本、太平洋の風に吹かれて、
翠
(
みどり
)
の梢に颯々の音を立てゝ居る。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
気が付くと、三造の前の真白な瀬戸物皿の上に、いつの間に来たのか、それこそ眼の覚めるほど鮮やかな
翠
(
みどり
)
色をしたすいっちょが一匹ちょこんと止って、静かに触角を動かしている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ストップ!
古井
(
こい
)
の白い鉄橋の上で、私は驚いて自動車を飛び降りた。その相迫った峡谷の
翠
(
みどり
)
の深さ、水の
碧
(
あお
)
くて豊かさ。何とまた
鬱蒼
(
うっそう
)
として
幽邃
(
ゆうすい
)
な
下手
(
しもて
)
の一つ小島の風致であろう。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
馬の
脊
(
せ
)
の様な狭い山の上のやゝ
平凹
(
ひらくぼ
)
になった
鞍部
(
あんぶ
)
、
八幡
(
はちまん
)
太郎
(
たろう
)
弓かけの松、鞍かけの松、など云う
老大
(
ろうだい
)
な赤松黒松が十四五本、太平洋の風に吹かれて、
翠
(
みどり
)
の
梢
(
こずえ
)
に
颯々
(
さっさつ
)
の音を立てゝ居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ミミーの首っ玉には
翠
(
みどり
)
色のリボンが結びつけてあった。そして小さな鈴がリンリンと鳴った。この可愛いい小猫は、ワイトマンの隠し女アンナから胡魔化して借りてきたものであった。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
川の水が緩く流れていて、黒い色の
目金橋
(
めがねばし
)
が架かっている。その橋が水に映っているところである。その向うに
翠
(
みどり
)
の濃い山が見えて、左手には何かポプラアのような木が五、六本かいてある。
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そういうとしゅろは、まるで
翠
(
みどり
)
の小だかい峰のように、目の下にひろがっている温室仲間の林を
傲然
(
ごうぜん
)
と見おろしました。仲間はだれひとりとして、彼女に言葉を返す勇気のあるものはなかった。
アッタレーア・プリンケプス
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
青年が起つと仙妃も起って、そのまま青年を
伴
(
つ
)
れて往った。侍女達は手に手に綺麗な燈を持って案内した。そこは珍しい織物を張り詰めた狭い室で、
翠
(
みどり
)
の
帳
(
とばり
)
の中には紅い花のような
榻
(
ねだい
)
があった。
賈后と小吏
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
にむらむらと立
駢
(
なら
)
ぶ
老松奇檜
(
ろうしょうきかい
)
は、
柯
(
えだ
)
を交じえ葉を折重ねて
鬱蒼
(
うっそう
)
として
翠
(
みどり
)
も深く、観る者の心までが
蒼
(
あお
)
く染りそうなに引替え、
桜杏桃李
(
おうきょうとうり
)
の
雑木
(
ざつぼく
)
は、
老木
(
おいき
)
稚木
(
わかぎ
)
も押なべて一様に枯葉勝な立姿
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
滿山の
翠
(
みどり
)
は息をはずませて、今に降つてくるか今に降つてくるか、と待ち受けるかのやうでもあつた。低い雲はいよいよ低く、いつの間にか
容
(
すがた
)
を隱す山々もある。かなたには驟雨も來てゐたらしい。
山陰土産
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
渾沌
翠
(
みどり
)
に乗て気に遊ぶ
芭蕉について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
水楢
(
みずなら
)
や
橡
(
とち
)
などもあったように思うが、繁り合った葉がそよふく風に揺れて、
其
(
その
)
間から洩れる日の光が
翠
(
みどり
)
の竪縞を織りなしている。
木曾御岳の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
柳
(
やなぎ
)
の
葉
(
は
)
の
翠
(
みどり
)
を
透
(
す
)
かして、
障子
(
しやうじ
)
の
紙
(
かみ
)
は
新
(
あた
)
らしく
白
(
しろ
)
いが、
秋
(
あき
)
が
近
(
ちか
)
いから、
破
(
やぶ
)
れて
煤
(
すゝ
)
けたのを
貼替
(
はりか
)
へたので、
新規
(
しんき
)
に
出來
(
でき
)
た
店
(
みせ
)
ではない。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
舟には女が一人の婢を
伴
(
つ
)
れて坐っていた。女は笑いながら柳を迎えた。
翠
(
みどり
)
の
襪
(
くつたび
)
、
朱
(
あか
)
い
履
(
くつ
)
、洞庭の舟の中で見た侍女の
妝飾
(
そうしょく
)
とすこしも違わない女であった。
織成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
