差支さしつかへ)” の例文
とかういふ順にさかづき煽飲あふつたといふから、朝から晩まで酒にひたつてゐたものと見て差支さしつかへなからう。道理で自分の選んだ墓の銘には
日本人にほんじん歐文おうぶん場合ばあひ、この慣例くわんれい尊重そんちようして、せうよりだいるのは差支さしつかへないが、そのうち固有名こいうめい斷然だんぜんいぢくられてはならぬ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
自分は熊五郎に斬られて死んだと見ても差支さしつかへが無いわけで、駒吉が熊井熊五郎であることは何んの支障ししやうもなく説明されるのです。
「ではられるだけかしていても差支さしつかへありませんか」といたら、醫者いしやようさへなければべつおこ必要ひつえうもあるまいとこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
本人ほんにん自營獨立じえいどくりつこゝろさへさだまつてれば、どんな塲所ばしよしても、またどんな境遇きやうぐうしよしても差支さしつかへなく、變通自在へんつうじざいでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
しかしながら金解禁きんかいきん準備じゆんびとしては在外正貨ざいぐわいせいくわ潤澤じゆんたくたことはその準備じゆんび大半たいはん目的もくてきたつしたとつて差支さしつかへないのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
帰途かへりに芝居の前のその家へ寄ると、ピニヨレ夫人は僕等にカンキナ酒をいで出しながら「今夜お差支さしつかへが無いなら山荘の方へ馬車で案内したい」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まことに世の中は不幸なる人の集合あつまりと云うても差支さしつかへない程です、現に今まこゝ団欒よつてる五人を御覧なさい、皆な社会よのなか不具者かたはです、渡辺の老女さんは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
して見れば鑑定家なるものは、或種類の書画に限り、我々同様更に真贋の判別は出来ないと云つても差支さしつかへない。
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
どちらにしても強くは言張り難いが、「然而将門尚与伯父宿世之讐」といふ句によつて、何にせよ此事が深い怨恨ゑんこんになつた事と見て差支さしつかへは無い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
翁さん姨さんの頼と有つて見れば、僕は不承知を言ふことの出来ない身分だから、唯々はいはいと言つて聞いてゐたけれど、みいさんは幾多いくらでも剛情を張つて差支さしつかへ無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と謂ツて、自分でも出来るといふ程出來はしないと謂ツてゐる位だから、大した腕は無い、長唄の地に、歌澤うたさはも少しけて、先づモグリをしてゐるには差支さしつかへのない分のことだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
見習みならひしなるべし不埓ふらち至極しごくやつぢや九郎兵衞申開きありやと云れしかばグツと差支さしつかへ一言もなく尻込しりごみなすにより追々吟味に及ぶ下れと云るゝ時下役の者立ませいとこゑかけ一同白洲しらす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに此一廻このひとまはりあひだ丁度ちやうど三百六十五日ならば千年も万年もおなじ暦にて差支さしつかへなきはづなれども、六十五日の上端うわはに六ときといふものありて毎年まいねんときづ〻おくれ、四年には四六二十四とき
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
だから日本のエスペラントは日本語の臭味があつたとて一向差支さしつかへないと思ふ。
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
なんのあとへねずみても、ちつとも差支さしつかへはないのであるが、そのみゝづくがまどはなれて、第一だいいちのいてふへ飛移とびうつつたとおもころ、おなじガラスまどうへの、眞片隅まかたすみ、ほとんど鋭角えいかくをなしたところで、トン
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
毒は凡ての科学の開祖と見做みなしても差支さしつかへないのである。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
之を認めて置いて一向差支さしつかへない。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「あ、お孃さん、差支さしつかへが無かつたら、もう暫らく立ち會つて下さい、私は大變なものを見落して居るやうな氣がするのです」
栗鼠りす胡桃くるみを勘定するのに、自分一流の数へ方を知つてゐる。池田氏がそんな方法を知つてゐたところで少しの差支さしつかへもない。
醫者いしやつてね。昨夜ゆうべくすりいたゞいてから寐出ねだして、いまになつてもめませんが差支さしつかへないでせうかつていてれ」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たいこの規則きそくでさせること規則きそく其物そのものそんしてゐるあひだすなは規則きそくにはまつてあひだはよろしいが、他日たじつ境遇きやうぐうはると、一方ひとかたならぬ差支さしつかへしやうずることがありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
が事実は彼がその為に、生きてゐると云つても、差支さしつかへない程であつた。——人間は、時として、充されるか充されないか、わからない欲望の為に、一生を捧げてしまふ。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さうですから、自分の好いたかたれて騒ぐ分は、一向差支さしつかへの無い独身ひとりみも同じので御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
