おど)” の例文
盗賊とうぞくどもは人形をおどらして、金もうけをするつもりでしたが、中にさるがはいっていないんですから、人形はおどれようわけがありません。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
まったくインデアンは半分はんぶんおどっているようでした。第一だいいちかけるにしても足のふみようがもっと経済けいざいもとれ本気にもなれそうでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このおじょうさまが、ちょうど劇場げきじょうにきて、むすめおどりをていられましたが、おどりばかりでなく、このむすめがたいそうにいられました。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さあ、さあ、大評判おおひょうばん文福ぶんぶくちゃがまにえて、手足てあしえて、綱渡つなわたりのかるわざから、かれおどりのふしぎな芸当げいとう評判ひょうばんじゃ、評判ひょうばんじゃ。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かるく手拍子てびょうしを打って『土佐は良いとこ、南を受けて、薩摩颪さつまおろしがそよそよと』と小声で歌いながら、ゆっくり、おどりだしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
おまけに、向うの暗い道では、ひょろ長の幽霊ゆうれいおどりをおどっていて、それがだんだんこっちへ近づいてくるではありませんか。
ひとりで、はしゃぎ立て、ひとりでおどり足をふりながら、てんおかをなかほどまでくだってきたが、そこで、なにを見つけたか蛾次郎がじろうは急に
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心臓は今にも割れそうにおどっていた。わたしはひどくずかしく、またひどく愉快ゆかいだった。わたしはまだ身に覚えのないほどの興奮を感じた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
真白に塗った法界屋ほうかいやの家族五六人、茶袋を手土産に、片山夫人と頻に挨拶に及んで居る。やがて月琴げっきんを弾いてさかんおどった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はっきりした日差しにこけの上に木の影がおどって私の手でもチラッと見える鼻柱はなばしらでも我ながらじいっと見つめるほどうす赤い、奇麗きれいな色に輝いて居る。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
古千屋はつづけさまに叫びながら、その度に空中へおどり上ろうとした。それはまた左右の男女なんにょたちの力もほとんど抑えることの出来ないものだった。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うたうと、マリちゃんもたちまち、かるい、たのしい気分きぶんになり、あかくつ穿いて、おどりながら、うちなか跳込とびこんでました。
どうしたはずみか、太夫たゆうおどってたあしが、つまずいたようによろよろっとしたかとおもうと、あッというもなく、舞台ぶたいへまともにしちまったんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
宇受女命うずめのみことは、おちちもおなかも、もももまるだしにして、足をとんとんみならしながら、まるでつきものでもしたように、くるくるくるくるとおどくるいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その時はぼうとむせるようなけむが立って、数え切れぬほどの豆と豆の間にひそんでいるちりが一度におどあがる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ツルがオヤユビくんにおどりを見せないというんなら、ぼくはオヤユビくんといっしょにここに残る。」
このおどりおどったのが始めだという言い伝えもあるというから、少なくとも近年の流行でないだけはわかる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小父おじちゃん、小母おばちゃん、虫の太夫さんにおどらせておくれよ。そして、たんと思召しを投げて頂戴ちょうだいね」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
根占ねじめの花に蹴落けおされて色の無さよ、とあやしんで聞くと、芸も容色きりょう立優たちまさった朝顔だけれど、——名はお君という——そのは熊野をおどると、後できっとわずらうとの事。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
西空は一面に都会の夜街の華々はなばなしいものがおどりつ、打ち合いつ、くだけつする光の反射面のようである。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
つと大事だいじほねさへらば御氣おきらぬことはづさだめて、かゝるおにしゆうをもつぞかし、目見めみえのみて三日ののち七歳なゝつになるじやうさまおどりのさらひに午後ごゞよりとある
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
横殴よこなぐりになぐられて倒れかかっている奴、あるいはえて這いつくばい、なお起き上がろうとしているのもあったが、どれにも、喜びとか、おどり上るとかいう歓相のそれがなく
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そのためには、まず第一に、朝倉先生夫妻をはじめ、友愛塾がわが総立ちになって、例の友変塾音頭おんどおどるのが、もっとも効果的だと思われた。この予想はみごとに的ちゅうした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わッ! という歓声かんせいは天地をとどろかしました。日本士官は思わずもき合っておどり上がりました。しばらくはすべての人の拍手はくしゅが鳴りやまなかったのであります。この光栄、この名誉めいよ
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