粧
(
よそおい
)
は鏡に向って
凝
(
こ
)
らす、
玻璃瓶裏
(
はりへいり
)
に
薔薇
(
ばら
)
の
香
(
か
)
を浮かして、軽く
雲鬟
(
うんかん
)
を
浸
(
ひた
)
し去る時、
琥珀
(
こはく
)
の櫛は
条々
(
じょうじょう
)
の
翠
(
みどり
)
を解く。——小野さんはすぐ藤尾の事を思い出した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女性の姿は、暗い
翠
(
みどり
)
の
翳
(
かげ
)
にかこまれ、その
面窶
(
おもやつ
)
れまでが、妖しいほど美しく、暗所の女人像のように見えた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見る眼も覚むべき雨後の山の色をとゞめて
翠
(
みどり
)
の匀ひ一
ト
しほ床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリヽと上り
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
見遍
(
みわた
)
せば両行の
門飾
(
かどかざり
)
は一様に枝葉の末広く
寿山
(
じゆざん
)
の
翠
(
みどり
)
を
交
(
かは
)
し、
十町
(
じつちよう
)
の
軒端
(
のきば
)
に続く
注連繩
(
しめなは
)
は、
福海
(
ふくかい
)
の
霞
(
かすみ
)
揺曳
(
ようえい
)
して、繁華を添ふる春待つ景色は、
転
(
うた
)
た
旧
(
ふ
)
り行く
歳
(
とし
)
の
魂
(
こん
)
を
驚
(
おどろ
)
かす。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
最初蝦夷松椴松の
翠
(
みどり
)
に秀であるひは白く立枯るゝ峯を過ぎて、障るものなき
邊
(
あたり
)
へ來ると、軸物の大俯瞰圖のする/\と解けて落ちる樣に、眼は今汽車の下りつゝある霜枯の
萱山
(
かややま
)
から
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
最初蝦夷松椴松の
翠
(
みどり
)
に
秀
(
ひい
)
であるいは白く
立枯
(
たちか
)
るゝ峰を過ぎて、障るものなき
辺
(
あたり
)
へ来ると、軸物の大俯瞰図のする/\と解けて落ちる様に、眼は今汽車の下りつゝある
霜枯
(
しもがれ
)
の
萱山
(
かややま
)
から
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
細雨に
烟
(
けむ
)
る
長汀
(
ちょうてい
)
や、
模糊
(
もこ
)
として隠見する
翠
(
みどり
)
の山々などは、確かに東洋の絵だ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
水に
翠
(
みどり
)
の影を映して、沈まりかえっている、一の池と二の池の境には、赤いツツジが多いということであるが、今は咲いていなかった、深く生い茂った熊笹を分けて
岨道
(
そばみち
)
を屈曲して行くと
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
※
(
すぐ
)
る十
有餘日
(
いうよにち
)
の
間
(
あひだ
)
、よく
吾等
(
われら
)
の
運命
(
うんめい
)
を
守護
(
しゆご
)
して
呉
(
く
)
れた
端艇
(
たんてい
)
をば、
波打際
(
なみうちぎわ
)
にとゞめて
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
上陸
(
じやうりく
)
して
見
(
み
)
ると、
今
(
いま
)
は五
月
(
ぐわつ
)
の
中旬
(
なかば
)
すぎ、
翠
(
みどり
)
滴
(
したゝ
)
らんばかりなる
樹木
(
じもく
)
は
島
(
しま
)
の
全面
(
ぜんめん
)
を
蔽
(
おほ
)
ふて、
遙
(
はる
)
か
向
(
むか
)
ふは、
野
(
の
)
やら
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
谷底に横わる尾根の、
翠
(
みどり
)
滴
(
したた
)
る大竹籔に
老鶯
(
ろうおう
)
が鳴いている。
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
柳の葉の
翠
(
みどり
)
を
透
(
す
)
かして、障子の紙は新らしく白いが、秋が近いから、破れて
煤
(
すす
)
けたのを
貼替
(
はりか
)
えたので、新規に出来た店ではない。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
谷筋を罩めていた霧が薄らいで、其中から
翠
(
みどり
)
の濃い山の影がぼうっと行手に滲み出した。
百貫
(
ひゃっかん
)
山である。幾多の平行した縦谷が骸骨の肋骨のように懸っている。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
翠
漢検準1級
部首:⽻
14画
“翠”を含む語句
翡翠
翠色
翠緑
空翠
翠巒
翠微
翠帳紅閨
翡翠色
翠帳
積翠
緑翠
曲翠
翠烟
翠鬟
小室翠雲
翠嵐
須藤南翠
珠翠
金翠
幽翠
...