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ひろ
ふりがな文庫
“
拡
(
ひろ
)” の例文
旧字:
擴
そこで、いやしくも著作をするほどの人は、支那の書物も読めたであろうが、かの伝説のごときは誰が語り伝えて世に
拡
(
ひろ
)
めたものか。
妖怪漫談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それは越後の風習で宅の母なども毎年修繕してつかいました。亀の子
笊
(
ざる
)
をふせて幾重ともなく真綿を
拡
(
ひろ
)
げ、新しいのを上に被せます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
二つ三つ穴の明いた
古薄縁
(
ふるうすべり
)
を前へ
拡
(
ひろ
)
げましたが、
代物
(
しろもの
)
を
列
(
なら
)
べるのを見合せ、葛籠に腰をかけて煙草を呑みながら空を眺めて居ります。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
が、パリは決して一無名の青年作曲家を、大手を
拡
(
ひろ
)
げて受け入れるほど寛大ではなく、その期待と希望はことごとに外れてしまった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
彼は自分の
宏大
(
こうだい
)
な、広々と延びている庭園を見ながら、両手を高く
拡
(
ひろ
)
げて、快い
欠伸
(
あくび
)
をした。が、彼が拡げた両手を下した時だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
私はいつものように
楽
(
たの
)
し
気
(
げ
)
に「ええこんなに、そう、何千株と
躑躅
(
つつじ
)
の植っているお
邸
(
やしき
)
のようなところです」と、私は両手を
拡
(
ひろ
)
げて
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「そんじゃ、
飯
(
めし
)
でも
喫
(
く
)
って、一休みして、はじめるかの」と、一人は体を起して両手を
端
(
さき
)
さがりにうんと
拡
(
ひろ
)
げながら背のびをした。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
だれもの知っている新味などは
微塵
(
みじん
)
もないようなものの書き抜いてしまってあるのを、物思いのつのった時などには出して
拡
(
ひろ
)
げていた。
源氏物語:15 蓬生
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
氏の表面は一層
沈潜
(
ちんせん
)
しましたが、底に
光明
(
こうみょう
)
を宿して
居
(
い
)
る
為
(
ため
)
か、氏の顔には年と共に温和な、平静な相が
拡
(
ひろ
)
がる様に見うけられます。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
でっぷりよく肥えた顔にいちめん
雀斑
(
そばかす
)
が出来ていて鼻の
孔
(
あな
)
が大きく
拡
(
ひろ
)
がり、揃ったことのない
前褄
(
まえづま
)
からいつも
膝頭
(
ひざがしら
)
が露出していた。
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
たまらなくなって、格二郎は木馬の上で両手を
拡
(
ひろ
)
げると、
万歳
(
ばんざい
)
を連呼した。ラッパ抜きの変妙な楽隊が、それに
和
(
わ
)
して鳴り響いた。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だが特報は第一級であり、根深く、広範囲に
拡
(
ひろ
)
まっていた。「幟もおっ立たない」ような息子に、嫁を
遣
(
や
)
ろうという親はなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ジヤケツの
上衣
(
うはぎ
)
の長いのや
裳
(
も
)
の大きく
拡
(
ひろ
)
がつたのなどは、昔長崎へ来た
和蘭船
(
オランダぶね
)
の絵の女を見る様に古風である
丈
(
だけ
)
今日
(
こんにち
)
の目には
田舎
(
ゐなか
)
臭い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
山
(
やま
)
を
崩
(
くづ
)
して、
其
(
そ
)
の
峯
(
みね
)
を
余
(
あま
)
した
状
(
さま
)
に、
昔
(
むかし
)
の
城趾
(
しろあと
)
の
天守
(
てんしゆ
)
だけ
残
(
のこ
)
つたのが、
翼
(
つばさ
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
鷲
(
わし
)
が
中空
(
なかぞら
)
に
翔
(
かけ
)
るか、と
雲
(
くも
)
を
破
(
やぶ
)
つて
胸毛
(
むなげ
)
が
白
(
しろ
)
い。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ただ私はこう注意しよう、もっと作るものの範囲を
拡
(
ひろ
)
げて、卓上で日々使う器物、皿、茶碗、土瓶、鉢等々にも仕事を進める必要がある。
雲石紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そう云う沈黙が
拡
(
ひろ
)
がった中に、ただ往来のざわめきだけが、
硝子
(
ガラス
)
戸を
開
(
あ
)
け放した諸方の窓から、日の光と一しょにはいって来る。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お祓の帯、お祓の着物と云ふことは、呉服屋が来て一家の人々の前に着物を
拡
(
ひろ
)
げます度に、私等
姉妹
(
きやうだい
)
に
由
(
よ
)