おきまりの会費で存分愉しむ肚の不粋な客を相手に、息のつく間もないほどかされ歌わされ、浪花節なにわぶしの三味から声色こわいろの合の手まで勤めてくたくたになっているところを、安来節やすぎぶしおどらされた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おや太鼓たいこちや、おどる。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「おまえさんは、わたしのうちへきませんか。」と、おじょうさまは、おどりがえると、むすめにあってはなされました。むすめはおじょうさまにかって
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その人形のおどりが、またすばらしいものでした。年とったやせたコスモの手であやつられてるとは、どうしても思えませんでした。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そこでおじいさんは、こういうわけでおどりをおどったら、あとでしちにられたのだといって、くわしいはなしをしました。おとなりのおじいさんは
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おれこれがら出掛でかげてとうげさ行ぐまでに行ぎあって今夜のおどり見るべしてすすめるがらよ、なあにどごまで行がなぃやなぃようだなぃがけな。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はねたりおどったりして、わたしたちの生きていられる三百年のあいだを、楽しくくらそうよ。三百年といえば、ずいぶん長い年月じゃないの。
けるにしたがって、おどりのもちり、参詣さんけいの人もたえ、いつか、あなたこなたの燈籠とうろうさえ、一つ一つ消えかかってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太夫たゆうめておどったとて、おせんの色香いろかうつるというわけじゃァなし、芸人げいにんのつれあいが、そんなせまかんがえじゃ、所詮しょせんうだつはがらないというものだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
我々がその晩のうちにやったことは、まだまだそれだけではなかった! ピアノもけば、歌もうたい、おどりもおどれば、ジプシーの群れの真似まねもした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「いやだ!」と、ハンスが返事をしました、「にゃあにゃあのおじょうちゃんとおどるのあ、ごめんだ、そんねえなこと、まんだやったことがねえだでのう」
昼食を、所長さんの御招待で頂き、サアビスにおどってくれたのが、当時のスタア、ロジタ・モレノじょうでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そのまた小えん自身にも、読み書きといわず芸事げいごとといわず、何でも好きな事を仕込ませていた。小えんはおどりも名を取っている。長唄ながうた柳橋やなぎばしでは指折りだそうだ。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
常陸ひたち鹿島かしまあたりの「土俗の習ひに、物の祝などある折、または祈事いのりごとをする日など」「老婆おむなたち多く集まり、弥勒謡みろくうたとて各声をあげて歌うたひ、太鼓を打ち」おどった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この日一日じゅう、ニールスは小さな池のほとりにすわりこんで、アシぶえを吹いていました。ツルのおどりを見にいけないと言われたので、すっかりふさぎこんでいたのです。
夜の八時頃から翌朝の二時か三時までおどって居ります。元気のよいのには、おどろきました。私は夜会服のかわりに日本服を久々で着ました。皆々非常によろこんでくれました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すると大前おおまえ小前こまえ宿禰すくねは、手をあげひざをたたいて、歌いおどりながら出て来ました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
三味の音に合わせて、その三匹の尺り虫が、伸びたり縮んだり、扇子の上で思い思いの方角に動くのが、見ようによっては、おどりとも見えて、イヤモウ、見物はわれるような喝采……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やがて、オルガンにあわせて、五人は歌をうたいながら、おどりだした。手ぶりや、足のふみ方や、ぐるぐるまわって行進したり、あともどりしたりするところなど、すべては盆踊ぼんおどりそっくりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
おどりにみやうゆきといふ美形びけい唯今たゞいまのお座敷ざしきにておこめのなりますはと至極しごくあどけなきことまをすとも、もとは此所こゝ卷帶黨まきおびづれにてはながるたの内職ないしよくせしものなり、評判ひやうばん其頃そのころたかるもの日々ひゞうとければ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おらうたうたって、おどりおどるだよ」
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おどりくたびれ「袖萩そではぎ」の
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
小鳥ことりが、どこかでいていました。ようやく浅緑あさみどりをふいた木立こだちは、よろこばしげにおどっていました。そらあおぐとくもながれています。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、おどれといえばおどるし、すわれといえばすわるし、人形はいうとおりにうごまわるのです。甚兵衛はあきかえってしまいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「いいことをいた。ではわたしもさっそく行っておどりをおどりましょう。おじいさん、そのおにところがどこだか、おしえておくんなさい。」
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かまいませんよ。それよりまああのなしの木どもをごらんなさい。えだられたばかりなので身体からだ一向いっこうり合いません。まるでさなぎおどりです。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)