)” の例文
を起してやったものの、このとぎすまされた水兵ナイフを、重態のハルクににぎらせていいものかどうかについて、竹見は迷った。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
武蔵の手には、低く持ったがキラキラと陽の光をねている。そして、飛び上がって仆れたなり山添団八はもう起たないのである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分じぶんにはこんなくろいろでなく、ぴかぴかひかっていました。そしてもよくついていてうっかりすると、ゆびさきをったのであります。
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いってみれば彼の才能のですっぱり切ることのできる種類のものしか切っていないからだということを知っているであろう。
ながかたちよこにひらたいものとがありますが、双方共そうほうとも一方いつぽうにつまみがあり、他側たがはれるほどするどくはありませんが、にぶになつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
にぶる時はたくはへたるをもつてみづからぐ。此道具だうぐけものかはを以てさやとなす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
父親は剃刀のをすかして見てから、紙のはしを二つに折って切ってみた。が、少し引っかかった。父の顔はけわしくなった。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
きっと、するどいものでしょう。刀かもしれません。むかしの長い刀のきっさきで、板をごしごしこすっているのです。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「下郎め、うぬがために、終生の恥辱をとったぞ」と大喝するなり、手代の真向へ、やツとばかりに竹光のを立てた。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
久しぶりに青天を見て、やれ嬉しやと思うまもなく、目がくらんで物の色さえ定かには眸中ぼうちゅうに写らぬ先に、白きおのがひらりと三尺のくうを切る。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだまだあの女将おかみはやつてゐる。キリキリと砥石に一当ひとあてあてて、じつと聴くともなくを返すとホロリと涙が落ちた。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
されど罪を責むることば犯せる者の口よりいづれば、我等の法廷しらすにて、輪はさかさまににむかひてめぐる 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
なにしろ、飲みぐすりが、もろのつるぎのようによくきくようにするためにゃ、わたしゃあ、自分の血を、その中へまぜこまなきゃならないんだからね
おじさんとふたりで、仕事場のすみのといしで、かんなのをといでいました。よく見るときょうは、ちゃんと仕事着をきて、黒い前だれをかけています。
かぶと虫 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
思ひ出すのだ。鋭くて薄くて冬のやうに冷たくてね、触れるとスウッと切れさうなのやうな神経をね。……
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
みことはなおひきつづいて、そのほかさまざまのあらびる神どもをなつけて従わせ、向かうものをどんどんほろぼして、とうとう天下をお平らげになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
が、もとより年をとった彼が、この侍の相手になるわけはない。まだ十合じゅうごうを合わせないうちに、見る見る、鉾先ほこさきがしどろになって、次第にあとへ下がってゆく。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……お姉様あの門は何の門? 両方にのついてる長い剣が門をしっかりと守っていてよ。お姉様!
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ことさらにあとさんと、きりこみし人々、皆其刀をがせし中に、一瀬が刀の二個処いちじるしくこぼれたるが、臼井が短刀のはのこぼれに吻合ふんごうしたるよりあらわれにき。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
のちに、一座の女たち——八人居た——楽屋一同、そろつて、を磨いたおのかんざしをさした。が、よるると、油、白粉おしろいふちに、の乱るゝ如く、黒髪を散らして七転八倒しちてんばっとうする。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
当季たうきやうなものは誠に少なくなりましたがとつて、服紗ふくさ刀柄つかいてくんだよ、先方むかうけないやうに、此方こちらを向けて鋩子先ばうしさきまでた処でチヨンとさやをさ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
伊賀の源三郎にのたたないことは、誰よりも峰丹波が、いちばんよく知っている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
見ると東坡巾先生は瓢も玉盃も腰にしてしまって、懐中ふところの紙入から弾機ばねの無い西洋ナイフのような総真鍮製そうしんちゅうせいの物を取出して、を引出して真直まっすぐにして少しもどすと手丈夫てじょうぶな真鍮の刀子とうすになった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『君の目的に役立つ剣は、わたしの剣のほかにはないのだ、』と彼は言いました、『そのはこの上もなく切れ味がよくて、鉄でも真鍮でも、まるで細い細い小枝を切るように切れてしまう。 ...
