)” の例文
小房は恥しいほど胸がふるえるのを感じながら、辰之助の好きな白菊の一輪をかやの中に活けた。柱懸けの一節切ひとよぎりにはあけびのつるした。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは或雑誌のだつた。が、一羽の雄鶏の墨画すみゑは著しい個性を示してゐた。彼は或友だちにこの画家のことを尋ねたりした。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あごはいつもきれいに剃ってあるし、髪にはキチンと櫛目くしめがはいっている。散歩に出ると、野の花をえりしたりして帰ってくる。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
伊勢の神様が神馬に乗り、榊の枝をむちにしておいでになったのを、ちょっと地にして置かれたものが、そのまま成長して大木になった。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それを聴くと私はグッとしゃくさわった。そして長火鉢にしてあった鉄火箸てつひばしをぎゅうと握りしめて座り直りながら大きな声で
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
たとえば手拭てぬぐいはどう持つものとか、尺八はどうすとか、帯はいかに結ぶとか、語尾はいかに発音するかというがごとき、おろかなことではあるが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
何々屋なになにや後家ごけさんが、おびってやったとか。酒問屋さけとんやむすめが、舞台ぶたいしたかんざししさに、おやかねを十りょうしたとか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「待つてくれ、俺が何んとか話してやらう。簪をした泥棒は、あんまり聽いたこともない。それに、聖天堂の扉が開いて居たのは、大變なことだ」
元日の礼式 は朝起きますとすぐに麦焦むぎこがしを山のように盛り立てて、その上へ五色ごしきの絹——ハンカチーフを集めたような物を旗のような具合に
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そこで、かみひあげるときにして、かうがいを惜しまずやつたのであらうが、二三十年も前のことで、今日の錢湯風景を知らないから、なんともいへない。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
かたわらにある机を持って来て、其の上に乗って、欄間の障子の穴から覗こうと思ったが、障子に破れた穴もないので覗けないから、して居た銀脚ぎんあし簪揷かんざし
芳子は栗梅くりうめ被布ひふを着て、白いリボンを髪にして、眼を泣腫なきはらしていた。送って出た細君の手を堅く握って
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あくる朝、二人の子供は背に籠を負い腰に鎌をして、手を引き合って木戸を出た。山椒大夫のところに来てから、二人一しょに歩くのはこれがはじめである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かれまた裏戸うらどくちつてたが、掛金かけがねにはせんしたとえてうごかなかつた。卯平うへいはそれから懷手ふところでをしたまゝくせしたらしながら悠長いうちやう自分じぶんせま戸口とぐちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お前が外界に向けて拡げていた鬚根しゅこんの凡てを抜き取って、先をそろえて私の中にし入れるがいい。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ただ見れば有り触れた木魚であるが、その口から何物かをし込めば、底蓋の上に落ちて自由に取り出すことが出来るようになっている。現に小さい結びぶみが落ちていた。
と主人が細君を呼ぶにも友達のように親しげなのは、基督教徒風の家庭の内部なか光景さまらしい。細君は束ねた髪に紅い薔薇ばらつぼみしているような人で、茶盆を持ってテエブルの側へ来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
揉上もみあげの心持ち長い女の顔はぽきぽきしていた。銀杏返いちょうがえしの頭髪あたまに、白いくしして、黒繻子くろじゅすの帯をしめていたが、笹村のそこへ突っ立った姿を見ると、笑顔えがおで少しすすみ出て叮寧に両手をいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼が経験なき壮年の身にしては、頼みなき身を慰むることの行き届けるに、感心したり、阿園はまた二三日ごとに墓の掃除せられ、毎朝己れに先だって線香立ち、花され、花筒の水もあらたまり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
雨戸の横柄子よこざるしっかとせ、辛張り棒を強く張れと家々ごとに狼狽うろたゆるを、可愍あわれとも見ぬ飛天夜叉王、怒号の声音こわねたけだけしく、汝ら人をはばかるな、汝ら人間ひとに憚られよ、人間は我らをかろんじたり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つややかな黒髪を惜気もなくグッと引詰ひっつめての束髪、薔薇ばら花挿頭はなかんざししたばかりで臙脂べにめねば鉛華おしろいけず、衣服みなりとても糸織の袷衣あわせに友禅と紫繻子の腹合せの帯か何かでさして取繕いもせぬが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
娘が失踪する数日前、彼の留守中に、彼の事務所を訪ねた一人の男が、扉の鍵穴かぎあなに一輪の薔薇がしてあって、手近にかかっている一枚の石板に「マリー」という名前が書いてあるのを見たのである。
双鸞菊とりかぶと、毒のかぶといたゞき、鳥の羽根はねの飾をした女軍ぢよぐん勇者つはもの
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
りぼんにすを惜まねど
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
