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翠嵐
読み方 | 割合 |
すゐらん | 50.0% |
すいらん | 50.0% |
路は暫し
松林の間を
穿ちて、
茅屋村舍の上に
靡ける細き烟のさながら
縷の如くなるを
微見つゝ、次第に
翠嵐深き處へとのぼり行きしが
驛を過れば、山影再び
帽廂に近く、木曾川の流も亦その美しき景を眼前に展開し
來る。一危橋あり、
翠嵐搖曳するの間に架し、
刈草を滿載したる馬の
徐ろに其間を過ぎ行く、また趣なしとせず。
鬱蒼とした其処ここの
杉柏の梢からは、
烟霧のような
翠嵐が起って、細い雨が明い日光に
透し
視られた。思いもかけない
山麓の傾斜面に
痩せた田畑があったり、厚い
薮畳の蔭に、人家があったりした。