残念ざんねん)” の例文
旧字:殘念
おくっていただいた、うつくしい雑誌ざっしともだちにせると、みんなが、うばって、たちまち、きたなくしてしまいました。残念ざんねんでなりません。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは自分じぶんが二十年以上ねんいじょう勤務つとめをしていたのに、それにたいして養老金ようろうきんも、一時金じきんもくれぬことで、かれはそれをおもうと残念ざんねんであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これはたたかいにやぶれて、海のそこにしずんだ人びとが、残念ざんねんのあまり、そういうかにに、生まれかわってきたのだろうと、人びとはいいました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
こんなことになるほどなら、どうしてあのまま、家にじっとしていなかったのかと、泣いて残念ざんねんがりましたけれど、仕方がありませんでした。
いくらばかりあせっても、矢種やだねがなくってはいくさはできません。残念ざんねんながら味方みかたけいくさかと田村麻呂たむらまろぎしりをしてくやしがりました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、お嫁さんをもらわない和太郎さんは、ひとつ残念ざんねんなことがありました。それは子どもがないということです。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それを考えると、この村をるのが残念ざんねんでたまりませんでした。わたしは打穀場だこくばのうらてをぬけてたにへくだり、れ地のほうへのぼって行きました。
「これはせっかくのご出陣しゅつじんですが、じつはそのちょっと東京へいってくるつもりで……はなはだ残念ざんねんだが……」
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なに旦那だんなだ。捕虜ほりよへ、奴隷どれいべ、弱者じやくしやあざけれ。ゆめか、うつゝか、わからん、おれとて貴様達きさまたち抵抗てむかひするちからはない。残念ざんねんだが、貴様きさまむかふと手足てあししびれる、こしたん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、なによりも残念ざんねんに思われるのは、ケブネカイセのアッカになんか出会であったことでした。
もうさっそくかの女の指はずんずんわたしのするとおりに動くことができた。もちろんかの女は歌を歌うことを学ぶことはできなかった、これをひじょうに残念ざんねんがっていた。
一方は湖だし、いまさらひきかえすことも残念ざんねんだ。ゆくにしたがっていよいよ丘陵きゅうりょうが多くなった。一とうこう、骨の折れることおびただしい。どうやら地面の光景は一変した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
容疑ようぎはぜつたいにかからないものときめていたのですが、そんなちいさな不注意ふちゅういがもとで、とうとううたがいがかかつたというのは、正直しょうじきなところ、まことに残念ざんねんでもあり、またわるいことは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
この菊塢きくう狂歌きやうかしゆ発句ほつくあり、(手紙と其書そのしよ移転ひつこしまぎれにさがしても知れぬは残念ざんねんにもかくにも一個いつこ豪傑がうけつ山師やましなにやらゑし隅田川すみだがは」と白猿はくゑんが、芭蕉ばせうの句をもじりて笑ひしは
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
席開せきびらきといふので、わたくしもおまねきにあづかつたが、其時そのとき是非ぜひ伊豆屋いづやさんなんぞと一しよに、参席あがつもりでございましたが、残念ざんねんな事には退引のつぴきならぬ要事ようがあつて、到頭たうとう参席あがりませぬでしたが……。
そのへんからでも竜宮りゅうぐう御殿ごてんまではまだ半里位はんみちくらいはたっぷりあるのでございます……。何分なにぶん絵心えごころなにわせないわたくしちからでは、なんのとりとめたおはなしもできないのが、たいへんに残念ざんねんでございます。
そのたびはねちぢめて残念ざんねんさうにかほをしかめるのだつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
なんだかこのまゝ帰るのは残念ざんねんだなあ
「おばあさん、残念ざんねんでしたね。ここらのひとたちは、みんななかったのです。」と、うちじゅうのひとは、おばあさんをなぐさめました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしなに貴方あなた自分じぶん信仰しんこうむかわせようと権利けんり主張しゅちょうはせんのです。』院長いんちょう自分じぶんわかってくれいので、さも残念ざんねんうように。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「それは残念ざんねんでございますこと、ではおみやげをさしげますから、しばらくおくださいまし。」
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それに、ぼくは、ゆうべオヤユビくんに失礼なことをしたのが残念ざんねんでたまりませんから、こんどはひとつ、会場まで、オヤユビくんをせなかにのせていってやりましょう。
あなたにお知らせするまもなかったは残念ざんねんながら、まことにいい終わりでありました
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
じいさんは、ごんごろがね出征しゅっせいを、一にちまちがえてしまって、ついにごんごろがねにおわかれが出来できなかったことを、たいそう残念ざんねんがり、くちおおきくあけたまま、かねのなくなった鐘楼しゅろうほうていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
刑事けいじは、真実しんじつ残念ざんねんそうに、ためいきをしているのであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
「そう、それでは」と床屋とこやさんは残念ざんねんそうに答えた。
