ひき)” の例文
勘作は起きあがって笊の中をのぞいた。大きな二尺ばかりの鯉が四ひきと、他にふなはやなどが数多たくさん入っていた。勘作は驚いて眼をみはった。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その時こうのにわとこのかげからりすが五ひきちょろちょろ出てまいりました。そしてホモイの前にぴょこぴょこ頭を下げてもうしました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こういってN氏は、私たち九人が、あたかも九ひき子豚こぶたで、今にも牝豚ならぬ妖婆が、私たちを食べにでも来そうな雰囲気を作り出しました。
手術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
興福寺の宝物の華原磬かげんけい(鋳物で四ひきの竜がからんだもの)というものを黄楊つげで縮写したのを見ましたが、精巧驚くべきものでした。
ふと目が覚めると、消すのを忘れて眠つた枕辺まくらもとの手ランプの影に、何処から入つて来たか、蟋蟀こほろぎが二ひき、可憐な羽を顫はして啼いてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
範宴の腰をかけた杉の根のまわりにも、一、二ひき寝そべっていて、彼が手を伸べると、人馴れた眸を向けて、体をそばへ摺り寄せてくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、コルベル・ロンギシムスは、医神エスクラピウスの使で、その到る処万病を除くとて、ローマの軍隊遠征にこの蛇数ひきを伴れ行いた。
山荘の馬を幾ひきも並べて、それもここから見える倉とか納屋とかいう物から取り出す稲を食わせていたりするのが源氏にも客にも珍しかった。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
始終しゞゆうくるつたやうにまはつてた二ひき動物どうぶつは、きはめてかなしげにもまたしづかにふたゝすわみ、あいちやんのはうながめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
私は馬に乗って居りますけれども二ひきの荷馬はなかなか進めない。七哩ほど来ましてある小村に泊り、その翌日早くジョルバンガローへ着き
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
御承知のとおり、木曾の下四宿はいずれも小駅でございまして、お定めの人馬はわずかに二十五人二十五ひきでお継立てをいたしてまいりました。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
腰の物は大小ともになかなか見事な製作つくりで、つばには、誰の作か、活き活きとしたはちが二ひきほど毛彫りになッている。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
食事がちょうど終った時、王の家の者が二ひきろばいて王を探しに来た。それは王が家を出た日のことであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
然らば何ぞ獣の皮を取りて身に纏はざるやと言ひしに、つく/″\と之を聞きて去れり。翌夜は忽ち羚羊かもしかひきを両の手に下げて来り、升山の前に置く。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それにちょうどこの御山みやまの石の門のようになっております、戸室口とむろぐちから石を切出きりだしますのを、みんな馬で運びますから、一人で五ひききますのでございますよ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上、熊は二ひきとも三メートルばかりの身のたけで、重さが百五十キロ以上でしたから、これも優劣なしでした。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
おどろいて周囲を見まわすと、どうでしょうか、四方にはまだ四ひきの毒蛇がいて、今にも旅人をもうとしています。命とたのむものは、たった一本の藤蔓です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「この青貝の脇を見てくれ」参吉は指で五カ所をさし示した、「これは鈴虫なんだ、こことここに五ひきいるだろう、それで鈴虫の厨子という名が付いているんだ」
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この時いずくよりか二ひきありい出して一疋は女のひざの上にのぼる。おそらくは戸迷とまどいをしたものであろう。上がり詰めた上には獲物えものもなくてくだみちをすら失うた。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余りいでたちが仰々しいので可笑しくなった。これで頂上まで僅に一里半しかない山に登るのだから誠に呆気ない。焦茶色の耳の立った小さな犬が二ひき、後からいて来る。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
天民貧道など奚疑塾けいぎじゆくに居候時分、百ひき持た弟子入でしいりが參れば、よい入門と申候物が、此頃は天でも五山でも、二の弟子入はそれ程好いとは思はず、流行はあぢな物に御座候。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これを手当り次第にたたき落すと、五分か十分のあいだにたちまち数十匹の獲物えものがあった。今日こんにちの子供は多寡たかが二ひき三疋の赤蜻蛉を見つけて、珍しそうに五人六人もで追い廻している。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薄葉をひらいて見ると、十数ひきの蛍は、月草つきくさの葉の上にとまり、静かに灯りをつぎつぎともしていた。しかも、今年の蛍は例年にくらべて、ゆたかにも大きく育っているらしかった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それから廿日正月までに、おさやぬりから柄糸つかいとを巻上げますのは間に合いますと、そこは酔っていても商売ゆえ、後藤祐乘ごとうゆうじょうの作にて縁頭ふちがしら赤銅斜子しゃくどうなゝこに金の二ひきのくるい獅子の一輪牡丹