春秋はるあきはな紅葉もみぢつゐにしてかんざし造物つくりものならねど當座たうざ交際つきあひ姿すがたこそはやさしげなれ智慧ちゑ宏大くわうだいくは此人このひとすがりてばやとこれも稚氣をさなげさりながら姿すがたれぬはひとこゝろわらひものにされなばそれもはづかしなにとせんとおもふほど兄弟きやうだいあるひとうらやましくなりてお兄樣あにいさまはおやさしいとかおまへさまうらやましとくち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちょっと抜きしならぬ破目はめになってしまったのも、私が最初からの茶屋を通して話を進めなかったことの手ぬかりを言うのであろうと思った。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
朝、いつものように出勤して、楽屋へ入って来た爺さんは、脚の欠けた喫煙卓子の上に、赤い花をした一輪差の花瓶かびんをみつけてまず驚かされた。
溜息の部屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その時用いたのは栗の木の箸でしたが、それを記念のために、その場所にして帰って来ますと、後に箸から芽を出して、そこに栗の木が茂りました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
べつにつるうめもどきの赤い実の鈴生すずなりになったのをしていると、母親は「私、この梅もどきッていう花大好きさ、この花を見るとお正月が来たような気がする」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「お崎が曲者の仲間なら、大事にしてゐた、つまみ細工ざいくの簪などをして、聖天堂へ入るでせうか」
とこした秋海棠しゅうかいどうが、伊満里いまり花瓶かびんかげうつした姿すがたもなまめかしく、行燈あんどんほのおこうのように立昇たちのぼって、部屋へや中程なかほどてた鏡台きょうだいに、鬘下地かつらしたじ人影ひとかげがおぼろであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其の頃は流行はやりました麦藁細工で角兵衛獅子をこしらえ、又竹にさした柿などが弁慶にしてあります。
からす孔雀くじやくの羽根を五六本拾ふと、それを黒い羽根の間にして、得々と森の鳥の前へ現れた。
翻訳小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
脚絆きやはんきれまゝあさあしくゝけた。れも木綿もめんつた頭陀袋づだぶくろくびからけさせて三かは渡錢わたしせんだといふ六もんぜにれてやつた。かみあさむすんで白櫛しろぐししてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
していても似合いそうな人です
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
花は大輪でもあるし多すぎた、竹筒へせるだけ揷して、余ったのは墓標の前へ、横に置いた。それから、そこへ跼んで、眼をつむりながら合掌した。
夕靄の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
手をし入れて、試みにそっとその硝子戸を押してみると五、六寸何のこともなくずうっと開きかけたが、ふっとそれから先戸が動かなくなったのが
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
杖を濁り井のすぐ脇の地面にすと、そこからこのような清い泉が湧き出たというのであります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これをげまして、關兼元の無銘摺上げ一尺七寸ばかりの脇差をしまして、日和下駄を穿いて竹ヶ崎へ掛って参ると、とっぷり日が暮れまして、月の出ようという前で
時雄はさる画家の描いた朝顔のふくを選んで床に懸け、懸花瓶けんかびんにはおくざき薔薇ばらの花をした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
昔から世界には前人の造つた大きな花束が一つあつた。その花束へ一本の花をし加へるだけでも大事業である。その為には新らしい花束を造る位の意気込みも必要であらう。
どうかしてあまりにおくれるとから草刈籠くさかりかごさかしま脊負せおつて、あるけばざわ/\とやうに、おほきなかごなら雜木ざふきえだして黄昏たそがれにははこんで刈積かりつんだ青草あをくさちかかごおろす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「聖天堂へ入つて、夜光の珠でも奪らうといふ泥棒が、大事なかんざしして行くだらうか」
おしのは自分で花屋へゆき、山椿らしい枝ぶりのものを選んで買って来、す物もいちばん素朴な万古ばんこの壺にした。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それへずぶりとはすして有るは草苅鎌、甚藏が二十両に売付けた鎌を與助と云う下男が磨澄とぎすまして、弁慶へ揷して置いたので、其の鎌の処へ、屋根裏を伝わって来た蛇がまとい付き
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのころは年もまだ二十を三つか四つ出たくらいのもので若かったが、商売柄に似ぬ地味な好みから、頭髪かみの飾りなども金あしのかんざしに小さい翡翠ひすいの玉をつけたものをよくしていた。……
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
甲斐は「かしてごらん」とその花を取り、宇乃の髪毛をそっと押えて、その左側の耳の上のところへしてやった。
大小を六本し、帯を三本締めるなど大変な騒ぎで、漸々よう/\支度が整ったから、お國とともに手を取って忍びでようとするところを、仲働きの女中お竹が、先程より騒々しい物音を聞付け
対手が妙に生齧なまかじりの法律口調で話しかけるのを、こちらは、わざとさばけた伝法でんぽうな口のきようになって、四、五年前からの女との経緯いきさつを、その男には、口をし入れる隙もないくらいに
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
誰かが——笠にすべき、とよんだとおり、しなやかにたわんだ枝々は、雨に濡れていっそう重たげにみえた。
雨の山吹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)