仰付おほせつけられ下さるべしと申故米屋へも出入となり其上そのうへきふに出物などにて金子に差支さしつかへる節其は二三十兩又は五十兩と時借ときがりも致し尤も其都度々々そのつど/\すみやかに返濟へんさいなす故隱居も彦兵衞がかたき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さうかんがへてると我國わがくに商賣しやうばい以前いぜん比較ひかくして非常ひじやう仕好しよくなることはたしかである、それであるから金解禁きんかいきん出來できのちける經濟界けいざいかい以前いぜんよりも安定あんていしたとつて差支さしつかへないわけである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
麦酒ビエエルを飲んで居ると約束の午後四時にそのお嬢さんが遣つて来た。しか今日けふにはか差支さしつかへが起つてかれない、只その断りに来たのだと言ふ。目附の憂鬱メランコリツクな、首筋のほつそりとした、小柄な女である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ところで、その、お差支さしつかへのなさをうらがきするため、かね知合しりあひではあるし、綴蓋とぢぶた喜多きた家内かないが、をりからきれめの鰹節かつをぶしにんべん買出かひだしにくついでに、そのねえさんのうち立寄たちよつて、同行三人どうかうさんにん日取ひどりをきめた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
併し其様なことはモデルに使つかふに何んの故障こしやう差支さしつかへも無い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すこしも差支さしつかへはないのである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ところ叔父をぢ意見いけんによると、あの屋敷やしき宗助そうすけ自分じぶん提供ていきようしてつたのだから、たとひ幾何いくらあまらうと、あまつたぶん自分じぶん所得しよとく見傚みなして差支さしつかへない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その事を思ふと、クロムヱルの髑髏しやれかうべが二つ出たところで格別差支さしつかへはない。あるひはもつと捜したら、もつと出るかも知れない。
世界は不朽ふきうの傑作にうんざりするほど充満してゐる。が、或作家の死んだ後、三十年の月日を経ても、なほ僕等の読むに足る十篇の短篇を残したものは大家と呼んでも差支さしつかへない。
折が有つたら又お目に掛ります。は、僕の居住すまひ? 居住は、まあ言はん方が可い、あまなれば宿も定めずじや。言うても差支さしつかへは無いけれど、貴方に押掛けらるると困るから、まあ言はん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その剛愎執拗な方面とうを没了し、必ずしもモリエエルと限らずの芸術家をきたつて主人公としても差支さしつかへの無い様な憾みはあるが、第一の夫人マドレエヌの聡明貞淑な性格が善く活躍して居るのと
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
待合所まちあひじよ硝子戸がらすどはひるまで、わりいそがないで差支さしつかへぬ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
する身の上なればありとあらゆる品物しなものは大小までもしちに入たるは道理もつともなり其日々々にさへ差支さしつかへる有樣ゆゑ如何に大切の品なり共いま勿々なか/\受出うけだす事も成まじ質屋しちやよりは流れの催促さいそくさぞかし難澁なんじふの事ならんと己れが身分にもくらべて考へしが長八はこゝぞと思ひて廿五兩の金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その中のどれでも差支さしつかへがなく、二つ一緒ならなほいとさへ思つてゐるらしかつたが、桂田氏の電報には思ひがけなく「文部ときめよ」と書いてあつた。
それ差支さしつかへないんですよ。喧嘩もなにおこらないんだから。けれどもね、そんなにえら貴方あなたが、何故なぜわたしなんぞから御金おかねりる必要があるの。可笑おかしいぢやありませんか。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
血脈といふものは、手つ取り早く言つたら、女学校の卒業証書みたいなもので、これがくなつてゐたからといつて、お嫁入には少しも差支さしつかへない筈だ。
軍国主義の精神には一時的以上の真理が何処どこかに伏在ふくざいしてゐると認めても差支さしつかへないかも知れない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
珈琲店カフエーや歯医者を忘れる分には差支さしつかへないが、細君と丸善とだけは何時迄も覚えてゐて貰ひたい。彼等は学校教師にとつての二大人格だから。そしてついでに蚤もまた。
今の人の手にする文學書にはヸーナスとかバツカスとかいふ呑氣のんきな名前はあまり出て來ないやうです。希臘ギリシアのミソロジーを知らなくても、イブセンを讀むにはほとんど差支さしつかへないでせう。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
落すにはそれ/″\自分が手につた方法をえらんで差支さしつかへないが、たゞ落すその一瞬間は鶏に気取けどられぬ程の微妙デリケートところが無くてはならぬ。気取られたが最後肉の味はまづくなる。
著者の選択した部分は、煤煙の骨子でない所から云へば、著者に取つて遺憾かも知れないが、安全と云ふ点から見れば是程これほど安全な章はない。誰が読んだつて差支さしつかへないんだから大丈夫である。
『煤煙』の序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鶴笑の積りではそれでも大分見切つた上の申出まをしでらしかつた。何故といつて阿波の国は半分いた処で、別段差支さしつかへもなかつたが、硯だけは半分に割つてはうする事も出来なかつた。
硯と殿様 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)