大川おほかは)” の例文
可哀あはれ車夫しやふむかつて、大川おほかはながれおとむやうに、姿すがた引締ひきしめてたゝずんだ袖崎そでさき帽子ばうしには、殊更ことさらつき宿やどるがごとえた。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のみならず古い橋のかかつた掘割りさへ大川おほかはに通じてゐた。僕は時々空気銃を肩にし、その竹藪や雑木林の中に半日を暮らしたものである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天満組てんまぐみとは北組の北界きたざかひになつてゐる大川おほかはより更に北方に当る地域で、東は材木蔵ざいもくぐらから西は堂島だうじま米市場こめいちばまでの間、天満てんま青物市場あをものいちば天満宮てんまんぐう総会所そうくわいしよ等を含んでゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かねてぞ千葉ちばはなたれぬ。汨羅べきら屈原くつげんならざれば、うらみはなにとかこつべき、大川おほかはみづきよからぬひて、永代えいだいよりの汽船きせん乘込のりこみの歸國きこく姿すがた、まさしうたりとものありし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さつきから空の大半たいはん真青まつさをに晴れて来て、絶えず風の吹きかよふにもかゝはらず、ぢり/\人のはだ焼附やきつくやうな湿気しつけのある秋の日は、目の前なる大川おほかはの水一面にまぶしく照り輝くので
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大川おほかはおもてにするどい皺がよつてゐる。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
大川おほかはの水のおもてを見るごとに
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大川おほかはがよひさすしほ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
もなかに遊べ大川おほかは
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はるみづ大川おほかは
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの大川おほかはに紫を
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あの大川おほかはは、いく銀山ぎんざんみなもとに、八千八谷はつせんやたにりにつてながれるので、みづたぐひなくやはらかになめらかだ、とまた按摩あんまどのが今度こんどこゑしづめてはなした。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、七八間隔ててすれ違つたのを見ると、この川蒸汽の後部には甲板かんぱんの上に天幕テントを張り、ちやんと大川おほかはの両岸の景色を見渡せる設備も整つてゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「どつちへでも好いからいでをれ。」瀬田はかう云つて、船頭にあやつらせた。火災につたものの荷物を運び出す舟が、大川おほかはにはばらいたやうに浮かんでゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
大川おほかはは張つてゐた氷が解けはじめた。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
かの大川おほかは遊船いうせん
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
都鳥みやこどり大川おほかは
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
大川おほかはに沿うた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
だから、それだから、行留ゆきどまりかなぞと外聞ぐわいぶんわることをいふんです。——そも/\、大川おほかはからここへながくちが、下之橋しものはしで、こゝがすなは油堀あぶらぼり……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし僕はO君と一しよに両国橋を渡りながら、大川おほかはの向うに立ち並んだ無数のバラツクを眺めた時には実際烈しい流転るてんさうに驚かないわけにはかなかつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
部下を失つた広瀬は、暇乞いとまごひをして京橋口に帰つて、同役馬場にこの顛末てんまつを話して、一しよに東町奉行所前まで来て、大川おほかはを隔てて南北両方にひろがつて行く火事を見てゐた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
どれかが、黄金わうごん魔法まはふによつて、ゆき大川おほかは翡翠ひすゐるらしい。圓山川まるやまがはおもていま、こゝに、の、のんどりとなごやはらいだくちびるせて、蘆摺あしずれにみぎはひくい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大川おほかははうへそのぱなに、お湯屋ゆや煙突えんとつえませう、ういたして、あれが、きりもやのふかよるは、ひとをおびえさせたセメント會社ぐわいしや大煙突だいえんとつだからおどろきますな。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
備中びつちう一時あるとき越前ゑちぜん領土巡検りやうどじゆんけんやくを、主人しゆじん義景よしかげよりうけたまはり、供方ともかた二十にんばかりをれて、領分りやうぶんたみ状態じやうたいさつせんため、だゝる越前ゑちぜん大川おほかは足羽川あすはがはのほとりにかゝる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうしてあんな、水浸みづびたしになつて、大川おほかはなかからあししてる、そんな人間にんげんがありますものか。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白河しらかははやがて、きしきるかはづこゑ、——かはづこゑもさあとひゞく——とゝもに、さあとる、ながれおとわかるゝごとく、汽車きしやあだかあめ大川おほかはをあとにして、また一息ひといきくら陸奥みちのくしづむ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くもつたそらほしもなし、眞黒まつくろ二階にかいうら欞子窓れんじまどで、——こゝにいまるやうに——唯吉たゞきちが、ぐつたりして溜息ためいきいて、大川おほかはみづさへぎる……うごかない裏家うらや背戸せどの、一本柳ひともとやなぎ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
半町はんちやうばかりまへを、燃通もえとほさまは、眞赤まつか大川おほかはながるゝやうで、しかぎたかぜきたかはつて、一旦いつたん九段上くだんうへけたのが、燃返もえかへつて、しか低地ていちから、高臺たかだいへ、家々いへ/\大巖おほいはげきして
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この水草みづくさはまたとしひさしく、ふねそこふなばたからいて、あたかいはほ苔蒸こけむしたかのやう、與吉よきちいへをしつかりとゆはへてはなしさうにもしないが、大川おほかはからしほがさしてれば、きししげつたやなぎえだみづくゞ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つきひかりおくられて、一人ひとりやますそを、まちはづれの大川おほかはきした。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)