おさ)” の例文
うちとき齋藤さいとうむすめ嫁入よめいつては原田はらだ奧方おくがたではないか、いさむさんのやうにしていへうちおさめてさへけばなん子細しさい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これが豆腐とうふなら資本もとでらずじゃ、それともこのまま熨斗のしを附けて、鎮守様ちんじゅさまおさめさっしゃるかと、馬士まごてのひら吸殻すいがらをころころる。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白い蒲団ふとんの下に、遺骸は、平べったく横たわっていた。離れた首は、左の肩先に横向きに添えてある。涙ながら、人々は、ひつぎおさめた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他処行よそゆきの着物を着たり、半分裸だったり、笑ったり、ひたいに八の字を寄せたり、種々様々な姿で、立派な背景の中におさまっている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
はたしてこの後をつけて、壺が作爺さんの家へおさまるところを見きわめたのが、日夜左膳の掘立小屋ほったてごやを見張っていた鼓の与吉だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分じぶんにいると、さもうれしそうに、それを丁寧ていねいはこなかおさめました。そして、つぎの人形にんぎょうかおきにかかったのです。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
最後の瞬間までどんなことでも胸一つにおさめておいて、切りだしたら最後貫徹しないではおかない清逸の平生を知らない園ではないはずだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
引越し荷物は決して多いほうではなかったが、それでも、この手ぜまな家にはどうにもおさまりかねた。本だけでも相当だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
大吾船長、(あの色っぽい妻君)夫妻はひどく喧嘩をした、妻君が賭事をする。亭主は嫉妬深い。だが無事におさまるらしい。
それでかれらはろくろく食べもしないうちにパンが背嚢はいのうおさめられるのを見ると、前足を主人のほうに向けて、そのひざがしらを引っかいた。
それはけん規則きそく全級ぜんきゅうの三分の一以上いじょう参加さんかするようになってるからだそうだ。けれども学校へ十九円おさめるのだしあと五円もかかるそうだから。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このおさまりがどうなったか聞き洩らしたが、その最初にメクラれたのが、堂々たる江戸ッ子の、しかも問屋の屋根であったことは記憶している。
僕は夜のうちに、あの隆々りゅうりゅうたる鼻と、キリリと引締っていた唇と(自分のものをめることをわらわないで呉れ、これが本当に褒めおさめなのだから)
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから家へ帰って、ものを言う不思議ふしぎな布団を持ち出して、二人の兄妹の家の近くのお寺へ行っておさめました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それほどの大夫を根引いて宿の妻にすると、おさまらないのが諸方にあるのも無理はないでしょう、ね、親分」
八月足代弘訓のすゝめにより、剳記を宮崎、林崎の両文庫におさむ。九月奉納書籍聚跋ほうなふしよじやくしゆうばつに序す。十二月儒門空虚聚語じゆもんくうきよしゆうごに自序す。是年柏岡伝七、塩屋喜代蔵入門す。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
漸く結末へた時は、手に持つた手紙をおさめる勇気もなかつた。手紙はひろげられた儘洋卓てえぶるうへよこたはつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにもお前さんをなぐさものにするわけじゃねえのだ、おれは子供の時分から虫のせいで、善い事にしろ悪い事にしろ仕返しをしなくっちゃあおさまらねえ性分しょうぶん
当代とうだい人気役者にんきやくしゃそうろうていると、太鼓持たいこもちだれかに一いわれたのが、無上むじょう機嫌きげんをよくしたものか、のほほんとおさまった色男振いろおとこぶりは、ほどものをして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私が羊をくれた人はトクチェンの駅場へ羊毛の税品をおさめに行った人だそうで、ちょうど四名ばかり其寺そこへ泊り合わせたその人らに死んだ羊の肉を遣りますと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それで二人は、こわれた人形を立派りっぱつくろって、それを山の神社おみやおさめました。さるは山の中へもどりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「さて明日からは、草深い田舎を御巡検で、宿らしい宿は今宵が当分の御泊おとまりおさめ。どうか御ゆるりと」
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
巳代公がうなずいたと云っておさまって居ると、巳代公は一時間っても二時間経ってもやって来ぬので、往って見ると自分の事をして居たので、始めてとめやの早合点はやがてん
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人間にんげんよくにはかぎりがないといいながら、そうそうよくばるのはわるいことだから、今日きょうかぎりおまえ見世物みせものすことはやめて、もとのとおり茂林寺もりんじおさめることにしよう。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして其の屍體したいが地の底におさまるか納まらぬに、お房の家は破産の宣告せんこくを受けて一離散りさんとなツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そこで、漁業会社は、普通相場の五分の一にあたる安いルーブル紙幣を借区料としてサヴエート同盟へおさめるのだった。そして、ぬくらんと懐を肥やして、威張っていた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