林太郎は残念ざんねんそうにその場をひきあげました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
残念ざんねんだッ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ひばりは、こう、ほおじろにかっていいました。おとなしいほおじろだったけれど、卑怯者ひきょうものられたことが残念ざんねんだったのです。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ええ、生甲斐いきがい生活せいかつだ、如何いかにも残念ざんねんなことだ、この苦痛くつう生活せいかつがオペラにあるような、アポテオズでおわるのではなく、これがああおわるのだ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ごちそうがすむと、藤太とうだはいとまごいをしてかえりかけました。龍王りゅうおうはいろいろにめましたが、藤太とうだはぜひかえるといってきかないものですから、龍王りゅうおう残念ざんねんがって
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ほんとうに、海の旅をするのには、もうしぶんのないお天気でした。ただ、ひとつ、残念ざんねんなのは、空がすっかり晴れわたっていないので、灰色のうすぎぬをひいたようになっていることでした。
残念ざんねんながら、その空洞くうどうは、文字通もじどおりの空洞くうどうなにもない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
若者わかものは、せっかくここまできながら、のぞみのしまくこともできず、むなしく海底かいていのもくずになってしまうのかと残念ざんねんがりました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうひさりでごちそうだったなあ。大根だいこんもうまかった。うまもうまかった。あれでうっかりしていて、馬吉うまきちげられなければ、なおよかったのだけれど、残念ざんねんなことをした。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
正坊まさぼうは、まちきもらしたのが残念ざんねんでした。おそらくそのことは、永久えいきゅうに、かれにとって残念ざんねんであったにちがいない。
びんの中の世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
保名やすなはそれを残念ざんねんなことにおもって、どうかして先祖せんぞ仲麻呂なかまろのような学者がくしゃになって、阿倍あべいえおこしたいとおもいましたが、子供こどもときからうまったりゆみたりすることはよくできても
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かれは、東京とうきょうかえったら、ここへきて、いちばんさきにおともだちとなったこの少女しょうじょへ、手紙てがみそうとおもったのも、むなしくなったのを残念ざんねんおもいました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの山のおく酒呑童子しゅてんどうじのためにつまや子をられて残念ざんねんでたまりません。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こたえはただしかったけれど、孝二こうじしょううばわれて、残念ざんねんそうにえました。そのうちに、いずれもつくしました。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
残念ざんねんおもっていました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
白鳥はくちょう残念ざんねんがりました。そして、子供こども白鳥はくちょうに、注意ちゅういりないといって、しかりました。ちいさな白鳥はくちょうは、ただおどろいて、をみはっているばかりでした。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これが、おれのものだったら、どんなに大金持おおがねもちになれるだろう……。」と、トムきちは、残念ざんねんがりました。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いいや、勘太かんたじいさんに相違そういない。おれは、よほど、自動車じどうしゃめて、こえをかけようとおもったが、いそいでいたものだから、つい残念ざんねんなことをしてしまった。」
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これから、毎朝まいあさみちであっても、炭屋すみや小僧こぞうさんにあたまがらないとおもうと、残念ざんねんでたまりません。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、子供こどもらは残念ざんねんそうにしてっていました。なかにも一人ひとり子供こどもはやはりいていました。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、なお残念ざんねんおもわれたのは、あの遠足えんそく山田やまだがついにこなかったことでありました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、おとうさんの霊魂れいこんは、きっとあんなようなきよらかなところにんでいらっしゃるのだろうとおもったのでした。それが、もうおそくなって、やまえないのは残念ざんねんです。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう一は、それ以上いじょう、ほんとうだとしんじさせるようにいえないことを、至極しごく残念ざんねんおもいました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あなたは、せんだって、やまでうさぎをいかけて、とうとうがしてしまいなされたのを、わたしは、まってていました。あなたは、たいそう残念ざんねんそうでありましたね。」
からすとうさぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)