つてさゝやかれました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
会員の名札はなるほど外国流の
綴
(
つづり
)
が多い。国沢君は大きな本を
拡
(
ひろ
)
げて、余の姓名を書き込ました上、是公に君ここへと催促した。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
翌朝十時ごろに帳場へ出て行ってみると、そこに庸太郎がすでに起きていて、葉村氏の勤めている社の朝刊を
拡
(
ひろ
)
げて読んでいた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
坊
(
ばう
)
は
谿間
(
たにあひ
)
の崖に臨むで建てかけた
新建
(
しんたち
)
で、崖の中程からによつきりと
起
(
お
)
きあがつて、
欄干
(
らんかん
)
の前でぱつと両手を
拡
(
ひろ
)
げたやうな
楓
(
かへで
)
の古木がある。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
木田
(
きだ
)
は、
喜
(
よろこ
)
んでたずねてきてくれた
友
(
とも
)
だちを
迎
(
むか
)
えました。みかん
箱
(
ばこ
)
を
持
(
も
)
ってきて、
中
(
なか
)
からいろいろのものを
出
(
だ
)
して
拡
(
ひろ
)
げました。
すいれんは咲いたが
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ここでは月は、まるで大地のように
涯
(
はて
)
しなく
拡
(
ひろ
)
がり、そして地球は、ふりかえると遥かの
暗黒
(
あんこく
)
の空に、
橙色
(
だいだいいろ
)
に美しく輝いているのであった。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
別にバターの時のようなメリケン粉と玉子と塩と水とで
饂飩
(
うどん
)
位な固さの物を
捏
(
こ
)
ねてこれは厚さ三分位に大きく四方へ
拡
(
ひろ
)
げて
展
(
の
)
しておきます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
左の方には入口の
掘立柱
(
ほったてばしら
)
から奥の掘立柱にかけて一本の丸太を土の上にわたして土間に麦藁を敷きならしたその上に、所々
蓆
(
むしろ
)
が
拡
(
ひろ
)
げてあった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして
彼等
(
かれら
)
は、その
立派
(
りっぱ
)
な
翼
(
つばさ
)
を
張
(
は
)
り
拡
(
ひろ
)
げて、この
寒
(
さむ
)
い
国
(
くに
)
からもっと
暖
(
あたたか
)
い
国
(
くに
)
へと
海
(
うみ
)
を
渡
(
わた
)
って
飛
(
と
)
んで
行
(
い
)
く
時
(
とき
)
は、みんな
不思議
(
ふしぎ
)
な
声
(
こえ
)
で
鳴
(
な
)
くのでした。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
貞奴、貞奴、その名は日本でより海外に高く
拡
(
ひろ
)
まった。
名実
(
めいじつ
)
は川上一座でも、彼の一座でなく彼女の一座として歓迎された。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
目には見えぬが、それと
覚
(
さと
)
られる疑心の渦はひたひたと
拡
(
ひろ
)
がって行った。高倉利吉の自決は云い換れば飢餓の宣言であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
刷毛
(
はけ
)
で
刷
(
は
)
いたような
弓
(
ゆみ
)
なりになった
広
(
ひろ
)
い
浜
(
はま
)
……のたりのたりと
音
(
おと
)
もなく
岸辺
(
きしべ
)
に
寄
(
よ
)
せる
真青
(
まっさお
)
な
海
(
うみ
)
の
水
(
みず
)
……
薄絹
(
うすぎぬ
)
を
拡
(
ひろ
)
げたような
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
病人は女の髪の上に、祝福をするように、手を
拡
(
ひろ
)
げて載せて、小声で、「お前のこれまでの親切は
難有
(
ありがた
)
かったよ」と云った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
太郎右衛門が子供を拾ったという
噂
(
うわさ
)
が村中一杯に
拡
(
ひろ
)
がりました。夕方になると村の神さんたちや子供たちがぞろぞろ
揃
(
そろ
)
って
捨児
(
すてご
)
を見に来ました。
三人の百姓
(新字新仮名)
/
秋田雨雀
(著)
それから半月あまりを過ぎて、
蓮
(
はす
)
の巻葉もすっかり
舒
(
の
)
び
拡
(
ひろ
)
がった五月の十六日、谷中の別園に再び林氏の
詩筵
(
しえん
)
が開かれた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
忽
(
たちま
)
ち彼のからだは
硬
(
こわ
)
ばり、脚を左右に
拡
(
ひろ
)
げ、ちょうど、銃砲店の広告絵みたいになる。——「生かさぬ一発、狂わぬ一発」
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
自己の魂をまたたきせざる眼をもって凝視し得た人の前には、一切のものが光と色との美しい交錯において
拡
(
ひろ
)
げられる。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
『だが、どうしても知合いにならなくちゃ』と、わたしは、ネスクーチヌィ公園の前に
拡
(
ひろ
)
がっている砂原を、めちゃめちゃに歩き回りながら考えた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
同時に、秀吉方の