きはめ馬に乘て馬士と話し行處に向ふより横に乘たる田舍ゐなか馬六七ひきはなを揃へて來るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なに女郎めらうの一ひきぐらゐ相手あひてにして三五らうなぐりたいことかつたけれど、萬燈まんどう振込ふりこんでりやあたゞかへれない、ほんの附景氣つけけいきつまらないことをしてのけた、りやあれが何處どこまでもるいさ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもわず涙ぐんだ目を伏せると、長く延ばした自分の脚に、今日の最後の薄日がさしていたが、その擦り傷の血のにじんだ所に二ひきはえが止まっているのを見た。そっと手で払ったが又やって来た。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
二人は山門を過ぎて、はんの木の並んだ道を街道に出た。街道の片側には汚ないみぞがあって、歩くとかえるがいくひきとなくくさむらから水の中に飛び込んだ。水には黒い青い苔やらやらが浮いていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
まだ小供〻〻した耳の大きな牝犬めいぬで、何処から如何どうして来たか知らぬが、勝手にありついて、追えども逐えども去ろうともせぬ。余の家には雌雄しゆうひきの犬が居るので、此上牝犬を飼うも厄介である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おうおうとひくいうなりごゑに身をしづませる二ひきの犬。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
いぬの日に里から二ひき白と赤
(新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
ところがこのとき、さっきの喧嘩けんくわをした二ひきの子供のふくろふがもう説教を聴くのはきてお互にらめくらをはじめてゐました。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「二尺のこいを二ひきってくれと、二三日前から頼まれて、この広い湖へかたぱしから網を入れているが、鯉はおろか、雑魚ざこもろくろくかかりゃしない」
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
龍太郎りゅうたろうしかり、小文治こぶんじしかり、蔦之助つたのすけ忍剣にんけんも、髀肉ひにくたんをもらしながら、四本のくさりでとめられた四ひきひょうのような眼光がんこうをそろえて両肱りょうひじっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二十万石以上の藩主は馬十五ひきないし二十疋、人足百二、三十人、仲間二百五十人ないし三百人とされていたが
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あいちやんが紅鶴べにづるとらへてかへつたときには、すでたゝかひがへてて、二ひき針鼠はりねずみ姿すがたえませんでした
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その急坂を下りおわりますとブッダ・バッザラ師の出迎えとして馬二ひきに人が四、五名来て居りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
邵はひどく驚いて入って来て、一緒に燭をけて見た。室の中には彼の馬と二ひきぶたが死んでいた。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
その魔薬の成分の一つとして、子豚こぶたを九ひき食った牝豚の血が、鍋の中へ入れられますが、あの無邪気に見える豚でも、共食いするかと思うと、何となく気味の悪いものですねえ……
手術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
帝のお飼いになる猫の幾ひきかの同胞きょうだいがあちらこちらに分かれて行っている一つが東宮の御猫にもなっていて、かわいい姿で歩いているのを見ても、衛門督には恋しい方の猫が思い出されて
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
安八百屋の近所には二ひきの雄猫がいるし、甘露堂というたいそうな看板を掲げた駄菓子屋には、猫でも犬でも生き物さえ見れば石を投げたり、棒で叩いたりする六歳ばかりの女の児がいる。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
豆腐汁に鮭、ゴマメはなまで二ひきずつお膳につけた。一室は明るかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
下女げぢよひらたいおほきな菓子皿くわしざらめう菓子くわしつてた。一丁いつちやう豆腐とうふぐらゐおほきさの金玉糖きんぎよくたうなかに、金魚きんぎよが二ひきいてえるのを、其儘そのまゝ庖丁はうちやうれて、もとかたちくづさずに、さらうつしたものであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
尋る中彌生やよひの空も十九日子待ねまちの月のやゝ出ておぼろながらに差かゝるつゝみやなぎ戰々そよ/\吹亂ふきみだれしも物寂寞さびしく水音みづおとたかき大井川の此方のをかへ來かゝるに何やらん二ひきの犬があらそひ居しが安五郎を見るとひとしくくはへし物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と云って、また二人して八九ひき螢の島へ螢をはなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
白熊しろくまのやうな犬を二ひきつれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさ/\したとこを、こんなことをひながら、あるいてをりました。
注文の多い料理店 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
勘作は小柄な男を待たして置いて、そのこいを持って鯉の注文を受けている豪家ごうかへ往って二ひきを売り、あとの二疋を宿の旅籠はたごへ売ってその金で酒を買って帰った。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その村数は百六十か村の余を数え、最も多い村は百四十五ひき、最も少ない村でも十疋の中馬を出している。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからそこへ逗留とうりゅうしておるうちに私が長い間連れて歩いた二ひきの羊がくなったという始末なんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うかい、さうかい』とつてグリフォンは、自分じぶんばんたとはぬばかりに、これもまた長太息ためいききました、それから二ひき動物どうぶつかほをその前足まへあしおほかくしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)