夕靄の中ゆうもやのなか
彼は立停って、跼み、草履の緒のぐあいを直す恰好で、すばやくそっちへ眼をはしらせた。 ——間違いはない、慥かに跟けて来る。 その男はふところ手をして、左右の家並を眺めながら、悠くりとこちらへ歩いて来る。古びた木綿縞の着物に半纒で、裾を端折り、 …