旗幟
(
きし
)
にたいし、理由なく野望の乱をかもす天下の賊——という悪印象を一般に植えつけようとする策謀がすでに
拡
(
ひろ
)
く行われていた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも時刻の移るに
随
(
したが
)
ッて枝雲は出来る、
砲車雲
(
もとぐも
)
は
拡
(
ひろ
)
がる、今にも一大
颶風
(
ぐふう
)
が吹起りそうに見える。気が気で無い……
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
急に
厳粛
(
げんしゅく
)
に変わった如来の目が悟空をキッと
見据
(
みす
)
えたまま、たちまち天をも隠すかと思われるほどの大きさに
拡
(
ひろ
)
がって、悟空の上にのしかかってきた。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼らは鳥御前の近づくを見て、手を
拡
(
ひろ
)
げて押し戻すようなる手つきをなし制止したれども、それにも
構
(
かま
)
わず行きたるに女は男の胸に
縋
(
すが
)
るようにしたり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
八つ手などがほんの
申訣
(
もうしわ
)
けのように植わっている三坪ばかりの小庭には、縁先きから雪の下がいちめんに
生
(
お
)
い
拡
(
ひろ
)
がって、それがものの見事に咲いていた。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
噂というものは、こちらで、もみ消そうとするとかえって
拡
(
ひろ
)
がり、こちらから逆に大いに
扇
(
あお
)
いでやると興覚めして自然と消えてしまうものでございます。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
わが
身
(
み
)
はちやうど
蝗虫
(
いなご
)
のやうだ、こゝよ、かしこよと
跳回
(
はねまは
)
る、
唸
(
うな
)
つて
歩
(
ある
)
く、また
或時
(
あるとき
)
は
色入
(
いろいり
)
の
翅
(
はね
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
小
(
ちひ
)
さな
頸
(
くび
)
の
透
(
す
)
きとほつて、
空
(
から
)
な
処
(
ところ
)
をみせもする。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
連年の
養蚕
(
やうさん
)
の失敗を
恢復
(
くわいふく
)
しようと、非常に手を
拡
(
ひろ
)
げて
養
(
か
)
つた蚕が、気候の具合で、すつかり
外
(
はづ
)
れて、一時に田地の半分ほども人手に渡して了ふといふ始末。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
単身の場合はまだよいが、同じ自己でも、妻と
拡
(
ひろ
)
がり子と拡がった場合には、いよいよそれが心苦しくなる。
序に代えて人生観上の自然主義を論ず
(新字新仮名)
/
島村抱月
(著)
また四角な
変
(
へん
)
に
柔
(
やわ
)
らかな白いものが、だんだん
拡
(
ひろ
)
がって
恐
(
おそ
)
ろしい大きな
箱
(
はこ
)
になったりするのでございました。
雁の童子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
歌
(
うた
)
ってしまうと、
鳥
(
とり
)
は
羽
(
はね
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
右
(
みぎ
)
の
趾
(
あし
)
には、
鎖
(
くさり
)
を
持
(
も
)
ち、
左
(
ひだり
)
の
爪
(
つめ
)
には、
靴
(
くつ
)
を
持
(
も
)
ち、
頸
(
くび
)
のまわりには、
石臼
(
いしうす
)
をはめて、お
父
(
とう
)
さんの
家
(
うち
)
の
方
(
ほう
)
へ
飛
(
と
)
んで
行
(
ゆ
)
きました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
彼女の投げ出した靴の先の所には
岩桔梗
(
いわぎきょう
)
が可憐に震えていた。案内者は大きなめんつを
拡
(
ひろ
)
げて、
柘楠
(
しゃくなげ
)
の枝で作った太い
箸
(
はし
)
で今朝から第何回目かの食事を初めた。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
悲壮な、痛々しい、骨の鳴るような人生が、一本の枯木を通して、蕭条たる自然の背後に
拡
(
ひろ
)
がって行く。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
人間が両腕を
拡
(
ひろ
)
げた時にこそ隔りの大なるを知るが、
合掌
(
がっしょう
)
したり両手の指を組む時は極端が相合う。
東西相触れて
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
いつかまた止んだ雨のしッとりあかるい深川の……辰巳の空があくまでしずかに
拡
(
ひろ
)
がっていました。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
然
(
しか
)
り、それよりも小なる国で足ります。
外
(
そと
)
に
拡
(
ひろ
)
がらんとするよりは
内
(
うち
)
を開発すべきであります。
デンマルク国の話:信仰と樹木とをもって国を救いし話
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
拡
常用漢字
小6
部首:⼿
8画
“拡”を含む語句
拡張
拡大
拡声器
拡散
押拡
内拡
繰拡
推拡
拡充
拡大鏡
版図拡張
拡布
生口拡
胃拡張
裾拡
這拡
鳴拡
沁拡
拡大度
拡声機
...