あるかれかぶ唐鍬たうぐはつよ打込うちこんでぐつとこじげようとしたとききたへのいゝ白橿しらかしとはつよかつたのでどうもなかつたが、てつくさびさきめた唐鍬たうぐはの四かくあなところにはかゆるんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
猫の爪あとは土をかみそりののようにほそく切り、あとで土をあてがってなおそうとしても、切れ傷は深くのこった。だから猫が庭に出ると彼は縁側えんがわに出て、えたいの判らない言葉で呶鳴どなった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ある時はヷレリイ流に使ひたる悟性の身をきずつけし
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
洋傘ようがさ直しはそれをってひらいてをよくあらためます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうちに何やらナイフのからまるものがあります。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さやれて、にくつたといふのであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
くわの夕日に光ル田打たうちかな 嘯風
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
が脳漿を切らないかぎり
あたらしき
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
つばから七、八分どころから引き気味に深く割りつけたので、生木を裂くらいのように、刀のは脳から肋骨あばらの何枚かまでとおって行った。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう、くわのもへったから、あたらしいのをってかえろう。」と、一人ひとりの百しょうは、みせさきにねらべられたくわをていいました。
おじいさんとくわ (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとへばひらたく兩方りようほうからみがしてゐる石斧せきふ、あるひはながやり、あるひは庖丁ほうちようといつたふうに、使用しよう便利べんり種々しゆ/″\かたち出來できたのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼は胸がごそりと落ち込むようににわかに冷たい死を感じた。彼は一刀ののように躍り上ると、その羅卒の腕の間へ身をぶち当てた。彼は倒れた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
私はそれに思い及んだ時、ヒヤリと自分の背骨におのがささった様な痛みを感じました。彼等は一体何をもってそれを切断したのでありましょう。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
幅のあつい西洋髪剃かみそりで、あごと頬をだんになつて、其するどいが、かゞみうらひらめく色が、一種むづがゆい様な気持をおこさした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
るには木にてつくりたるすきもちふ、里言りげんにこすきといふ、すなはち木鋤こすき也。ぶなといふ木をもつて作る、木質きのしやう軽強ねばくしてをるる事なくかつかろし、かたちは鋤にひろし。
大正元年八月二十六日午後四時過ぎ、俺は今染々とした気持で西洋剃刀のを開く。庭には赤い鶏頭が咲いてゐる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
後方うしろに一の鬼ありて、我等憂ひの路をめぐりはつればこの群の中なるものを再び悉く劒のにかけ 三七—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
Qのからだはかみそりののようにするどいので、お三根ののどにふれると、さっと頸動脈けいどうみゃくを切ってしまったのだ。思いがけなく、Qは人間の死ぬところを見て興奮した。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御名方神みなかたのかみがおやとおどろいているまに、その手はまたひょいとつるぎになってしまいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
笛を切つたら、すぐ死ねるだらうと思つたが息がそこから漏れるだけで死ねない。深く/\と思つて、力一ぱい押し込むと、横へすべつてしまつた。こぼれはしなかつたやうだ。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
翌晩あくるばん夜更よふけて私を起しますから、もとよりこっちも目を開けて待ったところ、直ぐに支度したくをして、その時、帯をきりりとめた、引掛ひっかけに、先刻さっき言いましたね、手拭てぬぐいでくるくると巻いた鎌一ちょう
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これより先、伊賀の若殿に向かう者は、一人しかない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あいつに馳け向っては無理もない。稀代きたいがねむちの使い手だ。だがさ、なんだッてまた、そんな無謀な深入りをしなすッたのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがっても薄かった。けれども鞘の格好かっこうはあたかも六角のかしの棒のように厚かった。よく見ると、つかうしろに細い棒が二本並んで差さっていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細い四角の西洋砥石に油をかけ、ぴつたりとを当てると、何とも云へぬ手あたりが軟かな哀傷の辷りを続ける。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)