また鳥取ととり河上かわかみの宮においでになつて大刀一千ふりをお作りになつて、これを石上いそのかみ神宮じんぐうにおおさめなさいました。そこでその宮においでになつて河上部をお定めになりました。
わたくし懐剣かいけん何卒どうぞこのままわたくしと一しょかんなかおさめていただきとうございますが……。』するとはは即座そくざわたくしねがいれて、『そのとおりにしてあげますから安心あんしんするように……。』
それがどうやらこの世の噛みおさめらしいよ、兄弟。己ぁもう墓場へ行くんだ、きっとな。
二二 佐々木氏の曾祖母そうそぼ年よりて死去せし時、かんに取りおさめ親族の者集まりきてその夜は一同座敷にて寝たり。死者の娘にて乱心のため離縁せられたる婦人もまたその中にありき。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして八月の十日には父の残した老妻と二人で高野山へ父の骨をおさめに行った。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
世人せじん、イヤ歌読みでも、俳人はいじんでも、また学者でも、カキツバタを燕子花と書いてすずしい顔をしておさまりかえっているが、なんぞ知らん、燕子花はけっしてカキツバタではなく、これをそういうのは
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その場のおさまりがつかないような気になるのであった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すっとまたぐ、色が、紫に奪われて、杜若にすそが消えたが、花から抜けるさばいたもすそが、橋の向うでおさまると、直ぐに此方こなたへ向替えて
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういい出すとどうしても、自分の思い通りにならないうちは、そのひたぶるな遊びのわがままがおさまらないとみえる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今は一藩の生命とがおさめられているかと思うと、この大名物がひとしお重々しく、ありがたく見えるのもふしぎはない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
幸福しやわせならぬことおのづから其中そのうちにもあり、おさくといふむすめ桂次けいじよりは六つの年少とししたにて十七ばかりになる無地むぢ田舍娘いなかものをば、うでもつまにもたねばおさまらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この小ばこをおさめてください。わたしのおじさんがくれたものだから。中には糸とはりとはさみがはいっています。旅をして歩くと、こういうものが入り用なのよ。
そして、もう一ぽうはこなかはいっている人形にんぎょうかおいたときには、なんとなくわたし気持きもちがものらなさをおぼえていたから、いてないはこなかおさめたのです。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
虚子は微笑しながら、仕方なしに自分のつづみに、自分の謡を合せて、めでたくうたおさめた。やがて、まだ廻らなければならない所があると云って車に乗って帰って行った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これはかいの火という宝珠ほうじゅでございます。王さまのお言伝ことづてではあなたさまのお手入れしだいで、このたまはどんなにでも立派りっぱになるともうします。どうかおおさめをねがいます」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あれは人質にとっといて今日から下水掃除をさせる。辛けりゃ早く金をおさめて引取りに来い」
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『これは先日せんじつ此附近このふきん散歩さんぽしてひろつたのです。如何どう大學だいがくへおおさめをねがひます』とふ。
此辺はもと徳川様の天領てんりょうで、おさめ物の米や何かは八王子はちおうじ代官所だいかんしょまで一々持って往ったものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
藤太とうだがね三井寺みいでらおさめて、あとの二品ふたしないえにつたえていつまでもゆたかにらしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
春重はるしげから、無造作むぞうさされたくろな一たばは、まつろうひざしたで、へびのようにひとうねりうねると、ぐさりとそのままたたみうえへ、とぐろをいておさまってしまった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
またこの華族は平民から人頭税じんとうぜいを徴収します。その人頭税はごく貧乏人でも一タンガー位出さねばならぬ。その上の人になると十タンガーも百タンガーもおさめるものがある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「なんと言ったって駄目なんだよ、お前が出て挨拶しなけりゃ、お客はおさまらないんだよ」
みぎ御神剣ごしんけんもうすのは、あれは前年ぜんねんわざわざ伊勢いせまいられたときに、姨君おばぎみからさずけられたにもとうと御神宝ごしんぽうで、みことはいつもそれをにしきふくろおさめて、御自身ごじしん肌身はだみにつけてられました。
夜の点呼がすむと、サン・マルクの寮監先生りょうかんせんせいは寝室から出て行く。すると生徒はめいめい、さやの中へおさまるように、できるだけちぢこまって毛布の中へすべり込む。外へはみ出ないようにだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)